サスペンスの方程式(一):テーマの構築

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サスペンスの方程式(一):テーマの構築2016-11-29T09:04:38+00:00

Project Description

概要

この教材は、ストーリー作家向けに、「緊迫感のある物語(サスペンス)」や「駆け引き」について、そのプロットの構造と作り方を説明しています。

  • 緊迫感のあるプロットを作る方法とは?
  • 緊迫感を作るのに必要な、「二つの要素」とは?
  • 緊迫した物語を導き出す「テーマ」の書き方とは?

「緊迫する展開」を作る方法

ここでは、小説家やシナリオライター志望者向けの「緊迫感のある物語(サスペンス)」や「駆け引き」について、そのプロットの構造と作り方を説明しています

この方法論を用いることで、緊迫感があり、駆け引きを含む物語を、より短時間で、良質なプロットを構築することができるようになるでしょう。

「緊迫する展開」を作る秘訣

「緊迫する展開の物語」を「サスペンス」と呼ぶことにしましょう。サスペンスとは、精神的に不安や緊張感を保ちつつ物語を進めるという物語の進行方法です。実はサスペンス的要素は「サスペンス」というジャンルに限らず、アクションものや、推理ものなどでも多く用いられています。

例えばアメリカのドラマ「24-TwentyFour-」「プリズンブレイク」などだけでなく、映画「ボディ・ガード」、「ダイ・ハード」「スピード」などのアクション映画や、ホラーサスペンス映画「SAW」、漫画「北斗の拳」、「デスノート」といった作品も、基本はサスペンスになります。

また、恋愛ものでもバトルものでも、サスペンスに含まれる「駆け引き」が多く使われます。駆け引きがあることで、どのジャンルにおいても読み手を物語に引き込み、ハラハラさせる緊迫感を与えることができるでしょう。

そして読み手の予想を裏切りたいとか、読み手が読んだ後に「あの場面はあのための伏線だったのか!」と思わずうなるような伏線を作りたい、読み手が驚くような解決法で、ドラマティックな逆転劇を作りたい、読み手にインパクトを与える衝撃の結末を作りたい、そういう場合に非常に役立つ内容になるでしょう。

トップダウンを用いたアプローチ方法

ところで、物語の作り方には二種類の方法があります。一つは「個別の場面と場面をつなぎ合わせて作る」という考え方で、それをボトムアップアプローチと言います。もう一つは、逆に物語を「その物語を作る一つの目的を考えて、その目的を実現するように、必要な要素(場面)を割り当ててゆく」という考え方で、それをトップダウンアプローチと言います。

ここではまずは個別のイメージを思い浮かべて、そのイメージをトップダウンアプローチを用いてまとめてゆくという方法を用います。簡単に言うと、「アイデアをこのような図式に当てはめたら、サスペンスや駆け引きは簡単に作れますよ」という、そのような「図式」を説明してゆくわけですね。

これによって、短時間で、良質なサスペンスや駆け引きを構築できるようになるでしょう。

サスペンスの構造概要

それではこれから、サスペンスの作り方について一つ一つ説明してゆきます。最初は少し抽象的な内容が続きますが、後の説明に必要になることなので、しっかりと把握しておきましょう。

「はじめに」で説明したように、サスペンスとは「精神的な不安」や「緊張感」を保ちつつ物語を進めるという物語になります。

「サスペンス」の定義

「サスペンス」の範囲を明確にするために、サスペンスの定義付けを行っておきましょう。

(定義) サスペンスとは、「精神的ストレスを与えて、その後にストレスを解放する過程」である。

例えば、「突然暗殺者から狙われるようになってしまった」とか、「突然無実の罪を着せられてしまった」とか、「突然因縁をつけられて脅されてしまった」など、そのような精神的ストレスを生み、そして結果的にそのストレスを解放するたぐいのものがサスペンスになります。

サスペンスでは感動や謎解きという要素は含まず、純粋に精神的な圧迫感を与えるもののみをサスペンスとします。サスペンスものの映画や脚本では、終盤に謎解きやどんでん返しのような要素も多く含まれがちですが、それはミステリー的要素として、サスペンスには含まないものとします。

サスペンスは「ストレス」と「駆け引き」で成り立っている

サスペンスは、「ストレス」と「駆け引き」という二つの要素で成り立っています。

ストレス

ここで言う「ストレス」とは、読み手(主人公自身)に迫り来る危機感のことです。精神的な不安感や焦燥感を生み出して、読み手に「逃れられないストレス」を与えます。これによって読み手を「物語に引き込む」ことができるようになります。

例えば、「主人公の命が危ない」、「安全が脅かされる」「お金が奪われるかもしれない」といったものになります。

駆け引き

「駆け引き」とは、主人公や敵がどのように相手を打ち負かして勝利を得るか、という要素になります。

例えば、読み手が思いもしなかった攻略法で、主人公が敵に打ち勝つような過程ですね。この駆け引きを経て勝ったり負けたりすることで結末を迎えることによって、読み手はストレスから解放されます。

このような性質のために、サスペンスとは「読み手に精神的なストレスを与えるもの」であり、その後「ストレスを解放(発散)するもの」だと思いましょう。人は生きていく上で適度なストレスが必要で、ストレスに対処することで身体的・精神的なバランスを取る力が養われます。いわば筋肉と同じで、適度に神経を使うことで精神力が鍛えられるということですね。

人は日常に変化がない場合、安定していて一種のストレスがなくなるため、別のストレスを求めるようになります。そういう場合、物語などから精神的ストレスを得ることで、適度なストレスを得ようとします。これが「サスペンス」という要素が求められる理由の一つでもあります。

テーマを決める

これから実際にサスペンスの構造や作り方について説明をしてゆきます。

ですがその前に、まずは自分がどんなサスペンスの物語を作りたいのか、イメージしてみましょう。

貴方が作りたいのはどのような物語でしょうか。その世界観や登場人物、物語の内容を、アバウトでいいので書き出してみましょう。

アイデアを元に、テーマを作る

そして、書き出した内容をシンプルに表現してみましょう。その最も基礎となる筋をここではテーマと呼ぶことにします。テーマは次のように書き出すとよいでしょう。

テーマ:
「ヒーローが「(a-1)ストレス」という問題を抱え、「(b-1)駆け引き」を通して、そのストレス(問題)を解決している物語」
なお、ここでは「ヒーロー」とは、「サスペンスの中で最も危機を背負い、同時に駆け引きを行う中心的人物」を指すことにします。

「ストレス」と「駆け引き」の内容

「(a-1)ストレス」とは主人公が抱えることになる問題のことです。例えば刑務所ものでは「無実の罪を着せられて刑務所に入れられることになった」などがあり、ギャンブルものでは「お金を奪われないために、お金を奪わなければならない状況になった」、刑事物では「犯罪に巻き込まれ、事件を解決しなければならなくなった」などがあるでしょう。

「(b-1)駆け引き」とは、文字通りどのような駆け引きがあるのかを示します。「看守にばれないように脱獄の準備をする駆け引き」「賭けゲームに参加して、ゲームに勝つという駆け引き」「犯人とやりとりして、そこから犯人を逮捕するという駆け引き」などになるでしょう。

ストレスと駆け引きの具体例

実際に具体例で見てみましょう。映画「ショーシャンクの空に」では、主人公がある日突然「無実の罪を着せられて、刑務所に服役することになる」というストレス(問題)を抱えます。そして「刑務所の中で脱獄するための看守や服役囚との駆け引き」をしてゆきます。そして最終的には脱獄を達成して、ストレス(問題)を解決します。

日本のドラマ「ライアーゲーム」では、主人公はある日突然「『ライアーゲーム』というお金を奪い合うゲームに参加させられてしまう」というストレス(問題)を抱えて、「様々なゲームで勝負するという駆け引き」を通して、問題を解決します。

映画「スピード」では、主人公である警官のジャック(役者はキアヌ・リーブス)が、ある日突然「爆弾魔からの脅迫」というストレス(問題)を抱えて、「爆弾魔とやりとりして、爆弾魔を逮捕するという駆け引き」を通して、問題を解決します。

このように、まずはテーマを作るために、物語のヒーローがどのようなストレス(問題)を抱えるのか、そしてどのような駆け引きが行われるのか、その二つを抽出してみましょう。なお、詳細は後ほど作り込みますので、ここでは簡単に書くだけで結構です。特に駆け引きは、「ストレスを回避するための駆け引き」程度でも大丈夫です

✎ 作成例:これから作る物語をイメージする

さて、それではこのようなコラムにおいて、実際にサスペンス物語を作る具体例を示してゆきたいと思います。

まず最初は、どのような物語にしたいのか、イメージを書き出します。

ここでは以下のようなイメージの物語を作ろうと思います。

「サスペンスもの」「舞台は現代の日本」「学校もの」「狂った上級生から、いきなり因縁をつけられて、『同級生と殴り合え』と言われる」「誰も信じられない状況」「ラストは上級生に打ち勝ち、上級生が退学になることで解決する」

それでは実際に、アイデアからテーマの各要素である「ストレス」と「駆け引き」を割り当ててみましょう。

  • (a-1)ストレス:学校の上級生から因縁をつけられる
  • (b-1)駆け引き:上級生からの因縁を回避できるようにする駆け引き

この程度でいいでしょう。

なので、今回作ろうとする物語のテーマは次のようになります。

今回は本一冊分程度のシンプルなサスペンスの構造を説明します。もちろん骨格さえできていれば、本数冊分に引き延ばす要素をいくらでも追加することが可能です。

それでは次から、ストレスを与えるための要素や駆け引きの要素について、構築してゆくことにしましょう。

まとめ

  • 緊迫感を作るには、「精神的ストレスを与えて、その後にストレスを解放する」ことが大切。
  • サスペンスは、「ストレス」と「駆け引き」で成り立っている。
  • サスペンスとは「読み手に精神的なストレスを与えるもの」であり、その後「ストレスを解放(発散)するもの」になる。
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