今日は、人間心理のお話です。
無意識で行っている判断プロセスを理解できると、自分の深層心理を理解しやすくなる、というお話です。
「自分の価値観が分からない」をどう対処すればいいのか
で、今日は最初に昨日のおさらいをして、そして本題に移りましょう。
私たちって、精神的に葛藤することがよくありますよね。
「これをしなきゃ。でもできない」とか、「これをしたい。でも許されない」と、いろいろ悩んでしまうものです。
そういう葛藤を続けていると、自分でも自分の価値観や思考が分からなくなって、混乱してしまうことがあります。
例えば「自分は本当はこれが好きなのか、嫌いなのか。やりたいのか、やりたくないのか、分からない」となってしまうことがあって。
そういう場合、「自分は無意識で何をどう考えて処理しているのか」という、無意識での判断プロセスを知るのもいいかと思います。
すると「自分はこういう流れで判断していたのか」と分かって、すっきり自分の思考や価値観を理解できるかもしれません。
「性質別で、精神の厚さが違う」という考え方
それを説明するために、いつもの4つの性質分類(外向型と、3つの内向型タイプ)を使います。
↑ これですね。
今回は、この上下の軸(共感性が高いか低いか)を用います。
- 高共感側(高共感タイプ、HSPタイプ): 精神層が厚いので、肉体からの情報が表層意識に伝わるまで、長いプロセスがかかる。なので雑念を取り払えて思考に集中できるが、「考えすぎ」が起きる。
- 低共感側(外向型、境地開拓タイプ): 精神層が薄いので、肉体からの情報が表層意識に伝わりやすい。なので考えすぎることがなく動物的に動けるが、雑念が多い。
「精神層の厚さ」とは何か
で、ここで言う「精神層の厚さ」とは、次図のようになると言えます。
↑ 昨日の記事で出てきた、目新しい概念です。
高共感側の2タイプの方が、表層意識と深層意識の幅が厚いと分かります。
この「精神層の厚さ」とは、「肉体からの情報が、どれぐらい長い思考プロセスを経て、表層意識に伝わるか」と思うといいでしょう。
精神層の階層図では、下側になるほど無意識(深層意識)になって、肉体からの情報が上がってきます。
そして上側になるほど、私たちが意識している表層意識になります。
だから情報は下から来て、上へと上がってくるわけですね。
深層意識より下は、「肉体が管理する領域」です。
低共感な人ほど「肉体からの情報」をすぐに意識できる
そして低共感な人ほど「精神層が薄い」ので、肉体からの情報をすぐに意識できます。
そうすることで、動物的に瞬間的な判断ができるわけです。
例えばスズメやツバメでも、きょろきょろとせわしなく周囲に気を配っているじゃないですか。
それによって危機やメリットをすぐに察知できて、素早く行動できると。
ただ、肉体からの情報は、いろんな雑多な情報が投げられます。
視覚情報だけでなく、嗅覚や聴覚、味覚、皮膚感覚、そして「トイレに行きたい」とか「背中がかゆい」、「なんかお腹の調子が変」みたいな、ありとあらゆる情報があるわけです。
低共感な人ほど、そういう雑多な情報をすぐに拾ってしまいます。
だから例えば自閉症やアスペルガー症候群のように、共感性が低い人ほど、せわしなく動いてしまうわけですね。
そういうトレードオフがある、ということです。
高共感な人ほど、「肉体からの情報」を細かく把握できない
一方で高共感な人ほど、精神層が厚く、思考プロセスが長いので、肉体から上がってくる情報を細かく把握できません。
「トイレに行きたい」みたいな大きな情報は分かるんですが、雑多な細かい情報はシャットアウトされてしまうと。
だから、一つの思考に集中できます。
なので本当に集中していると、その「トイレに行きたい」みたいな重要な情報ですら、時に忘れてしまうこともあったりして(笑
あるでしょ、ちょっと一息ついたときに「そういえばお腹がすいていたんだった」とか、「トイレに行きたかったんだ」みたいに思い出すことが(笑
だから高共感な人は、「落ち着きがあるし、(変な抑圧がなければ)自分の普段感じる感覚を、自分でコントロールできる」という素晴らしい機能があります。
ただしその犠牲として、「動物的な判断ができないので、そういう瞬発的な判断が求められる状況では弱くなる」と言えます。
これも、そういうトレードオフがある、ということです。
私たちが無意識でどういう思考をしているのか
で、この4つの精神層の性質を理解できれば、私たちが無意識で行っている思考の流れが分かります。
その結論から言うと、私たちは次の4つの層で、物事をフィルタリングして判断していると言えます。
- 第1層「いつもの意識」: 社会的な価値観で「評価されるか」と、代償欲求で「憂さ晴らしになるか」を判断する。
- 第2層「問題対応意識」: 「それを実現する自信があるか」を判断する。
- 第3層「自己欲求意識」: 「私はそれが好きか、嫌いか」という、自分の性質に合うかどうかの判断をする。
- 第4層「抑圧領域」: 幼い頃から学習した、「生き延びるために絶対に守らなければならない、自分内ルール」に従っているかの判断をする。
で、情報は下から上に流れるので、私たちは深層意識で、第4層から順に判断していると分かります。
この流れが分かると、自分の思考プロセスを理解しやすくなるでしょう。
第4層「抑圧領域」での判断
何かあると、私たちは最初に第4層で、「それは『絶対に守らなければならないこと』に反していないか」を判断します。
例えば「目の前でお肉がジュージューとおいしそうに焼けていて、よだれが出ている」みたいな情報が来ると、それに関する抑圧を照らし合わせます。
で、もし「お肉を食べると、親から殴られる」とか「宗教的に許されない」とかいうルールがあると、そこで「これはダメなものだ!」と拒絶されます。
そして第3層から上では、必然的に「ダメだ!」という情報が上がって、「これはダメなものだ」と私たちが表層で意識できます。
ほら、たまに「私たちは世の中をありのままで見ているわけではなく、フィルタリングして見ている」とか、「色眼鏡をかけて見ている」みたいに言うじゃないですか。
それはこんな風に、情報は意識内で、最初に抑圧の内容に照らし合わせるからですね。
だから「第4層の抑圧領域にルールがあると、それが私たちの感覚すべてを狂わせる」とも言えます。
「判断を狂わされるルール」の存在
言い換えると、幼い頃からいろんな抑圧を重ねてきた人ほど、そういう「判断を狂わされるルール」が多くなるわけです。
なのでこじれた反応をするし、世の中をありのままでとらえられなくなるわけですね。
例えば「わがままを言ってはいけない」というルールがあった場合、誰かが「こうしたい」と希望を言っただけで、急に「許せない!」と怒ったり。
「落ち込んではいけない」というルールがあった場合、誰かが「落ち込んだ」と言っただけで、「落ち込む余裕があるなら、こうしろ!」と拒絶したり。
本来なら、どういう反応をするのかなんて、各人の自由なはずです。
ですが抑圧を持っていると、そういう風に判断を狂わされてしまうわけです。
そしてそれは、正常にとらえている周囲からすると、「あの人はややこしい」とか「いつも曲解する」、「いつも怒る」、「いつも嘆く」みたいな風に感じてしまうと。
第3層「自己欲求意識」での判断
で、もし第4層で何事もなくOKなら、第3層の自己欲求意識で「それは自分にとって合うかどうか。好きか、嫌いか」を判断します。
そして、例えばお肉がおいしそうに焼けている情報なら、「私はお肉が好き」とか、「よだれも出て、お腹がすいている状態だ」という自分の価値観が出てきます。
だから誰しも、自分の深層では「私はこれが好き、これは嫌い」というのは、感じているわけですね。
だけどそれが、より上の層で加工されることで、判断や態度が変わってゆくことになります。
第2層「問題対応意識」での判断
で、第3層で自分に合うかどうかを判断したら、第2層の問題対応意識で「それを実現する自信があるか」を判断します。
「お肉が焼けていて、私はこれが好きで、食べたい」という情報が来ると、「食べる自信があるか」という判断をするわけですね。
そこで、もし何か自信を失わせる要因があれば、その欲求を自制します。
例えば「そういえば最近、失敗続きだな」とか「いつも先走って行動して、失敗ばかりだ」とか、いろいろあるでしょう。
すると、どんなにおいしそうでも、「そういえば私はダメな奴なんだ。これにふさわしくない」と情報を加工して、第1層にその情報を伝えます。
自信を失った人だと、よくあるでしょ、こういうの(笑
最初は瞬間的に「おいしそう!」と感じるのに、次の瞬間に「自分はダメな奴だ」と落ち込んで、トボトボとその場から離れる感覚です。
深層意識では、そういう判断が瞬間的にされている、ということですね。
第1層「いつもの意識」での判断
で、第2層でもし何事もなければ、そのまま第1層に「お肉を食べたい。私は食べられる!」と、自信を持って伝えられます。
ですが、最後の難関、第1層で「それは社会的に評価されることか」、もしくは「それは憂さ晴らしになるか」という2つの判断が待っています。
次図の第1層のように、「他者の価値観ポジティブ」と「代償欲求ポジティブ」という2つの判断があるわけですね。
↑ この第1層です。
2つの葛藤で悩む状態
で、「他者の価値観ポジティブ」では、「評価されたい。でも実現できないと、ストレスになる」という葛藤があります。
また、「代償欲求ポジティブ」では、「憂さ晴らしをしたい。でも資源に限界がある」という葛藤があります。
そして「目の前のお肉を食べたい!」という場合、その両者に照らし合わせます。
で、どちらかがOKで、致命的なNGがなければ、ゴーサインが出せます。
まずは、「今は食べてもいい状況か。社会的に評価されるか。もし評価されないなら、ストレスになるぞ」と「他者の価値観」に照らし合わせて考えます。
もしそれがあまり評価されないことでも、次に「憂さ晴らしになるか。お金に余裕があるならいいが、お金に余裕がないとできないぞ」と「代償欲求」に照らし合わせて考えます。
で、場合によっては、第1層で拒絶されることがあります。
「今は仕事中だ。それに今は、資金が乏しい」みたいな事情があると、「ダメだぁ~!」と判断して、表層意識でガッカリ落ち込むわけです(笑
第1層と第2層で起きる、「3つの板挟み」
なお、もしその人が別の抑圧を持つ場合、ここで第1層と第2層の3つの板挟みになることがあります。
本来なら落ち込めばすむことなのに、「ネガティブになっちゃいけない。ポジティブにとらえなきゃ」として、無理矢理ループして再検討してしまうわけです。
こうして、「評価されたい。でもこれ以上はできない」、「憂さ晴らしをしたい。でもお金がない」、「自己否定をしたくない。だからポジティブでなきゃ」の3つの板挟みが生まれます。
これは図で言うと、次図のようになります。
↑ この3つの板挟み状態です。
この「抑圧によって、思考がループしてしまう」という現象は、もう少し詳しく語れるので、後日に改めて説明することにしましょう。
高共感な人ほど、長い思考プロセスがある
ですが、この第1層をクリアすれば、すべてOK、判断プロセスの完了です。
店先で焼けるお肉を前にして、「今は夕方で、仕事も終わった。自分は一人暮らしで、気にすることはない。最近忙しくしていたし、憂さ晴らしもしたい。資金も余裕がある!」と分かると、そこで初めてゴーサインが出ます。
こうしてやっと、私たちは「お肉を食べたい。食べられる! 食べよう!」と行動できるわけですね。
もうすっごい長い判断プロセスでしょ(笑
高共感な人というのは、この長ったらしいプロセスを、毎回やっているわけです。
そりゃもう疲れて当然でしょ(笑
この「判断プロセスが長いこと」を、「精神層が厚い」と言うわけです。
だから高共感な人ほど、よく悩むし、決断しにくいし、動物的な判断が必要な場では「判断が遅い!」となりやすいと言えます。
高共感な人の抱える問題
そういう意味では、高共感な人ほど「悩むプロセスが長い」、「悩む要因を多く考慮してしまう」という問題があると言えるでしょう。
また、抑圧による「幼い頃からの学習で、情報をねじ曲げられてしまう」という問題もあります。
一方で低共感な人は、このプロセスが短いわけです。
だから悩まずにいられるし、何事も即決できます。
ただし「肉体からの情報」レベルでの雑念は多くなるので、そわそわした行動をしてしまうと。
だから共感性というのは、「使いこなせれば優れた機能になる」と言えます。
情報をシンプルに認識したり、抑圧を解放することで、「雑念なく、曲解なく把握できて、思考をコントロールできる」というメリットにできます。
特にHSPタイプは抑圧を抱えやすいので、その辺の「最も根底となる情報フィルター」を修正すると、「がらりと世界が変わって見える」と言えます。
まとめ
そんな風に、思考プロセスを知ることで、自分がしている思考の流れを理解しやすくなるかと思います。
これは特に、混乱したときに客観的になれるので、自分の感覚を取り戻すのに役立つでしょう。
そしてこの流れが分かると、「抑圧がすべての原因」ということがよく分かるんじゃないかと思います。
「ポジティブであるかどうか」なんて、些末なことでしかありません。
だって、それは一番最後の処理プロセスでしかないからですね。
この辺が理解できると、自分の思考プロセスを客観的に理解できて、混乱を鎮められるし、冷静に思考できるかもしれません。
そして「思考のループ」はどう生まれるのかについて、もう少し語れることがあるので、それは明日か、また後日に語ることにしましょう。
ということで今日は、無意識で行っている判断プロセスを理解できると、自分の深層心理を理解しやすくなる、というお話でした。
今日はここまで~。