(今日は、講演風にお伝えします)
はい、みなさんこんにちは、あやえもさんです。
今日は人付き合いやコミュニケーションが苦手な方向けに、心地よく生きられる生き方のお話をしてみましょう。
一人でいる方がいい? それともよくない?
今日、ウェブでこんな質問を見たんですよ。
内容はというと、小学生の子が「みんなと一緒に遊ぶのが苦手です。一人でいる方が楽しいです」と言っています。
で、蛭子(えびす)さんの答えが、「一人でいる方が好きであれば、一人でいればいいよ」ということです。
みなさんの中にも、「みんなと一緒にいるのが苦手」だというタイプの人もいるかもしれません。
子どもを持つ親御さんの場合、「子どもがみんなと一緒にいられないと、将来が不安」だとか、「子どものコミュニケーション能力が育たないんじゃないか」、「将来、社会になじめないんじゃないか」とか思うかもしれません。
だから、みんなと一緒にいようとしたり、いさせようとすると。
でも、みんなと一緒にいると、疲れてしまうし、なかなかうまくいかないわけです。
じゃあ、どうすればいいのか。
とりあえず、今日の結論を先にお伝えしておきましょう。
「一人でいても、大丈夫ですよ」
ということです。
むしろ、ある程度の距離を取る方が、うまくいくようになります。
友人の数やコミュニケーション能力、社会とのやりとりなどもよくなり、心地よい距離感を保ちつつ、幸せになれます。
だから、心配しなくて大丈夫ですよ。
じゃあ、なぜ「一人の方が好き」というタイプの人は、ある程度距離を取る方がうまくいくのか。
それは、人には「適度な距離感」というものがあって、その「適度な距離感」を保つことで、安心して心を開けるようになるからです。
逆を言うと、「適度な距離感」を侵されるから、心を開けなくなり、コミュニケーションがうまくいかなくなる、ということです。
内向型、外向型の違い
この原理を説明するために、「なぜ一人でいる方を好むのか」について、少し見てみましょう。
私たちは、「一人でいる方が好き」というタイプと、「大勢でいる方が好き」というタイプの違いを持っているものです。
よく、「内向的な人」、「外向的な人」とか言いますよね。
まさにその内向性、外向性が「一人でいる方が好き」、「大勢でいる方が好き」という性質を作り出しています。
なら、「内向的な人」とは、どういう人なのか。
イメージしてみるといいでしょうが、静かに本を読んでいるのが好きだったり、工作をしたり、絵を描いたりするのが好きな人ですよね。
おとなしくて、広い人付き合いをあまりせずに、小さなことにこだわり、緻密で、一人でいたり、少数の友人とだけ深く付き合うことが好きなタイプです。
こういうタイプの人は、部屋をきれいに整えていて、おとなしくて、きちんとした生活をしているものです。
また、未来や過去をしっかりと考えて、だからこそ未来に不安を持ちやすかったり、過去を悔やみ続ける傾向にあります。
一方で、「外向的な人」は、どういう人なのか。
内向的な人とは対照的に、野球とかサッカーみたいな激しい運動が好きだったり、多くの人と付き合うのが好きです。
積極的で、多くの人と付き合い、小さなことにはこだわらずに寛容で、多くの友人を持ちます。
こういうタイプの人は、部屋にものが散らかっていても平気で、大胆であったり豪快で、ある意味だらしない生活をしているものです。
また、未来や過去をあまり考えずに、それでも「なんとかなるさ」と楽観的に過ごしやすい傾向にあります。
こういう内向性、外向性は、人間が生まれ持って備わった性質です。
すなわち、内向型、外向型は後天的に変えられるものではない、ということです。
なら、なぜ人には、こんな違いが生まれるのでしょうか。
内向型、外向型は、刺激への感度で作られる
ここから、少し脳のお話をしてみましょう。
私たちの脳には、ドーパミンやエンドルフィン、アドレナリンなどの「興奮物質」と呼ばれる物質があります。
私たちが外部から刺激を受けた際に、刺激に応じた興奮物質が脳内に出てきます。
この興奮物質が脳内に分泌されると、私たちは興奮します。
すなわち、「気分が盛り上がる」わけですね。
たとえば好きな人とか、片思いの人が近づいてきたら、ぶわーっと脳内で興奮物質が出てきます。
そして私たちは、「心地よい」と感じるわけです。
他の例で言うと、暇なときに、映画を見たとしましょう。
すると、主人公がピンチになって、ハラハラドキドキする。
これも、主人公に感情移入して、脳内で興奮物質が出ることで、気分が盛り上がるわけですね。
だから、刺激を受けても興奮物質が少ない状態だと、私たちは「つまらないなぁ」とか「退屈だなぁ」と感じます。
一方で、適度な刺激を受けると、「面白い」とか「心地よい」、「楽しい」と感じます。
ただし、これにはさらに上のレベルがあって、「これ以上の刺激は強すぎる」と感じる領域もあります。
たとえば、腹を空かせた虎とかライオンが、目の前に飛び出てきたとしましょうか。
虎でなくとも、殺意を持つ人が目の前に出てきたり、足下がおぼつかない高い場所に出たりしてもいいでしょう。
こういう危機的状況でも、私たちの脳内では興奮物質が一気に出ます。
それによって脳や体を覚醒させて、「一刻も早く逃げる」とか「すぐにでも安全な場所へ移動する」と、行動ができるようになります。
ですが、こういうのは、私たちにとって「緊急事態」にのみ使うモードになります。
というのも、そういう状況を長く続けると、体がもたないからです。
ライオンが目の前にいると、いつでも逃げ出せるように、ずっと体を覚醒させておかなければなりません。
それは大きな負担になります。
そして、そんな強い刺激に長時間さらされていると、心安まることがなく、疲れ切ってしまったり、病気になってしまうものです。
だから、そういう「緊急事態のみに使うモード」というのは、「刺激が強すぎる」と感じることで、長時間続けられないようになっています。
そのように、私たちには脳内の興奮物質量によって、「つまらない、退屈」と感じるか、「心地よい」と感じるか、「刺激が強すぎる」と感じるかが分かれる、ということです。
内向的な人は、刺激に鋭いタイプ
で、この興奮物質は、人によって「心地よい」と感じる適度な領域が違います。
少しの興奮物質で「心地よい」と感じる人もいれば、強い刺激を得てようやく「心地よい」と感じられる人もいます。
言うなれば、先天的に、興奮物質に「鋭い人」と「鈍い人」がいる、ということです。
ここで、内向性と外向性に戻ります。
内向的な人とは、興奮物質に鋭いタイプの人です。
だから、静かに一人で本を読んでいたり、工作をしたり、絵を描いたりと、ちょっとした刺激で十分に心地よさを感じられるようになっています。
ちょっとした変化で興奮物質が出るので、小さなことでも気になります。
そのため、精神的に繊細で、小さなことにこだわるようになります。
一方で、外向的な人とは、興奮物質に鈍いタイプの人です。
だから、野球やサッカーなどの激しい運動とか、強い刺激を受けなければ「心地よい」とは感じられません。
なぜ、バンジージャンプとか、ジェットコースターなどを好む人がいるのか。
それは、彼らがそれぐらい強い刺激でなければ、「心地よい」と感じられないからです。
それぐらい、彼らは滅多なことでは興奮を感じられないわけです。
ある意味、内向的な人の方が、幸せを味わいやすいと言えます。
小さな刺激で、心地よさや幸せを感じられるのですから。
一方で、外向的な人であるほど、「常に退屈している」と言えます。
彼らはバンジージャンプとか、ジェットコースターみたいな、特別な刺激がなければ「心地よい」と感じられないのですから。
逆を言うと、内向的な人の方が、「強い刺激に弱い」と言えます。
強い刺激に長時間さらされると、すぐに疲弊して、休憩が必要になります。
一方で外向的な人ほど、強い刺激に強いと言えます。
強い刺激にも耐え抜き、「厳しい試練」などをものともせずに乗り越えられます。
人と接するのは、強い刺激になる
そして、「人と接する」というのは、実は刺激が強いことになります。
だから、外交的で興奮物質に鈍い人ほど、新しい人との出会いや、コミュニケーションに気持ちよさを感じます。
一方で、内向的な人ほど、長時間人と接すると、興奮物質が出過ぎて「刺激が強すぎる」と感じます。
そのため、人と長時間一緒にいると、疲れてくるようになります。
もちろん、内向的な人でも、「人と一緒にいたい」と思う気持ちはあります。
ですが、内向的な人は、興奮物質への感度が高いものです。
だから、近くいすぎたり、長時間一緒にいると、刺激が強すぎて「やっぱり一人になりたい」と思うようになるわけです。
内向的な人の場合、お祭りだとか、旅行とか、コミケとかでも、どれだけ人と楽しんだとしても、ずっと人と一緒にいると、「少し一人になりたい」と思う瞬間があるものです。
これは、「刺激が強すぎるから、少しオーバーヒートした。だから少し冷ましたい」ということです。
人によっては、「こんなに楽しいのに、なぜ一人になりたいんだろう?」と思うかもしれません。
ですが、それは正常な反応である、ということです。
刺激が強すぎるほど、高頻度で一人になって休息を取る必要があるわけですね。
「適度な距離感」が、良好な人間関係とコミュニケーションのコツ
そんな場合、距離感を適度なものにすることで、心地よい距離を保ちつつ、人と一緒にいることができるようになります。
ここでこれを象徴するかのような、いいツイートがあったので、ご紹介しましょう。
こーゆーのがしたいんだよ。 pic.twitter.com/C7s8rkUOoS
— H∧L (@haurudun) April 3, 2016
まさにこれが、内向的なタイプの、「適度な距離」を保つ人付き合い方法ですね。
多くの人が、「近ければ近いほど、親密である」とか、「友人や恋人との距離は、近ければ近いほどいい」などと思い込んでいます。
ですが私は、ちょっと違う考え方を持っています。
それは、「適度な距離感を保てるほど、親密である」、「友人や恋人との距離は、適度であればあるほどいい」ということです。
すなわち、「近いほど親密」ではなく、「適度な距離感を保てるほど、親密」だということですね。
「優しさ」や「愛情」というのは、いつもべったりしていることではないように思います。
相手が一人になりたいときは、そっとしておいてあげるのも、一つの優しさや愛情のように思います。
実際、疲れている時に周囲でワアワアされると、もっと疲れて嫌になるでしょう?
すなわち、「人付き合いは、無理に近くならなくていい」ということです。
特に、内向的なタイプの人ほど、少し距離を置く方が落ち着けて「心地よい」と感じるものです。
恋人同士だったとしても、毎日会わなくてもいいですし、毎日メールのやりとりをする必要もありません。
会っても無理に会話を続ける必要もありませんし、デートでずっと一緒に行動する必要もありません。
むしろ、上のツイートにあるように、ゲーセンで一緒に遊んだり、コミケやショップで個別行動をしたり、家でも少し距離を置いて、ゲームや小説を楽しむぐらいがちょうどいい、という人も多いでしょう。
で、たまに近づいてふれあって、そして少し強めのドキドキや刺激を味わって堪能して、また少し離れる。
感度の強い内向的なタイプの人は、それぐらいの距離感が、一番「心地よい」と感じられるわけです。
そして、そういう「距離感が分かる人」ほど、心を許せて、心を開けるようになります。
というのも、「相手は無理に、自分の領域に踏み込まない」という安心感があるからですね。
「自分の心を打ち明けても、あの人は私にとって、心地よい距離感で居続けてくれる」
だから、人は心を開くわけです。
すなわち、良好な人間関係、良好なコミュニケーションを確立できる、ということです。
だから、人間関係がうまくいかない場合や、一人でいる方が好きな場合、少し距離を取るといいでしょう。
「近い方が親密」ではなくて、「距離感をわかり合える人が、親密」だということです。
内向型の私が、うまくコミュニケーションを取れた秘訣
実際に私は内向型で、刺激に鋭いタイプです。
ですが、私はゲーム制作やアニメ制作など、多くの人を指揮して、コミュニケーションをしてきました。
クセのあるクリエイターさんばかりを相手していた上に、しっかりとコミュニケーションをしなければ、プロジェクトはうまく進められません。
また、幸せなことに多くのスタッフさんから「また一緒にやりたい」と言ってもらえたので、私はコミュニケーション能力がある方じゃないかと思います。
なら、なぜうまくコミュニケーションができたかというと、私は指揮をメールでやっていたからだと思います。
私にとっては、メールでやりとりするぐらいが、ちょうどいい距離感なわけです。
毎日多くのスタッフさんと顔を合わせていたら、きっと私は疲弊して、余裕がなくなっていたことでしょう。
また、私には友人がいますが、中にはメールやSNSでやりとりをするだけで、一度も会ったことがないのに「この人は私の友人」だと言っている(もしくは思っている)こともあります。
スペイン人が、バル(軽い酒場)で意気投合した人を、初対面でも「アミーゴ!(親友!)」と言うのと似たようなノリです。
距離的にすぐ近くにいなくても、ベタベタしなくても、友達になれたり、わかり合えることができるものです。
そして、私にとって「居心地のいい人」というのは、そういう距離感を理解してくれる人です。
あまり高頻度にメールのやりとりをするわけでもなく。
いつでもふれあっているわけでもなく。
でも、互いにツイッターやfacebookを見ていたり、時々ちょろっとツッコミを入れたり、ネタにする。
特に繊細なクリエイターさんほど、少し距離を置いて接する方が、長続きするし、信頼度も増すように思います。
毎日コミュニケーションをしていなくても、信頼できるようになることもある、ということです。
まとめ
だから、内向的な人は、少し距離を置くぐらいでちょうどいいんですよ。
一人でいるのが好きな人は、一人でいるぐらいでちょうどいい、ということです。
冒頭でも触れましたが、子どもを持つ親御さんの場合、「子どもがみんなと一緒にいられないと、将来が不安」だとか、「子どものコミュニケーション能力が育たないんじゃないか」、「将来、社会になじめないんじゃないか」とか思うかもしれません。
でも、大丈夫です。
もしお子さんが内向的な性格の場合で、親御さんが外交的な場合、むしろ少し距離を置いてあげることで、子どもは安心して、より積極的に心を打ち明けられるようになります。
すなわち、「少し距離を置く方が、コミュニケーションはうまくいくこともある」、ということです。
「大切なことは、面と向かって言う」なんて必要もないと思います。
内向的な女の子の場合、幼い頃に友達と「交換日記」をした人もいるかと思います。
交換日記なら、言葉には出せないような内面を出せた人も多いんじゃないかと思います。
また、思いを伝えるのに、手紙やラブレターを使う人もいるでしょう。
大切なことほど、少し距離を置いて語る方が、やりやすいこともあるわけです。
それは、少し距離があるからこそ、安心して言えるからですね。
恋人と付き合う場合でも、相手が内向的な場合、少し距離を取るぐらいの方が好かれることも多いものです。
その方が、相手も「この人と一緒にいると、落ち着く」と感じるからですね。
無理に会話を絶やさないようにしなくても、無理に休日に会わなくても、いいんですよ。
互いにそういう距離感を理解し合える人ほど、「親密な関係である」と、私は思っています。
「近いほど親密」ではない、ということです。
友人や恋人に求められるのは、そういう「距離感を理解してあげること」じゃないかと思っています。
すると、常に「心地よい」という状態で、良好な人間関係、良好なコミュニケーションができるかと思います。
ということで、長くなりましたが、人付き合いが苦手な方向けに、心地よく生きられる生き方のお話をしてみました。