今日は金融的な、心理のお話です。
なぜ「ブームに乗って買って、売らずに持ち続ける」人が最も損をするのか、というお話をしてみましょう。
金融市場で面白い心理現象があった
まぁこのブログでは何度も触れていますが、最近の私は金融メカニズムとか、市場心理に興味を持っていたりします。
それで面白い心理現象があったので、ちょっと説明してみましょう。
それが、「ブームに乗って、値上がり期待で買って、売らずに持ち続ける人が、最も損をする」ということです。
最近では、ビットコインとか暗号資産とか、いろいろありますよね。
なので今日は、なぜそんな風になるのか、その心理と原理を説明してみましょう。
ブームで買って、売らずに持つ人が損をする原理
なぜ「(値上がり期待で)ブームに乗って買って、売らずに持ち続ける人が、最も損をする」のか。
結論から言うと、利益を作る人は次の2つのどちらかになるからですね。
- ブームに乗って、『高値で売り抜ける』人が利益を出す
- ブームに『乗らずに安値で買って』、持ち続ける人が利益を出す
そしてこれは、「値段と価値の違い」と「ブームに乗りやすい性質」という2つの要因によって引き起こされます。
ブームの時点で、「本来あるべき値段」よりも高い
そもそも、ブームになっている時点で、値段は「本来あるべき実体価値」よりも高くなっているものなんですよ。
それは当然で、「ブーム」とは「必要以上に人が押し寄せること」ですからね。
言い換えると、価値が希少になっているから、値段が上がるわけです。
大量生産できるようになったり、人々が興味を失うと、世の中にあふれるようになって、ブームは去り、値段も落ちます。
だから、「ブームに乗る時点で、基本的に普段よりも高い値段で買っている」ということです。
もちろん、「ブームはいつまで続くか分からない」ので、長期的に上がり続ける可能性もあります。
例えばビットコインの初期(2012年頃)でもそうでしたし、株式で言うとS&P500のインデックス投資でもそうですよね。
言うなれば、みんなは「これを持っていれば、未来になるほど増えて、お金持ちになれる」と思い込んでいるわけです。
そして実際に、長期目線で見れば、値段は上がってゆくものだろうと思います
ブームが去ると、値段は落ちる
でも、ここに落とし穴があるんですよ。
というのも、ものには適正価格というものがあって、適正価格よりも高く買えば、ブームが落ちると適正価格近辺に戻るわけです。
そしてブームがバブルになっていると、適正価格からさらに下に落ちることも多くて。
その場合、「長期的には増える」と言っても、上昇した期間が長いほど、その間に起こる「中期的な停滞や下落する期間」も長くなります。
確かに10年、20年の目線で見れば、例えばS&P500でもずっと増え続けます。
でも、2~3年は増えないことは当たり前にあるし、時には5年、10年待たされることもあるわけで。
長期的な上昇があったほど、長期的な停滞になりやすいものです。
その5年とか10年を待てるのか
すると、「その5年とか10年を待てるのか」ということです。
待てるのならいいんですよ。
でも、ついブームに乗ってしまう性質の人ほど、これが待てません。
だって、大幅に下落する時、すなわちバブル崩壊時にも、ブームは来るんですから。
それは「買うブーム」ではなく、「売るブーム」です。
周囲の「欲望で買うブーム」に乗っていたら、ほぼ確実に「恐怖で売るブーム」にも乗ります。
こうして、「バブルの高値で買って、バブル崩壊の安値で売る」という現象が起きます。
塩漬けにしても、値段が戻ると手放してしまう
もちろん、中には「損失は見ずに、塩漬けしよう」という人もいます。
で、何年もなかったことにして放置しておくと、数年後かには値段が戻ってきます。
すると、そこでその人は、「やれやれ、値段が戻った。ひどい目にあった」と、そこで売ってしまうんですよ。
というのも、「買った状態よりも、値段が下がった状態」というのは、それだけストレスだからですね。
ある意味、「私は失敗した」という心の傷を、何年も持ち続けるようなものです。
そういう気持ちを何年も抱え続けていると、「できるだけ早く過去のミスを手放して、このストレスから解放されたい」と思うようになります。
だから、値段が戻った時に、すぐに売ってしまうと。
トレーダーの世界では、こういうのを「やれやれとため息をついて売る」ことから、「やれやれ売り」と言うんですが。
他のブームに移ってしまう罠
で、そういう「値段が戻った状態」というのは、ブームではない状態です。
すると、他に「すでにブームになっている、別の銘柄」があったりするんですよ。
例えばビットコインを持ち続けていた場合、ビットコインが暴落して、戻ってきた状態では、ビットコインのブームは去っています。
一方で、例えばAmazonとかGoogleの株がブームになっていたりして。
そして、ビットコインを売ってしまい、新たなブームに移ってしまうと。
でも実際は、売った後で、そこから本当のビットコインの価格上昇が始まるんですよ(笑
だって、長期では上がっていくものなんですから。
そもそも、「これからブームになるもの」は、だいたいが「本当はブームが来るだけの価値あるものなのに、長期間ブームになっていなかったもの」ですからね。
こうして、「長期間塩漬けにして、本当に上がり始める直前で売ってしまう」という現象が起きて、ただ時間を浪費しただけになってしまうと。
どういう戦略で考えるか
その場合、次のような発想が利益を出すように思います。
- ブームに乗って、『高値で売り抜ける』人が利益を出す
- ブームに『乗らずに安値で買って』、持ち続ける人が利益を出す
だから、ブームに乗る場合、高値で売り抜けることを前提にしないと、うまくいかないわけです。
そして「バブルがどこまで伸びるか」というのはとても分かりにくいので、ギャンブルになりやすいと。
ブームに乗らないスタイル
私の場合、「ブームに乗らない」というスタイルが合うんですよね。
この「ブームに乗らない」というのは、ある意味「見捨てられて、ずっと放置されているもので、価値あるものにお金を投資する」と言えます。
注意が必要なのは、これは「下落しつつあるもの」ではない、ということです。
だって、「下落しつつあるもの」は、「売りのブーム」と言えるんですから。
なので、「下落しつつあるものを買う」をしても、うまくいきません。
だってこの場合も、上昇する時と同様に、「いつまで売りが続くか分からない」ので、こちらもギャンブルになりやすいからですね。
トレーダーの世界で「ナンピン」という概念がありますが、まさにそれです。
価値はあるのに、値段が低くて、長期的に放置されているもの
なので、「価値はあるのに、値段が低くて、長期的に放置されているもの」ほどチャンスがある、ということです。
「世の中の価値」というのは、すべて相対的なものなので、市場には常にそういう「実体価値よりも安いもの」が存在します。
なので「片方が上がって、他に安いものを見つけたら、そこで少しずつ利益確定して、安いものに乗り換えてゆく」というアプローチが有効になると分かります。
イメージとしては、「動いているもの」を見るのではなく、「動かないもの」に目を向けると。
もしくは、「社会の中心にある、きらびやかなもの」ではなく、「辺境の価値あるもの」を見つけ出す、という感覚です。
だから待つことが大切になる
ただし当然、これは「待つ」必要があります。
ブームに乗るのは「どこまで上昇するか分からない」という、「高さが分からない」という問題があります。
一方でブームに乗らないのは、「いつまで待たされるか分からない」という、「時期が分からない」という問題があると。
いやまぁ、ものには周期があるので、だいたいの待つ時間は分かるんですけどね。
なら、「損失は嫌だ」という繊細な人ほど、後者の「待つ」というスタイルの方が合うように思います。
ウォーレン・バフェットはそういうスタイルなんですが、これが分かると、彼の言う「絶対に損をするな」とか、「投資家(バリュー投資家)は、待つのが仕事だ」という教えの意味が分かるかと思います。
まとめ
そんな風に、スタイルを見極めれば、金融業界は長期的にはうまくいく世界のように思います。
いや、まだ私は成果を出していないので、あくまで仮説ですが(笑
なので、まぁ私の言うことはあまり信じないでください(笑
私の中では、「どちらのスタイルも、元は同じだ」という発想なので、もっと深く統一理論を作ろうとしていたりします。
でも、こういう原理が分かると、面白いですよね。
まさに人間の行動原理が見えてきて、そういう「人間の基本的性質が引き起こすずれ」が楽しかったりします。
お金を投資するよりも、こういうメカニズムを分析する方が面白い、という状態です(笑
ということで今日は、なぜ「ブームに乗って買って、売らずに持ち続ける」人が最も損をするのか、というお話でした。
今日はここまで~。