今日も人間心理で、ネガティブ心理学のお話です。
「身体を動かすと、思考のループから出やすくなる」という心理メカニズムを解説してみることにしましょう。
思考がループした時に、どう止めるのか
昨日の記事でも触れましたが、私たちって悩んだときに「思考がループする」ってこと、ありますよね。
「こうしなきゃ、でもできない。だけどやっぱりそうしないと。でもできない!」と、ぐるぐると思考が回ってしまうわけです。
それで最後には「もう疲れた。死にたい」となったりして。
そういう場合、世間一般では「身体を動かすといい」というアプローチがあります。
例えば「ヨガのようなストレッチや、筋トレをすると、悩みにくくなる」みたいなこともあるものです。
で、こういう「肉体側から悩みを減らす」というアプローチも、私の中では有効そうに思います。
もちろん根本的な解決にはなりませんが、「短期的にでもいいから、思考のループから出る」という部分では、確かに効果があるかなと。
ならなぜそういう肉体的アプローチが悩みを減らすのか、そのメカニズムをネガティブ心理学を用いて説明してみましょう。
無意識の思考プロセス
その説明のために、私たちの思考プロセスを見てみましょう。
私たちの無意識は、次のような4層構造になっています。
第1層が表層意識側で、第4層が深層意識側です。
今回は細かいことは抜きにして、「深い層ほど、普段は意識できないけれども、私たちの行動に大きく影響を与えている」と思うといいでしょう。
実際に、深い無意識ほど「生き方の大きな方向性」を決めていて、表層意識で「細かい目先の損得」を考えているものです。
そして最深層である第4層よりも下は、肉体の領域です。
だから情報は、下から上へと流れてくることになります。
肉体で知覚された情報が、第4層から順に判断されてゆくことで、表層意識にもたらされるわけですね。
抑圧を持つと、思考のループが起きやすくなる
で、抑圧を持つと、思考のループが起きやすくなります。
例えば第4層で「失敗してはいけない」というルールがあると、何かに失敗して落ち込んだ時、その「落ち込んだ」という肉体から上がってきます。
するとその落ち込んだ情報を第4層の意識が拾って、「失敗は許されない」と表層意識へと情報を上げます。
それで「頑張らなきゃ」と再び行動しようとするんですが、何も状況は変わっていないので、「でもやっぱりできない」と落ち込みます。
すると再び第4層でその落ち込んだ情報を引っかけて……と、ループ思考が始まってしまうわけですね。
ならどうすれば、このループ思考から短期的に抜け出せるのか。
そこで、「別の肉体的な刺激を与える」というのが効果的だと分かります。
低共感な人は、どうループから解放されているのか
これは、低共感な人を見ていると分かりやすいでしょう。
低共感な人は、次図のように「精神層が薄い」という性質を持ちます。
↑ 左側2つが、低共感な人の性質です。
で、彼らは精神層が薄いので、思考がループを始めると、「なんだか思考がループしているぞ」と気づきやすいんですよね。
それは、より短時間で同じ思考をするから、疲れ果てる前に「ループしている」という事実を意識しやすいわけです。
上図で言うと、「第4層から第1層までを、同じ何度も同じ前提と結論で、思考を繰り返している」と気づきやすいと。
一方で高共感な人は、精神層が厚いので、1回のループが長くなります。
だから深くいろんな要素を考える人ほど、ループしている事実に気づきにくくなります。
なのでループに気づくまで時間がかかるし、ヘトヘトになるまで悩みやすいと言えます。
「頭をボリボリとかく」の意味
で、低共感な人って、そういう「思考のループ」というストレスを感じたときに、頭をボリボリとかいて、「なんだかこんがらがってきた」みたいに言うものです。
その「頭をボリボリとかく」というのが、「ループから抜け出すための行動」だと言えます。
つまりそれは、別の肉体的な刺激を与えて、あえて雑念を生ませることで、思考のループやストレスから抜け出しているわけです。
ほら、例えば漫画でも、悩んだキャラが限界に達すると「うがーっ!」と頭をかきむしったりしますよね。
それは無意味な行動に見えますが、そうやって頭をかきむしることで、「別の刺激を与えて思考を止めている」と言えます。
だからその後に、「こんな風に考えても分からん! 別のことをしよう!」と、ループから抜け出しているものです。
他にも、例えば外向型の場合でも、悩んだら「ちょっとモヤモヤするから、外を走ってくる」とかあるものです。
で、運動をすると「すっきりした」となって、思考のループから解き放たれて、とりあえずの結論を下すと。
これは人間だけでなく、例えば猫でも同じようなことが起きます。
例えば猫がエサを採り損なったり、びっくりしたりすると、後で「せっせと毛繕いをする」ということでストレスを解放するものです。
そういう風に、「肉体からの新たな別種情報」が、今の思考を止めると言えます。
そういう意味で、思考がループし始めると、何らかの運動や刺激が効果的になると分かります。
「雑念」は無駄なもののように感じますが、実のところ、雑念にも効果的な使い道がある、ということですね。
いろんな「肉体的な情報」がある
で、そういう思考のループを外すために、いろんな「肉体的な情報や刺激」を作れるでしょう。
まずは代表的なものとして、「簡単な運動」があるでしょう。
悩んだ場合、少しウォーキングをしたり、自転車でサイクリングをしてみたり、ちょっとした山や丘に登ってみたりと、そういう運動をしてみるのもいいかと思います。
まぁ高共感な人ほど精神性が厚いので、「頭をかく」程度の小さな刺激だと、あまり効果はないように思います。
「少し呼吸が上がる程度の運動」というのもいいかもしれません。
また、「新たな刺激」も効果的でしょう。
例えば旅とか、「見知らぬ土地を歩く」だけでも、なんだか気分がすっきりしますよね。
それだけでなく、「知っている土地でも、違う時間帯に歩くと、新鮮な雰囲気が味わえる」みたいなこともあるものです。
そういう新たな刺激も、まぁ実現には限度はあるでしょうが、効果的だと言えるでしょう。
そう考えると、逆に「身体を動かさずに、慣れたこと」は逆効果になりそうだと分かります。
それは、慣れているからさして効果がないんですよね。
特に、嫌なことがあるたびに「好きなことで、慣れていること」とすると、好きなことなのに嫌なイメージを持ちやすくなります。
なので「スマホで何かをして気晴らしをする」とか、「ゲームをする」、「漫画や小説を読む」とかは、悩みには効果が薄いように感じます。
実際に、悩んでいるときにそういうことをしても、さして効果はありませんよね。
それは表層意識でごまかそうとするから、そうしてしまうのかもしれません。
重要なのは、表層意識でごまかすのではなく、「下(深層側)からの情報」を変えることです。
いろんな「身体の使い方」で悩みを予防できる
そしてこのメカニズムが分かると、思考のループが起きる前に、いろんな「身体の使い方」で予防しうると分かります。
例えば「身体を運動に慣れさせておく」というのもいいかと思います。
ストレッチだとか、筋トレをしておくと、少し身体を動かせば「運動をし始めるかも」と分かって、無意識で身体が準備を始めやすくなります。
すると思考のループが起き始めた時は、少し身体を動かし始めるだけで身体が運動モードに入って、ループ思考から抜け出しやすくなると。
また、ストレッチや筋トレで、「身体の感覚に耳を澄ます」というのも、深層意識を理解するには効果的かもしれません。
というのも、「身体の感覚に耳を澄ます」って、「下(肉体側)から上がってくる情報を、うまくとらえよう」とすることです。
ある意味それって、「無意識側に意識を伸ばすトレーニング」とも言えます。
共感性とは、「雑念を取り払うもの」ですが、「一つの意識に集中すること」とも言えます。
だから「無意識の情報を得よう」と集中すれば、無意識からの情報を得やすくなります。
「心穏やかにできる運動」がよさそう
その場合、あまり激しい運動だと、無意識どころではありませんからね(笑
だから「身体を動かすけれども、心は落ち着ける」という程度の運動の方が、雑念を手放せて、深層意識にも踏み込みやすくなるでしょう。
その場合、普段の運動量が少なくて、筋肉量が少ない人は、ヨガのようなストレッチが合うかもしれません。
逆に普段から運動をしていたり、筋肉量が多い人は、ヨガよりももう少し運動量のある、ウォーキングやサイクリングもいいでしょう。
実際に私も、ストレッチよりも、ウォーキングと自転車の方が、心地よさを感じるんですよね。
まぁ私は毎日ウォーキングをしているから、筋肉量がついているのかもしれませんが(笑
特に大腿筋(だいたいきん:太ももの筋肉)は、人間の身体でも一番大きな筋肉です。
なので何かスポーツをしない人にとっては、「歩く」のが最も効率のいい筋トレになるかと思います。
なのでストレッチでは物足りない場合、特にウォーキングは瞑想にもなるし、筋肉もつくので、おすすめかなと。
まとめ
そういう風に、「身体を動かす」というのも、思考のループを止めるには効果的だと分かります。
それは、私たちは「肉体からの情報」を拾って思考を処理しているからですね。
もちろん、これは自己否定を起こし始める前の段階でのみ有効です。
言うなれば、「疲れ果てる前にすること」です。
もし自己否定をして自信がなくなったり、うつになるまで疲弊してしまったならば、その時は休んでネガティブ側に振る方が効果的かと思います。
するとフィードバックを加えられて、行動を修正できるでしょう。
まぁ身体を使うにしても、ネガティブになるにしても、ネガティブ心理学で提案しているのは「表層意識だけで判断しない」ということです。
表層意識ばかりで判断しようとするから、悩みが止められないわけです。
ネガティブ心理学では、そうやって精神に来る情報をうまく扱うことで、行動を修正してゆく流れになります。
なのでこういう「肉体からの情報」についてのメカニズムが分かると、うまく深層側に耳を傾けられるかと思います。
すると短期的な悩みを減らせるし、本当に修正が必要なことはネガティブ側に振れて、うまく行動を修正できるかもしれません。
ということで今日は、「身体を動かすと、思考のループから出やすくなる」という心理メカニズムを解説してみました。
今日はここまで~。