ミステリーの方程式(四):事件の流れを作る

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ミステリーの方程式(四):事件の流れを作る2016-11-29T09:04:49+00:00

Project Description

概要

このページでは、ミステリー作りにおいて、一連の事件の流れを作る方法について説明しています。

  • 読み手に「謎を深める」ように見せる方法とは?
  • 容疑者候補のキャラに偽証をさせる、効果的な方法とは?
  • 偽証を謎解きに効果的に組み込む方法とは?

キャラクター(容疑者候補)の配置

これから「謎解き一覧表」を作ってゆきましょう。

まずは次図のように、横軸に、容疑者候補となるキャラクターを配置します。ここでは容疑者候補になる人だけを作って、それ以外の人は含まないので注意して下さい。

なお、この段階は作者が書きやすくする「資料を作る段階」です。なので、例えば「主人公が真犯人で、主人公が犯人の可能性もある……ということを読み手に知らせたくない」といった場合でも、まずは主人公も容疑者候補の中に配置します。そして読み手に見せる時に、主人公の存在を隠せばよいだけになります。

なので、真犯人を含めて、どれだけ容疑者候補の人を配置するのかを決めます。

容疑者候補の数が多ければ多いほど、それだけ手間も増えるでしょう。ですが真犯人は作者にとっては分かっているので、それ以外は全てダミーなわけですね。ダミーはいろいろと自由度があるので、増やしたところで手間は増えますが、犯人のトリックや真実を作り込む手間と比べると、はるかに楽なものになるでしょう。

様々な容疑をかけられる「人」や「もの」

キャラクターは人物以外のものも含まれる場合があります。鳥の仕業だったり、何か道具が勝手にしでかしたことかもしれません。それらもキャラクターに含むことにします。

また、主人公自身も容疑者候補に含まれる場合もあります。主人公自身も犯人の偽装工作に騙されて、嘘の証言をしてしまう場合もあるでしょう。

以上をふまえて、まずはキャラクター数を決めて、一覧表の横軸にそのキャラクター名を記述します。もちろん犯人も含めます。真犯人には、「犯人」と付記しておくといいでしょう。犯人が複数いて別行動をする場合は、複数人の犯人を記述しておきます。

✎ 作成例:謎解き:キャラクターの配置

さて、それでは実際にキャラクターを配置してゆくことにしましょう。殺害される被害者は甲として、残る容疑者候補を作ってゆきます。

ここでは紙面の大きさの関係で、容疑者候補は四人だけとしましょう。うち一人は犯人(丙)で、もう一人は犯人に仕立て上げられる人物(乙)です。

残る二人を、「容疑者A」「容疑者B」としましょう。

謎解き一覧表は次図のようになるでしょう。

この段階では、これだけで大丈夫です。それでは次に行ってみましょう。

真実を元に、時系列を追加

次に、「謎解き一覧表」において、左側の縦軸に時系列を追加します

ここでの時系列は「読み手に見せる順番」ではなく、「物語中での時系列(事件が起こった順番)」で記述します。読み手に見せる順番を入れ替える必要がある場合、それは後ほど並び替えます。

真実を元に、時系列を構成する

そのために、まずはここまでで作った真実を元に作ります。

例えば犯人は、「手口A(トリックA)」「手口B(トリックB)」「手口C(トリックC)」「手口D」(トリックD)という四つの順番で事件を作り出したとしましょう。

そして、人物Cは、手口Cによって犯人にうまく操られてしまったとしましょう。

これを書き出すには、まずは犯人の四つの手順を犯人の時系列欄に追加します。もし同時に複数トリックを使う場合、それを一つの時間区切りにまとめます。ここでは、手口Aと手口Bは同時に使ったとしましょう。

人物Cの欄にも、犯人によって操られてしまった行動を記述します。

この段階での記述例を次図に示します(今回追加した部分を赤字で記述しています)。

これによって一覧表は、トリックに関する行動が全て含まれている状態になります。

時間帯を考える

次に、その手口を実行する時間を考えてみましょう。その真実が起きた内容が、どの時間的区切りで起こったのかを「推論における最小範囲」で決めます

「推論における最小範囲」とは、読み手(多くの場合、推理する主人公)が、「この時間帯において、容疑者候補の真実の行動を全て証明したら、必ず一つ以上の謎(トリック)が解ける」と推測できる最小範囲のことですね。

その範囲を、「いつからいつまでの間に行われたのか」を明確にします

まあ、よく分からなければ、「いつからいつまでに行われたのか時間を決める」という程度の認識で大丈夫です。で分けた「手口Aと手口B」「手口C」「手口D」がいつ行われたのか、それを決めるということになります。

なお、ある手口によって他のキャラを動かすなどのトリックがある場合、それも記述しておきます。

例えば「手口Aと手口B」は朝食開始時から朝食終了時までに起こって、「手口C」はその後事件が発覚して全員がリビングに集まった時から警察を呼ぶことに決めるまで、「手口D」は警察を呼ぶことを決めて、電話を完了した時までとしましょう。

すると、次図のように記述することができるでしょう。

朝食終了時から事件発覚までは、犯人(人物D)の行動に空欄ができています。これは犯人は何をしていようが事件には関係ないことになります。この空欄部分は自由に決められます。

フェイクとなる出来事を入れて、時間帯を細分化する

しかし、読み手にこの時間区切りでいきなり考えさせるのも不自然です。そのため、何か他にもフェイクとなる出来事を入れて、時系列を適当に見繕って、細かく分けておきましょう

少々細かく設定しても、手がかりを与えてゆけば、フェイクの時間区切りはすぐに無効化できるので、この作業はそれほど面倒にはならないでしょう。

実際に、フェイクとなる時間区切りを追加して、細分化したものを次図に示します。

フェイクはいくら追加しても大丈夫

フェイクとなる時間帯は真実には大きく影響しませんので、後々追加・分割・削減といった修正をしても大丈夫です。

ですがトリックを用いている時間帯だけは、修正はしないようにします。その時間帯は「推論における最小範囲」だから、という理由ですね。

そして、いつからいつまでそれをしていたのかを、矢印で示します。犯人の手口については、最小範囲なので必ず一つの枠で収まるように、矢印を記入しておきます。

なお、犯人以外のキャラには、時にはいくつかの時間帯にまたがって、一つのことをしていることがあるでしょう。この「犯人以外のキャラの真実」については、次項で説明します。

これでとりあえず、時間帯の追加ができたとしましょう。

✎ 作成例:真実を元に、時系列を追加

それでは、次は時間軸について作ってみましょう。

忘れている人もいるかもしれないので、今まで作った内容を以下に記しておきます。

● 真実

  • 乙に犯行を信じ込ませる(トリック:乙が信心深いことから、「狐憑き伝説」という迷信を利用する)
  • 乙に犯行時の意識を曖昧にさせる(トリック:乙のグラスをわざと倒し、睡眠薬を仕込んだ新しいグラスを提供する)
  • 甲を一人きりにして、ある部屋に呼び出す(トリック:甲の弱みを握ったと手紙を出して脅して、指定時間に部屋に呼び出す)
  • 殺害時からはずっとみんなとサロンにいて、目立つ行動を取っている(トリック:犯行時はマジックショーをみんなに披露している)
  • 甲を遠隔操作で殺す(トリック:携帯電話のバイブレートモードを利用して、仕掛けた斧を振り下ろす仕組みを作る)
  • 凶器を回収して乙に凶器を持たせる(トリック:マジックショーで「脱出もの」と呼ばれる演目をして、二分間ほど脱出に時間がかかると見せかけることで、その間に回収する)

真実を元に、謎解き一覧表を作る

この真実を元に、とりあえずトリックを使う部分のみを一覧表にして、時間も適当に決めて当てはめます。

そして適当にフェイクとなる時間も追加しておきましょう。

ここでは乙は犯人に操られて行動している部分もあるため、それも追加しておきます。

その結果を次図に示します。

このような謎解き一覧表が作ることができます。

それでは次から、他のキャラの欄や、空欄について埋めていくことにしましょう。

キャラクターごとに真実を配置

ここまでで、「謎解き一覧表」に、前章で作った真実と、その時系列を追加しました。それではここから、キャラクターごとにフェイクとなる関係のない出来事を追加していきましょう。

これから追加する内容はトリックとは関係がないので、自由に作ることができるでしょう。もし複数の事件が交錯した形にしたければ、もう一つトリックを元にした真実を作っておいて、ここで重ね合わせれば大丈夫です。

容疑者候補のキャラに、偽証をさせる

容疑者候補のキャラは、もちろん全て真実を証言することもあるでしょう。

ですが、前述したように容疑者候補となるキャラクターも、何かしら真実とは違う内容を証言することがあります。それは単なる錯覚かもしれません。もしくは人に知られたくない全く別の理由があって、嘘をつかなければならない状況かもしれません。

「金を巻き上げるために近づこうとしていた」とか「結婚しているのに不倫をしていて、その人に会っていた」なんて言えないでしょうし、「犯人だと思われたくないから、疑われそうなものを隠しておいた」ということもあるかもしれません。

ですが、それが読み手や主人公を惑わせて、推理を引き立てることになります。

犯行のタイミングに合わせて、偽証を作る

そのような個人個人の思惑を適当に作って、配置させます。なお、ここでは真実のみを記して、偽証はまだ記述しません。ですが、偽証をさせることを見越して各キャラの真実を作るようにします。

重要になるのは、犯人のトリックが発動する時に重なるタイミングか、その前後で偽証させるために行動をさせることです。でなければ、有効時間帯を絞っただけで犯人が特定されてしまうためですね。

犯人の欄においても、トリックを使っている時間帯以外は空欄になっているでしょう。その犯人部分の空欄も埋めるように、適当に内容を記述しておきましょう。

なお、明らかに事件とは無関係な時間帯で、明らかに記入したとしても不要になりそうな場所については、埋める必要はありません。

これを実際に追加した記入例を、次図に示します。

これで、全てのキャラクターがいつ何をしていたのかが完成しました。

もし後ほど調整したい場合は、ここまで戻ってきて修正すればいいでしょう。

✎ 作成例:キャラクターごとの真実を配置

さて、それではキャラクターごとの真実を作っていきましょう。

ここでは犯人である「丙」の他に「容疑者A」「容疑者B」と、犯人に仕立て上げられる「乙」がいます。ですが乙はずっと眠らされているということになるので、作り込む残り部分は少なそうですね。

容疑者Aと容疑者Bについて、詳しくフェイクとなる内容を作っていくことにしましょう。

フェイクの内容を考える

ここでは、「容疑者Aと容疑者Bが共謀して、甲(殺害された人)を脅して金を奪おうと計画していた」としましょう。

もう一つ別の事件が起きようとしていたところ、丙が先に殺してしまったという形にします。こうすることで、二つの事件(一つは殺人事件、一つは恐喝未遂)が混じっていたとすることができます。

なら、簡単に恐喝未遂について時系列を考えておきましょう。

容疑者Aは実行をする人で、容疑者Bはアイデアを考えてフォローする人だったとします。容疑者Aは、脅すための手紙やナイフなども持っているとします。容疑者Bは、パーティー中に甲に近付き、パーティー後に甲と会うように仕向けたとしましょう。二人は合図を出し合って、甲を一人にしようとします。

事件とフェイクを組み合わせる

しかし、甲は真犯人である丙によって、パーティー中にある部屋に来るように指示されています。なので、パーティー中に甲は会場の部屋から出ます。

パーティー中に甲が出て行ったのを見た容疑者AとBは、気になって後を追いかけるために会場を出たとします。ですがすぐに見失ってしまったとしましょう。どのみちパーティー後に会うように仕向けているので、トイレにでも行ったのだろうと安心して会場に戻って、マジックを楽しんだとします。

ですがパーティーが終わっても甲は帰ってこず、容疑者Aは容疑者Bの指示によって甲を探しに出ます。容疑者Aは見つけられないまま、甲は死体となって発見されます。そして警察がやってきて、後ほど容疑者AとBから脅迫用の証拠が出てきて、読み手はそのフェイクに惑わされる……という形になるわけですね。

ちなみに、乙にも犯行を疑わせる要素を追加するために、甲と接触させておきます。逆に犯人である丙は、ずっと会場内にいて人たちと交流させることで、犯行は不可能だったかのように見せるとしましょう。

実際に謎解き一覧表を作る

これらの内容を追加した謎解き一覧表を、次図に示します。明らかに不要な部分は空白にしています。

だいたいこんな感じでいいでしょう。

それでは次から、偽証を配置してゆくことにしましょう。

偽証の配置


キャラクターの真実ができたら、どの部分を偽証させるかを作ります。

前項で説明したように、犯人が嘘をつくのは当然としても、全てのキャラが真実を言うとは限りません。犯人のトリックによって錯覚して偽証をするかもしれませんし、知られたらまずい他の出来事で、偽証をするかもしれません。

まずは犯人の偽証を作り、その後に他のキャラの偽証を作る

まず最低限必要なのは、犯人の偽証です。トリックを用いた部分については、必ず偽証をさせるようにします。

他にも、犯人以外のキャラで嘘をつかせたい部分を適当に決めて、偽りの内容を作ります。そのキャラにとっては、その偽証をすることによって何らかのメリットがあるでしょう。

謎解き一覧表を使うなら、これらの偽証を、「偽」マークと共に、真実とは別の色で記述します

実際の記述例を、次図に示します。

ただし、何もかも偽証させる必要はありません。犯人以外のキャラは真実を言わせることもできるでしょう。その真実を証明する証拠さえ隠せば、読み手や主人公は疑わざるを得なくなるためですね。

✎ 作成例:偽証の配置

それでは偽証について作り込んでゆきましょう。

まずは、犯人である「丙」の偽証を考えます。これは簡単ですよね。「ずっとマジックショーをしていた」と言えますから。

犯人に仕立て上げられる「乙」は、犯行を信じ込まされるという洗脳みたいなものを受けていたとしましょう。なので、乙は本当は寝てるんですが「もう一人の私が殺したんだ」と思い込むようにします。これも真実ではないので、偽証になります。

容疑者AとBについても、脅迫という事実を知られたくないし、殺人を疑われないようにするために、甲については適当に嘘をつくことにしましょう。二人は口裏合わせをしていたとします。

これらをまとめて、謎解き一覧表に偽りの内容を追加したら、次図のようになるでしょう。

これぐらいでいいでしょう。

次に、この偽証を覆す手がかりを与えていくようにします。

まとめ

  • 犯人を特定しにくくするために、容疑者候補も追加しよう。
  • フェイクとなる出来事を入れて、犯行時の時系列を適当に見繕って、細かく分けておこう。
  • 犯行のタイミングに合わせて、偽証を作ろう。そうすることで、フェイクが有効になる。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/bradmontgomery/4363410868/ by Brad Montgomery (modified by あやえも研究所)
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