プロット基礎講座(三):メタファーを知る

>>>>プロット基礎講座(三):メタファーを知る
プロット基礎講座(三):メタファーを知る2016-11-29T09:04:53+00:00

Project Description

概要

このページでは、世界観を魅力的にする「メタファー」という技術について説明しています。

  • 魅力的な世界観を作れる「メタファー」とは?
  • 世界観の密度を濃くする方法とは?
  • キャラクターを効果的に配置する方法とは?

メタファーとは暗喩である

テーマ先行型(トップダウンアプローチ)で作る場合、テーマを実際の世界観に当てはめて具体的に表現する必要があります。例えばテーマを学園物という世界で表現するのか、近未来風にするのか、戦争物にするのか、ファンタジーにするのか、下町風にするのか、などですね。このように抽象的なテーマを見た目で分かるように具現化するものが「メタファー」です。

メタファーの意味は、暗喩・比喩・世界の縮図、などになります。あくまで陰に隠された比喩であるという「暗喩」であり、直接比喩する「直喩」ではないことに注意しましょう。物語の抽象的なテーマを具体的な「例え話」とすることで、分かりやすくしたり、受け入れやすくしたり、人の心に深い印象を与えたりすることができるものです。そして人は何らかの暗喩だと分かった瞬間に、大きな感動を覚えるのです。

物語に効果的にメタファーを追加することで、より世界観を魅力的に、感動的に見せることが可能になります。

「メタファー」という聞き慣れない言葉な上に、抽象的な内容なのでイメージしにくいかと思います。なので、まずは実際にいくつかの例でメタファーを見てみましょう。

メタファーの例:ディズニー制作映画「カーズ」

ディズニー・ピクサー制作の映画「カーズ」で具体的に見てみましょう。この映画の登場人物は全て車であるという、ちょっと変わった世界観を持っています。

物語の主人公であるマックイーンは、レースカーの新人ホープです。レースカーという速さが全ての世界において人気絶頂で鼻高々なのですが、周りが全て敵なので心を許せる友人が一人もいないという状態に寂しさを覚えています。

そのマックイーンがレース会場の移動中に寂れた田舎町に迷い込んでしまって、スピード違反で捕まって社会奉仕をさせられるようになります。その寂れた田舎町のスピードとは無縁の暖かい人達と触れ合うことで、友情や恋などを得て、人(この映画では車ですが)とわかり合えるようになり、レースという世界に戻っても謙虚になり周囲の人と打ち解け合うことができるようになる……という物語です。

この物語のテーマは、「速さが全ての主人公が、寂れた田舎町の人達との触れ合いを通して、勝負よりも大切な『思いやり』を手に入れる物語」と表現できるでしょう。

詳細な対立関係は、以下のようになるでしょう。成長過程が分かりやすいように、トリガーと成長を二つに分けて表現しています。

ヒーロー:マックイーン

(長所)速く生きることで、人々から賞賛や支持を得られて孤独を感じずに済む。

(犠牲)速く生きることで、心にゆとりを持てない。

シャドウ:田舎町の人達

(長所)速く生きないことで(ゆっくり生きることで)、心にゆとりを持てる。

(犠牲)速く生きないことで(ゆっくり生きることで)、人々から賞賛や支持を得られずに孤独を感じる。

  • トリガー:勝負の世界で大切な仲間がクラッシュしてしまう。
  • 成長:勝ち負けよりも思いやりが大切だと知り、勝てる勝負を手放してでも仲間を救うことで心にゆとりを持てて、人々の賞賛や支持を得る。

この物語の対立関係は、まさに現代のファストライフとスローライフの関係にも当てはまります。このファストライフとスローライフの関係を、視覚的に分かりやすく表現したのが「車の世界」だと言えます。

速さを追求する主人公はレースカーとなり、田舎町の人達は速度の出ない牽引車であったり消防車であったり、古い車だったりします。

暗喩の楽しみが、メタファーの楽しみ

このように、ファストライフとスローライフというテーマを子供にも分かりやすく伝えることができるように具現化する力、それがメタファーの力でもあります。この物語では「ファストライフ」や「スローライフ」という単語は一切出てきません。しかし観客の心の中で、そのテーマなのだと知ったとき、大きな感動を呼ぶのです。

感動には心の成長とメタファーがあると先述しました。その例を見てみましょう。物語中で、主人公の恋人となった田舎の車が、高速道路を眺める車を眺めながらこのようなことを言います。「車はどこかに楽しみに行くために走っていたんじゃないの。楽しみながら走っていたの」……これが現実世界の暗喩であることに気が付いたときに起こる感動、それが「心の成長による感動」とは別の種類である「メタファーの感動」なのです。

この暗喩を楽しむという感覚、それこそがメタファーを楽しむ感覚です。

このように、メタファーとは暗喩であると言えます。一般的に「メタファー」と言うと修辞的な文章技法と捉えられますが、ここでは修辞的な領域に限らずに、暗喩が成り立っていればメタファーと呼ぶことにします。

現実世界に具現化されたものを象徴(または変換先)と呼びます。逆に暗喩の元となるものを比喩の元(または変換元)と呼びます。これらの比喩の過程全てをひっくるめたもの(暗喩という行為そのもの)がメタファーです。

また、メタファーは比喩の元からそれを象徴するものへと変換する過程とも見ることができます。そのため、世界や象徴に比喩する過程を「変換する」と呼ぶこともあります。

メタファーの感動

上記例で挙げたカーズは、車について知っている人でないと面白さが感じられません。例えば密林の奥深くに住んでいるような、そんな車について全く知らない人が見たら、その面白さは感じられないものです。

つまり、暗喩の元となる知識を知っている人でなければ、暗喩自体の面白さは感じられなくなります。なぜなら、メタファーが効果を発揮するのは、今まで知っている知識の比喩だと気が付いている時、比喩の関連付けをしている瞬間だからです。

メタファーの評価方法

それでは、メタファーの善し悪しを評価する方法はあるのでしょうか。

メタファーは、どんなものにも含まれていると言うことができます。例えば鉛筆で紙に丸を書いても、それは十分にメタファーとして通用します。例えば鉛筆で紙に書いた丸は、始まりも終わりもない「永遠」の暗喩(メタファー)として表現できます。また、同じように考えてみると「世界」や「完全」、「無限」、「限界」と、ありとあらゆる暗喩(メタファー)として解釈することができます。

このように、メタファーはそれに意味(暗喩)を込められればメタファーとして機能するため、ありとあらゆるものに当てはめることができます。無意識に作ったものでも、メタファーになっていたということは多々あります。そのため、メタファーは「存在するしない」というものではなく、「強いか弱いか」という判断基準になります。

メタファーが強いものの例として、人々が伝承で語り継いだ神話や童話の類は大抵強力なメタファーを持ちます。例えば童話の「太陽と北風」で旅人の服をどうやって脱がすかを太陽と北風が試す話は、人を動かす教訓の強い暗喩ですね。また、日本の昔話でも「さるかに合戦」や「桃太郎」「浦島太郎」など、語り継いだものには強い暗喩を持ったものが多いでしょう。

メタファーをテーマと心の成長に当てはめる

さて、それでは実際にメタファーを用いて、これまで抽象的だったテーマと心の成長を具現化してみましょう。

メタファーは「和風」や「中世ヨーロッパ風」、「アメリカ風」、「中華風」「インド風」「近未来風」「宇宙などのSF」「現代風」などの巨大な文化の体系から、果ては「指輪」や「髪飾り」などの小さな小物にまで当てはめることができます。このように、大小様々なレベルを決めてゆきます。まずは大きなものから決めてゆきます。

メタファーの体系

メタファーは小さなものから大きなものまで膨大にあります。メタファーというものはあまりにも繊細でありかつ膨大で抽象的なものなので、私達が一から組み上げるのはとてつもない作業量を必要とするでしょう。しかし、世界中には既に繊細かつ大規模に組み上がっているメタファーの体系というものがあります。これらを利用することで、簡単に優れたメタファーを実現することができるでしょう。

それは、それぞれの文化というものです。世界にはカトリック風や和風、近未来風(サイバー風)、中世ヨーロッパ風、イギリス風、北欧風、中華風、ヒンドゥー風、中東風など、様々な文化にメタファーの体系が存在します。

メタファーの代表例

簡単なメタファーの代表例を次表で見てみましょう。

このように、ある程度組み上がっている既存の文化では、それぞれのメタファーが出来上がっています。家を建てることで例えるなら、和風の建物や西洋風の建物の構造を学ぶことに当てはまるでしょう。

社会にもメタファーがある

また、文化だけでなく、社会においても同様な体系が存在します。例えば現代社会において、医療社会や学校社会、警察という社会、ヤクザやマフィアの社会、ビジネスという社会など、様々な社会があるでしょう。その例を見てみましょう。

スペシャルワールドのメタファー

さて、テーマを決めるときに「(変化前)の状態だった主人公が、(スペシャルワールド)を通して、(変化後)になる物語」という形で表現しました。まずはこのテーマに合致するような文化・社会のメタファー(世界観)を決めてゆきます

まずはテーマ内にある「スペシャルワールド(特殊な世界)」に着目して、それを象徴するような文化・社会を考えてみましょう。

「スペシャルワールド」とは、その物語における「特殊な世界」だと思えばいいでしょう。これはテーマで表現した「○○を通して」という「○○の世界観」に当てはまります。ヒーローが何かをきっかけにして、特殊な世界に入り込むものです。例えば映画「カーズ」では、「レースの世界」という日常から、「田舎の町」という特殊な世界に入り込むことによって、物語が進んでいきます。

スペシャルワールドのメタファーの代表例

以下にスペシャルワールドの適当に思いついた象徴例を挙げてみましょう。もちろん星の数ほどの象徴があるでしょうから、これにこだわる必要はありません。

「変化前」「変化後」のメタファー

そして「変化前」「変化後」に共通する、それらを象徴するような文化・社会とその要素も別に考えてみましょう。こちらは基本的に対立関係で考えます。物語で普遍的な対立関係として、「個と全」というものがあります。これを基本として対極の象徴を考えてゆくとよいでしょう。

この二つを組み合わせた文化・社会であればよいメタファーが生まれるでしょう。

「変化前」「変化後」のメタファーの例

例えば、テーマとして「人を信じることができない主人公が、恋愛を通して、人との触れ合いができるようになる物語」というものがあった場合、スペシャルワールドは恋愛物なので文化は「現代の学園物」としてみます。

これだと少々ありふれていてつまらないので、私の好みである「魔法」というファンタジーを加えて「魔法を教える学校」という社会にしてみましょう。

「人を信じない・触れ合い」という成長から、どちらかというとヒーローは個人的で破滅的、シャドウは協調的で生産的な対立になりますので、ヒーローは攻撃や破壊主体の魔法使い見習い、シャドウは回復主体の魔法使い見習いと決められるでしょう。

このように決めてゆくと、抽象的だったテーマが急速に具体的に見えてきます。文化・社会は様々なものがありますので、当てずっぽうで決めるよりも、いくつもの候補を挙げてから絞り込んでゆくと、より最適なメタファーを決めることができるでしょう。

☕ 雑談コラム:文化・社会のメタファーは好みでOK

文化・社会のメタファーは、いわば作り手の好きな「世界観」と言えるでしょう。適当に作るのでもいいですが、貴方の好みを十分に発揮した文化・社会の方が作りやすいでしょう。

貴方とは関係のない文化・社会を当てはめるのは、大きなモチベーション低下になりかねません。どうせなら、貴方が好きな世界観にこだわってみるのもいいかもしれません。

心の成長のメタファー

それでは、次に心の成長にメタファーを割り当ててみましょう

心の成長を作ったとき、ヒーローとシャドウの長所と犠牲、トリガーと成長を作りました。それぞれに対して、それらを視覚的もしくは直感的に分かる象徴を割り当ててゆきます。それは職業や能力、地位、持ち物、環境などに表されます。そしてそれぞれの長所と犠牲については、なぜそう思うようになったのか、過去にそのキャラに起こったトラウマとも言える出来事もここで決めます。

ヒーロー:キャラ名

(長所:象徴)長所の象徴。職業や能力、地位、持ち物、環境など。

(犠牲:象徴)短所の象徴。職業や能力、地位、持ち物、環境など。

(過去の出来事)なぜそう思うようになったのか、過去の出来事。

シャドウ:キャラ名

(長所:象徴)長所の象徴。職業や能力、地位、持ち物、環境など。

(犠牲:象徴)短所の象徴。職業や能力、地位、持ち物、環境など。

(過去の出来事)なぜそう思うようになったのか、過去の出来事。

  • トリガーの象徴: ヒーローとシャドウの長所が発揮できないことで起こる事柄の象徴。
  • 成長後の象徴:変化後に主人公がなっている状態の象徴 。職業や能力、地位、持ち物、環境など。

メタファーの作り方

メタファーとは「暗喩」であるため、目に見えない(分かりにくい)抽象的なものを可視化して分かりやすくする役割も持っています。そのために、目に見えない関係などを擬人化、擬態化、関係の可視化、心情の可視化として表現することができます。

メタファーの作り方として、以下のようなものがあります。

それはどんな物に象徴されるか。

それは誰に象徴されるか。

それはどんな行動・能力として象徴されるか。

それはどの場所に象徴されるか。

それはどの時間に象徴されるか。

それはどんな環境として象徴されるか。

それはどんな職業・地位に象徴されるか。

これらを詳細に決めてゆきます。これによって、テーマが実際に血肉となり、物語が具体性を帯びて読み手に分かりやすく伝えることができるようになるでしょう。

メタファーの作成例

それでは、「人を信じることができない主人公が、恋愛を通して、人との触れ合いができるようになる物語」というテーマで、「現代っぽい魔法を教える学校」という社会の例で具体的にメタファーを作ってみましょう。

成長階層は以下のようにしたとします。

ヒーロー:主人公の青年

(長所)人を信じないことで、裏切られても心が傷つかずに済む。

(犠牲)人を信じないことで、永遠に人とわかり合えず、喜ぶことができない。

シャドウ:ヒロインの少女

(長所)人を信じることで、人とわかり合え、喜ぶことができる。

(犠牲)人を信じることで、裏切られたときに心が傷つく。

  • トリガー:少女に悲劇的な出来事が起こる。
  • 成長:主人公が少女を好きだと気付いて、少女のために命をかけられると気付く。これによって欠点を克服する。

これにメタファーを適当に当てはめてみましょう。

ヒーロー:主人公の青年

(長所:象徴)一人暮らし。孤独を好む。他人に頼らない攻撃・破壊の魔法。

(犠牲:象徴)黒魔法使いという悪のレッテル。

(過去の出来事)幼い頃に親に捨てられ、食わなければ食われてしまう劣悪な環境で、身を守り生き延びるためには黒魔法を使うしかなかったということ。

シャドウ:ヒロインの少女

(長所:象徴)学級委員で人気者。人と一緒にいるのを好む。他人を救う回復の白魔法。

(犠牲:象徴)幼い頃、助けられなかった男の子の持っていた指輪。

(過去の出来事)幼い頃、大好きだった男の子が深く傷ついた時、救ってあげられなかったこと。だから人を助ける白い魔法を使うようになる。

  • トリガー:少女が裏切りに会い、魔法が暴走して、少女を傷つける。
  • 成長:少女が幼い頃に好きで助けられなかった男の子が、主人公のことだったと分かり、主人公は少女を守るために命をかけて強い魔法を使い、魔法の暴走を止めるという行為。

急速に抽象的だったテーマが、具体的にイメージできるようになったのではないでしょうか。

テーマは変えず、メタファーを変えてバリエーションを出す

メタファーはいわば物語における「着物」のようなもので、着物を買えるだけでイメージは千差万別に変化します。ほとんどの物語というものは、テーマはある程度限られた範囲のもので、メタファーを変化させているに過ぎません。一人の作家にとっては、テーマはあまり大きく変化しないものです。よって、自分自身の永遠のテーマに気が付けば、メタファーを変化させることで様々な物語を生み出すことができるようになるでしょう。

なお、ここでは心の成長を先に決めてメタファーを当てはめていますが、メタファーを先に決めても構いません。好みで順番を変化させて結構です。詩的な表現が好きな人は、メタファーから先に入るとよいでしょう。

メタファーの具体例

比較的小さなレベルにおけるメタファーがあります。小さいレベルのメタファーを挙げればきりがないので、一般に用いられやすい具体例を以下で説明してゆきます。

物に関するメタファー

  • 恋愛ものでは絆や想いのメタファーとして、ぬいぐるみや指輪、幼い頃に渡したプレゼントなどの小物が用いられることが多いです。
  • 力を与えてくれる物のメタファーとして、剣や弓矢、書物などが使われる場合もあります。

人に関するメタファー

  • シャドウは自分の分身であることが多いです。例えば兄弟や自分の影など。これは自分の影の心であり、場合によっては自分もシャドウのようになっていた可能性があることで、シャドウの正当性を理解しやすくなります。
  • 日常世界でのメンターとしては、教師や医者、弁護士などの道に詳しい職業がよくあります。しかしスペシャルワールドでのメンターは、日常世界では異端者やつまはじきに会っている場合の人が多いでしょう。これはスペシャルワールドの法則が日常世界の法則とは異なるためです。
  • スペシャルワールドと日常世界を視覚的に分けるために、スペシャルワールドでは日常ではありえないほど奇抜なデザインの場合があります。例えばスーパーマンなど。

行動に関するメタファー

  • ヒーローの欠点は、悪癖や口癖となっていることが多いでしょう。
  • シャドウは、ヒーローの最も忌避する分野でのトップレベルの力を持っていることが多いでしょう。

場所に関するメタファー

  • 物語の舞台は閉鎖された環境であることが多いです。例えば舞台となる町から出るには交通手段がほとんどない状態であるとか、一つの島の中で起きていることだとかですね。こうすることで、舞台を完全な世界の縮図として表現することができます。
  • スペシャルワールドでは、一般の常識は通用しないことが多いでしょう。
  • スペシャルワールドへは、入り口となる門のような場所があり、日常世界とは明確に区切られている場合が多いでしょう。手術室の扉であったり、法廷の扉だったりします。

時間に関するメタファー

  • 昼の学校は日常の象徴で、夜の学校は非日常の象徴になりやすいでしょう。夜の学校では、深層心理が解放された状態で、一般の常識が通用しないことが多いです。
  • 夜は非日常になりやすく、特に満月の夜は深層心理が解放されやすいでしょう。

環境に関するメタファー

  • 楽しい日は晴天など明るい環境になるでしょう。逆に哀しい出来事の日には、曇であったり雨が降ったりすることが多いでしょう。激しく落ち込んだ時には、土砂降りになるかもしれません。こうすることで心情を視覚的に反映させることができます。
  • 精神的に追い込められた場面では、周囲が暗い場所であることが多いでしょう。緊張する場面も暗い場面が多いでしょう。
  • 緊張する場面では、心理的に閉鎖された空間であることが多いでしょう。物質的にだだっ広い場所であったとしても、その広い場所からは逃れられない……というように、心理的に逃げられない場所であることが多いでしょう。

人物における象徴(役割)例の紹介――キャラクターアーキタイプ

例えばキャラクターを作る場合、「性格の種類」でキャラクターを配置したりしてしまう場合があります。明るいキャラ、大人しいキャラなどですね。もちろん性格的なバランスもメタファーとして機能しますが、それだけでは物語を書いている最中に役者が揃わず物足りないということが起こってしまう場合があります。そこで、効果的なキャラクターの配置方法が必要になります。

そこで、ユング心理学をベースとした、ハリウッドで用いられている効果的な配置方法を紹介しましょう。それはキャラクター・アーキタイプ(原型)と呼ばれます。これは以下の7つのタイプとして分類されています。

  • ヒーロー(英雄)
  • シャドウ(影)
  • メンター(賢者)
  • シュレッショルド・ガーディアン(門番)
  • ヘラルド(使者)
  • シェイプシフター(変化する者)
  • トリックスター(いたずら者)

以降で説明するそれぞれのアーキタイプは、いわば「名札」みたいなもので、登場人物がずっと一つのアーキタイプを続けるということではありません。例えば主人公の青年がヒーローになることもあれば、同一の物語でメンターに変わるということもありえることに注意しましょう。

ヒーロー(英雄)

ヒーロー(英雄)は物語を通して、成長する役割を持つ人のことです。多くのヒーローは読み手と一体になり、悩みながらも行動を起こし、読み手と共に成長してゆきます。ヒーローは欠点を持ち、その欠点を克服し、成長してゆく存在です。

主人公がヒーローになることもありますし、そうでないこともあります。

シャドウ(影)

シャドウ(影)はヒーローに対立する存在になります。シャドウはヒーローと対立し、ヒーローを絶体絶命の状態に追いやるでしょう。

シャドウとヒーローは別の人間であるとは限りません。自分自身の中にヒーローとシャドウが混在する場合もあります。また、シャドウは社会や一般常識、世界など形を持たない場合もありえます。しかしできるだけメタファーとして具現化し、ヒーローとは別の象徴とした方が、読み手にとっては分かりやすくなるでしょう。

メンター(賢者)

メンター(賢者)はヒーローを助けたり、訓練したり、力を与えたりする存在です。自分よりも高次元に存在するものです。

ヒーローは基本的にスペシャルワールドについては無知であるため、一人では成長できません。ヒーローが成長するためには、スペシャルワールドの法則を説明したり、力を与えたりする存在が必要になります。それがメンターです。

シュレッショルド・ガーディアン(門番)

シュレッショルド・ガーディアン(門番)はヒーローがスペシャルワールドに入るために、主人公に試練を与える存在です。試練を与えた後に仲間になることが多いでしょう。メンターがシュレッショルド・ガーディアンになる場合もあります。

ヘラルド(使者)

ヘラルド(使者)は主人公を物語に誘う役割を持ちます。日常にいる主人公に冒険を誘ったり、変化のきっかけを与える存在になります。スペシャルワールドを知るきっかけになる使者です。

シェイプシフター(変化する者)

シェイプシフター(変化する者)は、よく姿形や立場を変える、つかみ所のない存在のことです。敵か味方か分からない。ヒーローを間違った方向に進ませたり、困っているのを傍観したりと、ヒーローの精神的なバランスを試すために登場します。

例えるなら、ルパン三世の峰不二子のような存在ですね。

トリックスター(いたずら者)

トリックスター(いたずら者)は、ヒーローに変化を与え、主人公が成長して変わっていくきっかけを与えます。いわば、トリガーを引き、成長のきっかけを与える役割を持つ存在のことです。

物語中ではヒーローとシャドウは対立して、平行線をたどります。それだけでは物語の進行が止まってしまいますので、そこでトリックスターによってヒーローとシャドウに変化の波紋を投げかけます。それをきっかけとしてヒーローが成長することになります。

ここではざっと概要だけ述べましたが、詳細はクリストファー・ボグラー著「夢を語る技術〈5〉神話の法則―ライターズ・ジャーニー」(🔗 )を参照して下さい。

メタファーの相互変換機能

メタファーの特性として、相互変換可能であることが挙げられます。メタファーは比喩であるため、変換元が同じものであれば、変換先のものはほぼ相互に変換することができます

例(一):「思い出」の比喩

簡単な例で分かりやすく説明しましょう。

ヒロインが「主人公との思い出を大切にしている」という暗喩として、「幼い頃にもらった指輪」というものがあるとしましょう。また別の比喩として「思い出のぬいぐるみ」というものも考えられます。

物語において、指輪を使おうがぬいぐるみを使おうが、物語の本質は何も変わらないと分かります。このように、同じ変換元であれば、変換先は相互に変換(置き換え)可能です。

例(二):「無意識の力」の比喩

同じように、「無意識の強大な力」という深層心理を、いろんな世界観で表現することができます。

和風で表現すると妖怪になり、西洋風ではモンスターになり、サイバー系ではウィルスになり、宇宙物ではエイリアンになります。その程度の違いでしかないということですね。

世界観のメタファーも、変換が可能

このように、例えばカトリック風で悪魔という設定があれば、和風の妖怪という形でも変換することができます。そのように対応させることで、カトリック風でも和風でも作成が可能になります。

また、世界観そのものも相互変換することが可能です。物語を作る場合において、言いたいこと・表現したいことが比喩の元になります。そのため、言いたいこと・表現したいことは、しっかりとした文化・社会であれば基本的にどんな世界観でも表現・変換することができます

そのため、もしいくつか複数の世界観のネタを持っていた場合、大抵は一つのメタファーとして変換・融合させることが可能となります。

世界観を統合することで、密度の高いメタファーが作れる

つまりは、和風ネタと洋風ネタを別々に持っていたとしても、それらを一つの世界観の物語にまとめて、物語の密度をさらに濃くすることができます

世界観はごった煮よりも一つに絞ることの方が難しく、一つの世界観で統合すればするほど強いメタファーとして働く傾向にあります。そのため、メタファーできるだけ一つあるいは少数の論理体系で組み上げてみるのもよいでしょう。

自分勝手に作った世界観だと、文化がしっかりとできておらずに変換できないということもあります。そのため、物語でコアとなる世界観・論理体系となる文化を決めることが大切です。そのコアとなる世界観に対して、ネタを融合させてゆくとよいでしょう。

☕ 雑談コラム:世界観を統合せよ!

基本となる世界観は、いくつかに絞り込む方がメタファーとして強力になる傾向ですが、別に一つである方が強力になるというわけでもありません

例えば学園物+和風とか、和風+カトリック風というように融合したものでも強いメタファーを発揮することができます。大切なのは世界観を融合することではなく、暗喩として威力を発揮できているかどうかということですね。

ですが、メタファーを学び始めてから最初の方はしっかりと世界観を一つに絞り込んだ方がいいことには間違いありません。メタファーが理解でき初めてから、次第にジャンルを増やしてゆくというのがいいと思います。

シュガー・コート(糖衣)

メタファーの一種として、シュガー・コート(糖衣)という技術があります。シュガー・コートとはまさに薬の上に甘い糖衣をかぶせることで、口当たりを柔らかくするけれども、薬の効き目はそのままというものです。これを用いることで、苦い薬も口当たりよく味わうことができ、薬と同じ効果を発揮するという技術です。

例えば、心に傷を負ったヒロインを描きたかったが、ヒロインが「レイプを受けた」という設定にしたら、あまりにも描写が痛々しくなってしまったということがあるでしょう。また、幼い子向けの物語で「人を殺す」という行為を主人公にさせたら、生々しくなりすぎたということもあるでしょう。

このように、場合によっては読み手にとって物語のメタファーが苦痛になる可能性があります。そのために、シュガー・コートを施します。シュガー・コートとは、日常では人が見たくない負の部分を他の事象に置き換える技術です。これによって、物語中で別に大切でもない「痛い」部分をコーティングして、効果はそのままに言いたいことを多くの人に受け入れられやすい形で表現することができます。

シュガー・コートの具体例

例えば、「ヒロインがレイプを受けた」のではなく、「ヒロインには身体(または顔)に大きな火傷の痕があり、それがコンプレックスになっている」という設定にすることができるでしょう。そうすることで、リアルな「痛い」部分を取り除きながらも、核心となる「心の傷」はしっかりと描けます

他にも、「主人公が悪人を殺す」のではなく、「悪い妖怪を退治する」という設定にもできるでしょう。このようにすることで、「主人公は人殺し」という痛い部分を取り除きながらも、懲悪勧善の内容を作り出すことができるでしょう。

こうすることで「現実の負の部分」を覆い隠し、言いたいことのみを効果的に表現できます。

☕ 雑談コラム:童話・神話はメタファーの塊!

一般に童話や神話といわれるジャンルの作品は、強力なメタファーとシュガー・コートが施されている場合が多いです。

童話については、子供が分かりやすいように事象を単純化して説明する技術が求められます。例えばオオカミという象徴、ウサギやヒツジという象徴などは人間関係を非常に分かりやすくするものです。これはすなわち、メタファーの技術になります。

同様に、神話は人々が長い時間を語り継いできたため、不要な物が一切そぎ落とされて、必要なメタファーのみに絞り込まれていることが多いです。童話や神話はメタファーの密度が高いため、たまに読んでみるとその技術力の高さに驚くかもしれません。子供向けといっても、侮れないものですね。

まとめ

  • 抽象的なテーマを、見た目で分かるように具現化するものが「メタファー」である。
  • 目に見えない関係などを可視化することで、読み手に分かりやすく伝えられる。
  • いくつもの世界観を一つの世界観の物語にまとめて、物語の密度をさらに濃くしよう。
前の記事へ
次の記事へ

クレジット

http://www.flickr.com/photos/aloha75/8395558118/ by Sam Howzit (modified by あやえも研究所)
…is licensed under a Creative Commons license: http://creativecommons.org/licenses/by/2.0/deed.en