シナリオの方程式(四):ストーリー十四のステップ(第一幕)

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シナリオの方程式(四):ストーリー十四のステップ(第一幕)2016-11-29T09:04:56+00:00

Project Description

概要

このページでは、「シナリオの方程式」における、「ストーリー十四のステップ」について説明しています。

その中で、まずは第一幕について触れています。

  • 物語を詳細に作る「ストーリー十四のステップ」とは?
  • 第一幕のスムーズな作り方とは?
  • 読み手に「先を読みたい」と思わせる第一幕の構成とは?

ストーリー十四ステップへの落とし込み

これまでで、三幕構成ごとの対立関係を作りました。それではこの段階で、それぞれの対立関係を一連の物語形式にしていきましょう。ここからぐっと物語の具体像が見えてきますので、人によってはひょっとすると一番面白い過程になるかもしれません。

構成ツールとは、「物語の普遍的構成」の型

この章では、三幕構成に拡張された対立関係を、実際に繋げて一つの流れにしてゆきます。この際に使うのが、物語の構成ツールです。

物語の構成ツールのモデルは、世の中にいくつもあります。以下に例を挙げてみましょう。

  • 起承転結モデル
  • 序破急モデル
  • 三幕構成モデル
  • ジョセフ・キャンベルの神話モデル
  • クリストファー・ボグラーの神話の法則(ライターズ・ジャーニー)モデル
  • ……etc.

構成ツールとは、いわば物語を構成しやすくするための「型」だと思えばいいでしょう。起承転結モデルも序破急モデルも、ジョセフ・キャンベルのモデルも、一つの「普遍的物語構成」をそれぞれ別の角度から見たというものになります。つまり、どれも本質的には同じものだということですね。

ストーリー十四のステップ

そのため、どのモデルを選んでも使えますので、自分が使いやすいものを選ぶのが一番でしょう。ただ、ここでは「物語とは、問題を解決する過程である」という方向性に従って、新たに「ストーリー十四のステップ」を提案したいと思います。

この「ストーリー十四のステップ」は、基本は三幕構成とクリストファー・ボグラーの神話の法則(ライターズ・ジャーニー)モデルを基礎として、理解しやすいように多少再構成し、新たな概念を追加しています。なので、「ストーリー十四のステップ」の内容はクリストファー・ボグラー著「夢を語る技術〈5〉神話の法則―ライターズ・ジャーニー」(🔗 )(愛育社)と重なる部分がほとんどですので、より詳しく知りたい場合はそちらを参照して下さい。

「ストーリー十四のステップ」の流れ

それでは実際に、ストーリー十四のステップの内容を見ていきましょう。

問題が発生してから解決するまでにはどんな一連の流れがあるのでしょうか。その流れを次図に示します。

流れの概要は、以下のようになります。

  • 1-1.喪失と抑圧:ここで、第二幕対立関係で作った「喪失」と「抑圧」を配置します。
  • 1-2.問題を抱えた日常:ここから第一幕対立関係が始まります。ヒーローは問題を抱えながらも、毎日を生きている状態です。
  • 1-3.問題の発生:スペシャルワールドへ誘う使い(ヘラルド)が訪れて、ヒーローの長所が無効化され、犠牲だけが残ります。
  • 1-4.変化への抵抗:ヒーローは現状にしがみつこうとして、変化に抵抗します。しかし事態は悪化していくでしょう。
  • 1-5.問題解決方法の説明:犠牲に対して苦しんでいるヒーローは、その対処法を知ります。問題解決の糸口が見えますが、それには自分を変えなければなりません。
  • 1-6.問題対応の受け入れ:トリガーによって、主人公は問題対応をすることを受け入れます。同時にスペシャルワールドに入ります。
  • 2-1.深化:問題を解決するため(犠牲を克服するため)に、小さな訓練を積み重ねていきます。仲間を得ることもあるでしょうし、打ち勝つべき敵(シャドウ)もはっきりとしてゆくでしょう。
  • 2-2.根本問題(テーマ)への接近:問題を解決するには、シャドウとの対決をしなければなりません。そのシャドウとの対決を前にして、根本問題(テーマ)に接近します。
  • 2-3.根本問題(テーマ)との対峙:シャドウとの対決になります。シャドウは強力で、ヒーローが今まで培ってきた訓練のままでは通用せず、打ちのめされます。トリガーによる過去の喪失を再現するかのような事態に、ヒーローは自分自身の抑圧と対峙せざるを得なくなります。
  • 2-4.抑圧の受け入れ・解放:自分自身の抑圧を知ったヒーローは、昇華を起こして長所と犠牲を克服します。そして解決方法を手に入れます。
  • 2-5.根本問題(テーマ)の解決:テーマである根本問題を解決し、新たな思想や宝を得ます。
  • 3-1.日常への帰路:スペシャルワールドから日常への帰路につきます。旅の終焉(物語の終焉)へのタイムリミットが示されます。
  • 3-2.旅との別れ:スペシャルワールドとの別れです。トリガーを契機に、解決方法を手にして全てに終止符を打ちます。
  • 3-3.問題を解決した日常:日常の世界に戻ります。「1-2.問題を抱えた日常」とほとんど同じですが、問題を解決している(宝を得ている)点だけ異なります。

第一幕、第二幕、第三幕でそれぞれ6-5-3のステップがあると覚えると、数値でどの辺りかを直感的に把握しやすくなるでしょう。

これらのステップになるように、対立関係で設計した内容を一連の流れにして、そして一つずつ出来事を肉付けしていきます。

プロットの記述レベル

ここからは、それぞれのステップにおいて、物語中で起こる出来事などを列挙していきます。記述例を以下に示します。

テーマ:人を信じない主人公が、悪霊との戦いを通して、人を信じない問題を解決している状態になる物語。

第一幕:スペシャルワールド(悪霊との戦い)に入るまで
(1-1.喪失と抑圧)

  • 主人公は陰陽師の血を受け継いでいる。
  • 霊感が強くて気味悪がられ、親ですら近寄らなかったという抑圧。そこから主人公の「人を信じない性格」が生まれる。

(1-2.問題を抱えた日常)

  • 主人公は霊感が強くて困っている状態。友達がいる人を見て、友達なんていなくてもいいと強がる。
  • 主人公は人を信じないことで、心安らかにいられる。だけど人を信じないことで、人と繋がれないという宿命も負っている。

(1-3.問題の発生)

  • 「黄泉の使者」がやってきて、主人公に「悪霊が現世にやってくる鬼門を封じて欲しい」と言う。
  • 直後、悪霊たちが町中に現れて暴れ始める。しかし誰にも悪霊は見えず、主人公にしか見えない。

(1-4.変化への抵抗)

  • 主人公、「こんなことありえない」と信じられないでいる。
  • 主人公が襲われて、傷つく。主人公は無力で、悪霊に抵抗する術を持たない。

(1-5.問題解決方法の説明)

  • 黄泉の使者は、この剣を手にすれば倒せると言う。だけど剣を手にしたら、戦いの毎日になるとも伝える。

(以下略)

このように、世界観(象徴:目に見えるもの)と心の状態(目に見えないもの)を統合して、物語の流れとして記述します。書き方はもっと簡素でも、もっと詳しく書いてもどちらでも構いません。理解できるのに適度な分量で記述します。

プロットを作る場合の注意点

以下で、プロットを作る場合の注意点を説明しておきましょう。

設計上の専門用語などは省いて、読みやすくなるように記す。

プロット担当者(物語設計者)と執筆担当者が異なる場合、執筆担当者にはここから先の資料を見せるようになります。そのため、もし両者が異なる場合は、相手に分かりやすいように設計上の専門用語などは省いて、読みやすくなるように記すとよいでしょう。

対立関係を図示する必要はない。

対立関係の図式は、矛盾を作らないようにするためのものです。つまり、設計者だけが使うものなので、ここで対立関係を図示したり事細かく記述する必要はありません。あっても構いませんが、図式を理解してもらうのに時間がかかり、逆効果になる場合もあります。どういう長所と欠点があるかが分かる程度を伝えるだけで大丈夫でしょう。

まずは簡単な出来事のみを記述しておき、後で肉付けする。

それぞれのステップを作り込む段階では、まずは簡単な出来事のみを記述しておいて、その後により詳しい設定や出来事を記述するというように、いくつかの段階に分けて書いてゆくとよいでしょう。また、どんどん具体的な設定を追加していくことで、厚さを増してゆきます。

物語が長ければ長いほど、詳細に記す。

物語が長ければ長いほど、詳細に記しておいた方が、執筆時に楽になるでしょう。

それでは実際に、一つずつステップを見ていくことにしましょう。

ステップ一:1-1.喪失と抑圧

最初のステップは、「1-1.喪失と抑圧」です。第二幕の対立関係(下図)で作った喪失に関連する情報をここに当てはめます。

この対立関係の図式を、プロットでは時系列に並べた文章で記述します。

ヒーローもシャドウも、最初の最初は対立関係のない完全な状態、いわば幸せな状態にいます。しかし何かしらの事件や出来事があって、大切なものを喪失してしまいます。両者共にそれを癒すことができず、その傷を回避しようとすることで、長所と犠牲という偏った特性を持つようになります。

これらについて、喪失として何が起こったのか、そのためにどういう傷を負って、癒されなかったのかを書いておきます。

✎ 作成例:喪失と抑圧

ここでも、「片思いクラブ」ネタで一つずつステップを踏んで、具体例を見ていきましょう。

「1-1.喪失と抑圧」の段階では、喪失を記述していきます。第二幕でどのような対立関係を作っていたのかを次に示しておきます。

この情報を元に、さらに具体的に設定を追加しながら記述していきます。

(1-1.喪失と抑圧)

  • 主人公の女の子は、幼い頃に両思いの男の子(昔の生徒会長。だけど名前は知らない、もしくは覚えてない)と出会い、転校して別れた。
  • 当時の生徒会長は病を患っていて、突然倒れて手術と療養のために引っ越した。だけど戻ってこずに、主人公は男の子が死んだと勘違いした。
  • その経験から、主人公は恋した人と別れるのはとても辛くなり、好きな異性には積極的に近づけなくなる(好きな異性には突然消極的になる)。恋愛感情のない男性や、同性は大丈夫。
  • それ以来、主人公は男の子のことは深い傷になり、意識の奥に閉じ込めている(忘れている)。だから消極的なのを治そうと人から言われても、治せない。
  • 本編でライバルになる副会長の女子は、昔の生徒会長を好きだったけど、振り向いてくれずに苦しんだ。そして結局、生徒会長は転校してしまった。
  • そこから副会長は、振り向いてもらえる存在になれるように、積極的に自分を磨くことに力を尽くすようになった。

どんどん具体的なアイデアを入れていってます。この段階では設定の情報が多いので、他と比べても結構文章量が多くなるかもしれません。

ステップ二:1-2.問題を抱えた日常

第二のステップは、「1-2.問題を抱えた日常」になります。ここではヒーローがどのような毎日を送っているのか、そしてどのような問題を抱えているのかを示します

ここでは、第一幕の対立関係(下図)のヒーローの部分を、日常に絡めながら分かりやすく説明します。

特にヒーローの長所と犠牲が分かりやすいように、行動や言動といった形で象徴的に表現するといいでしょう。「メインテーマのシャドウ」については、現段階では出しても出さなくても、どちらでも大丈夫です。「第一幕のシャドウ(ヘラルド)」はまだ登場させません。

物語の世界観(舞台、世界、季節など)から、ヒーローの毎日の生活パターンや、主要登場人物の説明、ヒーローと各キャラの関係などを説明します

この段階では読み手の感情移入について考える必要はありません。例えば「西暦二二五八年……」といった非日常的な状況であろうとも、それが日常だと演出しておけば、読み手は「それが日常だ」と受け入れることになります。

これにより、読み手が世界観や日常を理解できるようになり、無意識のうちに次に起こる冒険への誘い(問題の発生)に準備できるようになります。

✎ 作成例:問題を抱えた日常

「1-2.問題を抱えた日常」の段階では、世界観説明やヒーローの日常を記していきます。イメージに合うように、どんどん肉付けしていきましょう。

必要に応じて、キャラクターもどんどん付け加えていきます。この段階では名前とか決める必要はありませんが、決めておいても構いません。ここでは名前はつけずに、「主人公」「親友」「生徒会長」などでキャラを特定することにします。

(ステップ二:問題を抱えた日常)

  • 舞台説明。現代日本の男女共学の私立高等学園。学園は都会の中だけど緑溢れた、周囲と隔絶された場所。男女比は女生徒の方が多い。少女漫画チックなブレザーの制服や世界観。季節は秋、体育祭が終わった後。
  • 主人公説明。学園二年生の普通の女の子。登校から下校、就寝まで一通り。
  • その過程で、主人公と仲のいい親友も紹介。
  • 生徒会長も紹介。二年生で、学園一の美男子で、成績優秀、スポーツもよし、性格も静かで優しくて全女子の憧れだと説明。彼女なし。主人公も憧れていることを説明。
  • ついでに副会長も説明。二年生。金持ちな良家の出で才色兼備。いつも一緒にいるから、彼女なんじゃないかという噂もあること。そしてそれに値しそうなほど才覚のある女性。
  • 「片思いクラブ」のネックレスを紹介。これに相手の名前(恥ずかしいならイニシャル)を彫って持っていると片思いが成就するというおまじない。
  • 同時に、親友とのやりとりで、主人公は生徒会長にだけは近づけないという通称「生徒会長病」の説明と実演。周囲には「生徒会長がすごく苦手」と映ってるけど、本当は憧れの人にはすごく消極的になってしまうという欠点説明。

こんなもんでしょうか。これも設定説明なので、簡潔に記したとしても、長くなりがちですね。

ステップ三:1-3.問題の発生

初期状態では、ヒーローは長所があることで、犠牲があったとしても、それを受け入れることができていました。しかし「1-3.問題の発生」において今までは発生しなかった事件が起こることで問題が表面化すると、ヒーローの長所は意味がなくなってしまいます。この事件によって、ヒーローは今までの長所だった安全が脅かされ、長所の意味がなくなり、犠牲だけが残ってしまいます。

例えば「妖怪が町を襲い始めて、黄泉の使いが主人公に助けを求めに来る」、「気になる人が一つ屋根の下で暮らし始める」などの事件ですね。これによって、例えば「弱気でいることで、人を傷つけることなく生きていられる」といった長所が意味をなさなくなってしまいます。そして残ったのは「弱気でいることで、人を助けられない」というような犠牲だけになります。

ヘラルドの登場と、変化への抵抗

この段階でヘラルド(第一幕のシャドウ)が訪れます。問題はヘラルドの訪れにより表面化します。そしてヘラルドはヒーローをスペシャルワールドに誘います。ヒーローはここで始めてスペシャルワールドについて知らされます

ここの「1-3.問題の発生」は、次のステップである「1-4.変化への抵抗」と同時に起こったり、両者の間を何度も繰り返すなどという形もあります。なので、次のステップである「1-4.変化への抵抗」とワンセットで考えるとよいでしょう。

ここでは常識的なことでは考えられないことが起こるかもしれません。宇宙人が攻めてきたり、悪霊が突如現れたりとするでしょう。常識的には突拍子もないことが起こったとしても、次の「1-4.変化への抵抗」において適切な処理をしておけば、読み手はすんなりと受け入れて物語に入り込むことができるようになります。詳しくは次の「1-4.変化への抵抗」の部分で説明します。

✎ 作成例:問題の発生

「1-3.問題の発生」段階で、スペシャルワールドへの誘いとなる事件を起こします。

「片思いクラブ」のヘラルドは「通知書と親友」で、スペシャルワールドは、「文化祭のミス・コンテスト」なので、それについての説明をします。

親友が、ヒーローである主人公にスペシャルワールドへと誘います。

(ステップ三:1-3.問題の発生)

  • 親友から、文化祭で今年は通常のミスコンを取りやめて「生徒会長にふさわしいミス・コンテスト」が開かれることを知る。
  • 優勝賞品は、「生徒会長への『告白権』」で、舞台上で告白できるというもの。
  • 生徒会長の性格の説明。女性には優しいので、みんなの前で断るなんて絶対にできそうにないこと。だから、最低でも優勝者は形式上の彼女にはなれるというもくろみだと分かる。すると、他の人よりも恋を少しでも有利に進められる。参加希望者も既に多数いる。副会長がごり押しで通したことも説明。
  • 憧れの生徒会長に「彼女ができるかも」、という事態にショックを受ける主人公。

通知をしてくれる人は、親友になります。親友がシャドウになるわけですね。

この事件の勃発によって、「片思いでも、会長には彼女がいないから大丈夫」という安心感が儚くも消えてしまいます。そして主人公に残ったのは、「生徒会長病」という消極性だけになってしまいます。

ステップ四:1-4.変化への抵抗

「1-3.問題の発生」で、主人公の長所が消えました。その直後かほぼ同時に「1-4.変化への抵抗」が起こります。

長所が消えて犠牲だけが残るという問題が起こり、ヒーローはその問題に対処せざるを得なくなります。しかし基本的に、多くのヒーローは変化することを嫌います。これは人間の性質でもありますが、多くの場合、ヒーローは積極的にスペシャルワールドに入ろうとせず、無益だと分かっていても、今までの状態にしがみつこうとします

主人公は今までの現状にしがみつき、変化を嫌います。主人公が行動を嫌うタイプであれば、それは強がって何もしないという形かもしれませんし、現状を信じないという現実逃避という形かもしれません。逆に主人公が行動派ならすぐに行動しようとしますが、行動したのはいいものの実は巧妙な仕掛けがあるのに気が付いて、スペシャルワールドに入るのをためらう形になるでしょう。

一方で、第一幕のシャドウであるヘラルドは、ヒーローをあの手この手でスペシャルワールドに誘い込もうとします。ですが、基本的にヒーローは抵抗をして受け入れません

この「1-4.変化への抵抗」では、そのような抵抗を示します。

物語を成功させる鍵は、「問題の発生」と「変化への抵抗」の二つ

なお、読み手を物語の世界(スペシャルワールド)に引き込むために、この「1-3.問題の発生」と「1-4.変化への抵抗」の二つのステップがとても重要になります。

読み手は主人公と感情が重なれば、感情移入ができるようになります。「宇宙人が攻めてくる」などの常識的には起こらない突拍子もないことが「1-3.問題の発生」で起こるかもしれません。しかし主人公が同時に「こんなことありえない」と呆然としてつぶやけば、その時点で読み手はこの物語や主人公に感情移入できるようになります。逆に何も抵抗もなく「宇宙人を撃退せねば!」と言ってしまった場合、その時点で読み手は物語に感情移入できなくなって、ずっと最後まで感情移入できなくなってしまい物語全体が崩壊してしまいます。

ここでは多くの場合で「1-2.問題を抱えた日常」での常識を覆されることになるので、この点に注意しましょう。

✎ 作成例:変化への抵抗

「1-3.問題の発生」段階で、片思いでも大丈夫という安らぎが消え去りました。しかし、主人公は変化を嫌い、現状にしがみつきます。

(ステップ四:1-4.変化への抵抗)

  • 親友がコンテストへの参加申込書を主人公に渡すが、主人公は「そんなのできない」と拒否して申込書を受け取らない。
  • 「こんなことってないよ」と現実逃避をして、その場から逃げ出す。

とっても簡単ですね。どんどん進めていきましょう~。

ステップ五:1-5.問題解決方法の説明

「1-4.変化への抵抗」で、主人公はスペシャルワールドに入ることを拒否しました。しかし、問題を解決しなければ、ヒーローにとって最悪の事態を引き起こしてしまいます。

ここでは、読み手に今がどんな状況なのか、そしてこの物語が何を解決しようとしているのかを示します。そうしなければ、物語の目的が分からずに、読み手が不安になり、物語が散漫なものになってしまいます。

ここでは客観的に事態を捉えることができる人や存在から、今回起こった問題についての説明と、その解決方法が提示されます。その解決方法を説明する存在をメンターと呼びます。

例えば姫と村の宝物が竜にさらわれたのであれば、メンターである長老から説明を受けるでしょう。「あの竜はどこどこ山に住んでいて、凶暴な存在で、これまでも何度もこの村にやってきては荒らしていった。しかし竜殺しの伝説がある。村一番の若者であるお主に、竜殺しの仲間と方法を見つけて、姫と宝物を救い出して欲しい。そのために、この伝説の剣を授けよう」と、こんな風になるかもしれません。

ヒーローに変化を望むメンターの場合、ヒーローにスペシャルワールドに入るため、もしくはスペシャルワールドをうまく乗り越えるための特別な力を授けるかもしれません。

しかし、ここの「1-5.問題解決方法の説明」の段階ではヒーローはスペシャルワールドに入ることを拒否している段階です。ヒーローは説得されつつ、それが唯一の解決方法しかないと分かりつつも、それでもスペシャルワールドに入ることを受け入れられないでいます。

サスペンスの場合、ここでトリックを仕掛けるとよい

なお、サスペンス系や謎解きを含む物語を作りたい場合、この「1-5.問題解決方法の説明」というステップにトリックを仕掛けると効果的になります。読み手は「1-3.問題の発生」と「1-4.変化への抵抗」のステップで、予想もつかない事件が起きて混乱しています。すると、人は一種の混乱状態に陥ると、無意識にでも法則性や解決策を探そうとします。なので、読み手は無意識にこの「問題解決方法の説明」の段階で提示される内容を欲しているのです。それと同時に、読み手はこの段階で納得できる情報を提示されると、この情報を信じるほかに術はないのです。

ですが、もしここで意図的に「嘘」を読み手に伝えたらどうなるでしょう。読み手はそれを信じるしか術はありませんので、ここで強制的に嘘を信じさせることができるようになります。それは主人公の間違った推論という形で導かれるかもしれませんし、悪意のあるメンターから教えられるという形かもしれません。

例えば殺人事件が起こったとしましょう。主人公は呆然として信じられない状態で、悪意のあるメンターが「ここでは毎年、同じ日に殺人事件が起こるんだ。殺された人は、全部ある人間の敵対者だった」と言われると、その情報しか与えられない読み手は、それを信じるしかありません。こうして、主人公は作り手のトリックにはまってゆくわけです。

このように、トリックを必要とするものはこの段階で仕込んでおいて、「間違った問題解決方法」を元に、以降の展開を作っていくといいでしょう。

✎ 作成例:問題解決方法の提示

ここでもう一度しっかりと物語の目的を固めておきます。

このお話では、メンターは親友にやってもらうことにしましょう。親友はシャドウであり、メンターであるということですね。このように、役割を二重でこなすということも可能です。まあ、別に頼れるお姉さんキャラを作ってそのキャラにメンターを担当してもらって、主人公がそのお姉さんに相談するという形でもいいでしょう。ですが、ここはサンプルとして理解しやすいように、キャラ数を削減するために親友に担当してもらうことにしましょう。

(ステップ五:1-5.問題解決方法の提示)

  • 落ち込む主人公に、親友が励まし説得する。消極的な性格を乗り越えて戦いに参加すれば、希望はあるんだと。
  • 親友はとにかく、申込書を無理矢理主人公に押しつける。
  • 主人公はそれが唯一の方法だと知って、親友の優しさだと分かりつつも、決意できずにいる。

ヒーローである主人公と、シャドウである親友(申込書)が対立して、安定した状態になりました。このままでは物語が進展しなくなるので、次でトリガーを発動することにしましょう。

ステップ六:1-6.問題対応の受け入れ

さて、「1-5.問題解決方法の説明」ではヒーローとシャドウが対立して安定してしまいました。そこでヒーローをスペシャルワールドに突入させるため、この「1-6.問題対応の受け入れ」の段階で第一幕対立関係で作ったトリガー(次図参照)を発動します。

トリガーという混乱が起こることを経て、ヒーローはスペシャルワールドに入る決意をします。なお、繰り返しますが、ここでヒーローの長所と犠牲は解決してしまわないことが大切です。

例えば悪霊が町に来て、黄泉からの使者がヒーローの元へと助けを求めにやってきたとしましょう。ヒーローは拒否していますが、ここでトリガーをかけます。悪霊はヒーローの大切な家族を傷つけたとしましょう。すると、ヒーローはこれ以上家族を傷つけないためにも、悪霊との戦いを決意する……という昇華を起こし、「悪霊との戦い」というスペシャルワールドに入ることを決意します。

トリガーを引くためには、いくつか状況を設定しなければならない場合もあるでしょう。状況をしっかりと決めて、スムーズに進行するように流れを作ります。

✎ 作成例:問題対応の受け入れ

第一幕の対立関係とトリガー、昇華を確認しておきましょう。

「問題解決方法の説明」で、物語の方向性が説明できました。後はヒーローがスペシャルワールドに入ることを決意するトリガーが必要になります。

まずは、これまで作った第一幕の対立関係を次に示します。これを元に、さらに肉付けして発展させていきましょう。

トリガーは「生徒会長の悩みを聞く」と書いていますが、ヒーローである主人公は、生徒会長とはここまでほとんど接点がない状態でいるという問題があります。

そのため、いくつか適当な状況を作り上げる必要があるでしょう。不自然にならない接点を作って、不自然にならない流れで生徒会長の悩みを聴く流れを考える必要があります。

例えば以下のようなものがあるでしょう。

  • 急いでいると生徒会長とぶつかって、書類をぶちまけて、一緒に片付けなければならなくなる。その過程で主人公と会話せざるを得ない状況にする。
  • 放課後に主人公が中庭で一人でいられる秘密の場所にいると、生徒会長が来て、主人公に気付かずに悩みを独り言。直後に主人公に気が付いて、話をする状況にする。
  • 忘れ物を取りにある教室に行ったら、生徒会長がいて悩みを独り言。生徒会長が主人公に気が付いて、話をする状況に。

などなど、作ろうと思えばいくらでもできるものですよね。ここでは一番最初の案を採用するとしましょう。

テーマに関するつじつま合わせは必要ありませんが、この辺りの細々した状況作りについてはいろいろと考える必要があるでしょう。テーマに関するつじつま合わせは膨大な時間がかかってしまい、一本の道筋しか見つからないものです。しかしテーマには関係しない小さなつじつま合わせなら何通りも方法はありますし、すぐにできるでしょう。

さて、それでは以上を踏まえて、肉付けしながら流れを作ってみましょう。

(ステップ六:1-6.問題対応の受け入れ)

  • 結局、申込期限の最終日が来てしまい、決断できずじまい。申込書は午後六時までに提出しなければいけないけど、出せないまま。
  • 放課後午後五時ぐらい。用事で遅くなって急いでいると、生徒会長とぶつかって生徒会長の書類をばらまいてしまう。片付けを手伝う状況になる。
  • 生徒会長は主人公のことを知っている。名前もクラスも。「生徒会長病」が耳に入っていて「そんなに俺が嫌いか」と言う生徒会長に、必死で誤解を解く主人公。誤解を解く過程で、少し打ち解け合える。
  • 主人公がミスコンの書類(参加希望者リスト中間報告)を見つけて、生徒会長に訊く。生徒会長は書類を見て、「全員断ることになるから、傷つけるのは嫌だ」と悩みを口にする。
  • 主人公、生徒会長の気持ちを知って、勢いで「なら私が参加して優勝すれば、大丈夫です! 私なら何とも思ってないから断られても大丈夫です! 生徒会長のために、優勝してみせます!」と言ってしまう。
  • 生徒会長は驚くけど、「勝手にしろ」と言って立ち去る。
  • 期限の午後六時になる五分前ぐらいに、申込書を提出する。

さて、これで無事にスペシャルワールドに突入できる流れを作る事ができました。対立関係とトリガーさえあれば、後は細々とした状況設定だけになるので、矛盾もほとんどなく楽に作れますね~。

それでは次から、第二幕に突入します。

まとめ

  • 「ストーリー十四のステップ」で、スムーズに物語を構築できる。
  • 第一幕では、トリガーという混乱が起こることを経て、ヒーローはスペシャルワールドに入る決意をする。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/sarairachel/8022314713/ by Rachel Sarai (modified by あやえも研究所)
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