今日も「社会の仕組み」というか、社会心理について説明してみましょう。
なぜ「転売ヤー」が生まれるのか、というお話です。
半年ぐらい前にも似たようなことを書きましたが、今回はより理論をアップデートしたものです。
なぜ転売ヤーは生まれるのか
昨日の記事でも少し触れましたが、「転売ヤー」っていますよね。
これは品薄になった高価値の商品を、さらに買い占めて、それを高値で転売するような人たちのことです。
なので、欲しい人が手に入らない一方で、それで転売して大もうけをしているのを見ると、腹が立つじゃないですか。
例えばマスクの時でも、トイレットペーパーでも、最近ではPS5とかSwitchみたいなゲーム機でも、何かあれば大量に買い占めて、利益にしているわけです。
じゃあなぜそんな「転売ヤー」が生まれるのか、ということです。
なので今日は、そんな「なぜ転売ヤーが生まれるのか」ということについてお話ししてみましょう。
社会主義と自由主義
最初に結論を言っておくと、「自由主義システムの中で、社会主義思想が大きい社会ほど、転売ヤーが増える」ということです。
社会主義と自由主義って、聞いたことあるかと思います。
社会主義とは、「社会を維持することが大切だ」と、社会の安定を重視する価値観です。
何の社会を重視するかは、社会主義の中でも異なります。
「封建主義」は王位とか統治者を維持することを重視して、「共産主義」は労働者階級とか弱者を保護することを重視します。
一方で自由主義は、「個人が自由に幸せを追求できることが大切だ」と、自由に工夫して、豊かさを作れることを重視する価値観です。
どんな自由を重視するかは、自由主義の中でも異なります。
「資本主義」は、その中でも「知恵と工夫さえあれば、誰でも自由にお金を稼げたり、お金を使って、豊かさを作れるようにしよう」という価値観です。
だから、社会主義は「社会の団結や安定は作りやすいけど、発展はしにくい」、自由主義は「工夫で発展はするけど、団結や安定は作りにくい」という対立関係にあります。
「自由主義体制なのに、社会が社会主義思想」というねじれ
そして「転売ヤー」というのは、システムが自由主義体制なのに、社会に社会主義思想が多いほど、多く生まれます。
これは、考えてみるとすぐに分かるかと思います。
そもそも品薄の時では、メーカーが値上げをすればいいんですよ。
そうすれば、例えばPS5が品薄なら、ソニーがPS5の値上げをすることで、より利益を得られます。
すると、その利益を元に、ソニーは生産体制も増強できて、より早く安価にPS5を提供できます。
だけど、世の中には「メーカーは値上げをするな!」という強い批判があるものです。
というのも、そこには「品薄だからといって、値上げをして経済的弱者を排除するのは許せない」、「経済的弱者でも平等に入手できるようにすべきだ」という論理があるからですね。
そしてその背後には、「企業が利益を得るなんて、許せない。ソニーばかりに利益を与えるなんて、大企業をますます大きくさせて、格差ができるだけだ」という嫉妬もあるでしょう。
だからメーカーは値上げをできない
こういう思想が強いから、メーカーは値上げをできずに、安価で提供せざるを得ないと。
すると、メーカーは利益を得られずに、生産体制も増強できません。
本当に社会主義体制なら、配給制のように、「製品を誰にどう与えるか」は、完全に支配者階級が決めることになります。
ですが、社会システム自体は自由主義なので、少し工夫して品薄商品を大量に入荷できれば、自由に転売ができます。
だから、転売ヤーは「自由主義システムの中で、社会主義的思想が大きい社会」に生まれやすい、と言えます。
メーカーの利益を、転売ヤーが得ている
これはある意味、「メーカーが得るはずの利益を、転売ヤーが得ている」と言えます。
メーカーは工夫をして、独自の才能を使って、優れた商品を出しているものです。
なのに、「狙った客層から商品を販売する」という一番重要な販売部分に手かせがされてしまっているので、簡単に転売ヤーがその利益をかっさらうことができます。
そしてメーカーは利益を得られずに、生産体制を強められなくなります。
これは確かに、社会主義の人々が喜ぶような、「利益を出せる企業が、その利益を独占すること」を防げています。
ある意味、企業以外の、他の転売ヤーのような「さして工夫できない、我慢するしかできない人たち」にも、収入源になっているんですから。
そういう意味で、大企業に自由に価格設定をさせない社会主義的な社会は、「企業以外の人にも、利益を得られるシステム」だと言えます。
ですが、当然「工夫ができる人、能力がある人、生産性が高い人」が利益を得られずに、生産体制がそろえられずにいます。
で、その間に、中国みたいな海外勢がそれをまねて、似たような商品を出していきます。
こうして、独自のものを作っている人が利益を出せずに、海外勢に負けて、社会が衰退してゆく、というのがだいたいの社会主義的な社会の流れです。
自由主義的発想ならどうなるか
一方で、自由主義で発想すると、こういう転売ヤーは生まれません。
だって、メーカーが値上げをすれば、それで終わりですからね。
そうすることで、お金を出せる人、つまり多くの場合で「より欲しいと思っている人」から順番に提供できます。
ただし、当然のごとく、利益はメーカーがすべて得ます。
なので、一部の企業が利益を独占してどんどん成長するし、周囲との格差が開く、ということもよくあります。
日本は制度的には自由主義側ですが、マインド的には世界トップクラスの社会主義の社会です。
つまり、転売ヤーの生まれやすい「自由主義システムの中で、社会主義思想が大きい社会」だということです。
だから日本のメーカーは値上げをしにくいし、価格が安定しやすいし、弱者でも安価で入手できます。
ただし、システム自体は自由主義システムなので、「ちょっとした工夫」で転売ヤーが商品を買い占めをすれば、それが許されます。
転売ヤーへの対策
なら、そういう転売ヤーへの対策は、2つのアプローチがあると分かります。
それが、「システムを社会主義にするか、思想を自由主義にするか」ということですね。
システムを社会主義にすれば、配給制で解決できます。
一部の支配者階級がすべてを決めて、彼らの決める「優先順位」で配給してゆけばいいわけです。
例えばマスクの時でも、そういう議論が出ましたよね。
それが、社会主義的な発想です。
一方で、思想を自由主義にすれば、自由競争になります。
メーカーが自由に値上げをしたり、抽選をしたり、いろいろ工夫することで、メーカーは自分なりの利益を得ます。
ただし、例えば品薄になると、お金のない弱者で工夫ができない人ほど、振り落とされることになります。
転売ヤーに対処する戦略
当然、これらは対立関係にあるので、「転売ヤーは許せない、だけどメーカーの値上げも許せない!」というのは、ただの無い物ねだりになります。
だから、そういう人の意見は社会からスルーされてゆきますし、同時に個人でも対策できません。
つまり、社会で最も貧しくなるのが、「どちらも許せない」というタイプの人です。
私の中では、「どういう思想やシステムが正しい」ではなくて、「個人でどう対処すればいいか」と個人の戦略で考える方が、より豊かさを実現できそうに思います。
これはまさに、昨日の記事で説明したような、金融戦略と同じ発想で対策できます。
例えば転売ヤーというのは、ある意味「価格のつり上げ」とも言えるでしょう。
なら、そういう「必需品の買い占め」が怖いなら、普段から多めに確保しておくのもいいでしょう。
すると、必需品が急騰したときでも、それを少し安めに売却することで、人々に喜んでもらえます。
また、バブルの崩壊は、ある意味「価格の暴落」とも言えるでしょう。
なら、そういう「価値あるものの投げ売り」に対しては、買い支えできるように余力を準備しておくと。
すると、価値あるものの価格が暴落したときでも、買い支えをしてあげることで、人々に喜んでもらえます。
そうして、それらを一転して私たちの利益にできる、ということですね。
まとめ
なので、この原理が分かると、転売ヤーに対する考え方も変わるかと思います。
転売ヤーが問題というよりも、社会思想と社会システムのこじれが問題なんだ、ということですね。
すると、「転売ヤーや仕手筋(してすじ:価格をつり上げる詐欺師)の存在も、バブルの崩壊も、対処できる。むしろ利益にできる」と分かって、転売ヤーへの怒りを解決できるかもしれません。
ということで今日は、なぜ「転売ヤー」が生まれるのか、というお話でした。
今日はここまで~。