サスペンスの方程式(五):サスペンスの十ステップ(第二幕)

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サスペンスの方程式(五):サスペンスの十ステップ(第二幕)2016-11-29T09:04:38+00:00

Project Description

概要

このページでは、サスペンス作りにおける、物語の流れを構築する方法について説明しています。

ここでは、第二幕の流れを作る方法について触れています。

  • 駆け引きエリアを成功させる「二つの要素」とは?
  • 中盤でも緊張感を持続させるコツとは?
  • 後半に威力を発揮する「伏線」の効果的な配置法とは?

ステップ五:表面的ルールの説明

それではここから、「駆け引きエリア」に入ります。ストレスを与えることは一段落して、ここから駆け引きが始まります

前章で作った「(b-2)駆け引きの内容」を次図に示します。ここからはこの内容を用いて駆け引きを構成してゆきます。

駆け引きをする上で必要な要素

駆け引きを始める上でまず最初に必要なのは、「ステップ五:表面的ルールの説明」です。このステップで、駆け引きに必要な情報を一つずつ読み手に与えてゆきます

このステップで必要な要素は、以下のものになります。

表面的なルールの説明

主人公を取り巻くルールを、一つ一つ説明してゆきます。

ルールブレイカーで用いるルールの前振りと伏線

後ほどルールブレイカーで必要になるルールや前振りも、ここから説明してゆきます。

それぞれの要素について、以下で説明してゆきます。

(一) 表面的なルールの説明

主人公は新しい世界に入り、そこでの毎日が始まるでしょう。敵からいつ脅威の手が伸びてくるか分からない状態ですが、すぐには敵の脅威は訪れないでしょう。

そして少しずつ周囲の状況を把握してゆきます。信頼できる仲間を見つけるかもしれませんし、逆に信頼できそうな人から裏切られてピンチになり、紙一重で助かるかもしれません。

ここでは主人公にも敵にも大きな変化はありません。ピンチになったとしても、ぎりぎりのところで切り抜けることができるでしょう。

そうすることで、主人公は少しずつ、自分を取り巻く環境にルールがあることを知ってゆきます

ルールを知ってゆく流れ

例えば刑務所もので、「主人公(囚人)は看守に弱い」というルールがあったとしましょう。

ですが、看守はどんな時でも囚人に危害を加えられるわけではないのです。朝の点呼の時間では、看守は主人公を見つけたとしても、睨み付けるだけです。これにより、主人公は「看守も何らかのルールに従わなければならない」状態であると知るのです。

主人公は危機を前にして命拾いをしたり、他者の企みが失敗する姿を見て、一つ一つルールを知ってゆくことになります。つまり、主人公だけでなく、敵も何かしらのルールに縛られていて、その上で駆け引きをしなければならないということを知ってゆくわけですね。

ルールを小出しにしてゆく

ここで「(b-2a)ルールの存在」を用います。

この段階では、ルールは断片的に紹介していく方が効果的になるでしょう。これがサスペンスとミステリーの相性がいい理由になりますが、ルール(もしくはヒント)を小出しにすることで、真のルールに近づいてゆくミステリー的な面白さを演出することができます。

例えば「起床と点呼の時間は安全」「食事の時間は、囚人が騒動を起こさない限り安全」「労働の時間は、他の看守がいれば安全」……などのように、場面を小出しにしてゆきます。

そうすることによって、主人公は次第に「安全な時間や場所」を見つけてゆき、それを組み合わせて、最終的な答え(ルールブレイカー)である「看守は刑務所長に弱い」というルールに近づいてゆくでしょう。

また、時には読み手の判断を誤らせるフェイクを配置して、読み手を欺くこともできるでしょう。

「裏切りの繰り返し」で、読み手の正常な判断力を奪う

ここで有効な技法が、読み手の正常な判断力を奪うことです。

この段階は、何が主人公にとって安全か、そうでないかが分からない段階です。それを利用すれば、主人公にとって味方となるキャラや役立つ現象を、主人公の危機のように見せることができます。また逆に、主人公にとっては危害となるキャラや現象なのに、主人公にとっては利点であるように見せることもできるでしょう。

そうすることによって、「何も信じられない状態」にすることができます。

簡単な例で言うと、この段階に入ってすぐに親切そうなキャラを登場させて、主人公に有益なアドバイスを与えます。そして主人公がそれに従った直後、そのキャラは表情を一変させて、どす黒い笑みを浮かべて主人公を陥れようとします。このように「有益そうな人が裏切る」という出来事を一度か二度繰り返すだけで、簡単に「誰も信じることができない」という緊迫した空気を作ることができます

これによって、この後主人公が真に有益なルールを見つけたとしても、読み手は「罠ではないか」とか「罠にはまってしまった」と錯覚してしまうのです。

刑務所ものでは、主人公が刑務所長から「脱税の手伝いをしてくれ」と言われるかもしれません。本当はそれは主人公にとっては看守よりも強みを得るきっかけなのですが、主人公と読み手はこれまで親切そうな申し出を受けて騙されてきているので、「もう騙されない」という気持ちがあるものです。だから相手の真意を探ろうとするでしょう。

読み手に誤解を生む「フェイク」や「ミスリード」を配置する

そこで主人公は、刑務所長が背を向けてニヤリと笑うのを見逃しません。刑務所長の机の上に拷問の本があるのを見つけるかもしれません。「人が必要なんだ」という刑務所長に、主人公はその申し出を断るわけですね。この拷問本はフェイクでしかないのですが、それでも読み手は「ああ、よかった。刑務所長の罠にはまらなくて。絶対に拷問の実験台にされるだろうからな」と感じるわけです。

ですが、主人公に事情があって刑務所長を手伝わなければならなくなった時、読み手は「ああ、刑務所長の罠にはまってしまった。もうだめだ!」と、本来は有益なことをあたかも罠にはまったかのように見せることができます。このように、読み手に誤った予想をさせることを「ミスリード」と言います。これは、後の「ステップ六:ルールの攻略法を知る」で説明します。

読み手の正常な判断力を奪えば、中盤は成功する

このように読み手の正常な判断力を奪うことで、一つ一つのルールを示すにも不安感や緊迫感が増して、いいサスペンスになるわけですね。

また、これを応用することで、絶対に必要なものをそうでないように見せたり、どうでもいいものを重要そうに見せたりすることもできます。それによって、重要でもないアイテムを敵に奪われるような出来事を起こしたとしても、読み手は「大切なものが奪われて、主人公が大ピンチになってしまった!」と認識させることもできます。逆に、重要なアイテムを重要でないように見せて、後ほどそれを使って勝利する場面で「あれはあんなに重要なアイテムだったのか!」と驚かせることもできます。

これらは、いわゆる「ひっくり返し」や「どんでん返し」といった、後で読み手の予想を裏切る方法にも通じるでしょう。

この段階は少し中だるみしやすい場所でもあります。「読み手の正常な判断力を奪うこと」が、緊迫感を持続させる大きなテクニックです。

(二) ルールブレイカーで用いるルールの前振りと伏線

このステップでもう一つ必要な要素が、ルールブレイカー(ルールの抜け道)で用いるルールの前振りと伏線です。

ルールブレイカーで用いる情報やアイテムなどは、事前に取得しておく必要があります。そのため、必要な情報やアイテムをこの段階から少しずつ配置しておく必要があるでしょう。ルールブレイカーを正当化するようなルールも、その中に含まれているかもしれません。

前振り、伏線は「危険そうに見せる」ように配置する

これも読み手にあからさまに「必要になりそう」と伝えるよりかは、さりげなく配置したり、逆にそれに近づくのは危険そうに見せると効果が大きくなるでしょう。

主人公を何かしらの小さなトラブルに巻き込み、その対処をさせることで、ルールブレイカーで必要な情報やアイテムを取得させる……ということも可能でしょう。そうすることで、読み手にルールブレイカーの前振りを「重要なものではない」と錯覚させることができるでしょう。

「主人公が知っていること」を「読み手に知らせる」必要はない

ここでは、主人公と読み手に理解度の差を出す必要があるかもしれません。主人公は既にルールを見破り、ルールブレイカーを見越しているけども、読み手はルールもルールブレイカーも分かっていない状態にしたい……という場合ですね。そのような場合、読み手に全ての情報を与える必要はありません

読み手にとっては、主人公が奇妙な行動を取るように見える場合もあるでしょう。ですが、それでいいのです。

ルールブレイカーで必要な前振りの内容は、既に前章で「(b-2c)各ルールブレイカーの前振り」としてリストアップしていますので、ここで用います。

なお、前振りや伏線は、このステップだけではなく、「ステップ七:攻略法によって勝ち進める」まで割り当てることが可能です。

「全ての手段が危険そう」だと思わせれば、中盤は成功する

以上が「ステップ五:表面的ルールの説明」に必要な要素になります。これらを適当にちりばめて配置します。

この段階では、主人公(もしくは読み手)は、散らばった情報を得ながら、少しずつ問題解決のためのルールを探していくでしょう。場合によっては、生き延びられなかった人がどのようになってしまったのかも示すこともあるかもしれません。それらの情報を与えてゆきます。

読み手にとっては、この段階で三つ巴の構図や、ルールブレイカーが何かなど、さっぱり分かっていない状態です。なので、どの人物や情報が自分にとって役に立つものなのかは分からないようになっています。読み手には「全て危険そうに見える」ようになり、緊迫感を作ることができます

この段階は他の段階と比べても、比較的情報量が多くなり、時間的にも長くなりがちです。間延びしないように、緊張と緩和を上手く組み合わせて構成しましょう。

✎ 作成例:ステップ五:表面的ルールの説明

ここから「駆け引きエリア」に入ります。ストレスを与え終わって、ここからは緊迫感を出して行く方向に考えをシフトしていきます。

これまで作った「(b-2)駆け引きの内容」を下図に示します。

これを元に、作り込んでゆきましょう。

「表面的なルールの説明」を作る

まずは「表面的なルールの説明」から。

ここでは「主人公(下級生)」「上級生」「教頭」という三つ巴のうち、「上級生は教師(教頭)に弱い」というヒントを小出しにしていきます。

また、誰も信じられない状態にするために、主人公を一度か二度ほど騙してピンチにさせておきましょう。

この段階は比較的長いので、記述量は今までよりもはるかに増えるでしょう。ですがここでは説明の都合上、内容は分かりやすいように簡潔に記します。実際に作る場合は、もっとそこには上級生代表がいしっかりと作り込むようにしましょう。

ルールブレイカーの前振りも加えて、仕上げる

なお、以下では分かりやすいように、内容の最初に「(ルール説明)」「(ブレイカー準備)」と記しておきます。

● ステップ五:表面的ルールの説明

  • 一日目
    • (ルール説明)次の日の登校シーンから始める。校門には教師が立っていて、そこでは上級生は大人しいことを知る。
    • (ルール説明)授業中も、教師がいる場所では乱入してくることはない。
    • (ルール説明)休憩時間、隣の教室で上級生が暴れているのが分かる。休憩時間は危険。そして最も危険なのは、昼休みだと知る。
    • (ルール説明)昼休みに主人公は安全な場所を探そうとするが、その時に人の良さそうなクラスメイトから、「屋上が安全だ」と教わり、一緒に行くことにする。ついて行くと、そこには上級生代表がいて、クラスメイトは引きつった笑いを浮かべて「連れてきました! だから、俺だけは見逃して下さい!」と言い、主人公は騙されたことを知る。だけどクラスメイトは上級生代表にさらに裏切られて殴られ、絶望する。上級生代表が主人公に手を出そうした瞬間、チャイムが鳴って教師が通りがかる。主人公は命拾い。
    • (ルール説明)帰り際にも、上級生に媚びを売って、自分の安全のために同級生を売ろうとしている人がいるのを見かける。そして誰も信じられないことを知る。
    • (ブレイカー準備)下校時、上級生代表には派手目な彼女がいて、彼女にうつつを抜かしている。だから主人公は今日は安全っぽいと知る。
    • (ルール説明)クラスメイトの男子四、五人がチームを作って、上級生を返り討ちにしようという計画を立てている。それに誘われるが、主人公は断る。
    • (ルール説明)校門から出たら、市街地になるので安全。
  • 二日目から、時間などを適当に決めて配置する。
    • (ブレイカー準備)上級生の彼女に目をつけられる。けばくてタバコ臭い女。以下、「上級生彼女」と表記する。上級生彼女は最終的に主人公に味方する側につくので、最初はその逆の、主人公に敵対するように見せる。上級生代表が主人公を嫌っていることを知っていて、「あんたは助からないよ。泣きわめいても殴られ続けて、濡れ衣を着せられて退学だね」と主人公を脅す。下校時に彼女に絡まれて時間を費やされて、「上級生代表が来るまで足止めされた罠だった」と読み手に誤解させる。
    • (ルール説明)上級生を返り討ちにしようという計画を立てていたチームの内容が上級生に漏れたようで、そのメンバーが個別にリンチを受けてしまい、その上、他の同級生グループとケンカしたというでっち上げを食らって停学、リーダー格は退学になる。読み手は、主人公は命拾いしたと知る。
    • (ブレイカー準備)教頭(男)から呼び出される。教頭から、主人公の父親は、税理士だったことの説明される。だけど父親は蒸発しており、会社は休眠中。だから父親の会社の印を持ってきてくれないかと頼まれる。そうすれば、「昼休みの間、教頭以外誰も入れない教室を使わせてやる」と言う。だけど教頭がニヤリと不気味な笑みを浮かべて「誰も入れないから、大丈夫だ」と主人公の体を舐めるように見るので、危険を感じて主人公は断る。(本当は救いのルールなので、わざと最初は危険そうに見せる。教頭は男に興味はない。上級生彼女を楽しんでいるため)

大体これぐらいでいいでしょう。

まだまだルールブレイカーの前振りなど説明していない部分もありますが、それは次のステップにも入れるので、バランスよく配置していきます。

ステップ六:ルールの攻略法を知る

「ステップ五:表面的ルールの説明」で、ルールを断片的に説明しました。ですが読み手はどれが有用なルールなのか分かっていない段階で、何も信じられない状態です。

しかしこの「ステップ六:ルールの攻略法を知る」で、主人公はその中から必要な情報を選び、その情報に賭けることで、ルールの攻略法(ルールブレイカー)を知るでしょう。

「ルールの攻略法」を得るにも、リスクがあるように見せる

主人公が最初にルールブレイカーを用いようとする時、しばしば主人公は大きな決断を促されることがあるでしょう。というのも、その「有利なルール」とは、主人公もしくは読み手にとっては百パーセント安全である保証はないためですね。主人公が逆に別の危機を負ってしまうリスクもあるのです。

ですが、決断を促すために、もはやこれ以上避けられないようなピンチが主人公を襲うかもしれません。それによって、主人公は有利なルールへと飛び込むのです。

刑務所もので言うと、看守の魔の手が伸びるでしょう。そこでもう逃げられないというピンチに陥った時、「脱税の手伝いをしてくれ」と言っていた刑務所長が登場するかもしれません。そして刑務所長側につくことは「拷問関連の何かもさせられるかもしれない」というフェイクのリスクがありますが、主人公はそちらに行かざるを得ない状況で、刑務所長の申し出を受けるでしょう。

そしてしばらくすると、拷問については「ああ、あの拷問本は先代所長の本棚を整理していて見つけて、処分しようと思っていた本だ」などと言われて何でもないと分かり、主人公は安堵します。そして主人公は、看守から逃れるルールブレイカーを見つけたと知るのです。

「ルールブレイカーを得るリスク」の例

別の例で言うと、テロリストにビルを占拠された場合、主人公の刑事は二十階に誰も入れない特別フロアがあることを知るでしょう。ですがそこに行くには、ビルの外壁をよじ登らなければならないというリスクがあるかもしれません。

しかし主人公はテロリストに見つけられ、追い詰められて、結果外壁を登るというリスクを冒すでしょう。そうすることで主人公は誰も入れないフロアに入ることができて、テロリストも追ってこれずに、テロリストから逃れられる「絶対に安全な領域」に到達して一息つくでしょう。そこは、警察と安全に無線でやりとりできる場所であり、ここで警察に指示を出すことがルールブレイカーだと知るのです。

ここで「(b-2b)ルールブレイカーの存在」を発動し、この段階で読み手に三つ巴のルールを完全に示して、主人公に強みができたことを示します

この段階の最後になると、主人公はようやく一息つける場所にたどり着くでしょう。そうして読み手はそれまでの緊張の連続から解放されて、しばしの間、ほっとする場所や時間を得るでしょう。

✎ 作成例:ステップ六:ルールの攻略法を知る

それでは実際に、主人公にピンチを作って、有利なルールへと飛び込ませましょう。

● ステップ六:ルールの攻略法を知る

  • (ブレイカー準備)昼休み、上級生代表に絡まれて、ピンチに陥る。そこでたまたま教頭が登場して、上級生代表を止める。そして教頭は、これはいい機会だと笑みを浮かべて主人公に「私と用事があるのではなかったのかな?」と、決断を促す。主人公は断ることができず、教頭の申し出を受けて、その場を乗り切る。主人公は命拾いをするが、読み手には別の危機に飛び込んでしまったと思わせる。
  • (ルール説明)実は教頭は男色家ではないと知る。そして教頭は教頭の部屋に乱入しようとした上級生に制裁を加え、停学もしくは退学処分にする。そして主人公は、ここが実は安全な場所なのだと知って一息つく。

これぐらいでいいでしょう。

それでは次から、主人公の反撃開始です。

ステップ七:攻略法によって勝ち進める

ここまでの段階では、主人公はずっと負け続けでした。ですが「駆け引き」とは、負け続けるだけでは成り立ちません。主人公が有利に立つこともあることで、初めて「駆け引き」が成り立つのです。

主人公の優位

この「ステップ七:攻略法によって勝ち進める」から、ルールブレイカーを手にした主人公は、反撃を開始します。主人公には、今いる異質な世界で生きてゆくための新たなルールが見えています。それは三つ巴の形かもしれません。そしてその強みを利用できる、攻略法を得たのです。

主人公は強みを生かして、敵の脅威を排除し続けるでしょう。そして自分にとっての有益な情報をさらに探してゆくでしょう。

敵は地団駄を踏んで悔しがるかもしれません。主人公に対する敵意や憎悪をさらに増幅させるかもしれません。ですが、ここではまだ敵は主人公に脅威を与えることはできないのです。

敵による「魔の手」の準備

主人公は安全な場所にいるため、時に気が緩むかもしれません。勝利ムードも漂うかもしれません。ですが、敵は主人公が知らない間に、着実に次の手を準備しているのです。

例えば刑務所からの脱獄ものでは、刑務所長の側にいることで、看守は主人公に手を出せなくなるでしょう。主人公には刑務所長という便利な道具があるので、今までよりもはるかに楽に、脱獄の準備を着々と進めることができるでしょう。

時に、主人公は刑務所長を利用して看守に復讐できるかもしれません。看守は悔しがり、さらに主人公に対する憎悪をふくらませるでしょう。その悔しがる姿が読み手に自尊心という快楽を与えるでしょう。しかし、看守は着実に「何か」を準備しているものなのです。

テロリストにビルを占拠された場合、警察との無線を通して、警察に内部状況を伝えるでしょう。そうすることで、警察が突入する準備を整えて、主人公は「これで安心だ」と力を抜くかもしれません。

テロリストも悔しがるでしょう。ですが、テロリストも少しずつ準備を進めているのです。

ルールブレイカーの準備期間

主人公は勝ちながらも、ルールブレイカーに必要な情報をさらに手に入れていくでしょう。また、場合によっては敵キャラがルールブレイカーを準備する情報が伏線として入る場合もあるかもしれません。

このように、この段階ではルールの全てを明かされたことで、ついに主人公が優勢に立つ場面でもあります。

✎ 作成例:ステップ七:攻略法によって勝ち進める

それでは、ついに主人公の反撃開始です。

前のステップでルールブレイカーを示して三つ巴の形を全て明かしたので、ここからはそれを利用して上級生代表の脅威を排除していくことにしましょう。

また、残るルールブレイカーの前振りも同時にしておくことにしましょう。あまり細かく説明するとネタバレになりそうなので、ちょうどいいぐらいにしておきましょう。

● ステップ七:攻略法によって勝ち進める

  • (ルール説明)主人公は、昼休みは教頭の用意した部屋で教頭の手伝いをするので、安全でいられる。
  • (ルール説明)上級生代表が、部下に指示して主人公を引き出そうとするが、教頭がそれを排除して、部下たちをことごとく停学処分にする。上級生代表が悔しがる。
  • (ブレイカー準備)主人公は、同級生が安全でいられるようにいろいろと手配する。教頭を通して、昼休みに教師を配置するようにしたりする。そして下級生は次第に安らぎを得る。
  • (ブレイカー準備)また、教頭に上級生代表への敵意も持たせる(もしくは教頭が既に敵意を持っている)ようにして、主人公は上級生代表を退学させるという何らかの計画を進めている……ということを読み手に示す。上級生代表さえ退学になれば、学校は安全になるということを示しておく。
  • (ブレイカー準備)ある日、教頭が上級生彼女を部屋に連れてくる。そして主人公を追い出す。主人公は事情を知る。
  • (ブレイカー準備)部屋で、教頭が去った後に上級生彼女から事情を聞く。上級生彼女にとって、教頭はいい「金づる」程度。上級生彼女は、上級生代表も見下していると知る。だけど彼女も上級生代表が怖いので、もし見つかったらどうするのかと問いかけたら「『脅された』と言えば間違いなく上級生代表は信じる」と答える。
  • (ブレイカー準備)上級生代表が主人公に憎悪をたぎらせる。「いつまでもそのままでいられると思うなよ」と。
  • (ブレイカー準備)夜、学校に泥棒が入る。金庫が荒らされ、主人公が扱っていた経理情報も荒らされる。
  • (ブレイカー準備)主人公は、上級生代表が教頭の部屋に乱入する時間を操作する。また、教頭が教室で彼女を抱く場所も準備する。読み手には主人公が不思議なことをしているように見せて、主人公の目的は明解には伝えない。

これぐらいでしょうか。ルールブレイカーも準備完了できました。

さて、それでは次から終盤になります。次はついに、敵のルールブレイカーの発動です。

まとめ

  • 駆け引きエリア前半では、「ルール」と「ルールブレイカー」を意識しよう。
  • 「裏切りの繰り返し」によって、「全ての手段が危険そう」だと思わせれば、中盤は成功する。
  • 前振り、伏線は「危険そうに見せる」ように配置しよう。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/philliecasablanca/2110989903/ by Phil Whitehouse (modified by あやえも研究所)
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