プロット基礎講座(二):テーマと感動の作り方

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プロット基礎講座(二):テーマと感動の作り方2016-11-29T09:04:53+00:00

Project Description

概要

このページでは、物語のテーマと、そのテーマをどのようにして物語に当てはめるのか、その考え方を説明しています。

  • 物語を作りやすくする、「テーマ」の効果的な書き方とは?
  • 感動を作る、簡単な「公式」とは?
  • 物語を簡単に生み出せる方法とは?

「テーマ」とは何か

テーマ先行型(トップダウンアプローチ)の作り方において出発点ともなるもの、それがテーマです。全ての作品には何らかの目的があって作られます。それは誰かに何かを伝えるものであるかもしれませんし、作者自身が何かを見つけたいから作られるものかもしれません。家を建てることで例えるなら、その家を建てる目的ですね。その家は安らぎの場にするのか、商店にするのか、美術館にするのか、教室にするのか、様々な目的があることでしょう。

テーマ先行型(トップダウンアプローチ)は、そのような「目的」、いわゆる「伝えたいこと」から物語を作ることになります。

ここで重要なのが、テーマの表記の仕方です。例えば「テーマは友情だ!」と言っても、なかなか次に繋がらない訳ですね。そこで、以下のようなテーマの書き方をすると、非常に全体像が見渡せるテーマとなるでしょう。

テーマの書き方

  の状態だったヒーローが、     を通して、  になる物語」
ヒーローとは、後ほど説明しますが、ここでは主人公だと思っておけばよいでしょう。全ての物語には変化があります。その最初の状態と、変化の状態、そして最後の状態を明確にすることで、非常に明確なテーマが得られることでしょう。注意が必要なのは、最初の状態と最後の状態は、ある一つのものについて対極のものであるということです。

例えば、「人を信じることができない主人公が、恋愛を通して、人との触れ合いができるようになる物語」であったり、「夢に挫折した主人公が、仲間と出会い励まし合うことを通して、成功をつかみ取る物語」であったりするかもしれません。抽象的なもので問題ありません。むしろ、この段階で具体的に表現すると逆に後々問題が起こる場合がありますので、最初のうちは抽象的なものの方が望ましいかもしれません。

このテーマを元に、これからの具体的な物語を組み立ててゆくことになります。

☕ 雑談コラム:テーマは修正してもいい

テーマ先行型(トップダウンアプローチ)において、テーマこそが全ての起点となります。しかしここで決めたテーマを絶対に使い続けなければならないというわけではありません。

テーマというものは少ない文章で表現するために、どうしても自分が本当に伝えたいものを正確に表現しきることが難しいものです。なので、作っていると少しずつズレがあることに気が付くこともあります。その場合は、またテーマ作成段階において伝えたいことを修正してゆくのでも構いません。

誰もが自分らしさやテーマというものは明確には分からないものです。特にシナリオを多く書いたことがない人にとっては、自分が何を書きたいのかなんて漠然としか分からないものです。何十年も書いているシナリオライターでさえ、自分が何を書きたいのかは漠然としか分からないような場合だってあるのですから。

なので、テーマを決めたとしても、それに固執する必要はありません重要なのは貴方が伝えたいことを伝えきることであって、テーマを正確に書き出すということではないのですから。

貴方が既にいくつものシナリオを作っているのであれば、それらのシナリオを見直してみて、どんなテーマの共通点があるのか見てみるのもよいでしょう。全ての作品において共通している「伝えたいこと」があった場合、それは貴方にとっての永遠のテーマである可能性が非常に高いでしょう。自分の中にある訳の分からない感情を表現したい、という状態でも大丈夫です。

間違ってもいいので、少しずつ形にしてゆきましょう。そうすることで、次第に貴方の書きたいことや伝えたいことが見えてくることでしょう。

感動の本質は、心の成長

実際にプロット作りに入る前に、「感動の本質」について説明しておく必要があります。

人はなぜ物語を読むのかというと、「ワクワクやドキドキ、興奮や感動などがあり、それを体験したいから」といった理由があるでしょう。そこで、それらの「ワクワクやドキドキ、興奮や感動など」をひっくるめて「感動」と呼ぶことにしましょう。感動とは、「涙する」だけでなく、「心を動かされる」ものだと思えばいいでしょう。そして人は、そのような「心を動かされたい、動かしたい」から物語に触れる、ということです。

では、物語を設計するのであれば、心を動かすための「感動」を作る必要があります。ならば、どのようにすればその感動を作り出せるのかを、説明します。

物語における大きな感動の要因として、「抑圧の解放(心の成長)」が挙げられます。これが感動の全てではありませんが、物語において「面白さ」を決める大きな割合を占める中核的な要素になります。この「抑圧の解放」を上手く作り出せていれば、その作品は何度読んでも面白くなり、読み手にとっても印象深くなるでしょう。

抑圧とは何か

つまり、感動の本質とは、抑圧を解放することです。

抑圧とは、「押し殺してしまった感情」だと思えばいいでしょう。例えば多くの作品で、例えば人が死ぬ場面で感動したり、哀しい場面で泣いたりすることがあります。これは、これまで主人公が死にゆくキャラに素直になれなかったとして、相手が死に瀕して、そこで今まで伝えられなかった「押し殺してしまった感情」を解放するのです。つまり、「抑圧を解放する」ということですね。今まで「ありがとう」と伝えたかったけど、その感情を押し殺したとしましょう。すると、「ありがとうと伝えたい」という押し殺した感情を、死をきっかけにして出すことができるようになる……その瞬間、心の成長が起こり、感動が生まれるのです。

ですが、人が死ぬ場面で必ずしも感動できない場合があります。それはなぜかというと、抑圧を解放できていないからです。主人公が死にゆくキャラに対して別に何も感情を押し殺していなくて、そして大切な人が死んだとしても、全く感動は起きません。これが、多くの人が犯しやすい間違いです。

同じように、白熱したバトルで勝利の喜びを爆発させたいとしましょう。その場合、例えば主人公がバカにされて、「悔しい思いを押し殺しておく」必要があります。そして逆転勝利を通してその抑圧を解放することで、喜びが爆発するのです。もしこの抑圧がなければ、勝利の喜びはほとんど生まれないのです。

感動を作る、一番簡単な方法

感動の本質とは、「抑圧を解放すること」だと説明しました。そこで、感動を作る一番簡単な方程式を次図で示しましょう。

まず最初に、何らかの感情を抑圧したキャラクター(主人公など)がいます。ですが、何らかのきっかけによって、その押し殺した感情を解放する……という流れですね。

これが、最もシンプルに感動を作るための基本公式です。「心の成長」による感動は、全てこの「抑圧を持ち、それを解放する」という流れを基本公式として、様々なバリエーションを作り出しているのです。

欠点を利用した、使い勝手のよい感動を作る方法

ただ、「抑圧を持ち、それを解放する」という基本公式は上級者向けで、入門者には難しいものです。というのも、私たちがまず最初に思いつくのは、キャラクターの性格であったり、場面であったり、世界観であったりと、視覚的に見ることができる内容がほとんどでしょう。

そのため、この公式を初めての人でも使いやすく修正した、そんな使い勝手のよい公式を紹介しましょう。それが、「欠点」を用いた公式です。

抑圧は、そのキャラに欠点を生むという性質があります。その性質に基づいて、上記の公式を書き換えると、次図のようにできます。

欠点を持つキャラを、ここでは「ヒーロー」と呼ぶことにします。これは主人公である場合もありますし、主人公以外の主要キャラである場合もあります。このように、キャラに欠点を持たせて、それを克服させることで感動を作り出すことができます。

例えば、「他人を信じることができないヒロインが、信じることができるようになる」ことであったり、「自分勝手に生きていた主人公が、他人のために行動することができるようになる」ことであったりするかもしれません。

また、このとき、成長をする過程で必ず「対立関係(葛藤)」が生まれます。そのキャラは欠点を克服しようとするでしょうが、心の中で葛藤をして、悩み苦しむのです。そして「変化のきっかけ(トリガー)」が起こることで、その葛藤に終止符を打ち、欠点(抑圧)を克服するのです。

対立関係で葛藤を作り出す

上記の公式を、さらに詳しく柔軟に設計できるように、もう少し詳細に分解した公式を説明しましょう。それが、次図のようになります。

ヒーローと対立する考えを持つ相手のことを「シャドウ」と呼ぶことにしましょう。ヒーローは欠点(犠牲)を持っていますが、その欠点を持っていることで得られる利益(長所)があります。シャドウにも同様にそれらがありますが、それらの長所と犠牲はヒーローとは正反対のものになります。

このような、ヒーローとシャドウの間に起こる葛藤のことを、対立関係と呼ぶことにします。

テーマから中核となる感動を作り出す

実際に、テーマから物語の中核となる心の成長、つまり対立関係を作る流れを見てみましょう。テーマが「(変化前)の状態だったヒーローが、(スペシャルワールド)を通して、(変化後)になる物語」という形で表現していた場合、以下のように割り当てることができます。

ヒーロー:キャラ名

(長所)変化前であることで、○○という利点がある。

(犠牲)変化前であることで、△△という欠点がある。

シャドウ:キャラ名

(長所)変化前ではないことで、△△という利点がある。

(犠牲)変化前ではないことで、○○という欠点がある。

トリガー:統合を起こすきっかけとなる出来事(両者が対立を保っている状態でいることで起こる弊害)
成長:変化後の状態の考え方(統合後の思想)

ここで、○○同士と△△同士は同じもののそれぞれ否定関係になるように入れます。つまり、ヒーローとシャドウの長所と犠牲の関係が完全に正反対になるようにします。

キャラ名については後で修正するのでも結構です。ヒーローとシャドウについては、それぞれが同一人物である場合もありますし、ヒーローが主人公でない場合もあります。

トリガーとは、ヒーローとシャドウが対立している均衡関係を崩す役割を持ちます。ヒーローとシャドウの両者が対立しているという均衡した状態でいることによって、弊害が起こるでしょう。それはヒーロー側にとって破滅的な出来事かもしれませんし、ひょっとすると両者にとって破滅的な出来事かもしれませんし、ヒーローもしくは両者が変化することを望む第三者のちょっとした介入かもしれません。このトリガーは発想の転換が必要で、ヒーローとシャドウの両者とは全く別の要因によってもたらされるものです。

トリガーについては、この段階で記述する内容は抽象的なもので構いません。次章のメタファーを固める時に、具体的に決めてゆくことになります。

心の成長とは、トリガーによって引き起こされて、考え方が変わった後の思想のことです。この思想とは、ヒーローとシャドウのそれぞれの長所が残ったまま、犠牲が解決されているような思想になります。

対立関係の作成例

例えば、「人を信じることができない主人公が、恋愛を通して、人との触れ合いができるようになる物語」というテーマだったとしましょう。すると、以下のような対立関係が生まれることでしょう。

ヒーロー:主人公の青年

(長所)人を信じないことで、裏切られても心が傷つかずに済む。

(犠牲)人を信じないことで、永遠に人とわかり合えず、喜ぶことができない。

シャドウ:ヒロインの少女

(長所)人を信じることで、人とわかり合え、喜ぶことができる。

(犠牲)人を信じることで、裏切られたときに心が傷つく。

これら二人が出会ったらどうなるでしょうか。そこに対立関係(葛藤)が生まれます。ヒーローである主人公はシャドウである少女を否定して、そして少女は主人公を否定するかもしれません。次第に少女は自分の長所を発揮して、主人公を苦しめるでしょう。

この例で言うなら、少女は主人公を信頼することで、主人公は自分の「人を信じない」という信念が揺らいでしまいます。主人公は人を信じようとして、裏切られ、苦しんでゆくでしょう。そしてこれまでの人を信じないという思想に固執しようとするでしょう。

しかし何らかのきっかけ(トリガー)があって、主人公と少女の思想が統合され、一つになります。例えば両者が対立したままでいると、何かしら弊害が起こるものです。そこで少女に悲劇的な出来事が起こったとしましょう。傷ついた少女を見て、主人公は少女のことが好きなんだと気が付いて、身を挺して少女を守ります。

ここで主人公の思想は、「この少女になら命をかけられる。傷つけられても構わない」と気付くことで、自分の持つ「人とわかり合えない」という欠点(犠牲)を克服し、同時に「裏切られても傷つかない」という長所はそのまま保っていられます。同時に主人公は少女の持つ長所である「人を信じる」ことを身につけることができ、少女の持つ犠牲をも克服しています。これが一つになり、統合されるというプロセスの全体像です。

最終的に、変化のきっかけであるトリガーと、心の成長内容を以下のように添えて心の成長は定義することができます。

  • トリガー:少女に悲劇的な出来事が起こる。
  • 成長:主人公が少女を好きだと気付いて、少女のために命をかけられると気付く。これによって欠点を克服する。

この心の成長が大きければ大きいほど、より深い感動になります。注意が必要なのは、成長するまでは主人公や少女は成長後の思想を全く持たないということです。もし既に成長後の思想を少しでも持っていた場合、当たり前のことを繰り返すだけとなり、感動は生まれなくなってしまいます。

まとめ

  • テーマを作ることが、テーマ先行型(トップダウンアプローチ)の出発点となる。
  • テーマは「○○の状態だったヒーローが、△△を通して、○○になる物語」と書くとよい。
  • 物語では、必ず「対立関係(葛藤)」が起こる。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/seier/2373688505/ by seier+seier (modified by あやえも研究所)
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