今日も人間心理と、ネガティブ心理学のお話です。

なぜ抑圧を持つと思考がループしやすいのか、そのメカニズムを語ってみることにしましょう。

 

「同じ思考がぐるぐるループしてしまう」という問題

悩んだときって、「同じ思考がぐるぐるループしてしまう」ってことがありますよね。

「こうしなきゃ、でもできない。だけどやっぱりそうしなきゃ、でもできない」と、何度も同じ思考を繰り返してしまうわけです。

そして疲弊して、最後にはぐったりしてしまうんですが。

 

ならなぜこんな「思考のループ」が起きてしまうのか、ということです。

なので今日は、そんな思考ループのメカニズムについて、お話ししてみましょう。

 

思考のループは、抑圧によって起きている

とりあえず結論から言うと、思考のループは抑圧によって起きています

だから抑圧を解放すると、思考のループがなくなって、格段にストレスがなくなると分かります。

 

それを説明するために、私たちの思考プロセスを改めて見てみましょう。

おとといの記事でも触れましたが、私たちの無意識は、次図のような構造になっています。

 

  • 第1層「日常意識」: 社会的な価値観で「評価されるか」と、代償欲求で「憂さ晴らしになるか」を判断する。最も日常的で、表層的な意識。
  • 第2層「問題対応意識」: 「それを実現する自信があるか」を判断する。第1層でストレスがたまるとこの意識が活性化して、自己否定をして活動量を抑える。
  • 第3層「自己欲求意識」: 「私はそれが好きか、嫌いか」という、自分の性質に合うかどうかの判断をする。第2層で解決できない場合、ここが顕在化してフィードバックを加える。
  • 第4層「抑圧領域」: 幼い頃から学習した、「生き延びるために絶対に守らなければならない、自分内ルール」に従っているかの判断をする。第3層で解決できない場合、抑圧を解放して行動を修正する。最も深層にあるルール群。

 

情報は下から上へと流れてくる

で、第4層より下は、肉体の領域です。

なので情報は、下から上へと流れてくるわけですね。

 

例えば私たちがどこかの店先で、「目の前でお肉がジュージューとおいしそうに焼けているのを見て、よだれが出ている」という情報を、肉体から受け取ったとしましょう。

するとまずは第4層「抑圧領域」で、「肉を食べることは、『絶対に守らなければならないルール』に反していないか」とチェックします。

それでOKなら、第3層で「好きか嫌いか」を判定して、第2層では「食べる自信があるか」、第1層では「社会的に評価されるか、もしくは憂さ晴らしになるか」と順に判断してゆきます。

そして最終的にOKなら、「食べたい。私は食べられる! 食べよう!」と、店先でお肉を買って食べられることになります。

 

抑圧でループするメカニズム

それで、無事に食べられればそれでいいんですよ。

ですが、いつもうまくいくわけではありません

時には「仕事中だし、お金がない。ダメだぁ~、食べられない!」と、拒絶される判断になることもあります。

ここでは例として、第1層で「お金がない」という事情で却下されたとしましょう。

 

ですがその時に、抑圧として例えば「失敗してはいけない」というルールがあったとしましょう。

その場合、「ダメだぁ~!」と落ち込むと、その「お肉を食べられないと分かって、落ち込んだ」という情報が新たに肉体から上がってきます。

 

すると、その「落ち込んだ」という新たに上がって来た情報が、第4層の抑圧領域で引っかかってしまうわけですね。

「私は失敗してはいけない」というルールがあるので、そのルールに引っかかってしまって、「失敗や落ち込みは許されないことだ」と第3層より上に拒絶情報を上げます。

 

こうして思考はループする

この場合、抑圧にある内容は「許されない」という形で情報が上がるので、行動を強制する形になります。

なら、その情報が再び第1層に上がって、「失敗は許されない。だから食べなきゃ」と半ば義務と変化して、第1層で行動しようとします。

ですが当然、現実は変わっていないので、「だけどお金がない。やっぱりダメだ……」と、同じ判断をして落ち込みます。

 

で、その落ち込んだ情報がまた肉体から上がってきて、再び第4層に引っかかって……と、ループが開始します。

こうして思考が無限にループしてしまう、ということですね。

本来なら「食べられない、わーん」と泣けばすむことなのに、抑圧にある「失敗してはいけない」というルールが、思考のループを作っていると。

 

第1層でストレスを抱えると、第2層が活性化する

そしてそういう思考のループを続けていると、第1層の「食べるべきだけど、食べられない」というストレスを何度も繰り返します。

で、そのストレスを発散できない場合、第2層の意識が活性化して「ちょっとその思考と行動をやめろ」と止めようとします

 

そこで使われるのが、自己否定です。

自己否定をすることで、自信をなくして行動を起こさないようにすることで、ストレスを停止させようとするわけです。

「なんだか疲れた。元気もなくなった。それに、なんだか自信がない」とすることで、お肉を食べる気力を失わせて、ストレスから解放します。

 

もしそれでも無理に意識上でこだわり続けると、うつとなって肉体的に活動を停止させます。

そうすることで、強制的にストレスを抱えないように身を守るわけですね。

だからうつは、身を守るために発動するものだということです。

 

「ポジティブでなきゃ」で深層意識に入なくなる

で、本来ならこの第2層の自己否定が活性化した状態で、よりネガティブになれば、さらに下の層に入れます

そうすることで、第3層で自分の価値観に触れれば、自分の好き嫌いについて気がつきます。

「そういえば私は、昔から肉が好きだったな。そしてレストランの牛肉でなくても、安い鶏肉でも好きだった」と思い出すかもしれません。

すると、それが表層意識へのフィードバックとなり、行動を変えて、自炊をすることで鶏肉を楽しめるかもしれません。

 

もしそれでもダメな場合、よりネガティブになることで「なぜ失敗してはいけないと思い込むようになったのか」と、抑圧領域に足を踏み込めます。

そうやって、フィードバックが正常に働くわけですね。

 

ですが「ネガティブになっちゃダメだ。ポジティブでなきゃ」と表層意識での判断にこだわることで、そういう深層意識に入れなくなってしまうと。

つまり、フィードバックがうまく機能しなくなることになります。

 

「好きなことなのに、避けようとする」という現象

そして思考がループすると、「自分はそれが好きだったのに、避けるようになる」という現象が起きやすくなります。

というのも、第4層の抑圧領域は一番最初に判定する条件なので、そこで「それはダメだ」と却下されると、第3層で好きかどうかすら分からなくなるからです。

情報は下からやってくるので、第4層で「それは許されない」とすると、第3層では「お肉の情報」ではなく「落ち込みは許されない」という、行動を強制する形で情報が上がってきます。

 

すると、ループになる前の最初の1回だけは、確かに「お肉がおいしそう!」という自分の価値観が深層意識で理解できます。

ですが2回目のループ以降は、「落ち込みは許されない。実現しなければならない」と上書きされた情報ばかりが上がってくるわけです。

 

だからループを繰り返すほど、「自分はお肉を好きだったのかどうか」すら分からなくなってきます

最初は純粋に「お肉を食べたい」だったのに、2回目からは抑圧によって「お肉を食べなければならない!」と情報が書き換わっているからですね。

そしてこの「好き」が「義務感」に変化することで、「自分の価値観が分からない。本当に自分はお肉を食べたかったんだろうか?」と、価値観がぐらつくわけです。

 

本当はそれが好きなのに、それから距離を取るようになるメカニズム

また、こういうループを繰り返して疲れてくると、「お肉を前にすると、なんだか苦しくなる」という学習をします。

こうしてその人は、「本当はそれが好きなのに、それから距離を取るようになる」という現象を起こすようになります。

抑圧があることで、本当は好きなことなのに、「苦手だ。離れたい」としてしまうと。

 

これって、恐ろしいでしょ。

だから抑圧を持つと、好きなことが分からなくなるし、むしろ好きなことを遠ざけうるわけです。

そして「私は何が好きなのか分からない。自分の価値観と、他者の価値観の境界が分からない。評価されたい。でもできない。憂さ晴らしも限界だ」という、典型的な抑圧問題が出てくることになります。

 

認知行動療法の限界

ちなみに認知行動療法では、ここで「ほら、あなたはお肉から離れているでしょう?」と気づかせることで、行動を修正していきます。

で、そこで「きっと何か、お肉にまつわる嫌な思い出があるんだよ」と仮設定して、行動を変えさせるわけです。

 

ですが、これまでの流れを見ても分かるように、「お肉にまつわる嫌な思い出」なんてないこともあります

だいたい「失敗してはいけない」という抑圧されたルールが、お肉に対する苦手意識を作っているんですから。

 

だから、その「お肉についての嫌な思い出」という仮設定を信じられる人ならいいんですが、疑り深い人は「お肉を前にすると、やっぱりなんかしんどい」となりやすくて。

すると、認知行動療法も効果がなくなるわけです。

 

「ゴミを引っかけて、拡大する」という性質

また、そのルールは「ゴミを引っかけて、拡大する」という性質を持ちます。

「お肉を前にすると、なんかしんどい」という場合、「出店が多くあるあの商店街を通るのは、やめよう」と、拡大して行動を制限することもあります。

「レストランの広告が嫌だ」と、別のものを嫌うかもしれません。

 

そうやって、いろんなゴミを拾って、行動制限が拡大してしまうわけですね。

商店街を避けて、レストランの広告を避けて、そしてそれらを再び抑圧して、胸の中に押し込んでしまうと。

 

その他にも、「失敗してはいけない」というルールは、お肉だけでなく、他にもいろんな「好きなこと」を制限するでしょう。

同じように「実現できない苦しみ」を経験することで、お肉同様に遠ざけてしまうわけです。

ここまでいろんな制限ができると、もはや認知行動療法ではお手上げ状態になりそうにも思います。

 

すると、次第に「真っ暗なトンネルを歩いている」という感覚になってきます。

それは当然で、いろんな行動制限が出てくることで、他に取り得る方法が見えなくなるからですね。

最後に残るのは、「今までのことをもっと頑張って、評価される」という道です。

そしてそれは、究極の「現状維持」になるでしょう。

 

抑圧を解放することで、自由を知る

ですがそこで、根本となる「失敗してはいけない」という抑圧を解放したらどうでしょう。

その瞬間、今まで制限していた世界に、突如として光が差します

 

一瞬で「商店街を通ってもいい」と分かるし、「レストランの広告を見てもいい」、「いろんな世界に自由に出ていい」と理解します。

それが、抑圧を解放して「自由を知る」ということです。

 

もちろん、それらの道に出ることは、「最短の成功」ではないかもしれません。

ですが、「真っ暗なトンネルを進んでいるから、最短の成功を求めていた」と分かります。

世の中に光が差すと、「最短を求めなくていい。いろんな世界に出ていい」と分かります。

 

それが本当の自由であり、抑圧を解放した後の開放感なんですよね。

なのでそういう「真っ暗なトンネルを歩いている」と感じる状態ほど、ネガティブになって抑圧に向き合う方が根本解決につながるようにも思います。

 

まとめ

なので根源的には、「抑圧が思考ループを引き起こすし、好きなことを分からなくする」と言えます。

だからネガティブ療法のように、ネガティブになって抑圧を解放すると、根本から解決できるように思います。

 

簡単に言うと、思考のループがし始めたら、「どうすればいいだろう」と表層意識で考えるのではなく、ネガティブになって「深層側に逃がす」イメージです。

表層意識で考えるから、ループが止まらないんだと。

そうではなくて、逆にネガティブな波に乗るようにすると、深層側が見えてループが止まるかなと。

 

ちなみに思考のループから短期的に離れたければ、「肉体的な刺激を与える」というのも効果的です。

このメカニズムについては、また明日か後日にでも語ることにしましょう。

 

ということで今日は、なぜ抑圧を持つと思考がループしやすいのか、そのメカニズムを語ってみました。

今日はここまで~。

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