今日は抑圧に関係する、人間心理のお話です。
性質によって抑圧の抱え方が違う、というお話をしてみましょう。
今日は新しい概念が出てきます。
低共感な人は抑圧を持つのか
こういう質問があったので、ご紹介。
ネガティブ療法の階層の図で高共感・低共感というワードが関連しているか伺いたいです。
HSPタイプは、おそらく第4層まで降りれる人は降りやすいかなと思います。
ただ境地開拓型の妻を見ていると、自身のネガティブな面は一切みずに、スルーしたり見えなくなってしまうように感じます。
低共感な境地開拓型の人でも、第4層まで降りていくことができるのでしょうか。
高共感と低共感の違いで、降りられる階層が異なるのか、それともまったくの無関係なのか(中略)、質問させていただきました。
質問の内容はというと、「低共感な人でも、抑圧を解放できるのか。そもそも低共感な人は抑圧を持つのか」ということですね。
以前から、「低共感な人は、悩めない」と触れていますが、抑圧も持つわけです。
なら「低共感な人は、悩むの? 悩まないの?」と感じることもあるかと思います。
結論から言っておくと、「低共感な人(工夫できるタイプ)は、抑圧を抱えやすいけれども、その抑圧の総量は少ない」と言えます。
これは、性質別に「精神の厚さと構造」が違っていることになります。
精神的な苦しみと、ネガティブ療法
そういう「性質別の精神構造」を理解するために、精神について改めて全体像から説明してみることにしましょう。
私たちは、精神的な葛藤で疲れ果てて、現実をうまくこなせなくなることがあります。
いわゆる、うつだとか、抑圧、自律神経失調症、心身症、適応障害みたいなものですね。
心の中でいろんな対立や混乱があって、悩んで疲れ果てて、最後には「楽になりたい」と自殺を選んでしまうような苦しみです。
それを解決するために、このブログで最近提案している一つの精神療法として、「ネガティブ療法」があります。
これはざっくり言うと、「14歳ぐらいからの反抗期を再現して、ネガティブになることで深層意識に入れて、抑圧を解放できる」という方法論です。
そうすることで、抑圧による「自分が分からない。自分はもうどうしたらいいのか分からない」という精神的な問題を、根本から解決しよう、というアプローチです。
深層意識の構造
で、ネガティブ療法では、「深層意識に入ることで、抑圧を解放する」というアプローチを取ります。
そして深層意識には、次のような4つの層があります。
- 第1層「いつもの意識」: 私たちが普段感じている意識。「評価されたい。でも実現できない」と「憂さ晴らしをしたい。でも資源に限界がある」の2つで葛藤。最も表層にある意識。
- 第2層「問題対応意識」: 第1層で葛藤が続いてネガティブになると、この層が意識に出てくる。この層で自己否定をすることで、活動量を抑えて様子見をする。
- 第3層「自己欲求意識」: 第2層でも対処できずにネガティブになると、この層が意識に出てきて、自分の価値観に気づく。それによって第1層「いつもの意識」の行動を修正して、ストレスを低減する。
- 第4層「抑圧領域」: 第3層でも対処できずにネガティブになると、最終的に踏み込む領域。「幼い頃からの学習」(抑圧)を必要なだけ消して、第1層「いつもの意識」の行動を修正する。最も深層にある意識。
深層意識は、価値観と行動のフィードバックシステム
だから私たちの深層意識というのは、価値観と行動のフィードバックシステムだと言えます。
普段はできるだけ、「他者の価値観」に合わせて社会的に行動しますが、ストレスがたまるものです。
そしてストレスがたまって限界になると、ネガティブになることで自己否定を起こして様子見をしたり、さらにネガティブになると「自分の価値観」や「抑圧」を解放して、フィードバックを加えます。
私たちはこのメカニズムのおかげで、「できるだけ社会に合わせつつ、自分の欲求も満たせてゆく」ということができるわけですね。
だからネガティブになるほど自分の価値観が見えるし、抑圧も解放できる、ということです。
なぜ「ポジティブ言葉」は薄っぺらく感じるのか
ちなみに「自己否定をやめましょう」、「自分を受け入れましょう」、「ありのままでいい」というポジティブ言葉は、なんだか薄っぺらく感じるじゃないですか。
それは、第2層までしか認識できていないからですね。
第2層で自己否定をするから、「自己否定の否定をすれば、ポジティブになれて解決する」と思い込んでいるわけです。
でも実際は、それは「第2層から出て、第1層に戻ろう」と言っているのと同じです。
そもそも第1層で限界が来て、それでより深層意識の第2層の自己否定が出てきたのに、「自分を受け入れて、ポジティブになろう(第1層に戻ろう)」というのは無意味です。
同じように、「もっとうまく気晴らしをしよう」というのも、「第1層に戻ろう」を意味するので、無意味です。
むしろそのアドバイスは、さらなる板挟みを生みます。
「評価されたい。でも実現できない」、「憂さ晴らしをしたい。でも資源がない」、「自己否定をしたくない。ポジティブでなきゃ」という、3つの板挟みを強めてしまうわけです。
で、最終的に「もう疲れた。楽になりたい」と、ポジティブ(代償欲求のポジティブ)になることで自殺をしてしまうわけです。
うつの人に「頑張れ」と言ってはいけないのは、そういう意味があるからですね。
同じように、自己否定をしている人に「ポジティブになろう」は、同じように苦しみを作るだけです。
低共感な人は、どう感じるのか
ただ、それは高共感な人の場合に起きやすいことです。
ですがその一方で、低共感な人でも、抑圧を抱えている場合があるものです。
なら、「高共感、低共感」などの性質で、深層意識や抱える抑圧にどういう違いがあるのか、ということです。
なので今日は、そういう性質別の「抑圧の抱え方」を説明してみようかと思います。
すると性質別の違いが見えて、人間心理を理解しやすくなるかもしれません。
いつもの性質分類
それを説明するために、今回もいつもの性質分類(外向型と、3つの内向型タイプ)を用います。
↑ 例のこれです。
- 外向型: 社会と似たような価値観だし、自分よりも他者を変えようとする。なので最も抑圧を抱えにくいタイプ。
- 境地開拓タイプ: 共感性が低いが、他者よりも自分を変えようとする。なので抑圧の総量は少ないが、抑圧を抱えやすいタイプ。
- 高共感タイプ: 共感性が高いが、社会と似たような価値観になる。なので抑圧可能な総容量は大きいが、あまり抑圧を抱えないタイプ。また、抑圧を解放しても、その前後で行動はさほど変わらない。
- HSPタイプ: 共感性が高く、個性があり、最も抑圧を抱えやすいタイプ。なので抑圧容量も大きく、抑圧量も大きい。抑圧を解放することで、最も劇的な変化が得られるタイプ。
タイプ別での「精神層の厚さ」
そしてこのタイプ別での「精神層の厚さ」を図で示すと、次のようなイメージになります。(初出の図です)
以前に示した「深層意識を認識できるフォーカスが広いか狭いか」は、忘れてください(笑
まぁ同じことなんですが、「フォーカスの広さ」を「精神層の厚さ」として表現したと思えばいいでしょう。
各軸での違い
そして、「低共感・高共感」の軸と、「社会維持型・境地開拓型」の軸で、それぞれ違いがあります。
「低共感・高共感」(性質図の上下)での違い:
- 低共感側(外向型、境地開拓タイプ): 上図のように、表層意識と深層意識の幅が狭い。自分の欲求を意識しやすいが、雑念が多い。
- 高共感側(高共感タイプ、HSPタイプ): 表層意識と深層意識の幅が広い。自分の欲求を意識しにくいが、雑念が少ない。
「社会維持型・境地開拓型」(性質図の左右)での違い:
- 社会維持型(外向型、高共感タイプ): 社会と自分の価値観が似ているので、第1層と第3層がほぼ同じ。なのでポジティブになりやすく、抑圧をためにくい。
- 境地開拓型(境地開拓タイプ、HSPタイプ): 個性があるので、第3層は独自の価値観。なのでネガティブになりやすく、抑圧をためやすい。
なぜ高共感な人ほど、精神層が厚いのか
以下で、より詳しく解説してみましょう。
まずは、なぜ「高共感な人ほど、精神層が厚い」と言えるのか、ということです。
これは、「共感性が高い人ほど、より強い我慢ができて、社会の価値観に合わせられる」からですね。
共感性は、以前説明したミラーニューロンの機能によって、「未来をつい考えてしまう」という性質も持ちます。
つまり、「未来をイメージして、共感性でそのリスクをありありとイメージできるから、より我慢(=抑圧)できる」と言えます。
だから、イメージで言うと「表層意識の層が厚い」と表現できます。
↑ この図で言うと、第1層の「他者の価値観ポジティブ」と「代償欲求ポジティブ」を、より上の方向に強めることで我慢ができると。
共感性が高い人ほど、より我慢ができる
なので共感性が高い人ほど、より無理と我慢ができるので、より社会に合わせられます。
ですが同時に、それだけ強いストレスを感じるので、同じほど代償欲求(憂さ晴らし)も必要になって、強い依存症を持ちやすくなります。
だいたい抑圧とは、我慢を意味しますからね。
その表層とのバランスを取るために、深層意識の第4層「抑圧領域」も、大きな容量を持つことになります。
簡単に言うと、高共感な人ほど、「大きな抑圧領域のポケットを持つことで、強い我慢ができる」ということです。
ストレスを深層意識に詰め込んで隠すことで、強い我慢ができているわけですね。
だけどそれは同時に、「深層意識にゴミがたまっている」とも言えます。
高共感な人からすると、実感としてもそんな感じでしょ。
「黒いドロドロした感情」を胸の中に押し詰めることで、私たちはより強く我慢できます。
だけどそれは同時に、抑圧としていろんな感情がたまることで、自分が分からなくなったり、時に感情が暴走したり、破滅的な衝動が出てきたり、いろんな不具合が出てくるわけです。
それが「抑圧」ですよね。
低共感な人ほど、我慢できる量が少なくなる
一方で低共感な人ほど、我慢できる量が少なくなります。
言うなれば、抑圧のポケットが小さいわけですね。
なので、比較的我慢せずに行動できるし、これが「低共感な人は、あまり悩まない(悩めない)」ことを意味します。
言い換えると、低共感な人は「精神層が薄いので、動物的に判断して動ける」とも言えます。
それは「悩まない」と「未来のリスクを軽視する」というトレードオフだと分かります。
社会維持型は、「自分の価値観」と「他者の価値観」が同じになりやすい
そして「社会維持型と境地開拓型」という軸でも、違いが生まれます。
社会維持型(外向型と高共感タイプ)は、第3層の「自分の価値観」と、第1層の「他者の価値観」が同じになりやすいものです。
だから価値観については納得しやすいので、あまり抑圧を持ちません。
例えば学校で「成績が悪い」と言われても、「成績が悪いことは、よくないことだ」と受け入れられるので、そこでのこじれは起きないと。
もちろん「競争に勝てない」と落ち込むことはあっても、「その価値観は納得いかない!」と価値観の違いで苦しむことは少ないわけですね。
一方で境地開拓型の場合、個性があるので、第3層の「自分の価値観」と第1層の「他者の価値観」が違います。
だから価値観の違いで苦しみやすいと。
例えば学校で「成績が悪い」と言われると、「なぜ英語ができないことが、人間の否定になるの? 数学が強いなら、それで力を発揮すればいいのに」と、納得できないわけです。
個性があるから、「価値観の押しつけ」で苦しむわけですね。
社会維持型ほど、ポジティブを望む
そしてこの違いが、「社会維持型ほど、ポジティブを望む」という傾向を作ります。
だって、社会維持型の人は、ネガティブになって第3層の「自分の価値観」に入っても、その中身は第1層の「他者の価値観」とほぼ同じなんですよ。
だからネガティブになっても、「結局今までのことを、もっと頑張ればいい」という結論になりやすいと。
なので彼らは、「ネガティブになっちゃダメ。どうせネガティブになっても変わらない。ならポジティブでいよう」と言うわけです。
一方で境地開拓型は、ネガティブになることで自分の価値観を見つけられます。
だから「ネガティブになる方が、自分の価値観を理解できる」と感じるし、だから普段から「深層意識的にネガティブ」になりがちなわけです。
ちなみに以前も説明しましたが、愚痴や不平不満は「第1層:代償欲求ポジティブ」としての行動です。
愚痴や不平不満はネガティブですが、それは「深層意識に入るネガティブ」ではなく、「憂さ晴らしのためのネガティブ」だということです。
同じ「ネガティブ」という言葉でややこしいですが、行動の方向性は違うわけですね。
性質別の「抑圧の抱え方」
そしてこの性質の違いが分かると、それぞれの「抑圧の抱え方」に違いがあると分かります。
境地開拓タイプは、悩まないけれども、抑圧は抱えやすいわけです。
ただ、抑圧のポケットは小さく、普段から自分の価値観を理解できるので、抑圧を解放してもさしてインパクトはありません。
「あ、そっか。こっちの方向性の方がいいよな」と気づいて行動を修正する、そういう軽いノリで方向転換できます。
だから境地開拓タイプは、「悩まず行動しろ」と言いやすいと。
高共感タイプは、抑圧のポケットは大きいですが、社会と同じ価値観なので、抑圧を抱えにくい傾向にあります。
また、抑圧を解放しても、結局は今までと同じ「他者の価値観」と同じ方向性に進むわけです。
確かに抑圧を解放すると楽になるんですが、行動的にはさして大きな違いは生みません。
なのでこういうタイプは、「カウンセリングで泣いて、すっきりして、明日からまた同じ仕事を頑張る」という流れになりやすいものです。
HSPタイプは、抑圧の解放が強烈なインパクトを作る
ですが、HSPタイプにおいては、抑圧を解放することが強烈なインパクトと、生き方の変化を作ります。
HSPタイプは個性が強く、抑圧のポケットも大きいものです。
だから抑圧をどんどんため込むし、我慢もするので、強い苦しみを抱えます。
そしてそれは、幼い頃からずっとそうしてしまっているわけですね。
なのでこのタイプは、抑圧を解放すると、もはや「世界が変わった」と言えるぐらい、自由とすがすがしさを実感できます。
行動も大きく変わるし、精神的な負担も劇的に楽になります。
性質別の違いが、「抑圧の解放」に対する誤解を作っている
そしてこの性質別の違いが、「抑圧の解放」に対する誤解を作っているわけですね。
境地開拓タイプからすると、彼らは精神層が狭いので、雑念がどんどん出てくるわけです。
そんなとき、「普段から心穏やかな人(HSPタイプ)が、世界が変わるほどの心穏やかな世界にたどり着いた」と知ると、それはとんでもない「安楽の境地」のように錯覚してしまうんですよ(笑
同じように、高共感タイプからすると、あまり抑圧は抱えません。
そんな状況で、「同じ高共感な人(HSPタイプ)が、世界が変わるほどの心穏やかな世界にたどり着いた」と知ると、なんだかすごい精神世界がその先にあるように錯覚してしまうと(笑
だから、「きっと自分には知覚できない、究極の精神的な理想郷があるに違いない!」と妄想してしまうわけです。
こうして「抑圧を解放する」という行動が、意味不明に神聖化されてしまうと。
でも実際は、HSPタイプは抑圧を抱えやすく、その解放インパクトが大きいだけです。
これが分かると、「HSPタイプほど抑圧を解放することが大切だし、それをしやすい性質である」と分かるかと思います。
まとめ
なので、この性質による違いを理解できると、「抑圧の抱え方や、抑圧に対する感覚の違い」が理解できるかと思います。
↑ こういう風に、HSPタイプが最も抑圧を抱えやすい、ということですね。
で、どのタイプであろうとも、第1層でうまくいっている人は、第2層や第3層を知覚できません。
というか、知覚する必要がありません。
深層意識はフィードバックシステムなので、必要のないフィードバックは無駄ですからね。
なので、第1層の「他者の価値観」と「代償欲求」でうまくバランスを取れている間は、人は自分の内面にあるこじれや抑圧を変えようとはしません。
つまり、「人は限界が来るか、挫折することでネガティブにならない限り、こじれた行動は変わらない」ということです。
人生がうまくいっている限り、「ネガティブになろう」としても、なれないわけですね。
このメカニズムが分かると、「落ち込んだ人だけを助ければいい」と分かって、他者のコントロールを手放せるかもしれません。
そして同時に、相手の状態に応じた行動ができるし、自分自身の内面にも向き合いやすくなるかもしれません。
ということで今日は、性質によって抑圧の抱え方が違う、というお話でした。
今日はここまで~。