今日は、少しだけ作家向けのお話です。(普通のビジネス心理学としても通用します)
「あなたの作品はシリアスすぎる」と言われた場合、どう作ってゆけばいいか、というお話です。
「あなたの作品はシリアスすぎる」と言われたら、どうすればいいか
物語を書いている人で、シリアスな演出が好きな人がいるじゃないですか。
そういう人が誰かに自分の物語を見せた場合、「あなたの作品はシリアスすぎる」と言われることがよく起こります。
それとか、コメディが好きな人が作品を見せたら、「シリアス分が足りない」、「笑いばっかりでつまらない。感動がもっと欲しい」とか言われることもあるでしょう。
こういう場合、その後どう作ってゆけばうまくいくのか、という問題がありますよね。
実は、普通の人に自分の作品を見せて、「あなたの作品はシリアスすぎる」と言われた場合、もっとシリアスにすればうまくいきます。
多くの人が、ここで「もっとライトなノリにしよう」とか、「もっとコメディを交えていこう」とするんですよ。
でも、私の経験から言うと、こういう「特徴をなくす」という対応をした人はかなりの率で落ちぶれていて、時に作るのが面白くなくなって、作ることそのものをやめていたりします。
「少し太った俳優志望者」は、もっと太ればキャラが立つ
なら、なぜ「シリアスすぎる」と言われた場合、もっとシリアスにすれば売れるのか。
それは、たとえて言うなら俳優オーディションで、審査員から「君はちょっと太ってるね」と言われた俳優と同じです。
その俳優志望者は、やせてもオーディションには受からないんですよ。
だって、やせている俳優はもっと競争率が高い世界なんですから。
そうではなくて、その俳優は、もっと太ればオーディションに受かります。
それは、「太ったキャラ」として使えるからですね。
人が作品を見て、一番最初に指摘する場所というのは、その人が持っている最も特徴的な点です。
一番目につく特徴を、人はやっぱりちゃんと見ているんですよ。
だから、その特徴について真っ先に語ります。
でも、作家志望者とか俳優志望者とかの場合、その強みをうまく伸ばせていない状態が多いわけです。
すなわち、特徴が洗練されていないと。
読み手は「平均的なメジャー」と比べる
で、そこで読み手側は、「君の強みはシリアスです。でも、この作品では、まだシリアスが洗練されていませんね。それを伸ばせばいいですよ」とは言いません。
読み手は、「作者が持つ、未だ形作られていない個性の完成形」を予測することはなく、まず間違いなく「一般的(メジャー)なもの」と比べます。
すると、読み手側は、「なんかシリアスが出しゃばっている」と感じてしまうわけです。
だから、「あなたの作品はシリアスすぎる」、「あなたはちょっと太っている」と言うわけですね。
こうして「作者の個性や強みを削った、全く役に立たない読者アドバイス」ができてしまうと。
このアドバイスを実行に移してうまくいくことは、まずありません。
そのアドバイスに従ってできあがるのは、ほとんどの場合、「何の特徴もない、つまらない作品」です。
で、そういう小さく平均的な作品というのは、メジャーが大資本をかけて投下した作品にかなうはずがありません。
だから、ほぼ間違いなく競争に巻き込まれて、簡単に敗北していきます。
特長を伸ばせば、能力は伸びてゆく
でも哀しいことに、「シリアスすぎると言われた。だからもっとコメディタッチにしたり、ライトなノリにしよう」という作家さんは山のようにいます。
もっと哀しいことに、出版社の編集者でも、新人賞の論評を書く人にも、これを分かっていない人が多くいます。
まあそれは当然で、彼らは「人を育てる」のが仕事ではなくて、「育った人を使い、多くの収穫を得る」のが仕事ですからね。
そしてそれを真に受けた作家志望者は強みを失い、好きなことができなくなり、力を出せなくなり、自信を失い、自分が書きたかったことも分からなくなり、書くことそのものをやめてしまうんですが。
一方で、私とか人材を育てる側に立っている人、もしくは見る目がある一部の読者は、「あ、この人はこの個性を伸ばせば強みになる」と分かるんですよ。
だから、何らかの特徴があった場合、ちゃんと「この点はあなたにとって素晴らしい特徴だから、もっと伸ばしましょう」と示すことができます。
これが分かっていて、ちゃんとそれを示して励ましてあげれば、能力は自然と伸びていきます。
だって、人は自分の特徴が長所だと分かると、嬉しくなってもっと伸ばしたくなりますからね。
まとめ
作家志望者の場合、こういう点に注意するといいかと思います。
普通の人に読んでもらって「あなたの作品はシリアスすぎる」と言われた場合、それはもっとシリアスを洗練させればいい、ということです。
「笑いばっかりでつまらない。感動がもっと欲しい」と言われた場合、もっと笑いを洗練させればいい、ということです。
裏を返すと、まだ自分の作品がそこまで洗練されていなくて、強みになりきっていないからこそ、そういう反応を得てしまうんだと。
特徴をなくす方向に動くんじゃなくて、特徴をもっと強めて、目立つ強みにしましょうと。
すると、うまくいくんじゃないかと思います。
ということで、今日は「あなたの作品はシリアスすぎる」と言われた場合、どう作ってゆけばいいか、というお話をしてみました。
今日はここまで~。