シナリオの方程式(一):テーマの構築

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シナリオの方程式(一):テーマの構築2016-11-29T09:04:57+00:00

Project Description

概要

この教材では、物語を半自動で作り出す「シナリオの方程式」という理論を提案しています。

この理論を用いることで、良質な物語を短時間で作り出すことができるでしょう。

  • 短期間で良質な物語を作れるようになる方法とは?
  • 一つのテーマから、アイデアを導き出す方法とは?
  • 破綻なく、盛り上がる物語を作る流れとは?

この教材で学べること

ここでは、小説やシナリオを作られる方を対象とした、実践的なプロットの作り方について説明しています。段階的に、必要なアイデアを与えてゆくだけで、どんどんイメージした物語が組み上がっていく、そのような理論と作り方である「シナリオの方程式」を提案しています。

ここでは、「とにかくシナリオを書かなきゃいけない」とか「明日からでも小説を作れる方法」という実戦的なことを説明しています。これから小説やシナリオを書き始める人にとっても、既にプロとしてストーリーライティングに携わっている人にとっても、この考え方はきっと役に立つでしょう。

この方法を利用することで、ある程度整った形の物語を短期間で構成できるようになる、その一助になればと思います。

物語作りの問題点

普通の場合、物語を作る方法は以下のような流れではないでしょうか。

  • 「こんなお話にしよう」という場面場面を思い浮かべる
  • 盛り上がりの場面を作る
  • 盛り上がりと盛り上がりを繋げてゆく
  • キャラの動機や出来事など、全体のつじつまを合わせて、物語を一本にまとめてゆく

小説やシナリオを書き始めたばかりの人や既にストーリーライティングの現場に携わっている人、どちらにとっても、物語作りの問題点とは「話が盛り上がらない」もしくは「つじつまが合わない」このどちらかではないでしょうか。この問題によって、大幅な遅延が発生したり、プロジェクトがうまく進まなかったりします。

それぞれの問題について、少し詳しく見ていきましょう。

話が盛り上がらないという問題

物語において、「話が盛り上がる」というのはいったいどういうことなのでしょうか。全ての物語において共通するのは、葛藤や心の成長ですよね。ならその葛藤や心の成長、言い換えると「感動」はどのように作り出すことができるのでしょうか

ほとんどのストーリーライティング教材では、「面白いものを書け」と言います。でも、「感動って、いったい何と何と何の要素を満たしたら生まれるの?」という問いに対して、私がこれまで見てきたどの教材もその答えには答えてくれませんでした。ほとんどの教材が、「葛藤が必要だ」「苦難が必要だ」「主人公には問題点が必要だ」など、散発的にしか書かれておらず、それぞれの要素が繋がっていない上に、心のメカニズムにまで踏み込んでいませんでした。そこまで踏み込んだ教材は皆無でした。

なので、感動について独自に研究していきました。そしてついに、心理学の分野からその「感動を生み出す必要十分条件」を見つけることができました

そこでここでは、感動の定義とは何なのか、感動とは何を満たせば生まれるのか、問題点や葛藤などはどういう関係にあるのかを説明し、そしてその作り方までも含めて具体的に説明してゆきます。

つじつま合わせの問題

つじつま合わせについて、家を設計することで例えてみましょう。これは「こんな部屋と、こんな部屋が欲しい」と個別の部屋を適当に羅列していって、その散発的なアイデアをどうにかして敷地内に当てはめたり、部屋と部屋を繋げようとして四苦八苦しているようなものです。犬小屋のように小さい家であればそれでもできるでしょうが、何階建てのビルのように大きな建物にしたいのならば、この設計方法ではとても時間がかかりそうですよね。そして気が付いたら、大切な要素であるトイレの空間がなかったなどの問題を起こして、それを何とかするために全体に歪みが生まれていくものです。

ならばアプローチを変えて、まずは「どんな家にしたいのか」を考えて、そこから敷地面積や廊下、部屋割りを考えていこう……という、より大きな視点(目的)から設計する考え方が重要になります。美術館にしたいという目的ならホールの面積を大きく取るとか、逆に安らぎの家にしたいという目的なら、リビングや寝室を大きくすると。個別の部屋を考えるんじゃなくて、まずは一つの「目的を元に、必要な要素を割り当てていく」という考え方です。これを効果的に用いることによって、つじつま合わせをしなければならない問題を解消することができるようになります。

このように、「個別の部屋をつなぎ合わせていく」という、いわゆるボトムアップアプローチと、「目的を考えた上で、要素を割り当てていく」というトップダウンアプローチの二つの作り方があるわけです。両者はそれぞれ相反する長短がありますが、この両者をバランスよく使っていくことで、自分の思い描いた家(物語)を、破綻なく、無駄なつじつま合わせも必要なく構成してゆこうというアプローチです。建築業界では当たり前の考え方ではないでしょうか。

トップダウンアプローチがあれば、もっと早く書ける!

しかし世の中にあるストーリーライティング教材の九割五分以上は、どうやってボトムアップアプローチを効率的にするのかしか書かれていません。それにトップダウンという発想すらほとんどないのが現状です。散発的なアイデアはあるものの、有効なトップダウンアプローチの設計方法は未だに確立されていませんし、その理論やノウハウも少ないのが現状です。

作家の中にも、とても筆が速い人がいますよね。中には一~二週間で一冊分(原稿用紙二百~三百枚分)の小説やシナリオを書き上げて、その速度をキープして何冊も書き上げてしまうような人もいます。そんなに早く作るにも関わらず、しっかりとした構成でできているのです。

普通のボトムアップで場面と場面をつなぎ合わせようとすると、破綻なしにそのようなスピードと構成力を実現するのはほぼ不可能でしょう。こういう人はほぼ間違いなく、何かしらの原型もしくはテンプレートに当てはめて作っているなどの、トップダウンアプローチをうまく利用していると思われます。

本書で学べる内容

そこでここでは、どのようにしてトップダウンアプローチを作ればよいのか、その論理と構築方法を提案します。

  • どのようにしたら、個別の場面からトップダウンアプローチ(目的やテーマを元に作る方法)に適用することができるのか。
  • トップダウンでの作り方とは、どのような具体的流れになるのか。
  • どのようにしたら、しっかりと盛り上げることができるのか。
  • どのようにしたら、無駄なつじつま合わせをせずに済むのか。

このようなプロット理論と設計方法である、「シナリオの方程式」を提案します。

これによって「なんか盛り上がりに欠ける」「つじつま合わせが大変」「動機や話の流れがうまく繋がらない」「最初は書けるけど、途中から書けなくなる」「アイデアが一本の筋にまとまらない」「物語が綺麗にまとまらない」「一本書き上げるのにとても時間がかかる」といった、ストーリーライティングを行う時に起こる根本問題を解決できる一助になるでしょう。

このノウハウが、貴方のストーリー制作において、即戦力になる技術としてお役立て頂ければ嬉しいです。

テーマから物語を作る流れ概要

それでは、実際に例を示しながら、実践的なプロット作りを説明してゆきましょう。

先にも触れましたが、個別の場面を思い浮かべながら、場面場面を繋げて物語を構成する流れ「ボトムアップアプローチ」と呼ぶことにします。逆に、まずは一つのテーマを決めて、そこを出発点としていろんなパラメーターを与えていくことで様々な物語を生み出してゆく流れ「トップダウンアプローチ」と呼ぶことにします。トップダウンでの作り方が重要なのは、先に説明した通りです。

トップダウンとボトムアップの違いをイメージで示すと、次図のようになります。

トップダウンを含めたプロットの作り方

では、どのようにして今までのボトムアップの考え方から、トップダウンの考え方を含めた方法で物語を作っていくのか、流れの全体像を次図に示します。

 

トップダウンでの作り方の流れ

トップダウンで作るために必要な、これから行う作業の流れを以下で説明します。

まずは個別のアイデアをいろいろと思い浮かべます。これはボトムアップの考え方のままですね。

ある程度アイデアを思い浮かべたら、それらのアイデアをいったん一つのテーマとしてまとめます。そして世界観(象徴)心の状態を一対一で対応させながら、対立関係を作り込んでいきます。世界観(象徴)を作り込むことで効果的な世界観にして、心の状態を作り込むことで盛り上がりを設計します。

それを三幕構成で組み上げて一つの流れにして、さらにストーリーの十四ステップにおいて、具体的な出来事を作り込んでいきます。最後に物語の構成ということで、読み手が面白く感じるような「見せ方」を作ります。

こうすることで、盛り上がりをしっかりと作り込むことができて、かつ矛盾がなく、つじつま合わせも必要のない、良質な物語を短時間で作り出すことができるようになります。

トップダウンを利用することで、破綻を回避できる

このように、個別に思い浮かんだ場面やアイデアをそのまま繋げようとするのではなく、常にトップダウンでの手順に割り当てていきます

家を建てることで例えると、「こんな部屋が欲しい」という希望を最初にリストアップしておきながら、いったんそれら全てを手放します。そして「この敷地のこの形にこういう敷地にこういう家を立てる」と決めて、できるだけ希望に添うように間取りを割り当てていくという流れですね。

もちろん、中にはリストアップした希望を実現できないこともあり、必要に応じていくつかの希望を没にしなければいけない場合もあるでしょう。しかし基本に返って考えてみると、これはいいことなのだと分かるでしょう。というのも、全てを詰め込もうとするから破綻が生まれるのです。無駄な要素を見つけることができ、贅肉をなくしたスマートな要素のみを厳選できると思えば、思いついたいくつかの案を没にするのも抵抗がなくなるのではないでしょうか。

物語とは、問題を解決する過程である

さて、それでは実際に、思いついたイメージからテーマを作っていきたいと思います。ただ、その前に少しだけ準備として、物語の本質について考えてみましょう。

さて、突然ですが質問です。

「物語っていったい何でしょうか?」

いきなり哲学的な問いかけをしてしまいましたが、トップダウンで作るということは、こういう根本の定義が重要になるんですよ。

詳しい解説は抜きにして、ここでは物語を以下のように定義します。

「物語とは、ある一つまたは複数の問題を解決する一連の過程である」

この解決すべき「問題」をひとくくりにしたもの「テーマ」と呼ぶことにしましょう。つまりここからは、物語というのは「何か主人公とかが問題を抱えていて、それを解決してゆく過程のことなんだ」と考えるようにしてみましょう。すると、トップダウンでの作り方がすんなりと分かるようになるでしょう。

頭にあるイメージからテーマを抽出する

それでは実際に、頭にあるイメージからテーマを抽出していきましょう。これがトップダウンで物語を作り出す、最初のステップになります。

テーマを作るとはいえ、「テーマは友情だ!」とか言っても次に繋がらないので、うまく繋がるテーマの作り方が重要になります。

先の「物語とは、問題を解決する過程である」ということと、「テーマとは問題である」を念頭に置いて、以下のステップで考えてみましょう。

テーマの書き方

まずは、頭の中にあるイメージを書き出してみましょう。

その物語において、話の中心となるのはいったいどのキャラクターでしょうか。いわば、その物語を経ることで、最も変化してゆくキャラクターのことですね。そのキャラクターを「ヒーロー」と呼ぶことにしましょう。

そしてその全体像を眺めた場合、いったいどんな物語になるのか、以下の空欄を埋めてみましょう。

テーマの中核:
(1-a)初期状態の状態だったヒーローが、(1-b)スペシャルワールドを通して、(1-c)最終状態になる物語」

「初期状態」には、ヒーローが持つ「問題」を書く

「(1-a)初期状態」は、貴方が思い浮かべている物語について、ヒーローが物語の最初ではどんな状態なのかを書きます。目に見える形でも、目に見えない形でも結構です。「毎日がつまらないと思っている」というのもいいでしょう。「普通の学生」でもいいでしょう。「はぐれもののヤクザ」「冴えない騎士見習い」「恋を夢見る少女」「エリート会社員」「いじめられっ子」「落ちこぼれ弁護士」など、なんでも大丈夫です。

さて注意事項ですが、先ほど触れた「テーマとは問題である」ということで、ここでは問題点が含まれるように記述します。例えば「サラリーマン」では何が問題なのかよく分かりませんよね。でも、「普通のサラリーマン」なら、問題点は「普通なのが問題」と分かるでしょう。それは「個性がない」のかもしれませんし、「目立たない」「特に力がない」「おもしろみがない」といったものになるかもしれません。逆に「エリート検事」なら、その問題点のイメージは「冷徹」「競争に明け暮れて、安らぎがない」「お金が全て」「ナンバーワン検事の地位に固執している」といったものかもしれません。

もし貴方が考えている「主人公」にこれといった欠点が元々ない場合、おそらくヒーローに最も近い主役級人物になるでしょう。その中で最も欠点もしくはコンプレックスを持っている主役をここでの「ヒーロー」としておきましょう。

場合によっては、思い描いている初期状態では「みんなが幸せな状態」である場合があります。その場合、おそらくその直後に何かしらの悲劇的な出来事が起こる流れになるでしょう。こういう時は、悲劇的な出来事が過ぎて大切なものを失った後の状態を初期状態とします

例えば刑事物で言うと、最初は家族と幸せな時間を過ごしていたとしましょう。ですが、直後に警察から逃げてきた強盗に子どもが捕まり、犠牲になると。強盗は逃げ続けて、父親は強盗を見つけ出して復讐することを誓う……というお話があった場合、「強盗によって子どもを失った」という問題を抱えている初期状態にします。

「スペシャルワールド」には、物語における特殊な世界を書く

「(1-b)スペシャルワールド」では、世界観を入れます。ヒーローが経験する舞台は、どんな世界、もしくは世界観でしょうか。ファンタジーなら「魔法学校での卒業試験」だったり、探偵物なら「ある殺人事件の調査と解決」かもしれません。スポーツものなら「半年限りの野球部での活動」だったり、音楽ものなら「ギターとバンド仲間との音楽活動」、恋物語なら「誰々との出会いと付き合い」だったり、「親の再婚による突然の同居生活」だったりするかもしれません。

なお、例えば「学園生活」とか「会社生活」など、この段階であまりにも特徴のない世界観にしてしまうと、とても平凡で、どこかで見たような典型的な、ありふれた面白みのない物語になってしまいます。世界観を細かくイメージして、何が特徴的なのかを把握しておくと、よりオリジナリティ溢れる作品になります。例えば「期間はいつなのか」「場所や舞台はどこなのか」「どんな特別なイベントがあるのか」などを明確にしておき、それを入れていくといいでしょう。

「最終状態」には、問題を解決した状態を書く

「(1-c)最終状態」では、最後にどうなるのかを書きます。これは、「(1-a)初期状態」が解決している状態を書きます。例えば(1-a)が「毎日がつまらないと思っている」のであれば、「毎日がつまらないということが解決している」というもので大丈夫です。スポーツもので「(1-a)初期状態」が「サッカー嫌い」なら「サッカー嫌いが直っている」ということもあるでしょう。「(1-a)初期状態」が「はぐれもの」なら、「はぐれものであることが解決している」ということもあるでしょう。

ここで、「つまらないことが解決している」という内容を「充実している」といった風に、わざわざ言い換える必要はありません。むしろ現段階では言い換えないようにしておきましょう。理由は後ほど対立関係の段階で出てきますので、今はそういうものだと思っておいて下さい。

物語は「最初」、「真ん中」、「最後」の三つの状態で考えると分かりやすい

考え方としては、それぞれ物語中において「最初の状態」、「真ん中の辺りだけ関係する状態」、「最後の状態」と把握しておくといいでしょう。できるだけ簡潔に言い表せるようにまとめます。

この段階で厳密にしておく必要はありません。この先になって「何か違うな」と思ったら、またこの段階に戻って修正すれば大丈夫です。ですが、しっかりと明確にしておくと、以降ではとてもスムーズに進むでしょう。

✎ 作成例:テーマの中核

さて、それではこのようなコラムという形で、実際に頭の中にあるイメージからトップダウンで物語を作っていきます。作り方の具体例を、一緒に見ていきましょう。

どんな物語にするか、アイデアを出してみる

それでは最初にテーマから作り込みます。

まず最初に、どんな物語を作りたいのか、とりあえずリストアップしてみます。どんな場面があるのか、盛り上がりのシチュエーションや設定など、いろいろと考えてみましょう。

例えば今回は、こんなイメージをリストアップしてみました。

「学園もの」「主人公は明るい女の子」「恋愛物」「普通の女の子が、学園一かっこいい生徒会長に片思いしていて、最後には結ばれるお話」「ちょっと少女漫画チックな、淡いソフトな感じ」「主人公は自分からアタックはできない、消極的なタイプ」「文化祭で、誰が生徒会長にふさわしい女生徒かを決める戦い(ミス・コンテストみたいなもの)をやる」「戦いの優勝商品は、生徒会長への『告白権』」「ラストで主人公が、文化祭の舞台の上で告白する」など。

このようなイメージの、「女の子向け学園恋愛」系なお話にしようかと思います。恋愛という要素は多くの物語で入るものでもありますので、参考になる人も多いと思いますし。

テーマを作ってみる

それではテーマについて考えてみると、ぱっと思い浮かんだものは次のようにできるでしょう。

  • (1-a)初期状態:「普通の女の子」
  • (1-b)スペシャルワールド:「文化祭で、生徒会長への『告白権』をかけた戦い」
  • (1-c)最終状態:「普通であることが解決している」

とりあえず書いてみましたが、これでは生徒会長との恋が成就されることが書かれていませんね。最初と最後では、結ばれているかどうかという大きな違いがありそうです。

なので、そこでさらに考えて、書き換えてみます。

  • (1-a)初期状態:「片思いをしている普通の女子生徒」
  • (1-c)最終状態:「片思いをしている普通の状態であることが解決している」

ふむ、なかなか良さそうですね。ではこれで行くとしましょう。

これで「少女向け学園恋愛」という内容も盛り込まれていて、よさそうです。

とりあえずこれでテーマは仮決定として、進めていくとしましょう。

「世界観(象徴:目に見えるもの)」と「心の状態(目に見えないもの)」

さて、それでは先ほど作成したテーマの中核を元に、さらにパラメーターを加えて話を展開していきましょう。

ここでは、先ほど作った「(1-a)初期状態」「(1-c)最終状態」の二つの内容を、「世界観(象徴:目に見えるもの)」「心の状態(目に見えないもの)」の両方に分けてみましょう。

その作り出す流れを次図に示します。次図の太い線で囲った部分(赤い文字で記述した部分)が、今回新たに作り出す必要がある部分になります。SはSymbol(象徴)の頭文字で、MはMind(心)の頭文字です。

「世界観(象徴:目に見えるもの)」は、目に見えるもの

「世界観(象徴:目に見えるもの)」とは、実際の形として認識できるものになります。

アイテムや道具だけでなく、職業や地位、肩書きやあだ名、名誉などがあります。「時間」なども一見して目に見えないもののようですが、これも時計として目に見えるため、目に見えるものとして取り扱います。

この象徴のことを、メタファー(暗喩)とも言います。

「心の状態(目に見えないもの)」は、目に見えないもの

「心の状態(目に見えないもの)」とは、心の状態ですね。

「自信がない」「勇気がない」「人付き合いを知らない」「冷血な」「優しくしすぎる」「お金を崇拝している」「はた迷惑な」「新しいことが大好きな」……などなど、いろいろとあるでしょう。主人公が持つ心の面での欠点を記述しましょう。

目に見えるものの例 目に見えないものの例
医者、賞状、お金、プレゼント、ネックレス、名前、通称、剣、本、宝物、国、社会、概念、理論、プライベート、時間、空間……など 大人しい、勇敢な、落ち着いた、傲慢な、孤独な、有名な……など

「世界観」と「心の状態」を作り込む

ここでは、これらの「世界観(象徴:目に見えるもの)」と「心の状態(目に見えないもの)」とが一対一で対応するように、当てはめます

そこで、先ほどテーマの中核で作った「(1-a)初期状態」を見てみましょう。

もし「(1-a)初期状態」で作ったものが「世界観(象徴:目に見えるもの)」である場合、「(1-a:S)初期状態」にそのまま入れます。そして心の状態側である「(1-a:M)初期状態」には、イメージに近い心の状態が何かを考えて、入れてみましょう。

逆に、もし「(1-a)初期状態」で作ったものが心の状態(目に見えないもの)である場合、「(1-a:M)初期状態」にそのまま入れます。そして象徴である「(1-a:S)初期状態」には、心の状態を具体化するものを記述します。心の状態を具現化して、何か目に見えるものにして入れてみましょう。

「世界観」と「心の状態」の具体例

例えば「(1-a)初期状態」に記入したのが「普通のサラリーマン」だった場合、これは目に見えるものですよね。なので、「(1-a:S)初期状態」にはそのまま「普通のサラリーマン」と入れて、「(1-a:M)初期状態」には、何かこれに合う心の状態(心の問題点)を記入します。例えば「個性がない」「得意なことがない」などですね。

もし逆に、「(1-a)初期状態」が「個性がない」のように心の状態を入れていた場合、「(1-a:M)初期状態」にはそのまま同じものを記入します。一方「(1-a:S)初期状態」には、それに当てはまるものを具現化して記入します。「普通のサラリーマン」などですね。

先に「物語とは、問題を解決する過程である」ということと、「テーマとは問題である」と説明しましたが、ここでは「心の状態(目に見えないもの)」において、そのキャラが持つ問題(もしくは欠点、劣等感)をはっきりさせておきます

もし象徴と心の状態のどちらに当てはめたらいいのか分からない場合、その内容について、さらに具体的にした象徴と、さらに心の側に立った心の状態を考えてみると、より分かりやすくなるでしょう。

分かりやすい方から作ればいい

人には目に見えるものを把握する方が分かりやすい人、逆に目に見えないものの方を把握する方が分かりやすい人の二種類の人がいるでしょうから、まずは得意な方を埋めて、その後に反対側のものを考えて埋めてゆく流れでよいでしょう

この辺りから、だんだんと当初はイメージしていなかった要素が出てくるかもしれません。その場合は、新たに設定や世界観、内容などをイメージして入れていきましょう。もしはっきりイメージできなかったとしても、とりあえず適当に入れておくのもいいでしょう。もし後で思いついたら、また戻ってきて修正すればいいだけのことですから。ここも、できるだけ簡潔にまとめます。

世界観と心の状態については、次章で作り方を詳しく説明しますので、ここでは適当に入れて進めても構いません。

なお、以降、ずっとこの「世界観(象徴:目に見えるもの)」と「心の状態(目に見えないもの)」を対応させていきます。なので、早めにこの一対一対応に慣れておきましょう。

✎ 作成例:「世界観(目に見えるもの)」と「心の状態(目に見えないもの)」

さて、それでは引き続き、先ほど考えたテーマを広げていきましょう。

作成したテーマは以下のようなものでした。

  • (1-a)初期状態:「片思いをしている普通の女子生徒」
  • (1-b)スペシャルワールド:「文化祭で、生徒会長への『告白権』をかけた戦い」
  • (1-c)最終状態:「片思いをしている普通の状態であることが解決している」

これを、「世界観(象徴:目に見えるもの)」と「心の状態(目に見えないもの)」に分けていきましょう。

「世界観(象徴:目に見えるもの)」と「心の状態(目に見えないもの)」を作る

まずは初期状態の「片思いをしている」「普通の女子生徒」について、それぞれ考えてみましょう。

最初に、「普通の女子生徒」について、これは明らかに人として具現化されているので、象徴ですよね。なので、これに対応する心の状態を考えてみましょう。普通であることは、主人公にとってどんな欠点、劣等感を生み出しているでしょう。

私のイメージでは「自慢できる点がない」「魅力がない」という感じでしょうか。一つにまとめて、「自分に自信がない」という状態にでもしておきましょう。

次に、「片思いをしている」について考えてみましょう。さて、これは象徴でしょうか、心の状態でしょうか。なかなか迷うところです。こういう場合は、さらに象徴か心の状態かを深く考えてみましょう。

とりあえず「片思いをしている」について、さらに心の状態を考えてみましょう。この場合、「片思いをしている」のさらに根本となる欠点をイメージします。ふむ、私のイメージでは「自分は普通だから、生徒会長みたいな人が振り向いてくれるはずがない」から告白できない、「消極的」なイメージですね。

では逆に「片思いをしている」について、さらに象徴を考えてみましょう。じゃあ、これを目に見えるものにしたらどうなるか。ファンクラブの一会員ということもあるでしょう。「生徒手帳に好きな人の写真をこっそり入れている」みたいなものかもしれません。

そこでふと、部活と組み合わせて「片思いをしている人専用の部活」みたいなものがあってもいいんじゃないかと発想したりします。じゃあ、「片思いクラブ」という架空のクラブを作ってみるとしましょうか。主人公はそれに所属していて、所属の証に片思いバッジとか片思いネックレスみたいなものを持っていると。それを身につけていると、いつか恋が成就するとかいうおまじない付きだと、少女漫画っぽくていいかもしれません。

すると、象徴は「『片思いクラブ』所属」で、心の状態は「自信がない」「消極的」辺りにできます。心の状態は一つにまとめて、「消極的」にしましょう。

できたもの

まとめると、次のようになります。

「テーマの世界観(象徴:目に見えるもの)」

  • (1-a:S)初期状態:「『片思いクラブ』所属」
  • (1-c:S)最終状態:「『片思いクラブ』所属であることが解決している」

「テーマの心の状態(目に見えないもの)」

  • (1-a:M)初期状態:「消極的」
  • (1-c:M)最終状態:「消極的であることが解決している」

目に見えるものと目に見えないものがはっきりと分かれて、なかなかよさそうです。これで進めていくことにしましょう。図で示すと、次のようになります。

図中で、太線・赤文字部分が今回追加した内容になります。

なお、今回は象徴を結構作り込みましたが、別に「普通の女の子」でも大丈夫でしょう。ただ、いくらか具体的な特徴を作り込んでおいた方が、後々楽になります。というのも、あまりにも一般的なものだと、無個性な作品になってしまいますので。

象徴には他の物語と違う、特別な要素を盛り込んでいけると、後々よくなってくるでしょう。

まあ、この辺りの世界観や心の状態の作り方は、次章で詳しく説明しますので、その説明を見た後にまた作り直せばいいでしょう。

まとめ

  • トップダウンの作り方をマスターすることが大切。
  • 物語とは「主人公が問題を抱えていて、それを解決してゆく過程のこと」だと考えると、構成が分かりやすくなる。
  • テーマには、ヒーローが持つ「問題」を入れるとよい。
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