サスペンスの方程式(二):ストレスを作る

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サスペンスの方程式(二):ストレスを作る2016-11-29T09:04:38+00:00

Project Description

概要

このページでは、サスペンス作りにおける、読み手を惹きつける方法について説明しています。

  • 読み手を物語に没頭させる方法とは?
  • 緊迫感を作り、読み手を引きつける「三つの要素」とは?
  • 実際に緊迫感を構築する具体例とは?

ストレスを与えるための三つの要素

次に、ストレスを与える要素について説明します。

読み手にストレスを与えることで、読み手は緊迫感や不安感を覚え、その結果読み手を物語に没入させることができます

ではいったい何を満たしたら、読み手にストレスを与えることができるのでしょうか。そしてどのようにしたら、強烈にストレスを与えて物語に引き込むことができるのでしょうか。

ストレスを与えるために必要な要素は三つあります。それを以下に列挙します。

(a-2a)悪意の存在

(a-2b)主人公の危機(大切なものを失う危機)

(a-2c)回避不能な状況

これらをまとめたものを、「(a-2)ストレスの内容」としましょう。

「(a-2)ストレスの内容」と「(a-1)ストレス」との関係を、に示します。(太枠・赤文字が今回追加した要素です)

この三つを満たせば読み手にストレスを与えることができます。また、各要素を強く示せば示すほど、強烈なストレスを与えることができるようになるでしょう。

以下でそれぞれの要素を説明します。

ストレスを与える構成要素(一):悪意の存在

まず最初に必要なのが、(a-2a)悪意の存在です。

例えば刑務所もので言うと、収監された主人公は看守から因縁をつけられて、目をつけられるでしょう。それは、主人公が医者や建築設計士などの職業であった場合、「お前(主人公)は利口そうだ。学のない俺が一番嫌いな種類の人間だ」などという、無茶で理不尽な理由であったりするかもしれません。この場合の悪意は、「看守から主人公への不快感」になります。

主人公が芸能人や社会的に成功者である場合、親類が誘拐されたり、脅迫されて金を要求されるといったこともあるかもしれません。この場合の悪意は、「成功者への嫉妬」や「復讐心」になるでしょう。

また、主人公は狙われるのではなく、最初は何らかの形で巻き込まれるという場合もあります。例えば、主人公が何かの用事で通りかかったところを、テロリストの陰謀に巻き込まれる、というものです。ここでの悪意は、主人公を狙ったものではないにしろ、「主人公を含めた一般市民」に対する「一般市民を人質を取って金を要求するなどの悪意」があることになります。

「悪意の存在」がストレスを作る

このように、主人公に対する何らかの悪意があることを明確にしておきます。その悪意とは犯人にとっては復讐や憂さを晴らすだけでなく、快楽のためであったりするかもしれません。ただ「何となく気にくわないから」でもいいでしょう。その悪意は、主人公にとって不条理であることが多いでしょう。

注意が必要なのは、「悪意の存在」だけが必要であって、「悪意の持ち主」は明解である必要はないことです。ミステリー的要素も含ませたい場合、犯人や黒幕が誰かを示したくないものです。その場合、悪意の持ち主は全くの不明で構いません。

また、「悪意の目的」も必須ではありません。これもミステリー要素になりがちですが、「理由が何か分からないけど、自分たちを苦しめようとしているのだけは確か」と分かるだけでも大丈夫です。

「悪意の存在」だけが必須ということになります。もし悪意の存在だけではイメージしにくい場合、「悪意の持ち主」「悪意が向けられる対象」「悪意の目的」の三つを考えるとよいでしょう。

ストレスを与える構成要素(二):主人公の危機(大切なものを失う危機)

次に必要になるものが、(a-2b)主人公の危機です。

危機とは何かというと、「大切にしているものを失う危険」のことです。

「大切なものを失う危機」の例

例えば主人公は「お金が大切だ」と思っていたとしましょう。「お金があることで生きることができる」とか、「病気の家族を病院に連れて行ける」といった理由があるかもしれません。この場合、そのお金を奪われるのは危機になり、主人公(読み手)にとって大きなストレスを生むことになります。

他にも、大切な人がいたとすれば、その人が人質に取られる危機かもしれません。友情が大切なら、その友情を引き裂かれるように、仲間同士で傷つけ合わなければならなくなるといった危機かもしれません。

また、一般的に言うと、自分自身の生命や安全については誰もが望んでいるものでしょう。なので、生命や安全が脅かされることも、普遍的にある危機でしょう。

例えば刑務所もののサスペンス作品で、主人公の大切なものが「自分の身の安全」だったとしましょう。しかしその刑務所では、看守が囚人に対して気にくわなければ殴る蹴るや、好き放題することができる状況だったとします。看守に逆らった囚人がボコボコに打ちのめされる姿を目の当たりにすると、囚人の一人である主人公は、生命と安全の危機を感じてストレスを持つわけですね。

「大切なもの」は、お金や身の安全などだけでなく、時には「計画」や「野望」といったものもあるかもしれません。例えば映画「スリーパーズ」では、幼い頃に児童保護施設で虐待を受けた主人公たちが、教官に復讐をする計画を立てます。その「復讐を完遂すること」こそが、主人公たちにとっての「大切なもの」になるわけですね。

このように、読み手にストレスを与えるために、主人公の「大切にしているもの」と、「それを失う危機」が必要になります。

ストレスを与える構成要素(三):回避不能な状況

ストレスを与える最後の要素は、その危機が(a-2c)回避不能な状況であることです。つまり、ストレス(問題)を受け入れるしか術はない状態であることですね。ストレスから簡単に逃げられる可能性が用意されてしまっていては、物語が全て滑稽になってしまうためですね。

受け入れるしか術はない状態にする方法には、次の二つの方法があります。

状況的に逃げられない状態を作る。

これは、物理的にその場から逃げられないようにする方法です。例えば、「刑務所なので逃げられない」「テロリストにビルを占拠されているので逃げられない」「絶海の孤島に取り残されたので逃げられない」「出口が分からないので逃げられない」「無実なのに警察が自分の逮捕に向けて動き出したので逃げられない」など。

精神的に逃げられない理由を作る。

こちらは、精神的に、「逃げたら最も大切なものが失われてしまう」という理由をつける方法です。「自分が問題から逃げると家族が傷つくから逃げられない」「大切な人の願いがあるから、逃げられない」「問題から逃げてもどこまでも追いかけてくるから逃げられず、戦うしかない」など。

このように、ストレスを回避できない状況を作る事で、読み手にストレスを植え付けることができます。

ここで、先ほど作ったテーマの「(a-1)ストレス」から、この三つの要素を導き出しましょう。これができれば、後は時系列に並び替えるだけで確実にストレスを構成できるようになります。時系列に並び替える方法は、次章で説明します。

✎ 作成例:ストレスを与える三つの要素を作り込む

それでは実際に、ストレスをさらに作り込みましょう。先ほど作ったテーマにおけるストレスは、以下のものでした。

  • (a-1)ストレス:学校の上級生から因縁をつけられる

これを元に、「(a-2a)明確な悪意の存在」「(a-2b)主人公の危機(大切なものを失う危機)」「(a-2c)回避不能な状況」の三つの要素に拡張します。

「狂った上級生から、いきなり因縁をつけられて、『同級生と殴り合え』と言われる」「誰も信じられない状況」「ラストは上級生に打ち勝ち、上級生が退学になることで解決する」というところから、いろいろとイメージをふくらませて決めていきましょう。

「悪意の存在」を作る

「(a-2a)明確な悪意の存在」については、主人公に対する悪意を作ります。ここでは純粋なサスペンス部分のみを説明しますので、分かりやすいように「悪意の持ち主」「悪意の対象」「悪意の目的」を作っておきます。

  • 悪意の持ち主:上級生代表(と、上級生代表が支配する上級生全員)
  • 悪意の対象:下級生全員への悪意があって、その上で主人公は特別に目をつけられる
  • 悪意の目的:自分たちの欲望(自尊心)を満たすため

「悪意の持ち主」は、上級生全員としますが、上級生の代表を作って、そのキャラを打ち負かせたら勝ちというようにします。なので敵の親玉は「上級生代表」になります。

「悪意の目的」は、理不尽でも何でもいいので、ここでは適当に「自分の欲望を満たすため」でいいでしょう。

「主人公の危機」を作る

「(a-2b)主人公の危機(大切なものを失う危機)」は、いろいろと案があるでしょう。友だちや恋人を大切にすれば、その友情や愛情を失う危機かもしれませんし、お金を大切にすれば、そのお金を奪われる危機かもしれません。

ここでは「退学」というキーワードから、「学校に在籍し続けること(学校を無事に卒業すること)」を大切なものにしましょう。

「回避不能な状況」を作る

「(a-2c)回避不能な状況」では、「ストレス(問題)から逃げられない」という要素を作っておきます。

なら、ここでは「大好きだったけど死んだ母が、『高校だけは無事に卒業しておくれ』という遺言をしていた」として、精神的な制約にしましょう。

ついでに「落ちこぼれが集まる学校」という設定にしておいて、転校もできないとしておきます。

最終的にできた「ストレスの内容」

さて、これでストレスを与える要素ができました。まとめると以下のようになります。

  1. (a-2a)悪意の存在:「上級生の欲望を満たすための、下級生への命令」
  2. (a-2b)主人公の危機(大切なものを失う危機):「学校に在籍し続けること(学校を無事に卒業すること)」
  3. (a-2c)回避不能な状況:「学校を卒業してという母の遺言」「落ちこぼれ学校で転校不可」

図に示すと、次のようになります。

これでストレスの内容を作り込むことは完了です。それでは次に、駆け引きの概要を作ってゆきましょう。

まとめ

  • ストレスを与えれば、読み手は物語に没頭する。
  • 「悪意の存在」、「主人公の危機(大切なものを失う危機)」、「回避不能な状況」を作り込むことで、読み手にストレスを与えることができる。
  • 「回避不能な状況」が、物語に緊迫感を与える。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/huffstutterrobertl/8277398767/ by ROBERT HUFFSTUTTER (modified by あやえも研究所)
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