禅の老師と弟子とで、このような会話があった。
老師は弟子に、ある掛け軸に描かれた水墨画の絵を見せて、こう言った。
「この絵は、かの有名な○○によって描かれた山水絵じゃ」
弟子は「すごい!」と言って、興奮した様子で絵に見入った。
その直後、老師はこう言った。
「実はこの絵は、偽物じゃ」
弟子は「なんだよ、偽物か、チェッ」と言って、つまらなさそうにした。
老師は弟子にこう言った。
「いったい、お主はこの絵の何を見ているのじゃ」と。
弟子はまじまじとその絵を見て、最後にこう言った。
「本物でも偽物でも、この絵は美しくて、いい絵ですね!」
それを聞いて、老師はにっこりと微笑んだ。
私たちは時に、目の前にある「ありのままの姿」が見えなくなることがある。
周囲の価値観に引きずられて、それを持っていなければ、価値はないと思い込まされているものだ。
これだけ年収がないといけない、これだけ学歴がないといけない、これだけ身長がないといけない、これだけ友人や人脈がいないといけない、これだけ資産を持っていないといけない、これだけ有名でないといけない、これだけ……
老師はきっと、そういう人に、こう言うだろう。
「お主は、人生の何を見ているのじゃ」と。
心の目で、見てみよう。
そうすると、きっと、大切なことが見えるだろう。
そのとき、貴方は本当の自由を手に入れるだろう。