ミステリーの方程式(八):ミステリーの十ステップ(第三幕)

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ミステリーの方程式(八):ミステリーの十ステップ(第三幕)2016-11-29T09:04:39+00:00

Project Description

概要

このページでは、ミステリー作りにおける、物語の流れを作る方法について説明しています。

ここでは、第三幕を構築する流れについて触れています。

  • ミステリーのクライマックスを盛り上げる方法とは?
  • 主人公の「劇的な逆転劇」を作る方法とは?
  • 後腐れなく、物語をエンディングに導くコツとは?

ステップ八:敵の反撃

ついに手がかりもほぼ出し尽くし、主人公は勝利したかのように見えるでしょう。

前のステップにおいて、主人公は自分の推論を披露するかもしれません。その推論はほぼ全て真実と同じであり、事件の全体像がついに判明します。犯人もほぼ特定され、そのトリックの多くが明かされるでしょう。

ですが、この段階で、敵(犯人)は最後の反撃に出ます

敵(犯人)の「最後の反撃」

手がかりを全て出し尽くしていない場合、その敵の反撃とは、「推論だけで犯人が降参するだろう」という甘い考えをしていた主人公の、そんな油断を突いたものかもしれません。そういう場合は、犯人は主人公に「決定的な手がかり」を要求するかもしれません。ですが、主人公はその手がかりは手にしていないのです。そのため、警察は「推論」だけでは犯人を逮捕できないと決断するかもしれません。

手がかりを全て出し尽くしている場合は、ミステリー部分は既に終了し、既に犯人だと判明してしまっています。ですが諦めきれない犯人は、主人公が思ってもいなかった事態を引き起こすことで、主人公に復讐をしようとするかもしれません。それは屋敷を爆弾で破壊することで、主人公たち全員を亡き者にして証拠や真実を全て隠滅し、自分だけ専用通路から逃げようとすることかもしれません。

そのように、犯人が事前に周到に用意していた仕掛けが発動するでしょう。

主人公に降りかかる「最大の危機」

以上のように、犯人は主人公の一瞬の油断を突き反撃に出ます。主人公はその反撃を許してしまい、勝利を目の前で取りこぼしてしまうでしょう。

サスペンス的に盛り上げたければ、犯人は高笑いをして舞台から去るように見せるといいでしょう。ここで犯人を逃がしてしまえば、二度と捕まえることはできません。

主人公は、自分の油断や甘さを悔やむかもしれません。読み手にとっては主人公が敗北してしまったと感じるでしょう。

このように、この段階では敵が最後の反撃に出て、主人公が最大のピンチに陥るという形になります。物語中では最も盛り上がる見せ場になるでしょう。

✎ 作成例:ステップ八:敵の反撃

さあ、ついに見せ場がやってきました。これまで主人公が優勢だったところを、敵に優勢にさせるようにします。

これによって駆け引きが生まれ、緊迫感が出るものです。

ここでは、主人公は「決定的な手がかり」をまだ手にしていない状態です。なので、敵はそれを元に「ただの推論でしかない」と言うでしょう。

そして主人公は証拠を出せずに、読み手は主人公が敗北したかのように感じます。

以下のようにできるでしょう。

● ステップ八:敵の反撃

  • 主人公が全ての推論を出し終える。そして丙が犯人だと示す。
  • しかし丙は「それが全てか」と主人公に確認して、高笑いをする。「それらは全て推論でしかない。何一つ重要な手がかりがない状態で、『可能性があった』だけの話で犯人に仕立て上げないでくれ」と言う。
  • 主人公は「決定的な手がかり」がなく、それ以上追及できない。
  • 警察の応援が到着して、結果として乙が犯人として連行されることに決定する。丙は高笑いをしながら、事件が終わったと立ち去ろうとする。
  • 主人公は崩れ落ちて、自分の無力さを悔やむ。

これぐらいでいいでしょう。

次は最後、主人公の再逆転をして、謎を全て明かします。

ステップ九:「決め手」の発動

敵は最後の反撃に出て、ほぼ成功したかのように見えます。

ですが、まだ終わっていません。犯人は逃げ切ったわけでもありませんし、舞台からまだ去ってはいないのです。最後の一瞬だけ、主人公はこの事態にあらがう術を得るでしょう。

「決定的な手がかり」が出ていない場合

手がかりが全て出し尽くしていない場合、敗北を喫したかのような主人公に、最後にちょっとしたきっかけが与えられるかもしれません。それは些細な出来事かもしれません。ですがそれが、最後の逆転勝利を生む手がかりになるのです。

主人公は「決定的な手がかりを得る手がかり」を得るでしょう。それによって主人公は、「決定的な手がかり」がある場所を特定できるようになるでしょう。

その決定的な手がかりを手にすることで、主人公は最後の最後で逆転勝利を得るのです。

「決定的な手がかり」が既に出ている場合

手がかりが全て出し尽くされてしまっている場合は、主人公は最も大切なものを守るために、二番目以降に大切にしていたことを手放さなければならないかもしれません。

例えば恋愛要素を入れている場合、一番大切なものは「恋人の命」で、二番目以降が「自分の命」や「相手に好きだとばれないこと」だったとしましょう。すると、二番目以降に大切にしていたことを捨て、身を挺して恋人を助けようとすることかもしれません。

そして生き残ることで、証拠を持ち帰り、主人公は最後の最後で逆転勝利を得るのです。

「大いなる賭け」

サスペンス的に盛り上げたい場合、それは時に、主人公にとっては大切なものをかけた「大いなる賭け」になる場合があるでしょう。時に、それを実現するために、「大いなる賭け金」を提示しなければならないかもしれません。

例えば主人公が刑事や探偵なら、「この推論が間違っていたら、逆に自分が犯人に殺される」とか、「この推論が間違っていたら、探偵という自分が大切にしている職業を失う」とか、場合によっては「大切な人が有罪になってしまう」といったことがあるかもしれません。

そのように「賭け金」が高ければ高いほど緊張感が生まれ、主人公がそれに飛び込む勇気を試されることになり、盛り上がるでしょう。

主人公の勝利

結果として主人公は勝利を収め、犯人は自分が敗北したことを知り、崩れ落ちるでしょう。

場合によっては、犯行を認めた犯人は、なぜその犯行をしたのか、その経緯を語るかもしれません。そうすることによって、謎を全て明かします。

これで、謎解きは全て完了です。謎は明かされ、事件は解決しました。

✎ 作成例:ステップ九:「決め手」の発動

さあ、謎解きもこれで最後です。

ぎりぎりの瀬戸際において主人公は最後の手がかりを手にして、事件に終止符を打ちましょう。

「決定的な手がかりを得る手がかり」を作る

ここでは「決定的な手がかり」が最後に残っているので、その手がかりを思いつくように適当なきっかけを与えて、主人公にその「決定的な手がかり」の在処を思いつかせるようにしましょう。

例えば刑事物でも、事件の最中に「子どもとの全く関係ない会話中にヒントを見つけて、それをきっかけに事件の真相が分かる」とかあるものです。それと同じように、ここでも適当なきっかけを与えて、主人公に最後の手がかりを与えましょう。

「賭け金」を設定する

主人公には、「もし推理が失敗したら、公務執行妨害で逮捕」という賭け金を背負ってもらうことにしましょう。これで緊張感を生むことができるでしょう。

そして決定的な手がかりを手にした後は、犯人である丙は適当に動機を語らせます。これは当てつけで構わないでしょう。

以上より、このステップは次のようにできるでしょう。

「決め手の発動」を仕上げる

● ステップ九:「決め手」の発動

  • 崩れ落ちた主人公に、ふいに「決定的な手がかりへの手がかり」が訪れる。扉の立て付けが悪くて少ししか開かず、警察が中に入れない状況で、丙が小柄で、狭い扉をするりと抜けるのを目の当たりにする。それで主人公はぴんと来て、「決定的な手がかり」の在処が分かる。
  • 「待ってくれ!」と声をかけて、最後の推理のチャンスを願う。結果的に「もし推理が失敗したら、主人公は公務執行妨害で逮捕される」という賭け金を出すことで、最後の推理のチャンスを得る。
  • 「決定的な手がかり」の推論をする。そして丙にしか入れなかった場所を取り壊せば、そこに遠隔で殺す仕掛けがあると伝える。
  • 警察が調べようとすると、丙はそれを止めて、敗北を認める。
  • 丙による自供。理由は適当に、甲との過去の確執があったとかを説明する。
  • それによって乙は逮捕されるのを免れ、丙が逮捕される。謎は全て解明し、タイムリミットの朝が来て、事件が解決する。

これで謎解きは終わりです。

残るは結末のみです。

ステップ十:結末の説明

最後のステップが、結末の説明です。

謎は解決しました。謎が解決したことによって、主人公は肩の力を抜くかもしれません。そんな状態を描くことで、読み手も「元の日常に戻ってきたんだ」と知って、緊張を解放することができるのです。

事件によって得たもの

ひょっとすると、謎や事件が、主人公たちに少し変化を与えているかもしれません。主人公に恋人がいたとすれば、恋心を知られてしまっていたりするかもしれません。忘れかけていた大切なものを、大切にしようと心を入れ替えることかもしれません。

そうすることによって、主人公は大切なものを新たに認識して、新しい日々を送り始めることでしょう。

犯人に対するフォローもする

殺人事件などの犯人がいる場合、犯人は「自分が間違っていた」と認めて後悔するようなエピソードも入れておくと、後腐れがなくなってよいでしょう。

例えば殺したのは自分の誤解だったとか、相手の愛情に今さらながら気が付いたとか、そういった後日談を入れることで、よりすがすがしく物語を終えることができます。

結末では基本的には幸せな描写をして、緊張感を解き放つのが基本です。緊張感を持ち続けたままではエンターテイメントにならないためですね。

ですが場合によっては、サスペンス的に衝撃な結末で終わらせることもあるでしょう。どちらでも結構ですので、結末をしっかりとつけて、物語を終了させます。

✎ 作成例:ステップ十:結末の説明

さて、最後は物語の結末です。

ここでは、主人公は「乙との関係」を大切にしていたので、それを強調するようにして幸せ感を味わって終了させるようにしましょう。

ついでに犯人の丙も、自分は間違っていたんだと気付かせるようにフォローもしておくようにすると、後腐れがなくなっていいでしょう。

ということで、結末は以下のように構成します。

● ステップ十:結末の説明

  • 後日談。乙が無事に無罪放免になり、主人公と会う。そして自分の人生において、探偵になるきっかけを与えてくれたことと、そういう人がいたからこそ今の自分があるのだと感謝できるようになる。
  • 丙は、甲が丙にとっての昔の師匠だったとしておくとしましょうか。すると、師匠が厳しいながらも自分のことを思ってくれていたのだと知り、殺してしまったことを後悔して涙するというフォロー。
  • 「師匠の存在に感謝しないとな。だからきつねうどんでもおごってくれ。狐憑きトリックにしてやられたから、今度は食ってやる」みたいに乙が主人公と笑ったりして、綺麗にまとめてハッピーエンド。

さて、これで無事に物語も終了です。

ここまで構成例を見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

手がかりの過程や推論部分はカットしましたが、それらもしっかりと入れて構成するようにしましょう。

ポイントは、純粋な謎解きだけではやはり数学的・論理的な面白さだけになるので、サスペンスや感動要素を入れてまとめると、楽しめる幅の広い、いい作品になると思います。

この構築例を参考に、是非ともいい「ミステリー作品」を作って下さいませ。

視点などを考慮して仕上げる


最後は、これまで作成した展開を元に、以下のような内容を考慮して仕上げます。

  • どのような視点で読み手に提供するかを決める
  • ゲームシナリオや映画脚本の場合、どのような美術設定にするかを決める
  • 文章量はどの程度にするかを決める
  • スムーズに執筆できるレベルまで、肉付けをしてゆく

そして展開がしっかりと把握できたら、実際に執筆に移りましょう。

楽しみながら執筆をする

さて、ここまで長い間「ミステリー作品」の構築方法を説明してきましたが、ここで説明は完了です。

後は執筆するだけです。設計さえしっかりと作り込めていれば、筆が止まることもなく、きっと面白い作品に仕上がることでしょう。

もし執筆時に設計段階の不備が見つかったら、再度設計に戻って調整して、そして執筆をするようにしましょう。

貴方の作品を最も楽しむのは、貴方自身です。

是非、楽しんで執筆をして下さい。

まとめ

  • 「ステップ八:敵の反撃」では、主人公に最大の危機が訪れる。
  • 「ステップ九:決め手の発動」で、主人公は逆転勝利をして、事件を解決に導く。
  • 最後では、犯人に犯行を後悔するような内容を入れることで、後腐れをなくすようにしよう。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/snakphotography/5336837806/ by Stephen Nakatani (modified by あやえも研究所)
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