「これからこの業界が売れる」(三)

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「これからこの業界が売れる」(三)2016-11-29T09:04:59+00:00

Project Description

  • ジャンル: 作家向け読み物
  • 公開日: 2014年3月

概要

このページでは、作家業界の流れを俯瞰的に捉える、時代の見方について説明しています。

  • これから個人の作家として売れる方法とは?
  • 貴方自身の「ブランド力」を高める方法とは?
  • 貴方が何を売ったとしても、買ってくれるようになる秘訣とは?

「マス(大衆)」から「個」の時代

前回に引き続き、「これからの時代の、ストーリーライティング業界の流れ」を説明してゆきましょう。

情報革命は、「モノ」から「体験」を与えるというインパクトにとどまりません。他にも様々な変化を私たちにもたらしつつあります。

その一つとして、「マス(大衆)」から「個」への変遷というものがあります。

これまでは、大企業だけが情報を発信できた時代

インターネットが登場して情報革命が起こるまでは、大企業だけが影響力を持っていました。

というのも、当時は情報通信が全然発達していなかったため、人はある商品やサービスを欲していても、大きく宣伝できる会社の情報にしかアクセスできなかったわけです。だから、例えば産業革命後しばらくの間は、貿易商とか流通会社が絶大な力を持っていたわけです。日本でも古くから、「卸問屋(おろしどんや)」は金持ちの代名詞だったものです。

ですが、電話や交通網が発達したり、雑誌とか産業イベントみたいな情報伝達手段が発展してくると、大会社よりも別の小さな専門会社に発注した方が、安くて質も高い……みたいなことが多く出てくるものです。

つまり、今まで卸(おろし)業者や大会社を仲介しないと情報にアクセスできなかったものが、ダイレクトに開発会社にアクセスできるようになったり、仲介業者の数が少なくて済むようになったわけです。

ニッチなものは、小さい組織の方が優れている

というのも、これはどの産業でも同じで、大企業は「大量生産、大量消費」を得意とします。すると、標準的な規格の商品を多く出す方が、儲けも多く出て、扱いやすいわけです。裏を返すと、小回りがきかないという欠点があります。

一方で中小企業や個人など、小さくなればなるほど、「個別対応」が得意となります。つまり、ニッチなものを小ロットで作り、提供する形が得意になるのです。そして消費者からすると、同じ品質のものであれば、ニッチなものやサービスであればあるほど中小や個人に発注した方が、コストも安く、クオリティが高いことが多くなるのです。

これからは、個人も情報発信ができる時代

そして、今はインターネットによる情報革命が起きて、そのように会社レベルで起きていたのが、個人レベルに起きるようになりました。

それまでは電話とか雑誌とかで「会社が情報発信していた」ものが、今ではインターネットで「個人が情報発信できる」ようになりました。今では誰でもブログやツイッターアカウントを持つことができて、情報発信をできるようになったのです。

すると、発注側は会社にアクセスするのも、個人にアクセスするのも同じ手間でできるようになったわけです。

ならば、個人にダイレクトに発注した方が、安くてクオリティが高いということが多くなるわけです。なので、次第に個人に発注する傾向になってゆくわけです。

「標準的なもの」は大企業が、「個性的なもの」は個人が担う時代

このように、個人も情報発信ができるようになり、そして個人が情報発信できるウェイトはますます大きくなってゆきます。逆に、大企業の影響力はどんどん小さくなってゆきます。

だから、これからの大企業は、下降線をたどる一方でしょう。逆に、個人で活躍してくる人が次々と出てくる時代になります。

ではどのような分担になるかというと、「標準的なもの」に関しては、これからも大企業が担い続けるでしょう。例えば一般的なフィクションであったり、「奇をてらわない物語」、つまり王道的な作品については、出版社などの大企業がこれからも力を持ち続けるでしょう。

ですが、マニアックであったり、奇をてらうもの、ニッチなもの、専門的なものについては、これからどんどん個人にウェイトが置かれてゆくようになります。

「大企業」よりも「個」である方が伸びる

そして、これからの時代は、どんどんその「ニッチ」の領域が増えてゆくということです。というのも、「標準的なもの」はもはや世の中にありふれているものです。これからは、どんどんと読み手やユーザーに特化したものでなければ売れない時代になってきています。

そのため、「大企業に取り入ること」よりも、「個」として確立する方が上昇しやすい時代になってくるのです。

「個」のブランド力で売る時代

大量生産、大量消費時代では、商品のシリーズが重要でした。そこには「機能」が列挙されていて、どれだけ機能性が優れているかが重要な要素でした。

ですが、これからの時代は、機能はほぼどれも大差がなくなってきます。これは物語でも同じで、ストーリー理論を学べば、ある程度のクオリティなどすぐに出せるようになるのです。であれば、「さらにその上」の価値が重要になります。

その「より上の価値」というのが、「ブランド力」になります。

ブランド力というのは、「同じものなら、誰から買いたいか」ということです。「ここから買いたい」という力を持っている人ほど、売れるようになるのです。

人間性が売り上げを左右する時代

「個」の時代のブランド力とは、すなわち作者本人のことです。これまでは、品質さえよければ、誰が作ろうが関係ありませんでした。ですがこれからの時代はブランド力、すなわち「作っている人」が重要になるのです。そしてその人のことを応援したければしたくなるほど、売れるようになります。

つまり、「人徳」といった人間性が、売り上げを左右する要素になりつつあるのです。人間性がよければよいほど、人から応援されます。すると、少々値段が高くても、機能的に劣っていても、楽しめるのであればそこから買うようになるということです。

人々は「作っている人」の情報を欲している

近年では、例えば野菜でも「どこで、誰が作っているのか」という情報が重要になってきました。安全性のために、産地や生産者の情報が求められているのです。

というのも、「もの」は誰が作っても同じようなものになってきたからです。すると、「ものの安全性」を評価するには、生産者の情報が必要になってくるのです。

この動きは次第に大きくなってゆくでしょう。食品だけでなく、社会インフラや工業製品、そしてエンターテイメント作品も、生産者情報を必要とされてゆくでしょう。特に物語などは、次第に「どれも同じように感動できる」時代がやってきつつあります。であれば、「どの物語を楽しむか」を選ぶかは、作者の情報によって判断される日が来るのです。

それは既に起こりつつあります。早めに対応できていればいるほど、より強力なアドバンテージを得られるのです。

「物語を売る」から「作者を売る」へ

そのため、これまでの「物語を売る」という考え方は、次第に廃れてゆくでしょう。そして「作者を売る」というような、「個」が主体となる時代が来つつあります。

ファンにとっては、その作者が出しているものは、物語であろうがグッズであろうが、何だって構いません。その「作者の世界観」に触れたいからこそ、商品やサービスを買うのです。

そのような「時代の先端を行くフラッグシップ」の一人として、堀江貴文氏が挙げられるでしょう。彼のファンは、商品の機能が他と比べて優れているから彼の商品やサービス、書籍などを買うのではありません。彼の世界観に触れていたいから、商品やサービス、書籍などを買うのです。

これは大企業であればあるほどこの性質はなくなります。つまり、大企業は「個」など重視しないということです。「歯車」さえあればよいという考え方です。

一方で、小さければ小さいほど、個で事業をしている人であればあるほど、「個」が重要になります。それは歯車で表されるものではありません。読み手にとっても、「十把一絡(じっぱひとから)げ」で対応されるよりも、「個」として対応してくれる存在の方が、嬉しいのは当然でしょう。

これから売れる作家になるための具体的方法

このように、「大量生産、大量消費」という時代から、「個」の時代になりつつあるのが現状です。

音楽業界では、シンセサイザーの発達により、少し音楽理論とシーケンサの使い方を学べば、誰でもある程度プロレベルの音楽を作ることができるようになりました。たった二十年前では想像もできなかったような、そんな変化がやってきたのです。

同じようにストーリーライティング業界では、プロット理論の確立によって、少し学べば誰でもプロレベルになれる時代が来ました。すると、クオリティはどれも大差なくなります。

であれば、読み手はどの情報を元に、読むものを判断するのか……その重要な要因が、個としてのブランド力、すなわち作者の情報、作者の人間性になるのです。

「作者の情報」を提供すること

そのため、個としての情報発信手段を持つということは、これからの時代は必須になります。ホームページやブログ、ツイッターなどは重要な要素になるでしょう。

そして、作者自身をしっかりと出してゆくことが大切になります。これまでの「いい文章を出しさえすればよい」という時代は終わりました。より高いレベルでの情報を提供する必要があるのです。

物語では、作者の「あとがき」が大好きな人が多いものです。というのも、ここに作者の日常や考えていることが如実に出ているからです。私の知人がネット上で小説を公開しているのですが、アクセス解析をして人々が何から読み始めるのかを調べたことがあります。すると、意外にも「あとがき」から読み始める人がとても多かったというのです。「あとがき」だけを読んで、読むのを終えた人も多かったほどです。これも、「作者の人間性」を欲している現象と言えるでしょう。

人々は「作者の人間性」でどこを見ているか

では、人々は「あとがき」を読んで、作者の何を評価しているのかを知る必要があります。「あとがき」にも、面白いものとそうでないものがあるものです。

言い換えると、「面白いあとがき」を突き詰めて考えれば、それが「この人の作品を読みたい」という影響を生むのです。では、何が「この人の作品を読みたい」と人に思わせるのか

結論から言うと、エンターテイメントにおいては、「作者がどれだけ人生を楽しんでいるか」なのです。

瀬戸内の海沿いに住んでいる高校生の物語を書いているのであれば、「瀬戸内の海沿いに住んでいる楽しみ方」を表現できていればいるほど、「この人の作品を読みたい」となります。実際、自分の作品を楽しめないような、そんなエンターテイメント作者の作品を手に取りたいと思う読者などいないでしょう。

もちろん、政治の世界や商業の世界では、別の要素が重要になるでしょう。ですがストーリーライティングのようにエンターテイメントの分野においては、エンターテイメントの本質である「楽しめること」をどれだけ提供できる人なのか、それを評価されているのです。

人生で面白いことを発見できればできる人ほど、そして読み手にその面白いことを教えられる人であればあるほど、「この人の作品に触れ続けていたい」となるのです。

「個」として、「楽しみ方」を提供することが大切

そのため、ただ自分の情報発信をすればよいということではありません。「今日何食べた」、「今日どこへ行った」は重要ではないのです。

「今日食べたこれが、どのように美味しく、楽しめたか」、「今日どこへ行って、何をすることで、どのように楽しめたか」が重要になるのです。その「作者の人生の楽しみ具合」を公開してゆくことが、すなわち「作者を売る」こと、つまり「個としてのブランドを作る」ことになるのです。

言い換えれば、作者の楽しみを、読者も味わえれば味わえるほど、ブランドが確立してゆく……ということです。そのような観点で、情報発信をすることが求められているのです。

小説やシナリオなどの「作品」は、その「楽しみ方」の一形態、もしくは一部でしかないということです。「感動を作りさえすればいい」という考え方から、より一歩レベルを上げた姿勢が求められる時代とも言えるでしょう。

そして、この「楽しみ方」を次々と教えられる人であればあるほど、これから上昇してゆきます。逆に、「作品だけ」にこだわっていると、これからどんどん落ちてゆくばかりでしょう。

このような、時代を見る目が必要とされているのです。

まとめ

  • ニッチなものについては、これからどんどん個人にウェイトが置かれてゆくようになる。
  • これからは、「個」のブランド力で売る時代になる。
  • 「物語を売る」から「作者を売る」へ転換しよう。
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クレジット

http://www.flickr.com/photos/usnavyresearch/11971128426/ by Office of Naval Research (modified by あやえも研究所)
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