ミステリーの方程式(五):手がかりの配置

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ミステリーの方程式(五):手がかりの配置2016-11-29T09:04:49+00:00

Project Description

概要

このページでは、ミステリー作りにおける、「手がかり」の作り方と、配置方法について説明しています。

  • 事件を解決するために必要な「手がかり」の三つのタイプとは?
  • 手がかりを配置してゆく流れとは?
  • 最も大切な「決定的な手がかり」の扱い方とは?

手がかりの種類

真実と偽証が配置できたら、それぞれを証明する「手がかり」を作ります

この手がかりを作って配置し終えたら、ミステリーの制作はほとんど完了したようなものです。しかし手がかりは少々複雑な論理構造を持ちます。実際に手がかりを作る前に、少しその種類や性質について説明しましょう。

証拠と証言を元に、手がかりを作る

手がかりには、証拠(物的証拠)証言という形があります。謎を解決させるために、この手がかりを読み手に提示してゆきます。

トリックを推理しうる手がかりがなかったら、完全犯罪になってしまいます。なので、必ず推理しうる手がかりを残さなければなりません。あまりにトリックが完璧すぎる場合、犯人に予想しなかったトラブルを起こさせることで、手がかりを残させる必要があるでしょう。主人公や読み手はそのほころびを見つけてゆくことで、事件の全体像やトリックを理解してゆくのです。

いろいろな「手がかり」のタイプ

手がかりは、その人の証言が偽証だったことを明かすために必要ですし、一方でその人の証言が正しかったこと証明するためにも必要です。

例えばあるキャラクターが真実を言っていたとしましょう。ですが主人公には、手がかりがなければそれが嘘か本当かすら分からないわけですね。

また、手がかりの内容は、真実を固める手がかりだけではありません。犯人が偽装工作をしていて、その偽装工作を手がかりとして入手する場合もあります。

ですが、最終的にトリックの手がかりも含めて手がかりを出し尽くした時、「偽りを固める手がかりは偽装工作だった」と判明して、真実が浮かび上がります

「手がかり」の三つの種類

ちょっと複雑なのでまとめると、手がかりには以下の三つがあります。

偽証を固める手がかり

偽証を明かす(証言が偽りだと明かす)手がかり

真実を固める手がかり(必須)

「(三)真実を固める手がかり」と「(二)偽証を明かす手がかり」は厳密には別物であることに注意しましょう。

「(三)真実を固める手がかり」は、「(二)偽証を明かす手がかり」になりえます。ですがその逆はありません。偽証を偽りだと明かしただけでは、真実を認めることにはならないことに注意しましょう。

以下で、それぞれの手がかりの種類について説明します。

(一) 偽証を固める手がかり

「(一)偽証を固める手がかり」は、主に犯人や偽証をしたい(させたい)という人の思惑によって作られたものや、錯覚や偶然の産物であったりするでしょう。

例えば犯人が、「録音しておいた大声で怒鳴る声を流して、部屋にいるように錯覚させて、窓から出る」というトリックを使ったとしましょう。すると、「あの人は部屋にずっといました。出入り口が一つしかない部屋に入って、ずっと出てこなくて、それに大声で怒鳴ってたんですもの。出てくるまで私はずっと視界にその出入り口を入れていたので、間違いありません」という他の人の証言は、「偽証を固める手がかり」になるわけですね。

どんなに偽証を固める手がかりを配置したとしても、後ほど説明する「偽証を明かす手がかり」や「真実を固める手がかり」が提示されたら、簡単に壊れてしまうものでもあります。

(二) 偽証を明かす(証言が偽りだと明かす)手がかり

「(二)偽証を明かす手がかり」は、「真実は分からないけど、あの人の言っていることは偽りだ」と分かる手がかりになります。「その証言に矛盾する手がかり」とも言えるでしょう。

例えばある人は「その時間帯はずっと寝ていた」という証言をしていたとしましょう。ですが、その人がその時間帯に電話をしていて、電話はその人にしか使えない状況で、通話記録が残っていたとしましょう。すると、その人の証言は偽りだと分かります。「電話がその人にしか使えない状況」と「通話記録」は「偽証を明かす手がかり」になるわけですね。

(三) 真実を固める手がかり

「(三)真実を固める手がかり」は、「証言が正しい」と証明できる手がかりになります。

例えば「家の電話で誰々と話をしていた」という証言があった場合、「複数の目撃証言」と「通話記録」はそれを証明しうるに十分な手がかりになるでしょう。

よく使われるのが、複数の証言や、ビデオや音声などの客観性のある記録、検死結果や警察の調査記録などでしょう。「複数の証言」などは、百パーセント証明できるとは言えないかもしれませんが、例外が発生するのは極めて低確率である場合、それも「証明しうるに十分」と見なすこともあります。

注意が必要なのは、「真実を証明できるに足る」手がかりであることです。トリックを証明するのであれば、その道具や使い方、時に隠し場所や痕跡の存在までも特定する必要があるでしょう。

犯行を証明する「決定的な手がかり」

また、時には犯人だと容易に特定できるような「決定的な手がかり」があるかもしれません。

例えば犯人が「氷を使って撲殺して、氷が溶けることで凶器を隠滅した」というトリックを使ったとしましょう。すると、「氷を作ることが可能であったこと」「作り方」だけでなく、「氷が溶けたと断定できる証拠」までもが必要になるでしょう。「氷が溶けたと断定できる証拠」を作る方法としては、時に犯人にとって予想しない事態が起きて、凶器を捨てる場所が極めて限られてしまうことがあるでしょう。その場所を解明して、そこを調べたら、うっすら被害者の血液反応があり、それによって「凶器が氷だった」と特定される……といったものですね。

この「血液反応が発見できる場所の特定」が「決定的な手がかり」になるでしょう。

「決定的な手がかり」の扱い方

「決定的な手がかり」というのは、それを示せば一発で犯人が分かってしまうものです。

それは例えば、着ているコートの中に隠された返り血かもしれませんし、犯人しか行けなかったと証明されている場所があり、そこに隠してある凶器の存在かもしれません。

それぐらい明白な手がかりである性質上、決定的な手がかりの扱いには注意が必要になります。

多くの場合、決定的な手がかりは物語の最後に与えられる形になります

その場合、「決定的な手がかりに通じる手がかり」を与えられることが多いです。例えば主人公がぼんやりとジュースを飲みきったコップを眺めていて、残った氷が次第に溶けて水になってゆくのを見るかもしれません。そこからトリックに気が付いて、「謎は全て解けた!」と決定的な手がかりの在処が分かるようにする……という方法もあるでしょう。

「決定的な手がかり」を読み手に示さない、という方法

別の方法としては、主人公にだけ手がかりを与えて、読み手に手がかりを与えないようにするという方法で乗り切るという方法があります。これは主人公が最後の手がかりを手にして「謎は解けた」と言い、読み手にその手がかりが何かを示さないまま、主人公はトリックの解説をし始めます。そしてその解説の終盤で、初めて決定的な手がかりを見せるという見せ方にするわけですね。これは決定的な手がかりを提示するタイミングと事件の真相解説までの間を極めて短時間にすることで、読み手に予想できないようにするという方法ですね。

手がかりによってトリックが予想しやすいものの場合、このようにして読み手の予想を回避することができるでしょう。

ですが、どのみちその「決定的な手がかり」も示す必要がありますので、読み手にすぐにばれないような仕組みが必要になります。

手がかりの性質

手がかりは、種類によって読み手に提示する順番を考慮しなければなりません。

読み手に示す手がかりの順番は、「(一)偽証を固める手がかり」、「(二)偽証を明かす手がかり」、「(三)真実を固める手がかり」という順になります。というのも、例えば「(二)偽証を明かす手がかり」が一度読み手に提示されたら、「(一)偽証を固める手がかり」をいくら出しても無意味になってしまうためですね。同様に、「(三)真実を固める手がかり」が提示されると、残る両者が提示されても無意味になってしまいます。

最初は偽証関連の手がかりを出すとよい

そのため、(一)と(二)は(三)にたどり着くまでの間にあるステップだと思えばいいでしょう。いきなり「(三)真実を固める手がかり」に到着してもいいですし、間に偽証関係の手がかりを入れてもいいということになります。

手がかりの数を増やしたい場合、謎解き過程を長くしたいといった場合に、偽証関係の手がかりを間に入れることで、それらを実現することができるでしょう。

最低限「(三)真実を固める手がかり」を配置して、必要に応じて「(一)偽証を固める手がかり」と「(二)偽証を明かす手がかり」を配置してゆくことになります。

手がかりを「謎解き一覧表」で扱う方法

手がかりは謎解き一覧表の内容に沿って配置してゆきますが、特に注意しなければならないこととして、手がかりを「謎解き一覧表」のある場所に配置した場合、別の場所の真実や偽りに影響する場合がある、ということです。つまり、「一つの手がかりを配置したら、それが他の場所の手がかりにもなってしまう」という場合があります。

手がかりを作成する場合、この影響範囲を考慮しながら作る必要があります。でなければ、重複した不要な手がかりを配置してしまう危険があります。

「謎解き一覧表」で、手がかりが他の部分に影響する四つのタイプ

そのために、謎解き一覧表の他の部分に対する影響の仕方を把握しておきましょう。影響の仕方には、以下の四通りがあります。

何も影響しない場合

縦軸(その人物)に対して影響を与える場合

横軸(その時間帯)に対して影響を与える場合

全く別の場所に対して影響を与える場合

以下でそれぞれについて説明します。

(一) 何も影響しない場合


最初は、手がかりを配置しても、他の出来事には何も影響しない場合です。

これは特に、これ以上説明する必要はないでしょう。

(二) 縦軸(その人物)に対して影響を与える場合


次の影響の仕方は、その手がかりを出すと、縦軸(その人物)に対して影響を与える場合です。

これはいわば、「その人の証言の多くが真実だとは言えなくなる」ことになります。

例えば犯人が「ずっと部屋にいた」と証言していたとしても、「窓から出入りしうる」という手がかりが見つかった場合、その前後の証言を含めて信じられなくなる場合ですね。

謎解き一覧表で言うと、次図のように、ある手がかりを提示して一つの偽証を明かすと、その人物の他の偽証まで明かすという内容になります。

(三) 横軸(その時間帯)に対して影響を与える場合


さらに別の影響の仕方が、「横軸(その時間帯)に対して影響を与える場合」です。

これは、例えば多くの容疑者候補の人が、ある時間帯について偽証していたとしましょう。しかし「死亡推定時刻が特定される」といった時間帯についての手がかりが示されることで、その時間帯の証言の真偽に影響する場合です。

謎解き一覧表で言うと、次図のように、ある手がかりを提示して一つの偽証を明かすと、その時間帯の他の偽証まで偽りだと明かすという内容になります。

(四) 全く別の場所に対して影響を与える場合


最後に説明する影響の仕方が、「全く別の場所に対して影響を与える場合」です。

例えば「人物Aと人物Bが、口裏合わせをしていた」といった場合、一方の偽証を明かすと、もう一方の同じ事を言っていた人の証言も偽りだと判明するといった場合です。

謎解き一覧表で言うと、次図のように、ある手がかりを提示して一つの偽証を明かすと、全く別の他の偽証まで偽りだと明かすという内容になります。

これまで影響の仕方について説明してきましたが、このように一つの手がかりが別の手がかりに繋がる場合もありますので、それに注意しながら手がかりを提示する順番に気をつける必要があります。

手がかりを作成する

これまで手がかりについて種類や性質について説明してきましたが、ここから実際に、手がかりを作っていきましょう。

手がかりは以下の手順で作ります。

「(三)真実を固める手がかり」を配置する

「(三)真実を固める手がかり」を読み手に見せる順番に並び替える

必要に応じてその他の手がかりを配置する

以下で詳しく説明してゆきます。

(一)「真実を固める手がかり」を作成する


まず最初は、「(三)真実を固める手がかり」を配置します。

ここまでで謎解き一覧表を使って全キャラの真実と偽証を作りましたが、各キャラクターにおける全ての真実に、「(三)真実を固める手がかり」を配置してゆきます

「行動を証明しうる」手がかりを配置する

トリックを含む行動にはそのトリックを証明しうるだけの手がかりを、それ以外にはその行動を証明しうるだけの手がかりを配置します。

もしどれぐらいの手がかりを出したら「証明しうる」のかが分からない場合、とりあえず思いつく限りの使えそうなものを書き出してみるといいでしょう。そこから取捨選択すればいいでしょう。

その手がかりが、謎解き一覧表の他のどの偽証に影響するかは、まだこの段階では考える必要はありません。

「トリック使ったことを証明する行動」を作る

トリックを証明するために、何か別の行動を作り出す必要があるかもしれません。

例えばトリックが完璧に機能してしまった場合、完全犯罪になってしまう場合ですね。その場合は謎解きにならなくなるので、何かしら犯人にミスを犯させることで、手がかりを残す必要があります。

もし他の容疑者候補のキャラに何かさせる必要がある場合は、前のステップに戻って行動を修正しましょう。

手がかりを書き出す

謎解き一覧表に手がかりを記入してもよいのですが、それだと一覧表がごちゃごちゃになるので、ここでは別途書き出す形を推奨します。

次図のような謎解き一覧表があった場合、以下に示すように人物別、もしくは時間帯別に手がかりを列挙するとよいでしょう。人物別か時間帯別かは、都合のよい方を選べばよいでしょう。

「(三)真実を固める手がかり」(人物別に記述する場合)

人物A

  • 行動A1:「人物B、人物C、同室にいたスタッフたちの複数の妥当な目撃証言」
  • …(以下省略)

(中略)

人物D

  • 行動D1:「複数の妥当な目撃証言」「人物Dが井戸を利用した証拠」
  • 手口A:
    • 犯行現場の手がかり:「窓際が濡れていたこと(氷トリック)」「窓の外枠に一箇所だけ、綺麗な部分があったこと(足の踏み場)」
    • 人物Dの部屋の手がかり:「フックの存在」「カーテンが片方だけしわくちゃ」「机が移動されたような痕跡」「机の引き出しの取っ手一つだけが新品同様」
    • 人物Dの手がかり:「靴下の裏地側に、窓の外枠と同じ色の汚れがついている(決定的な手がかり)」
  • 手口B:「人物Dの部屋に大型コンポがある物証」「コンポの音量が大きいまま」「CDが入っていないのに電源が入っている」「一時期から大音量で音楽を聴くようになったという証言」
  • …(以下省略)

「(三)真実を固める手がかり」(時間帯別に記述する場合)

起床~朝食開始

  • 行動A1、B1、C1:「人物B、人物C、同室にいたスタッフたちの複数の妥当な目撃証言」
  • 行動D1:「複数の妥当な目撃証言」「人物Dが井戸を利用した証拠」

(中略)

朝食開始時~朝食終了時

  • 手口A:
    • 犯行現場の手がかり:「窓際が濡れていたこと(氷トリック)」「窓の外枠に一箇所だけ、綺麗な部分があったこと(足の踏み場)」
  • …(以下省略)

(二)読み手に見せる順番で「真実を固める手がかり」を配置する


次は、作成した「(三)真実を固める手がかり」を読み手に見せる順番に並び替えます

ここで並び替えた順が、実際に執筆してゆく手順になります。

時と状況に応じて、手がかりを渡さないようにする

手がかりを与える順番は、時系列が前後しても構いません。

つまり、手がかりはどの場所からでも与えることができますし、必要な手がかりをその時点で与えないようにすることも可能です。

例えば「鑑識の手違いでその手がかりを伝えるまでに時間がかかってしまった」「崖崩れが起きてその場所に行けなかった」「暴風雨で行けなかった」などと、いくらでも読み手に与える手がかりを制限する手段はあります。

そのため、大切な手がかりは後々に回すということも可能です。

トリックに関する手がかりは、最初からトリックがばれないように、特に慎重に出してゆくようにしましょう。

犯人や全体像が少しずつ絞り込まれていくように、手がかりを配置してゆきます。

手がかりを配置する流れ

以下の二つの観点で、絞り込んでゆくとよいでしょう。

トリックには無関係な「人物」から順に手がかりを明かしてゆく(人物を絞り込んでゆく)

トリックには無関係な「時間帯」から順に手がかりを明かしてゆく(時間帯を絞り込んでゆく)

ここは厳密に決めても大丈夫ですが、アバウトに大体の目安を決める程度でも構いません。

以下のように記述するといいでしょう。

「(三)真実を固める手がかり」を読み手に見せる順番(アバウトに決めた場合)

  • 全員の起床~朝食終了まで
  • 電話を完了~警察到着まで
  • 人物B
  • 朝食終了~警察を呼ぶことに決定まで
  • (中略)
  • 人物C
  • 警察を呼ぶことに決定~事件発覚まで
  • 事件発覚~電話を完了まで
    • 人物Aと人物D(犯人)

(三)必要に応じてその他の手がかりを配置する


ここまでで「(三)真実を固める手がかり」を配置しましたが、必要に応じて「(一)偽証を固める手がかり」と「(二)偽証を明かす手がかり」を配置します。

これらは、「(三)真実を固める手がかり」よりも前に、読み手に与えてゆくことになります。

「偽証を固める手がかり」で、まずは犯人の術中にはまる

「(一)偽証を固める手がかり」ばかりを与えることは、言い換えると、主人公は犯人の術中にはまっているということです。これは謎解きの序盤に集中して提示されるでしょう。

逆に「(二)偽証を明かす手がかり」は、主人公は犯人に近づきつつあるという意味になります。

最初は「(一)偽証を固める手がかり」を与えて、主人公は犯人に翻弄されるでしょう。ですが主人公は「(二)偽証を明かす手がかり」と「(三)真実を固める手がかり」を手にしてゆくことで、事件の真実・真相に近づいてゆくわけですね。

実際に書き出す

実際に記述する場合は、以下のように記述するとよいでしょう。

読み手に見せる手がかりの順番(アバウトに決めた場合)

  • (偽証を固める)事件発覚~電話を完了まで
  • (偽証を固める)人物A、人物D(犯人)
  • (偽証を固める)朝食終了~警察を呼ぶことに決定まで
  • 全員の起床~朝食終了まで
  • (中略)
  • 事件発覚~電話を完了まで
    • 人物Aと人物D(犯人)

✎ 作成例:手がかりを作成する

それでは実際に、手がかりを作成してみましょう。

最初は「(三)真実を固める手がかり」を配置します。

前回作った謎解き一覧表を元に、各キャラの手がかりを作ってゆきます。

忘れているかもしれないので、前回作った謎解き一覧表を次に示しておきます。

犯人に関する手がかりを作る

まず最初に、犯人(丙)に関係する内容から作り込みましょう。

ここではとりあえず、思いつくものをどんどん列挙するぐらいでいいでしょう。後で取捨選択すればいいですしね。

● 真実を固める手がかり
丙(犯人)

  • 乙に犯行を信じ込ませる:「乙は迷信深いという周知の事実」「丙が乙に狐憑き伝説について話していたという目撃証言」
  • 乙に睡眠薬を与える:「丙が乙のグラスをこぼして、新しいグラスを与えるという複数の目撃証言」
  • マジックショーの準備:「準備をしている姿の複数の目撃証言」「会場外には出ていないという妥当な環境」
  • マジックショー(マジックショー開始~PM8:28):「複数の目撃証言」
  • 甲を呼び出す:「甲を呼び出す手紙の発見」
  • 甲を遠隔操作で殺す:
    • 丙について:「マジック中に、丙は携帯電話を取り出して電話をかける仕草をするような脚本のマジックをする」「丙は携帯を二台持っている」「犯行に使った携帯に、着信表示が残っている」
    • 甲について:「甲の死体位置から、甲は犯人に気付かずに殺されたという調査結果」
  • 凶器回収・凶器を乙に持たせる:「脱出マジックは二分間空白の時間ができる」
    • 脱出について:「脱出マジックは、脱出するだけなら簡単にできる」「脱出場所から部屋の外へは、誰にも見られずに出られる」「部屋の外に出た場所は、丙がわざと通行不可にしている」「脱出マジック終了後、丙はそれまで使っていた手袋を外している」「乙の部屋のドアノブに丙の指紋がある」「丙以外体格的に使えない脱出経路に、返り血のついた遠隔装置と丙が使っていた手袋が隠されている(決定的な手がかり)」
    • 凶器などについて:「甲の血がついた凶器は乙が持っているが、利き腕でない手で持っている」「凶器の乙の指紋は、利き腕でない方の手のみ」「乙の服も返り血を浴びている」「乙自身の体には返り血はついていない」「乙の服は、ボタンが掛け違えていて、そのままだと返り血の形が不自然」
  • マジックショー(PM8:42~マジックショー終了):「複数の目撃証言」
  • 会場にいる人たちと交流:「複数の目撃証言」

「決定的な手がかり」を作る

大体こんなところでいいでしょう。今回は、犯人しか使えないような脱出経路に凶器の一部を隠しておくことで、それを決定的な手がかりとさせます。

例えば、「丙(犯人)が小柄で、小柄な体質の人しか入れない。その会場には子どもはいないから、実質丙しか入れない」「体が柔軟な人しか入れない。その会場でそこまで柔軟な人は丙しかいない」「ある特殊な道具を持っていなければ入れない。その道具を持っている人は丙しかいない」といった理由は、いくらでも作れるでしょう。

ここでは分かりやすいように、体格にしておくとしましょう。それだけだとまだ証拠が足りないかもしれないので、「丙がマジックで使っていた手袋(返り血付き)を、遠隔殺人装置と一緒に置いておく」にしておきました。この決定的な手がかりは最後に出します。

どうでもいい部分は、複数の目撃証言とか適当に配置しておけばいいでしょう。

他の容疑者の手がかりを作る

これと同様に、「容疑者A」「容疑者B」「乙」についても手がかりを作っていきます。これらは何でもよくて、フェイクとなる真実を明かす手がかりを配置してゆきます。

● 真実を固める手がかり

  • 甲と雑談:「複数の目撃証言」
  • 会場にいるが、疲れている様子:「複数の目撃証言」「丙が声をかけて、個人休憩室があることを教えている目撃証言」
  • 部屋で寝ている:「部屋に入る目撃証言」「扉のノブに残る乙の指紋」「寝る前にかけた電話の発信記録と乙の指紋」「乙がいる部屋は鍵のかからない個人用休憩室」

容疑者A

  • 会場にいる(パーティー開始~PM8:28):「複数の目撃証言」
  • 甲を追うが、見逃して会場に戻る:「複数の目撃証言」「施設内にある防犯カメラの映像」
  • 会場にいる(PM8:30~PM8:40):「複数の目撃証言」
  • 甲を捜して館内を歩き回る:「施設内にある防犯カメラの映像」

容疑者B

  • 会場にいる(パーティー開始~立食パーティー中):「複数の目撃証言」
  • 甲にパーティー後会うように仕向ける:「脅迫手紙の発見」
  • 会場にいる(乙がパーティーを退場~PM8:28):「複数の目撃証言」
  • 甲を追うが、見逃して会場に戻る:「複数の目撃証言」「施設内にある防犯カメラの映像」
  • 会場にいる(PM8:30~事件発覚):「複数の目撃証言」

これぐらいでいいでしょう。

読み手からすると、容疑者Aが「甲を捜して館内を歩き回る」というのが、怪しいと感じるように仕向けます。防犯カメラは所々しかないので、全容までは分からないとしておきます。これがフェイクという形になるわけですね。

「(三)真実を固める手がかり」を配置する

以上の内容を元に、これらを読み手に見せる順番に並び替えます。

今回はそれほど規模が大きいものでもないので、簡単に済ませるとしましょう。

● 読み手に見せる順番で「真実を固める手がかり」を配置する

  • 乙について
  • PM8:28以前
  • 容疑者A、容疑者Bについて
  • マジックショー中
    • 丙について

最初に「乙が犯人にはめられた」と感じさせるようにします。そして有効時間帯を絞って、マジックショー中に何かあったと示すようにします。

そして容疑者A、容疑者Bの行動を知ってゆき、事件は「脅迫しようとして殺して、二人が協力して乙に濡れ衣を着せたのではないか」という方向に持っていきます。

最後に丙についての手がかりを与えてゆくことで、事件を解決させます。

「(一)偽証を固める手がかり」と「(二)偽証を明かす手がかり」を配置する

それでは最後に、「(一)偽証を固める手がかり」と「(二)偽証を明かす手がかり」も配置して、手がかりの順番を完成させます。

例えば「(一)偽証を固める手がかり」として、「凶器には乙の指紋のみ発見された」「乙のアリバイはない」といった内容がになるでしょう。

「(二)偽証を明かす手がかり」には、「容疑者Aについて、携帯の発信履歴はない」といった内容を作れるでしょう。

● 読み手に見せる手がかりの順番

  • (偽証を固める)乙が犯行を認める証言
  • 乙について
  • PM8:28以前
  • 容疑者A、容疑者Bについて
  • マジックショー中
    • 丙について

事件の流れ

最初は犯人のトリックにはまって、乙が犯人で固まったように見せます。ですが乙には不自然なところが多々あり、そこから調査を始めてゆく……という流れにしようと思います。

細かい部分まで作り込んでもよいのですが、これぐらいでいいでしょう。

今回はアバウトに決めましたが、もし「展開」をしっかりと作り込みたい場合は、順番には気をつけるようにしましょう。

これで手がかり関係は全て完了です。

ここまでできたら、ミステリー部分はできたも同然ですね。

謎の開始時点の配置

手がかりを作り、それらの出す順番を決めたら、「どの時点で読み手に謎を示すのか」を決めます。これは「主人公が関わる開始時点を決める」と言えるでしょう。

これは手がかりを示す順番ではなく、読み手や主人公がどの時点から事件に触れ始めるのかを決めることになります。

主人公は謎を抱えながらも、さらに次々と事件が展開してゆくかもしれません。

例えば連続殺人事件の物語を作ろうとしていたとしましょう。すると、主人公には最初の殺人事件が起こった段階で、事件に関係させるということもできます。すると、主人公は時間軸を追っていくと、次々と殺人事件が起こってゆく……という展開にすることもできます。

これは、最初の殺人事件が起きた直後を開始時点としているわけですね。

事件が全て終わって謎に気づくこともある

もちろん、主人公が例えば刑事の場合など、事件の時系列が全て終わってから事件解決の依頼が来るという場合もあるでしょう。すると、事件が全て完了している時点が開始時点となり、そこから手がかりを得ていくという展開もあるでしょう。

このように、どの時系列の段階から主人公が関わるのかを決めることで、よりダイナミックに物語を展開させることもできます。

✎ 作成例:謎の開始時点の配置

さて、最後に謎がいつ起こるのかを決めましょう。

ここでは、主人公もパーティーに参加して、一度マジックショーや立食パーティーを楽しんでもらうようにします。

そして事件が発覚して、その瞬間に謎が生まれる……という流れにします。

執筆時は謎解き一覧表を使って推論してゆく

さて、以上で謎解きに必要な情報は全て作り込みました。

後は、この「謎解き一覧表」と「手がかりを与える順番」を元に執筆してゆけば、ミステリー部分は完成します

物語が展開する流れ

再度簡単に流れを説明すると、まずは謎の開始時点に到達したら、謎を発生させます。

そして「謎解き一覧表」と「手がかりを与える順番」を元に、手がかりを与えてゆきます。

「(二)偽証を明かす手がかり」が一つでも出された場合、その偽証の箇所に×印を記します。

「(三)真実を固める手がかり」が全て(もしくは真実を証明しうるに足るだけ)出されたら、その真実の箇所に○印を記します。

一つの手がかりは、他の偽証や真実に影響しうるので、影響範囲に注意しながら「謎解き一覧表」に○印や×印をつけていきます。

最終的に、有効時間帯におけるトリック部分の真実に全て○印がついたら、証明可能となり、謎は解明したとします。

必要に応じて、その後に謎の全体像の解説をさせるとよいでしょう。

後は、「ミステリー作品」に仕上げるだけ

これによって、ミステリーを矛盾なく簡単に、システマティックに構築することができるようになるでしょう。

ここまではミステリー要素のみについて説明してきましたが、次章からは「ミステリー」を「ミステリー作品」に仕上げる手順について説明してゆきます。

✎ 作成例:謎解き一覧表を使って推論してゆく

これまでに作成した手がかりを次々に配置してゆき、最後の「決定的な手がかり」は出さないようにしておくとしましょう。

主人公は脱出経路も確認するでしょうが、「体格が合わないので入れない」として、諦めさせるようにしておきます。

そして最後の手がかりを出さない状態で主人公は「謎は解けた」と言わせて、推理を披露してゆきます。丙はピンチになりますが、最後にお約束のように丙が「でも、証拠がないじゃないですか」と言わせます。

そこで主人公が「脱出経路内にあるはずだ。経路を壊してみよう。そこに遠隔装置があるはずだ」と言わせて、丙が諦めて観念する……としましょう。

これで、手がかりを含めて全てミステリー部分は完成です。

まだ謎の部分しか作り込んでおらず、物語の世界観やら人物設定は必要最低限以外は全然できていない状態です。なので、人によっては全然イメージできないかもしれません。

この辺の世界観や人物設定については、次章から作り込んでゆくことになります。

まとめ

  • 「手がかり」には、「(一) 偽証を固める手がかり」、「(二) 偽証を明かす(証言が偽りだと明かす)手がかり」、「(三) 真実を固める手がかり」の三種類がある。
  • まずは「真実を固める手がかり」を配置して、後で他の手がかりを配置する。
  • 手がかりは、トリックには無関係な「人物」「時間帯」から見せてゆく。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/horiavarlan/4290549806/ by Horia Varlan (modified by あやえも研究所)
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