サスペンスの方程式(六):サスペンスの十ステップ(第三幕)

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サスペンスの方程式(六):サスペンスの十ステップ(第三幕)2016-11-29T09:04:37+00:00

Project Description

概要

このページでは、サスペンス作りにおける、物語の流れを作る方法について説明しています。

ここでは、第三幕の構成の仕方について触れています。

  • ラストの逆転劇を劇的に演出する方法とは?
  • ラストの逆転劇につなげるための、コツとは?
  • 駆け引きを終えて、ハッピーエンドにする方法とは?

ステップ八:敵のルールブレイカーの発動

有利になった主人公は、駆け引きを優位で進めていくでしょう。そして敵の悪意を完全に断つために力を発揮していったり、もしくは力を発揮する人にそれを任せて静観していたりするでしょう。

そしてついに敵を追い詰めるかもしれません。

ですが、そこで思いも寄らぬ事態が引き起こります。それが、「ステップ八:敵のルールブレイカーの発動」です。

「主人公が敗北した」かのように見せる

この敵のルールブレイカーの発動によって、今までのルールは無効化されるでしょう。それによって、主人公の持っていた強みが瞬く間に崩れ去り、主人公は今までにない最大の危機を迎えます

そして主人公は気が付きます。敵はこのルールブレイカーを発動するために、主人公に押されながらも着々と準備していたことを。主人公は、自分の甘さや油断を心から悔いるでしょう。

敵のルールブレイカーは成功して、主人公の大切なものをつかみ取るでしょう。そして今や敵は、主人公の大切なものを生かすも殺すも自由にできるのです。

敵は高笑いをして、勝利を確信します。読み手(主人公ではない)は、主人公が駆け引きに敗北してしまったと感じます

「望みは完全に絶たれた」と見せる例

例えば刑務所脱獄ものでは、主人公がついに脱獄準備を終えたという時点で、敵はルールブレイカーを発動します。看守は囚人間の騒動を引き起こし、その罪を主人公に着せて、主人公を刑務所長から引き離し、独房に閉じ込めて自分の監視下に置きます。看守は高笑いをして、主人公は脱獄をする寸前で希望を断ち切られ、読み手は主人公が敗北したと感じます。

テロリストにビルを占拠された場合、警官隊がビルに突入するでしょう。しかしテロリストの周到な準備によって、警官隊は全滅。周囲の警官たちも、隠された爆弾によって壊滅させられるでしょう。そして警察無線を利用して警察が用意したヘリがビルにやってきて、警官の服に着替えたテロリストは悠々と屋上にあるヘリポートへと向かいます。その時、テロリストは主人公の妻が人質の中にいると知って、その妻を人質に選び、連行します。主人公の最大の弱みを握られ、そして強みである警察も壊滅させられ、読み手は完全に望みが絶たれたと感じます。

「大切にしているもの」はまだ傷ついてはいない状態

主人公は敗北感を感じている場合もあるでしょうし、そうでない場合もあるでしょう。どちらにしろ、主人公は油断を悔やんだり、ひょっとするとチャンスを目の前で取り逃してしまったことにショックを受けているかもしれません。

注意が必要なのは、主人公が大切にしているものにはまだ大きな傷はつかないということですね。場合によっては、軽微な傷がつくかもしれませんが、それは意に介さないほどの小さなものであるでしょう。これも、「失うこと」よりも「失う事への恐怖」の方がよりストレスを与えるためで、完全に傷つけてしまっては不安感が消えてしまうためですね。

この段階は、中盤もしくは終盤の盛り上がり場面となることがほとんどでしょう。実際に読み手が最も駆け引きを楽しむための場面となります。

✎ 作成例:ステップ八:敵のルールブレイカーの発動

ここで、ついに敵によるルールブレイカーが発動します。敵によるルールブレイカーの内容は、次のようなものでした。

  • (b-2b)ルールブレイカーの存在:「上級生代表が教頭の不正について知ることで、教頭より強くなる」

これを元に、実際の内容を以下のように肉付けして作り込みます。

● ステップ八:敵のルールブレイカーの発動

  • 主人公の計画の準備が進み、上級生代表を退学にできる方法を構築する。あと一つを残して完了する段階。主人公は勝利を確信して安堵する。
  • しかしその時上級生代表が教頭の部屋にやってきて、教頭が怒るが、上級生代表は引きつった笑みを浮かべて余裕。
  • 教頭が制裁を加えようとする前に、上級生代表によるルールブレイカーが発動する。それは、上級生代表が経理の不正情報を手に入れたことを教頭に伝え、教頭を脅迫する。
  • 結果的に脅迫に屈した教頭は、上級生代表に制裁を加えることはできずに、上級生代表に屈する。そして、上級生代表が卒業するまでのあと一年、上級生代表の好きにさせることを約束する。つまり、教頭の権限を上級生代表が握ることになる。
  • 上級生代表は高笑い。読み手は、主人公が敗北したことを知る。
  • 「これから盛大に、お前の公開処刑だ! 下級生の前でリーダー格のお前をぼろ雑巾にしてやる!」と脅して、上級生代表による、主人公への復讐が始まることを宣言する。

主人公に最大のピンチが訪れました。

いよいよ次がクライマックスになります。次は、主人公によるルールブレイカーの発動です。

ステップ九:主人公のルールブレイカーの発動

主人公は最大の危機を迎えました。孤立無援で、最も頼りにしていた希望が潰えたのです。今や主人公はまな板の上の鯉と同じで、敵の思うがままの状態です。

ですが、まだ終わってはいません。まだ全てが終わってしまったわけではないのです。

場合によっては、勝利を確信した敵は、主人公の健闘を称えるかもしれません。ですが敵の主人公に対する憎悪は抑えきれないぐらいに膨れ上がっていて、主人公を見逃すはずもありません。

ここで、敵の油断により、主人公は最後にほんの少しだけ行動の猶予を与えられるかも知れません。

主人公は瀬戸際の状態から、ここで「ステップ九:主人公のルールブレイカーの発動」を行います。これによって主人公は逆転勝利を得て、敵の野望を討ち滅ぼします

「最後の逆転劇」の例

刑務所からの脱獄ものでは、看守が主人公を自分の監視下に入れて高笑いするでしょう。主人公の健闘を称えつつも、主人公を許すつもりはありません。看守は数々の拷問器具を揃え始めるでしょう。

ですが、看守は特別に用意した拷問器具にサビがあるのを見つけて、主人公に恐怖を与えるためにも一晩だけ休みを入れて、明日から拷問を始めるようにします。そして主人公を、「看守のお気に入りの独房」に閉じ込めます。

そして、次の朝。点呼をしても主人公の返事がありません。独房を開けてみると、主人公だけが忽然と姿を消しているのです。

看守は混乱します。そして脱走したと分かりますが、既に時は遅し。看守は憤激して理由を探ります。すると、偶然にも独房の壁の下に抜け道が掘られていることを探り当てるでしょう。主人公はこの「看守のお気に入りの独房」に入れられることを想定して、この独房に脱走経路を造っていたと、読み手はここで初めて知るのです。読み手に全てのタネを明かして、看守は敗北を認め崩れ落ち、主人公が勝利という形で駆け引きが終わります。

逆転劇を演出する

テロリストものでは、妻を人質に取られて、警官に偽装したテロリストはビル屋上のヘリポートに出て、警察のヘリを出迎えるでしょう。ヘリには「警官が人質を救出した」と伝えているのです。テロリストがヘリに乗って飛び去ったら、ヘリは乗っ取られ、もはや一巻の終わりです。

テロリストは勝利を確信し、最後に主人公のあらがいを賞賛します。しかし憤怒を押さえきれずに、「出てこなければ人質を殺す」と脅迫して主人公を目の前に引きずり出し、亡き者にしようと銃を向けるでしょう。

ですがその時、人質となっている妻が抵抗して、テロリストは銃を落とします。異変を察知した警察ヘリが飛び立とうとしますが、テロリストは仕方なくヘリに飛び移り、乗っ取るでしょう。

そして最後に主人公は、落とした銃を拾って、ヘリを撃ちます。それが当たり、ヘリは操縦不能になり、墜落してテロリストは滅びます。こうして主人公は最後に逆転勝利を得るのです。

主人公の勝利で終わらせる

このように、最後の最後で主人公のルールブレイカーが発動して劇的な逆転勝利を収めることで、駆け引きが全て完結します

なお、場合によっては、「ステップ六:ルールの攻略法を知る」から「ステップ八:敵のルールブレイカーの発動」までを何度か繰り返す場合もあるでしょう。

その場合、最後に主人公が勝利するように調整します。(ラストを衝撃的にするために、敵が勝つ場合も同様に、ルールブレイカーの数を調整します)

✎ 作成例:ステップ九:主人公のルールブレイカーの発動

読み手にとって、主人公の敗北はほぼ確定しました。ですがまだ終わったわけではありません。少しだけ敵の油断が生じ、そこから主人公は最後の賭けに出ます。そして勝利を収めるでしょう。

ここではそんなクライマックスになります。

ここは視点切り替えも含めて説明すると、よりドラマティックになるでしょう。ですがここでは骨格説明のために、視点変動はさせずに時系列で流れを説明するにとどめておきます。

もし実際に構築する際は、視点移動も考慮して書いてもいいでしょう。

今回の駆け引きの最後は、以下のようにします。

● ステップ九:主人公のルールブレイカーの発動

  • 上級生代表は下級生を「これから公開処刑だ」と呼び集める。主人公を見せしめにするため。
  • 主人公は上級生に捕らえられて、引きずり出される。絶体絶命。
  • 勝ち誇った上級生代表は、最後に主人公のあらがいを称えるが、許すつもりは毛頭ない。だけど、上級生代表は自尊心を得るために「命乞いをしろ」と主人公に発言を許す。
  • ここで主人公、教頭の部屋の様子を確認して、落ち着く。そして上級生代表の彼女についてに伝える。「お前の知らないところで、よろしくやっている」と。
  • 上級生代表は気になり、教頭の部屋を外から見てみると、様子が変。いつでも主人公を始末できるからとして、上級生代表は教頭の部屋に向かう。
  • そこで教頭と彼女の情事を目の当たりにして、彼女が「脅されて」と言い訳する。上級生代表はキレて、教頭をボコボコにする。
  • 上級生代表がふと気が付くと、多くの目撃証人がいる。教師も集まってきて、言い訳できない状態になる。
  • 主人公が、計画の全てを明かす。「上級生代表を退学に追い込む最後の一手は、目撃証人だった」と。信頼できる人がいなかったので、その部分の手配だけができなかったと。だけど上級生代表が見せしめのために人を集めてくれて、主人公の公開処刑のはずが、上級生代表自身の公開処刑にできたことを説明する。上級生代表は敗北したことを知り、崩れ落ちる。教頭も「もうだめだ」とうなだれる。
  • 主人公が完全勝利したことを示す。

論理に穴が見つかった場合は、しっかりと埋めておくようにしましょう。

これでようやく本筋の駆け引きが終了しました。

後は結末をまとめるだけです。

ステップ十:結末の説明

ここまでのステップで、主人公に降りかかった危機が全て解決しました。

最後の段階が、「ステップ十:結末の説明」です。必要であれば、ここでその後の幸せな様子や、主人公が安心して、大切なものと共に生きている様子が描かれることでしょう。

衝撃的な結末も可能

もし衝撃と共に終わらせたいのであれば、この最後にさらなる敵のルールブレイカーを発動させることもできるかもしれません。

例えば映画「SAW」では、主人公たちは密室に閉じ込められます。そしてその犯人を追うのですが、最後に犯人を捕まえて、読み手はこれで安心……と思います。しかし、その捕まえた犯人も、実は犯人に操られていたのだと知ります。

その直後、主人公の最も側にいた存在が正体を明かして、その人が真犯人だったと分かります。ですが時既に遅しで、主人公は悲鳴と共に犯人に負けて、衝撃と共に物語は終わります。

このように、さらにひっくり返してインパクトを与えるということも可能でしょう。

幸せな描写でのエンディング

結末では基本的には幸せな描写をして、読み手のストレスを全て取り払ってから終わるのがサスペンスの基本でしょう。もし何か訴えたいことがあるのでない限り、読み手にストレスを残したままでは、エンターテイメントにならないからですね。

もちろん、わざとストレスを残すことで、読み手の心に引っかかりを残して、次に繋げるという考え方もあるでしょう。

お好きな方を選べばいいと思います。

とにかく、この段階で全ての物語を完結させます。時系列に並び替える作業は、この段階で完了です。

✎ 作成例:ステップ十:結末の説明

それでは最後の段階になります。主人公は勝利して、幸せに高校生活を過ごして終わりとしましょう。

● ステップ十:結末の説明

  • 後日談。学校は、上級生代表がいなくなることで、騒ぎを起こす首謀者がいなくなって、次第に暴力がなくなっていったこと。
  • 教頭のことがマスコミに漏れて騒ぎになり、マスコミの目もあるので、上級生は手を出せなくなったこと。それから平穏になったこと。
  • 主人公はストレスなく学校生活を送ることができるようになり、学校生活を普通に楽しめるようになったこと。
  • 最後は三年後の卒業式後、墓参りをして、「願い通り、卒業したよ。育ててくれてありがとう」と母親の遺言を叶えて、ハッピーエンド。

さあ、これで全ての時系列で作る流れが完了しました。

ここまでいろいろと具体例で説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。

最初はストレスを、次に駆け引きを……という流れを見極めるのがコツでもあるでしょう。そして駆け引きはルールブレイカーがやはり重要な要素になるでしょう。

この具体例を、是非役立てて下さいませ。

まとめ

  • 敵のルールブレイカーで「全ての望みが絶たれた」と見せると、クライマックスが盛り上がる。
  • 敵のルールブレイカーが発動しても、主人公に「猶予」を与えることで、主人公は逆転できる。
  • 主人公のルールブレイカーで、駆け引きを終了しよう。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/oneras/9721656297/ by Mario Antonio Pena Zapatería (modified by あやえも研究所)
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