今日も人間心理のお話です。
認知行動療法、ネガティブ療法、箱庭療法、森田療法の「精神療法」を比較してみることにしましょう。
いつものことですが、今日もかなりの長文なのでご注意ください。
精神療法って、よく分からない!
「精神療法」って言葉は、聴いたことがあるかと思います。
認知行動療法とか、箱庭療法、森田療法みたいなものがありますし、最近の私は「ネガティブ療法」という療法を提案しているんですが。
でも、こういう精神療法って、いまいち何のことなのかよく分からないじゃないですか。
どういうレベルで、どういうものを対処するのか、よく分からないと。
なので今日は、それらを分かりやすく、私なりの用語で説明してみようかと思います。
精神が原因で起きる問題
私たちは、いろんな精神的な苦しみを持つものです。
「生きるのが苦しい」、「周囲と同じようにできない」、「劣等感が強くて、意に反することばかりしてしまう」、「自分の価値観で生きられない」とかありますよね。
また、「自分と他者の境界がよく分からない」、「感情を止められない」、「フラッシュバックが多い」、「何らかの恐怖症を持つ」みたいな現象があるものです。
これらは主に、精神が原因で起きる問題だと分かります。
「自分の価値観」、「他者の価値観」、「代償欲求」という3つの価値観
私たちの中には、「自分の価値観」、「他者の価値観」、「代償欲求」という3つの価値観があります。
そしてこれらがごっちゃになることで、自分の価値観で生きられずに、苦しみが生まれていると言えます。
簡単に言うと、次の3つの葛藤で苦しむことになります。
1つめが、「これをしなきゃ。でもストレスでこれ以上できない」という、「他者の価値観」の限界です。
2つめが、「これで憂さ晴らしをしたい。だけどお金や資源がない」という、代償欲求の限界です。
結果として、3つめの「他者の価値観」と「代償欲求」の両方を実現できずに、「自分はダメだ」と自己否定をする状態になります。
そしてこの中には、「自分の価値観」は入っていません。
つまり、「自分の価値観」が分からずに、「他者の価値観」、「代償欲求」、「自己否定」の間で苦しむのが、精神的な問題の根源だと言えます。
それによってストレスで身体がおかしくなってしまったり、日常生活をうまくこなせなくなってしまうのが、「精神的な病」です。
自律神経失調症、心身症、適応障害
そして簡単に、その症状レベルを説明しておきましょう。
「自律神経失調症」というのは、そういうストレスが身体に出てきた状態を言います。
一時的にめまいとか吐き気がしたり、胃がおかしくなったり、下痢をしてしまったり。
で、それがさらに発展すると、「心身症」になって、慢性的な症状をもたらします。
慢性的なめまい、慢性的な吐き気、慢性的な胃痛、みたいに長引くようになるわけですね。
それがもっと続くと、「適応障害」になります。
ここまで来ると、かなり限界点です。
周囲から認められる行動をしたいけれども、ストレスが限界でこれ以上できません。
また、憂さ晴らしや気晴らしをしたいけれども、お金や時間、いろんな余裕がなくてこれ以上できません。
なのでこの状態にまでなると、「最も安易に快楽を得られる、1つの手段」に依存しやすいものです。
例えばアルコールだとかドラッグ、ギャンブル、その他何らかの依存症を持ちやすい状態だと言えます。
そしてそうやって依存的な方法で快楽を得ようとするので、当然自己否定やうつを重ねる状態になります。
つまり適応障害にまでなると、心も体もボロボロだし、資源もなく、「自分だけではどうしようもできない」と完全に板挟みで身動きが取れない状態になっているわけです。
ちなみに古い用語で「神経症」というのがありますが、これは「自律神経失調症」、「心身症」、「適応障害」をまとめたものだと思うといいでしょう。
精神療法で問題に対処する
そういう精神で起因する問題に対処するのが、精神療法です。
問題は急性的(突発的)なストレスによるものと、幼い頃からの学習(いわゆる抑圧)によるものがあります。
で、抑圧の方がより分かりにくく、深い問題をもたらします。
ちなみに「統合失調症」への対策は、基本的に精神療法には含みません。
というのも、統合失調というのは私たちの肉体(ハードウェア)が原因で起きることだからですね。
統合失調は共感性によって生まれるので、それは精神療法からは(例外はありますが)除外します。
それは性質であって、自分の内面では変えられないものだ、という扱いです。
そしてそれについては、昨日の記事で触れたように、性質別に生き方戦略を選んで対応してゆくことになります。
いろんな精神療法の立ち位置
で、そういう抑圧対策を含めた「精神レベルで変えられる部分を変える」というアプローチで、いろんな精神療法があります。
ここでは、「認知行動療法」、「ネガティブ療法」、「箱庭療法(ストーリー療法)」、「森田療法」の4つを比較してみましょう。
ちなみに「ネガティブ療法」は、このブログで最近提案している新たな療法です。
(なお、以下で語る説明はすべて私独自の認識であり、科学的だったり、一般的な定義がされているわけではないのでご注意ください)
で、最初にすべての結論を言っておくと、「それぞれの療法はどれが最高というわけではなく、向き不向きがある」ということです。
これが分かると、うまく精神療法を理解できるし、使いこなせるんじゃないかと思います。
精神療法の位置づけ
で、これら精神療法の位置づけは、私の中では次図のようになりそうだと推測しています。
「具体的に解決できるか、自然に解決を任せるか」という軸と、「社会維持型(工夫できない人)向けか、境地開拓型(工夫できる人)向けか」という軸ですね。
それでは実際に、それぞれについてざっと説明してみましょう。
認知行動療法
認知行動療法の素晴らしいところは、他者が介入して、問題を客観的に見せてもらえることでしょう。
「あなたはこういう状況では、いつもこういう反応をしていますよね。こういう行動をしていますよね。これって一般的な目線から見ると、変ですよね」と指摘してもらうわけです。
すると「あ、本当だ」と気づけて、自分の問題を客観視しやすくなります。
だから、「自分では無意識で、あまりにも習慣的にやっていたことだけど、周囲から見るとまったく不自然なことをしていた」という部分が見えやすくなります。
そしてそれによって、「あぁ、今回もこういうパターンで動いていたな」と気づくことで、行動を修正してストレスを解消していく流れになります。
これはある意味、「幼い頃からの学習(抑圧)」を仮想的に表層意識まで持ってきて、行動を修正させて、ストレスを回避するアプローチだと言えます。(次図)
認知行動療法の優れている点
認知行動療法の優れている点は、「副作用がなく、短期間で効果を作れる」ことでしょう。
だいたい私たちが抱える葛藤って、先述のように「これをしなきゃ。でもストレスでこれ以上できない」と「これで憂さ晴らしをしたい。だけどお金や資源がない」という2つですよね。
その場合、その「これをしなきゃ」という脅迫観念は、幼い頃からの学習(抑圧)によって生まれているものです。
普通なら、その抑圧はカウンセリングなどでずーっと深層意識まで入っていって、時間をかけて明かしてゆくものです。
そして「ああ、私は幼い頃に、こういう出来事があったから、今もその流れでそうしていただけなんだ」と理解できます。
例えば「幼い頃に、親から虐待されていて、それで拒絶されるのを恐れるようになったんだ」みたいな。
そこから「大人になった今では、もう必要ないな」と理解して、手放してゆく流れです。
ですが認知行動療法では、その「抑圧を生む根源的な出来事」を仮想的に「意識できる領域」にまで持ってきます。
だから、長時間かけて深層意識に入る必要もないし、過去のトラウマを掘り返さずにすむし、下手をすると1週間ぐらいで効果が出ます。
なのでこの認知行動療法ってのは、私の中では「こんなトリッキーで、副作用がなく、実質的な効果を生む方法があるのか!」と、びっくりするような発想のアプローチだったりします。
これは本当に素晴らしいアプローチですし、だからこそ世の中でこの認知行動療法が多く受け入れられているんだろうと思います。
認知行動療法の限界
ただ、これは私の推測ですが、認知行動療法はその仮想的な原因を「信じられる(盲信できる)」人でないと効果がないように思います。
というのも、認知行動療法では「原因を仮想的に作る」ことをします。
例えば「この道を通らなくなったのは、幼い頃にきっとここで、嫌なことがあったからだ。そういえば、事故に遭ったな」としましょうか。
すると認知行動療法では、「それが原因です」と、「本当の抑圧を起こす出来事」でなくてもそれを原因だと仮決めします。
なら、それを信じてその道を通ってうまく通過できれば、「この道を通っても大丈夫だ」と行動を修正できますよね。
だから、過去に説明したような前世療法みたいなものも、認知行動療法の一つとして機能するんですが。
ですが、その「過去の事故がこの恐怖をもたらしているのではない」と疑ってしまうと、効果は出なくなります。
だって、「それはちょっと違う。何か他に要因がある」と分かるので、また恐怖をぶり返してしまうからですね。
つまり「私はそういう反応をいつもしている」と気づかされても、原因に疑いを持つことで、やっぱりその後もそのパターンを繰り返してしまうことがあると。
だから認知行動療法は、「ネガティブで疑り深いタイプ」には効果が薄いんじゃないかと予想しています。
私の用語で言うと、「社会維持型(工夫できない人)」と「境地開拓型(工夫できる人)」の2タイプがいます。
そして社会維持型ほど専門家の言うことを信じやすいので、認知行動療法が効果的になります。
だけど境地開拓型(工夫できる人)ほど、自分の理屈や感覚を重視するので、認知行動療法は通用しにくいと。
まぁ、それでも「社会の多数派である社会維持型には効果がある」ということには変わらないので、やはりこの認知行動療法は素晴らしい療法だと言えるかと思います。
ネガティブ療法
で、そういう「疑り深くて、認知行動療法がうまく機能しない境地開拓型(工夫できる人)」向けに、最適な療法があります。
それが、私たちにとっての新たな方法論「ネガティブ療法」ですね。
これはまさに正道で、「自分で深層心理まで降りていって、自分で抑圧の原因を見つけて、解放する」ということを行います。
そのために、14歳ぐらいからの反抗期を再現して「すべてに対してネガティブになる」という方法論で、深層意識に触れてゆきます。
↑ この第4層(抑圧を生む原因特定)まで、自力で踏み込んでゆく、ということですね。
ネガティブ療法の優れている点と、その限界
ネガティブ療法の優れている点は、「工夫ができるタイプの人なら、1人でできる」ということです。
普通ならカウンセラーと共に行うことですが、工夫ができるタイプの人なら、カウンセリングを受けるのは苦手だし、おそらく1人でやりたいんじゃないかと思います。
そして自力で根本原因から解決して、抑圧(幼い頃からの学習による、精神的な問題)を解決するアプローチです。
なのでこの方法論は、境地開拓型(工夫できる人)向けだと言えます。
一方で社会維持型(工夫できないタイプ)の人は、「ネガティブになろう」と言われても、それをどうすればいいのか分からないんじゃないかと思います。
そもそも社会維持型の人は、「深層意識を普段から意識できない」というタイプが多いものです。
それはきっと、「社会の価値観」(ポジティブな価値観)と「自分の価値観」が似通っているから、普段から意識しないからだろうと思います。
一方で個性のある境地開拓型(工夫できるタイプ)の人ほど、普段から「自分は周囲とは違う」と感じることで、自分の価値観を意識します。
だから、深層意識にアクセスする習慣がついているんじゃないかなと。
そういう点でも、個性があったり、ネガティブになることに慣れている人ほど、このネガティブ療法が有効になるかと思います。
裏を返すと、社会維持型(工夫ができない人)には通用しないので、とても限定的な人を対象としている療法です。
箱庭療法(ストーリー療法)
ユング心理学では、箱庭療法というものがあります。
これはいろんな人形を用意して、箱庭を作ってもらうわけですね。
すると、その作った箱庭には、その人の内面にある「価値観」が出やすくなります。
その「価値観」とは、まさに「自分の価値観」、「他者の価値観」、「代償欲求」と、その「ポジティブかネガティブか」という6つの状態になるでしょう。(次図)
で、おそらく「他者の価値観ネガティブ」を除いた5つの状態が、キャラクターや現象として箱庭に描かれるかと思います。
カウンセラーはそれを元に、その人の内面にある価値観を理解できます。
また、カウンセリングを受けている側(受診者側)も、「こういう価値観が自分の中にあったのか」と、自分の無意識レベルの内容を客観的に見られて、自分の内面を把握できます。
箱庭療法は、ストーリー療法と同じ
この箱庭療法は、ある意味「ストーリーを作って、癒やされる」という方法論と同じです。
抑圧や劣等感を持つクリエイターの場合、それをストーリーとして作ることで、癒やされることがありますよね。
それはある意味、「ストーリー療法」と言えるでしょう。
自分でストーリーを作って、自分で癒やされる療法ですね。
そしてそれは、「自分の内面をキャラクターにして、ハッピーエンドに導く」ということで、内面を癒やしていると言えます。
そしてそれって、箱庭療法と同質のものだと分かります。
箱庭療法の優れている点と、限界
ただし箱庭療法単体では、片手落ちだと分かります。
それは「カウンセリングの材料」としては使えますが、それ単体で抑圧を解決することは難しい、ということですね。
というのも、箱庭療法は「情景を描くだけ」しかできません。
つまり受診者側だけでは、「抑圧を解放するまでの流れ(ストーリーや道順)」を作れないことが多い、ということですね。
また、ストーリーを自力で作れるのは、クリエイティブな人にしかできません。
そして箱庭療法単体で解決できるようなクリエイティビティーを持つ人は、実際に小説なり漫画なりでストーリーを作る方が早いでしょう。
そういう点でも、箱庭療法は「カウンセリングの一材料」として使うことに限定されるように感じます。
森田療法
最後に、世界で活躍している日本発の療法「森田療法」です。
これは抑圧にはあえて触れずに、「自然なリズムを取り戻しましょうよ」というアプローチです。
「身体の中にある自然なリズムを取り戻すことで、後は自然に任せてしまいましょう」みたいな、肉体的な方面から精神を整える方向性ですね。
だから私の中では、森田療法は「他の具体的な療法と組み合わせられる」という強いメリットがあるように思います。
認知行動療法と組み合わせたり、私のネガティブ療法だとか、ストーリー療法とも組み合わせられると分かります。
ある意味、他の療法の土台にできるわけですね。
だから森田療法は工夫できる人、できない人に関係なく、すべての人に適応できるし、幅広く受け入れられているように思います。
ただし具体的に抑圧には踏み込まないので、単体では時間がかかることと、根本問題の解決につながらないことも多いかなと予想しています。
まとめ
そういう風にとらえると、精神療法を理解しやすくなるかと思います。
だから精神療法の位置づけは、次のように言えるかなと。
「どれが素晴らしい」というのではなく、「向き不向きがある」ということです。
で、私の中では、「一般的な多数派(社会維持型向け)には」認知行動療法が優れているし、短期間で効果が出やすいと予想しています。
ですが、境地開拓型(工夫ができるタイプの人)の場合、私の場合は「ネガティブ療法」を推奨します。
それは、認知行動療法がうまく通用しないし、カウンセリングを受けるのも苦手だし、むしろネガティブになれて、内面を見つめる習慣があるからですね。
なので「他者の力を借りてカウンセリングを受けるよりも、自力で自由に解決したい」という人ほど、ネガティブ療法を土台にする方が合うように思います。
そして今まではこの部分に対する療法がなかったと言えます。
いやまぁ世の中は広いので、探せばあるんでしょうが。
でも少なくとも私は、その「工夫できるタイプの人で、カウンセリングが向かない人」向けの、効果的な心理療法は把握していません。
なので、そういう人には「ネガティブ療法」が効果ありそうに思います。
また、「ネガティブ療法と森田療法を組み合わせる」みたいな工夫をすることで、より自分に合うアプローチを取れるかもしれません。
するとうまく自分の深層意識にまで踏み込めて、抑圧を解放できるかもしれません。
ということで今日は、認知行動療法、ネガティブ療法、箱庭療法、森田療法の「精神療法」を比較してみました。
今日はここまで~。