プロット基礎講座(一):プロットとは何か

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プロット基礎講座(一):プロットとは何か2016-11-29T09:04:54+00:00

Project Description

概要

この教材では、小説家やシナリオライターを志す人を対象とした、プロット(物語の設計図)の基礎的な作り方やノウハウ、テクニックを紹介しています。

  • 面白い物語を作るために、なぜプロットが必要なのか。
  • プロットはどのように書けばよいのか。
  • プロットを作る際に、何を考えればよいのか。

ストーリーライティング学習と制作における数々の問題点

ストーリーライティングを学んだり作ったりする上で、いろいろな問題があるものです。以下で代表的なものを列挙して説明してみましょう。

教材において、精神面と技術面がごっちゃになっている問題

例えば小説やシナリオの教材などで「作家ならば、原稿用紙の書き方を守れ」「新しい要素を入れろ」「読み手に気を配れ」などの様々な精神論があるものです。

「原稿用紙の書き方を守れ」というのは、原稿用紙の書き方などは公募に応募したり、他の人に見せる場合は確かに必須です。しかし同人などの個人で作ったりする場合にはそれらが絶対に必要なわけではありません

「新しい要素を入れろ」と言っても、例えば水戸黄門などのお決まりのパターンとなったドラマなどはほとんどマンネリだけど受け入れられていますので、物語の面白さを決める必要条件ではないわけです。もちろん新しい要素は大切ですが、ストーリーライティングを学ぶ初期の段階では、新しいものよりかは、むしろ面白い物語に共通して見られる本質的要素の方に重点を置く方が重要ではないかと思います。

「読み手のことを考えろ」というのも一見重要そうですが、あまりに抽象的すぎて「何の条件を満たせば読み手のことを考えていることになるのか」と分析的に掘り下げていない投げっぱなしの言葉のように思えます。そのような抽象的なことではなく、「面白い物語とは、何と何の条件を満たせばいいのか」と細かく分析した具体的な条件が欲しいわけです。

精神論はこれら以外にも山ほどあります。もちろん、私はこれらの精神論が作家として成功するためには不可欠な要素だと思っています。

その上で、例えば物理学や力学などのように、精神論を廃した観点からの純粋な技術体系があればと思います。例えば、百年前まではどんな天才でも超高層ビルは建てられませんでした。しかし力学や建築学などのように基礎理論があることで、普通の人でも時間をかけて学べば、それも可能になるわけです。そのような基礎理論や学問体系を作ってゆけば、誰でも一流のものを作れるようになれるのではないか……という考え方です。

人に読んでもらってもらう、アドバイスの問題

これは小説やシナリオを書き始めたばかりの人なら当然ですが、やはり最初のうちは自分の書いた物語を読んでもらえるのは、身近な友人知人になるわけです。やはりプロに見てもらえれば的確なアドバイスをもらえるのでしょうが、最初はそうもいかないものです。

その時に、本質ではないアドバイスを得たりして、それに縛られてしまうことがあるようです。例えば、「先が読めて面白くない」や「伏線がどうのこうの」などですね。

「先が読めて面白くない」と言われた場合、結論が分からないようにすればいいんだと勘違いして、人の裏をかくようなどんでん返しを入れればよい……という方向に走ってしまう場合があります。ですが、もし先が読めて面白くないのであれば、映画館に同じ映画を二度見に通う人はいなくなるわけです。本質的に面白い物語は、何度読んでも面白いのです。コアなファンになると、決めゼリフまで覚えていることもあります。ということは、先が読めないのが面白さの本質ではないと気が付き、別の要素が面白さを決めると分かるでしょう。

「伏線がどうのこうの」というのも、なぜか知りませんが日本では「伏線」という技術だけが先走ってるように思えます。ですが設計図をしっかりと作ってさえいれば、適切な前振りや伏線は簡単にできるものです。すると、もっと根本的に面白さを決める本質的な技術があると分かるでしょう。

こんな風に、「これを満たせば面白い」という評価基準が明確にできれば、本当に必要なアドバイスかどうか個人で判断できるようになるものです。

設計図制作の体系的理論がないという問題

ストーリーライティングの教材は山ほどありますが、そのほとんどが「小説の書き方」という次元の話で、「設計図の書き方」という次元のものはほとんどありませんでした。例えば建築現場では物理学や力学などの定義づけを行い、方程式で分析・設計できるような標準的な体系があるわけです。犬小屋ぐらいなら設計図がなくとも大丈夫でしょうが、少し大きな家になると設計図を作らなければ崩壊してしまうかもしれません。

しかしストーリーライティングという分野においては未だにプロット(設計図)の業界標準などなく、その発想すら少ないのではないかというのが現状です。プロットもなく大きな家を建てることは、崩壊するかもしれない家を建てることになります。それと似たイメージで、プロットもなく大きな物語を作ることは、崩壊するかもしれない物語を作るのと同じようなものではないかという発想ですね。「プロットの書き方」という技術があれば、より省力化でき、効率化できるものです。

例えばアメリカでは、Dramaticaという製品があります。これは独自のストーリー理論に基づき、物語において必要な要素を入れていくだけで方程式のように全体の物語が定義・作成できるという製品です。これによって本質を押さえた良質なシナリオをより早く制作できるのではないかというアプローチですね。Dramaticaは相当昔ですが体験版を使ってみましたが、どうも主人公が静的か動的かなどといった本質とはあまり関係ないような要素が多かったり、なんか私の肌には合わなかったので、より分かりやすいシンプルな体系があればと思いました。

「つじつま合わせ」に膨大な時間をかけているという問題と、良質な物語の量産を求められるという問題

物語を作っていると、多くの場合が個別の盛り上がるシーンを作って、どうそれらをつなぎ合わせるかという流れで考えてゆく流れで作ることでしょう。しかしこの場合、どう場面場面をつなぎ合わせるかという「つじつま合わせ」に膨大な時間がかけられているという問題があります。下手をすると全体の八割以上がつじつま合わせに費やされてしまったということもあるのではないでしょうか。小説やシナリオ制作における遅延の問題はここにあるような気がします。

また、現在では良質な物語の量産を求められているということもあります。一つの小説やシナリオに対して、短時間で良質なものを仕上げる方法論が必要になってくるわけですね。その場合、今までのような個別にシーンを作り、時間をかけてつじつまを合わせるというような手探りのアプローチでは限界があるのは明らかでしょう。家を建てることで例えるなら、これまでは「こんな部屋が欲しい」と部屋を場当たり的に作っていって、最後に廊下や壁でつなぎ合わせようとするけど、それがなかなかうまく組み合わなくて四苦八苦するというイメージです。

それなら考え方を変えて、いっそのことつじつま合わせが必要ないような、作り方の転換をすれば対応できるのではないか、と考えるのです。最初からつじつま合わせが必要なくなる構造を作っていれば、膨大なつじつま合わせ時間の多くをカットできるのではないでしょうか。家を建てることで言うなら、どんな家が欲しいのかをという本質の要素を抽出して、そこから土台に必要な強度、柱の数、柱の太さ、配置、このような「目に見えない根本部分」から設計してゆくという考え方です。こうすることで、ばらばらに作ってしまった部屋と部屋をつなぎ合わせるという無駄な労力はなくなるわけですね。そのような方法論があれば、短時間でより良質の物語を作ってゆけるものです。

複数人数でシナリオを作る場合、方向性や語彙の明確化をしなければならないという問題

小説などでは少ないですが、ゲームなどにおいては複数人数でシナリオを作るということが多くあります。この場合、監督や脚本監修者はある程度全体を見通せる作品の方向性を明確にしておかなければ、担当するシナリオライターによって全く違うものを作ってしまい、一つの作品として統一感を持たせるのが難しくなってしまいます。企画書レベルや監督の指示で修正するだけでは明らかに限界がありますので、事前に全体のビジョンを示す必要があります。

この場合、複数のシナリオライターなどで意思疎通する語彙やプロットの読み方、ビジョンの「見せ方」を統一していなければ、完全な意思疎通が難しくなります。例えばこれはうちのチームで実際にあった例ですが、「プロット」という言葉一つをとっても、人によっては設計図全体を指すと思っていたり、メインプロットのことだと思っていたり、個別のサブプロットのことだと思っていたりするわけです。「このプロットを修正する必要がある」と言われた場合、その辺が判別できなければ意思疎通に誤解が生まれる危険があります。

これからの時代、一つの物語を複数人で制作することもあるでしょう。そういう意味でも、よりスムーズに複数人数でも制作を進めてゆくためにも、しっかりとした語彙の定義、プロットの読み方の定義が必要になるでしょう。

「プロット」という技術体系の必要性

これらのように、多くのストーリーライティング学習、制作における問題があります。ですが、「プロット」という基礎技術があれば、これらの問題を全て解決することができます。そこでここからは、そのような問題を解決できる、「プロットの基礎技術」を説明してゆきます

そのためにも、物語制作において執筆とプロット制作を完全に分離し、プロットの段階でほぼ全体を見通せるように物語を構築します。例えるなら、家を建てる際には設計図を完全に作って建てるのです。そうすることで、矛盾を最小限に抑えてスムーズに制作を進めるという考え方です。

「物語の方程式」という考え方

プロットを書くということは、少ない基礎的な情報で全体を定義するということです。例えば物が落下する場合の位置を示そうとした場合、秒数ごとにどの位置にあったのかを一つ一つ膨大な数を書いていくのがこれまでの方法だとします。すると、重力加速度という方程式を使った場合、三つか四つぐらいの数値と方程式があれば、全てを定義できるようになります。そんな、物語の「方程式」を定義してゆこうと思います。

方程式を作ってゆく上では、結局物語の「面白さを決める十分条件」を突き詰めて考えてゆく必要があります。それをしっかりと定義できて初めて、それを満たす方程式を作ることができるようになります。

構成

ここからは、まずは物語におけるプロットの必要性を説明し、次に物語における面白さを決める十分条件と方程式を示してゆきます。そして最終的にはそれらの理論を元に、実際のプロットの作り方を示してゆきます。

この技術を身につけることによって、何度読んでも面白いような物語を、短時間で破綻なく、多くの人と協調して作ることができる、そんな力を得られるでしょう。

物語を作る流れは、家を建てる流れと同じ

「ストーリーライティング」と聞くと、多くの人が原稿用紙やパソコンに向かって執筆している姿を想像することでしょう。ですが実際に小説やシナリオを作る作業というものは、書きたいテーマの決定や資料収集、実際にどのような構造にするのかという全体像を組み立てる段階、それを組み合わせる段階などがあります。実際に執筆作業している作業は、ストーリーライティングの最終工程でしかありません

小説やシナリオを作る過程において、実はほとんどの作業が「全体像を組み立てる作業」、いわばどのような構造・設計にするのかを考えている段階になります。

実際の作業を考えると、次図のようにピラミッド型で表現できるでしょう。

貴方にとって書きたいことや表現したいことは多くあると思います。それが全ての土台となります。その中から、今回は何に絞って言いたいのかを決めて、設計図を作ります。その土台を元に、実際に執筆してゆくことになります。つまり、ストーリーライティングにおいては設計図が重要な土台となります。プロットとは「物語の設計図」に当たります

小説やシナリオを作ることを、家を建てることに例えてみましょう。犬小屋程度の家であれば、設計図を作る必要はないでしょう。しかし人が住むぐらい大きな家になると、設計図なしで家を造り始めるのは無謀でしかないですよね。もし設計図なしで場当たり的に作り始めてしまった場合、どれを大黒柱にするのか、柱の長さ、向きなど、ありとあらゆる場面で仕様変更が起こり、遅々として進まないことになるかもしれません。もし複数人数で巨大建築を作ろうとするのなら、設計図なしで作るのはもはやありえません。

これと同様に、プロット(設計図)なしに家を建てる(小説やシナリオを書く)のは、倒れる家を造るようなもの(破綻する物語を書くようなもの)だと思いましょう。

よって、以下のようなことが重要になります。

大きい物語であれば、設計図であるプロットは必須。

大きければ大きい物語であるほど、プロットは詳細に作成する。

このように、プロットはストーリーライティングにおいて、非常に重要な過程になります。

☕ 雑談コラム:シナリオ制作を、家を建てることに例えてみると……

シナリオを作ることを、家を建てることに例えて考えてみましょう。

家を建てる時、まずは立てる場所を決めて、土台を作ります。そして設計図を作り、その設計図に従って家を建てます。家の設計図にはいろんな技術が込められています。サイズ合わせだけではなく、強度を保つ柱の配置、柱と柱の組み合わせ方、素材の選択、壁や入り口・出口の大きさ、などなど。家の設計図では、大黒柱や屋根裏の柱の組み方など、使う側には見えないけれども設計上大切な部分が多く含まれています

この「見えない部分」をしっかりと作れるようになって初めて、一流の建築士になれるというものです。読み手の多くは壁紙や間取りなどの表面的なものしか見ませんが、設計者であるならばそれだけではなく、見えない土台に気を配ることが大切です。

これからは、そんな「見えない部分」を説明してゆきます。すると、いろんな物語が「こんな構造になっていたのか!」と、今まで見えなかった部分が分かるようになり、シナリオ制作の奥深さを楽しめるようになるでしょう。

プロットがあることによる利点

プロットがあることによって、以下のような利点が得られます。

分からない点、考えていない点を明確にできる。

執筆途中で筆が止まったり、矛盾が起こったり、書き直し等を未然に防ぐことができます。執筆が途中で止まるというのは、ほぼ間違いなく「考えていないことが起こった場合」なんですよね。頭の中だけでプロットを構築したのでは、「考えていない点」が抽出できないのです。書き出すことによって初めて不明な点が抽出できます。これによって、執筆時間の大幅短縮が可能になります。

書いた部分を忘れることができ、頭をフル回転できる。

頭の中だけでプロットを考えていた場合、面白い部分を忘れないように頭の片隅にそれを起きながら別のことを考える……という形になります。しかし書き出すことによってそれを忘れることができ、プロットをより詳しく練り込むことができ、頭脳を一〇〇%使うことができるようになります。図やフローチャートなどを工夫して作ることで、より分かりやすくすることもできると思います。

複数人数で作ることができる。

複数人数で物語を作る場合、どのようなものを作るのかという全体像を示すことができ、これによって多くの人が関わっても統一性のあるものを作ることができるようになります。

プロットを作る上でのルール

そのため、プロットを作る上では以下のルールに従うことが大切になります。

考えていない点を出し尽くすまでプロットを作り込む。(考えていない点がある時点では、執筆は開始しない)

紙やエディタなど、必ず文章などで書き出す。

プロットは、頭の中で何も考えなくても、頭の中のものをプロットに従って書き下すだけで小説やシナリオが執筆できる状態まで作り込みます。つまり、プロットがあれば基本的に執筆の手が止まることはない状態が理想的です。従って、執筆作業はプロットに従って「頭の中にあるものを書き出すだけ」の単調作業になるので、筆が止まることはほとんどない状態になります。

もちろん、プロット時点で考えつかなかったよいネタを執筆中に思い浮かび、それによって全体が影響されるという場合は多々あるでしょう。この場合は修正に必要な作業量を見積もって、修正するかどうかを検討します。もし修正するという決断をした場合、再度プロットを再調整し、考えていない点を潰し終わった時点で執筆に戻るといいでしょう。

☕ 雑談コラム:プロットが面白ければ、執筆はさらに面白い

この場合、「それなら執筆は単調作業になってつまらなくなるんじゃないの?」という考え方がありますが、プロットを作り込むことでそのつまらなくなること自体を回避することができます

プロットがよいものであれば、執筆時の方がよりリアルに感情移入できて、面白くなるものです。プロットがよいものではないと分かったらその段階で書かないという決断ができ、無駄な執筆時間を回避することができます。つまらない部分を取り除き、面白いものに仕上げるためにプロットを作り込むというものですね。

執筆者が書いていてつまらない場面や物語は、読んでいる方はなおさらつまらないものです。つまらないものを長く書くぐらいなら、短く凝縮し面白いものにした方がよいものです。書き手がつまらないと感じる場合、つまらない部分はカットするか、再考しましょう。

☕ 雑談コラム:プロット制作は頭のフル回転

プロットを作っていると、考えてもいなかったことばかり見つかって、遅々として進まないことがありえます。しかしこれはプロット作成の段階で必要であり、非常に重要な経路です。

プロットは考えていない点を出し尽くすことが目的ですので、考えていない点を抽出できたら、それだけ執筆中に筆を止める要因だったものを事前に抽出できたということで、喜ばしいことになります。

そのため、プロット作成作業は単調作業にはならず、常に頭を使う作業であると覚悟することが大切ですね。そしてそれが一番面白い作業でもあります。

テーマ先行(トップダウンアプローチ)と状況先行(ボトムアップアプローチ)の二つの作り方

プロットの作り方としては、二つほど考え方があります。それはテーマ先行型(トップダウンアプローチ)状況先行型(ボトムアップアプローチ)の二つです。

おそらく普通の作家が物語を作るとき、「こういうシーンを描きたいなぁ」というものが頭にあって、それを元に「個別のシーンを作ってから全体を作る」という方法が多いのではないかと思います。この作り方を状況先行型(ボトムアップアプローチ)と呼びます。家を建てることで言うなら、「リビングはこれぐらいの広さで、ここに配置して、風呂場はどれぐらいの大きさで、ここに配置して……」というように、実際に欲しい間取りを作って、それをつなぎ合わせてゆくという作り方です。

それとは逆に、「テーマ」を先に決めることで、「全体の整合性を取った上で個別シーンを配置してゆく」という方法があります。これをテーマ先行型(トップダウンアプローチ)と呼びます。家を建てることで例えると、「この家は多くの人が訪れる美術館として建てたい。だからこれぐらいの空間が必要で、柱はこのように配置して、各部屋の比率はこれぐらいにして……」というように、「人に絵を見せるための建物」というテーマを元に必要な要素を配置してゆくという作り方です。

テーマ先行型(トップダウンアプローチ)と状況先行型(ボトムアップアプローチ)の長所と短所を以下に示します。

テーマ先行型(トップダウンアプローチ)の長所と短所。

  • 長所:全体の破綻が少なくなる。全体構成のバランスがよくなり、無駄のない美しい構成にすることができる。つじつま合わせが最小限で済むので、短時間で作ることができる。
  • 短所:癖が出やすく、画一的になりやすい。設計論や構築例を多く把握しておかなければならず、経験量を積む必要がある。

状況先行型(ボトムアップアプローチ)の長所と短所。

  • 長所:具体的に思いつきやすい。作りやすい。様々なバリエーションを作りやすい。
  • 短所:場面場面を統合するのに破綻が出やすく、まとめるのに時間がかかる。無駄な場面をいくつも作ってしまう可能性がある。

注意が必要なのは、これら二つのアプローチは、どちらが優れているというものではありません。場面によって両者を使い分け、その両者が相乗効果を発揮させることでよい物が生まれるという考え方です。

それを前提とした上で、多くの人が状況先行型(ボトムアップアプローチ)にほとんどの力を割いているというのが現状ではないでしょうか。もしそうであれば、時間を短縮して物語を制作することができる「テーマ先行型(トップダウンアプローチ)」も取り入れることで非常に便利になります、ということですね。

この両者の考え方をバランスよく使いこなすことで、よりバリエーションに富んだ良質な物語を短時間で制作するという、両者の「いいとこ取り」を実現することができるようになるでしょう。

面白さを左右する本質である「感動」

「この物語は面白い」「この物語は面白くない」とよく言われますが、ならば何を実現できていれば物語は面白くなるのでしょうか。感動を創り出すには、何を実現すればよいのかが重要になります。

ならば、感動を生み出すために必要な要素とは何でしょうか。

物語の感動を作る構成要素は、以下の二つの要素から成り立っています。

  • 心の成長
  • メタファー(暗喩)

感動を決める「心の成長」「メタファー」について、二つの面白さと違いを簡単に説明します。「メタファー」という聞き慣れない言葉が出てきて戸惑うかもしれませんが、最初から全て理解できなくても結構です。少しずつ理解してゆきましょう。

心の成長

心の成長というのは、ある人物が欠点を持っていて、その欠点を知って克服してゆくのが心の成長になります。主人公が辛いときに哀しんでいる場面や、困難に打ち勝ったりする場面などがそれに当てはまります。物語において一般的に「感動した」と言われるのは、大体がこの心の成長に当てはまるでしょう。

メタファー(暗喩)

メタファーの面白さは、簡単に言うと「詩」の楽しみ方に当たります。詩を書く・読む感覚で、ある表現に隠された現実世界との暗喩を楽しむ知的な喜びになります。心の成長がなくとも、その雰囲気につかっているだけで面白いというものです。世界観を楽しむ場合、大体がこのメタファーに当てはまるでしょう。

感動は、この心の成長とメタファーの相乗効果で威力を発揮します。この二つの観点を身につけるために、できるだけ多くの実例をこの観点で見るとよいでしょう。例えば映画や小説、漫画などを見て、「この物語はどんな心の成長を描いているのだろうか」「この物語はどんなメタファーで構成されているのだろうか」と常に意識するとよいでしょう。

☕ 雑談コラム:成長とメタファーのお国柄

何となく、心の成長はアメリカ(ハリウッド)で受け入れられていて、メタファーはヨーロッパで受け入れられているような感じがします。

例えば北野武の映画はストーリー的な面白さ(心の成長)は乏しいので、アメリカではほとんど評価されないのかなぁと思います。しかしメタファー(詩的表現)が強いので、ベネチアやカンヌなどのヨーロッパで高く評価されているのかなぁと思ったりします。

アメリカではきちっと三幕構成を区切って、集中力が持続する最短時間に理解しうる最大限の出来事を詰め込む傾向にあるような感じがします。逆にヨーロッパでは時間を気にせずだらだらと、いわば空気や雰囲気を味わう傾向なのかもしれません。

そういう文化の違いなのかもしれませんね。

まとめ

  • 大きい物語であるほど、設計図であるプロットを作ることが大切。
  • プロットは必ず紙やエディタなどで書き出そう。
  • 状況を先に考えて構築するだけでなく、テーマを元に物語を構築する、という方法もある。
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