ラーニア大陸の北西部。強大な帝国の力に怯えるかのように、ひっそりと小さな国々が存在する。
アルフール小国も、その一つであった。
帝国歴312年、ディオニウス歴1048年。その初夏――
隣国のエルグス自治領は、突如としてアルフール小国への侵攻を開始。
戦火は瞬く間に広がっていた。
エルグス自治領の領主、グスタフ・オルムは、兵に略奪を許可。捕虜とした住民を奴隷として領土を拡大しようとしていた。
アルフールで捕らえられた力なき住民は、奴隷として次々とエルグスへと護送されていった。
そんな中、ある二人の姉弟も同様に奴隷として捕らえられ、エルグスへと護送されていた。
しかしその護送中に事故が起き、二人は逃げ出すことに成功する。
敵国エルグス領のまっただ中で、二人は逃げながら、故郷アルフール小国へ帰ることを決意する。
エルグスはある事情によって、姉弟を捕らえるために大部隊を仕向ける。対する姉弟は、頼れるのは二人の絆のみ。
目指すはアルフールの国境。
そして二人の旅が、二つの国の運命を動かしてゆくことになる――
エルグス自治領の中央部に位置する、巨大な渓谷。
「エルリオンフォール」と呼ばれる巨大な滝があり、その滝によって強い流れの川がある。
周囲は険しい山々で回り道ができず、橋が一本しかないため、ここがエルグス軍の主要交通路となっている。アルフールに向かうには、ここを通過しなければならない。
エルリオン渓谷を抜けた後に広がる、高地。
高地の入り口は高低差があり岩が多く、また地形も入り組んでいる。
しかし高地の後半になると、川が幾筋も広がっており、見晴らしがよくなる変化に富んだ地形である。
エルグス自治領に存在する最大の湖。
極めて美しい風景が広がっている。
海岸沿いは見晴らしがよく、遠距離でも敵味方を判別できる地形となっている。
セラ湖から北上した場所に位置する、巨大山脈。
通路が狭く、道も険しいため、エルグス軍は滅多に使わない。
しかし、格好の逃亡ルートであることもエルグス軍は知っている……