シナリオの方程式(七):物語の構成

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シナリオの方程式(七):物語の構成2016-11-29T09:04:55+00:00

Project Description

概要

このページでは、「シナリオの方程式」における、最後の仕上げについて説明しています。

  • プロットを仕上げるために必要な、調整作業とは?
  • キャラ数を削減したい場合の、効果的な手法とは?
  • 効果的な物語の視点と、読み手への「見せ方」とは?

キャラクターと世界観の作り込み

ここからは、これまでに作った「時系列に並べただけの一連の流れ」を「どのように読み手(もしくは観客)に見せるか」という見せ方を作り込む段階になります。

ストーリー十四のステップでは、出来事を時系列で並べただけになります。これをどこから始めてどこで終わるのかを決めたり、読み手に与える情報を並び替えたりして、最終的な物語の形に仕上げます。普通の物語ではあまり深く考えなくてもよいでしょうが、推理ものやサスペンスなどでは、問題を解く鍵となる情報は、読み手に対して制限して与えてゆく必要があるでしょう。

また、ストーリー十四のステップでは対立関係を中核に決めてきたので、中核以外の部分を作り込む必要もあるでしょう。サブキャラクターや、細々とした世界観を作り込みます

これら効果的な見せ方を考慮することで、より印象深くテーマを伝えることができるようになるでしょう。

キャラクターや世界観を作り込む

まず最初に、これまで通称であったり仮に割り当てたキャラクターを実際に配置調整をして、キャラクターや世界観を作り込みます

この段階までは、キャラクターや世界観については「必要最低限」の設定のみに抑えていました。なぜかというと、シナリオライターだけで何でも決められるという状況は珍しいためですね。文章だけの一人で完結できる小説なら話は別ですが、映画脚本や舞台脚本、ゲームシナリオなどでは、絵描き担当者であったり役者であったり、美術担当者との調整が必要になってきます。

もしキャラクター設定を細々と作り込んで、それをシナリオに反映していたとしましょう。例えば舞台シナリオを作るのに、「小柄でぽっちゃりしていて、歌がうまくて、髪の毛はロングで朗らかなイメージを与える、そんな役者」という指定を作ってしまった場合、それに適応する役者を探し出すのはとてつもなく大変になります。監督側の立場から言うと、それに演技力や表現力なども考慮して選考しなければならないため、選び放題な大手制作チームでない限り非現実的なシナリオになってしまいます。

他の担当者との調整

また、視覚的なデザインや配置については、絵描きや美術担当の方が得意であることもあります。キャラクターに対しては視覚的特徴(イメージカラーや髪型、服装など)に個性をつけることで、観客にシナリオだけでなく視覚的にも立場を分かりやすく演出することができます。その辺りは絵描きや美術担当に作り込んでもらう「余裕」を残しておかなければなりません。

それだけではなく、制作費や制作期間、美術担当の実力など、いろいろな制約があるでしょう。それらを踏まえて、実現可能な物語にする必要があります

そのため、まずは出来る限り最低限必要な基本構造を作っておいて、その他の細々とした設定は他の担当者と調整しつつ作る方が望ましくなります。言い換えると、この段階になって初めて他者との調整が必要になるということを意識するといいでしょう。

もしシナリオ担当が監督と別であれば、この辺りは監督と調整しながら進めるといいでしょう。

キャラクター数の調整とロールごとの作り込み

先ほど他の担当者との調整が必要になることに触れましたが、その中でも特に、登場キャラクター数の調整が入る場合があります。役者の数の制限であったり、主に資金面での制約でこの事態はよくあるでしょう。

キャラクター数を増やすのは簡単ですが、減らすのは難しいことが多いものです。ではどうすれば構造的に問題なくキャラクター数を増減できるのか、ここではその対処法を説明しておきます。

そのために、まずはロール(役割)について説明しましょう。ロールとは普通の名前とは違って、役割名のことです。例えば「ヒーロー」「シャドウ」「ヘラルド」「メンター」「トリックスター」などがそれに当たります。これらのロールは、名前とは違って、キャラに付け替え可能なものになります。いわばロールは「名札」みたいなものだと思えばいいでしょう。

対立関係ではロールごとにキャラクターを割り当てましたが、キャラクター数を削減したい場合、このロールを兼任させるといいでしょう。例えばヘラルドとメンターを兼任させたり、メンターとトリックスターを兼任させるわけですね。こうすることで、大きな調整が必要なく、キャラクター数調整ができるようになります。

逆に増やしたい場合は、ロールごとに別々のキャラクターを割り当てればいいだけです。

イメージ的な作り込み

また、絵描きや美術担当と調整する上でも、イメージ的な作り込みをするといいでしょう。

ヒーローとシャドウについては、心の状態と対応する象徴を作り込んだので、実際に長所短所を象徴するような性質を持ったキャラクターになっていると思います。これと同じように、キャラクターを作り込む場合は、各ロールに適合するような象徴的性質を割り当てましょう。

例えばメンターの場合、通常の世界観なら「教える」ことを象徴する教師であったり医者、長老などであったりするかもしれません。またスペシャルワールドがアンダーグラウンドな世界であった場合、コンピュータオタクや技術者、浮浪者などがそれに当たるかもしれません。

このように、ヒーローとシャドウ以外の役割においても、ロールの象徴を元にキャラクターを作り込みましょう。もし名前を含めた詳細情報を作り込んでいない場合、その辺りも作り込みます。

サブキャラも作り込む

主要キャラだけでなく、主要ではない脇役のキャラクターも同じように作っておきます。

そして世界観についても、担当者と調整の後に、作り込んでいきます。

象徴がばらばらの場合、一つか二つぐらいの文化や社会の象徴にひとまとめにすると、統一感が出てよくなるでしょう。小さなアイテムまで、しっかりと作り込みましょう。

物語の開始点と終了点を決める

 

次に、物語の開始点と終了点を決めます

開始点については、多くの場合、「1-1.喪失と抑圧」は読み手に見せずに、「1-2.問題を抱えた日常」から開始することが多いでしょう。

もちろん、「1-1.喪失と抑圧」から開始することも可能です。例えば「ドラえもん『のび太の恐竜』」では、「恐竜を拾って育てて、そして育てきれないからタイムマシンで白亜紀に戻って恐竜と別れるまで」が喪失と抑圧の段階になります。このように作る事も可能です。そうして進めても、何ら問題はありません。

いろいろな「開始点」

サスペンス系で勢いを出したい場合、「1-2.問題を抱えた日常」すら見せずに、突然「1-3.問題の発生」から開始することもあります。例えばホラー映画「CUBE」では、主人公は突然、見知らぬキューブ状の人工物の中に閉じ込められています。何が起こっているのかも分からないまま、キューブ内では殺人システムが動き出していて、生き残りを賭けた行動を強いられる……という構成です。

この場合、物語を進めていく過程で、ヒーローなどの習慣、いわば問題を抱えた日常を描写していきます。

こうすることによって、最初から緊張感を与えて、世界観に没頭させることができるようになるでしょう。ただしこれは緊張感を重要視するサスペンス系でのみ機能することなので、普通の感動をメインとした物語では、素直に「1-2.問題を抱えた日常」から始めた方がいい場合が多いでしょう。

「終了点」を決める

終わる場所は、基本は「3-3.問題を解決した日常」になるでしょう。ただしサスペンス系やホラー系などで、主人公がぼろぼろになって終わるような場合、スペシャルワールドから出た後を見せないことで、恐怖感をさらに増やすという方法が採られる場合もあります。

特殊な場合として、社会への問題提起であったり、悲劇を見せたい場合、「2-3.根本問題(テーマ)との対峙」で終わらせる場合もあります。例えば「2-1.深化」で頑張ったのに、シャドウとの戦いで理不尽な力が入って敗北した……といったことを訴えたい場合に、そのような区切りを用いる場合もあるでしょう。

集中力の管理

読み手の集中力が続く時間は限られてますので、基本的に五〇分集中して一〇分休憩する、もしくは二時間集中して二〇~三〇分ぐらい休憩する、という構成にするといいでしょう。

映画では一時間ぐらい経過した時点で、二~三分ぐらいセリフがほとんどなく、音楽と共に物語が進む場面がよくあります。これは観客が一息ついて、後半から始まる盛り上がり中に集中力を切らさないようにするための措置です。

また、文章量が原稿用紙千枚以上になりがちな長編ノベルゲームでは、原稿用紙三百枚前後がプレイ時間二~三時間程度になるでしょうから、その辺りで一区切りさせるといいでしょう。

物語の視点と読み手への「見せ方」の作成

この段階で、映像にしろ小説にしろ、誰の目線でその物語を見て、読み手に伝えるのかを作り込みます。いわば、カメラをどのように配置して見せるのかということです。

例えばずっとヒーローの目線で物語を進めていくのか、それともメンター目線で物語を進めていくのか、主人公で統一するのかなどがあります。例えばルパン三世などは、その回ごとに出てくるルパン以外のキャラクターがヒーローになることが多いでしょう。ヒーローが例えば少女の場合でも、ルパンの目を通して少女の成長を見つめるという形になっています。

視点の違いでバリエーションが出る

カメラの違いで、物語は全く違った印象を読み手や観客に与えることができます。例えばヒーロー側から見るか、シャドウ側から見るかで全然異なるでしょう。立場が全く正反対のものになるので、全く別の作品のように見えることでしょう。

また、メンター側から見ることで、ヒーローを我が子のような感覚で見ることができる場合もあるでしょうし、傍観者からの視点にすることで、ジャーナリズム的な表現にすることもできるでしょう。

例えばディズニー映画「美女と野獣」では、ヒーローは野獣でシャドウは狩人です。ですが最初の方の視点は美女である少女ベルの視点で進められます。ベルは野獣にとってのヘラルドになりますので、当初はヘラルド視点で物語が進んでいき、途中から野獣視点に変わるという流れになっています。

最も効果的に演出できる視点作りにしましょう。

より詳細な物語構成を作る

もし長編の小説やシナリオを作る場合、さらに詳細に作り込んでおく必要があるでしょう。

その場合、三幕構成の各幕をさらに三幕に区切って、「第一.一幕」「第一.二幕」「第一.三幕」といったように、入れ子状にして構成します。テーマはその元となる幕から取ってきて、初期状態と最終状態を考慮して組みます。

長編になればなるほど、詳細なプロットを作っておいた方がよいでしょう。それは大規模建築物を造るのと同じで、頭だけで考えていたら崩れる可能性が出てくるためですね。

構成の仕方は、これまで説明したような、テーマを作って対立関係を作り、それを三幕構成に割り当てて……という流れと同じです。

複数の問題(テーマ)がある場合、統合して一つの物語に構成する

もし複数の問題(テーマ)がある場合、統合して一つの物語に構成する必要があります。複数の問題(テーマ)ということは、複数の対立関係があるということですね。

テーマを複数個にするのは、物語が訴えたいことが複数個存在してしまうために、読み手にとっては全体が散漫な印象になってしまいます。しかし内容が足りずに時間を延ばしたい、散漫になってもいいから間を持たせたい場合などでこれは有効になります。

例えば映画「ハッピーフィート」では、前半のテーマは「主人公の成長物語」で、後半のテーマが「環境問題」と、全く別の二つのテーマが融合されています。合計一一〇分ぐらいの映画ですが、五十分ぐらいを境として、前半と後半に明解に分かれています。実際に前半五十分でも終わらせることができる構成ですが、おそらく上映時間の関係で追加されたのか、もしくはスポンサー側の意向でテーマが追加されたかなどの要因があったのでしょう。

「可能な限り長く続けられる長編もの」を作りたい場合

また、もし「可能な限り長く続けられる長編もの」を作りたい場合、ヒーローについて一つのテーマを作った上で、別個のテーマをその中に配置していくという流れがあります。

例えばドラえもんやルパン三世、水戸黄門などでは、基本的にずっと続けられるものです。この場合、ヒーローであるのび太の抱えるテーマ、いわゆる「ドラえもんの最終回」で、「物語が続く限り使わないテーマ(のび太がダメ人間という問題)」を確保しておきます。その上で、新たに個別のテーマ(問題)を作って、配置していきます。この個別のテーマが、一話のテーマであったり、一つの特別映画のテーマであったりします。

例えば大長編ドラえもんであれば、それぞれの物語で新たなキャラが出てきます。ほとんどの場合、この新キャラがヒーローになります。のび太やドラえもんは、メンターであったりトリックスター的な立場になり、ヒーローにはなりません。こうすることで物語を長く続けられることができるようになります。

この場合、のび太もルパンも、メインプロットのヒーローが持つ根本的な問題はずっと解決されないまま進んでいきます。解決したように見えても、またすぐに戻ったというように、初期状態に戻しておきます。そうすることで「可能な限り長く続けられる長編もの」ができるようになります。

一キャラにつき一つのテーマ

基本的に、一キャラにつき一つのテーマ(抱えている問題)としておく方がいいでしょう。一キャラに二つ以上のテーマを同時に抱えると、とても動機面で破綻しやすくなります。というのも、一つのテーマで昇華させた場合、もう一つのテーマも解決してしまうということが多くあるためです。

そのため、個別のテーマを盛り上げようとして、本体のテーマが破綻してしまうという危険もあるので、安全面からも一人のキャラには一つのテーマにしておきましょう。

「複数キャラ攻略可能シナリオ」を作る場合の対応

ノベルゲームのように、いわゆる「複数キャラ攻略可能」のシナリオを作る場合、いくつかテーマについて考慮する必要があります。

「複数キャラ攻略可能」というのは、ゲームでよく用いられる手法で、一つの世界観においてプレイヤー(主人公)が選択肢を選ぶことによって、違う物語が展開されるという種類のものです。

この場合も、一キャラにつき一つのテーマである方が望ましいでしょう。主人公は一つのテーマのみを持ち、対立する相手も一人のみにします。例えば主人公が四キャラ(キャラ甲、乙、丙、丁)攻略可能なら、ヒーローとシャドウは次のように割り当てます。

  • キャラ甲シナリオ:ヒーローは主人公、シャドウは甲
  • キャラ乙シナリオ:ヒーローは乙、シャドウは乙と敵対する存在
  • キャラ丙シナリオ:ヒーローは丙、シャドウは丙と敵対する存在
  • キャラ丁シナリオ:ヒーローは丁、シャドウは丁と敵対する存在

このように割り当てることで、テーマの違いによる食い違いは起こらなくなるでしょう。主人公は甲シナリオ以外では、いわばヒーローの成長を見届ける「カメラ役」になるということですね。この場合、主人公はメンターであったりトリックスターとして活躍するかもしれません。

ヒーローが主人公になるのは、通常一番盛り上がるシナリオになるでしょうから、メインシナリオか、もしくは一番最後に配置するとよいでしょう。

なお、全てのキャラで同じスペシャルワールドにすることもできますが、その場合はほぼ全キャラ同じ展開になってしまいます。違う展開を作りたい場合、スペシャルワールドもそれぞれキャラごとに用意しましょう。

後は作ったプロットを元に、執筆する

さあ、これで「実践! ストーリープロットの作り方」に従って作ってきたプロット作りは終わりです。これらを全て考慮していれば、後は実際に小説を執筆するなり、漫画を書くなり、映画の脚本を作るなりしていけるでしょう。

ここまでしっかりした設計図が出来ていれば、筆が止まることもなく、スムーズに進められるでしょう。

盛り上がりがしっかりと作り込めていれば、執筆は最も楽しい作業になるでしょう。

この設計図を元に、貴方の作品をよりよいものにしていきましょう。

✎ 作成例:物語の構成

長かった作業も、これで最後になります。最後は「物語の構成」になります。

ほとんど奇抜なことはするつもりはありませんので、最初と最後がどこからどこまでになるのかを決めるぐらいでしょう。

出だしは「1-2.問題を抱えた日常」から始まって、最後は「3-3.問題を解決した日常」で終わらせます。

長編にする場合はさらに作り込む必要があるでしょうが、この物語は小説で使うなら原稿用紙三百枚前後、一冊分の本で終わらせるぐらいでちょうどいいでしょう。伸ばしたとしても、本二冊分ぐらいでしょうか。

視点も主人公に固定で問題ないでしょう。

結果として、盛り上がりもありますし、なかなかいい作品ができたんじゃないかと思います。

これでプロット作りは一通り終わりです。

後はこの設計図を元に、実際に小説や漫画、映画脚本を作っていきます。

この作成例が、お役に立てば嬉しいです。

作成例にお付き合い頂いて、ありがとうございました。

まとめ

  • 複数人で開発する場合、まずは最低限の骨格を作ることが大切。
  • キャラクター数を削減したい場合、ロールを兼任させる。
  • カメラの違いで、物語は全く違った印象を読み手や観客に与えることができる。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/elwillo/5146331324/ by Keith Williamson (modified by あやえも研究所)
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