今日は、ビジネスアプローチ的に面白い漫画があったので、ご紹介してみましょう。
ダム好き向けという超ニッチな漫画、「ダムマンガ」のご紹介です。
ダム好きのための漫画、「ダムマンガ」
ということで、いきなり漫画を一つ、ご紹介。
「男の子って、こういうダムとか巨大建造物とか、電車とか車みたいな人工物って好きよね~」
とか言われそうかもしれませんが。
でも、ダム好きは男性の中でも超ニッチですから!(笑
いわゆる、ダム(水をせき止めるアレ)を中核のネタにした漫画です。
一見は色物ですが、中身はダムの構造から歴史、そして人間との関わりまで深く触れられていたり。
いやもう、これはダムに対する愛があるからこそ、作れるものですよね。
しかもこんなニッチなことをする人なんて他にほとんどいないので、すぐにダムマニアの間では受け入れられて、ポジションを確立できるわけです。
その上、競合がほとんどいませんし、そもそもこういうニッチに入ろうとする漫画家さんとかいませんからね(笑
好きなことで自分なりのポジションを確立するという、いい具体例かなと思います。
だいたい「ダムマンガ」って、ジャンル名ですから!(笑
ジャンル名をタイトルにできるほどのニッチを攻めるとか、こういうの、もう大好きです。
ちなみに第1話、第8話冒頭のカラーページは、うちの写真加工技術PhotoDramaticaで作られているようです。
前もあげたことあるけど、写真を加工して作った宮ケ瀬ダム管理橋。あやえも研究所さんの写真を絵のようにする写真加工技術「PhotoDramatica」 – https://t.co/Qa5WeppYmv を使用して作画。 pic.twitter.com/s9eCvzEka4
— 井上よしひさダムマンガ3巻発売中 (@poniponipony) April 5, 2016
とにかく売れたい場合、ニッチを攻める方が手っ取り早い
まあこれまで何度も触れていますが、自分の作品が売れない場合、こういうダムマンガみたいなニッチな戦略をとると有効なんですよね。
一見、流行に即していたり、メジャーで売れているジャンルに入れば、多くのお客にアプローチできると思うじゃないですか。
でも、お客は「大資本をかけて作った超一流の作品」と、「売れない作家が作った小さな作品」を比べることになります。
すると、前者を選ぶのは当然ですよね。
「ターゲット顧客数が多ければ売れる」というのは、大量生産大量消費時代の大企業にのみ通用する理論です。
一方で、ニッチな分野では、競合がいないので、欲しい人は作った人から買うしか道はないんですよ。
だから、価格はつけ放題で、確実にファンやお客ができると。
そこで少なくてもまずは固定客を作って、安定収入を得られるようになって、そこから顧客数を広げてゆく、という流れです。
ある分野で実績を出していれば、別分野でも取り上げてもらいやすくなりますからね。
ダムマンガ第8話のいいお話
これを象徴するお話があって、ダムマンガの第8話(5/9までの配信)がおすすめです。
第1話から見なくても分かるいい区切りで、一番面白いお話です。
内容はというと、部長さんが一番のダムマニアなんですが、ダム見学に行ったときに、ダムの支所長と出会うんですよ。
その支所長はさえない普通のおじさんなんですが、ダムにあこがれている部長さんにとっては、「あこがれのアイドルと出会う」ぐらいの感激なんですよね。
そして、もらった名刺を「家宝にします!」みたいに泣いて喜ぶんですが。
ニッチを攻めるクリエイターさんなら、まさにこの経験があるかと思います。
私たちは、「こんなしょーもない自分にあこがれる人なんかいないよ」とか思いがちです。
でも、ニッチな分野で輝くと、そういう自分にあこがれるファンが出てきちゃうんですよ。
コミケとかでも、目をきらきらと輝かせたお客さんから、「貴方のファンです!」とか、「貴方のような人に、あこがれてます!」とか言われるんですよ。
これはほんと、最初はびっくりしますから(笑
「え? こんな私みたいになりたいの?」みたいな(笑
でも、実際にそういうニッチなことをしている人は他にいないので、ファンにとっては「私たちが最高」になるわけです。
しかも、そういうニッチなファンっていうのは、メジャーのように日和見で移り気な人は少ないものです。
一度ファンになったら、長期間ずっとファンで居続けます。
そんな風に長期的なファンができると、自信というか、使命感みたいなものが出てくるんですよ。
「喜んでくれる人を、もっと喜ばせたいな」みたいな感覚になります。
そんな喜びや幸せを日々味わえていれば、「新人賞を取って有名になりたい」とか、「有名な人に認めてもらいたい」とかいう気持ちは消えますからね。
だって、目の前の一人を喜ばせるっていうのは、それぐらい大きな幸福感を味わえるんですから。
すると、「目の前のファンを差し置いて、賞に送って、ダメならファンに見せずに没にする」なんて、ありえなくなります。
たった一人でも、そういうファンがいれば、世界は変わります。
「こんなしょーもない自分」から、「誰かを喜ばせられる自分」に変わります。
ニッチな領域を攻めるというのは、そういう「ファンのために」という幸福感を味わえる道でもあるんですよね。
きっと、このダムマンガの作者さんもそういうタイプの人だと思うんですよ。
だから、第8話で、そういう表現ができたんじゃないかなーと思います。
まとめ
ニッチな領域を攻めるというのは、実はメジャー以上に幸せを感じられることが多いんですよ。
それは、身近にある幸せに気づく、みたいなことに象徴されるように思います。
私はよく「ファンを大切にしろ」とか「豊かさはお金以外にもたくさんある」みたいに言っていますが、まさにその一環です。
それは究極を言うと、「全世界の人を幸せにする」みたいなことを言うんじゃなくて、「すぐ身近にいる大切な人から、豊かさを分かち合う」みたいなアプローチになるんじゃないかと思います。
それが、ニッチな領域を攻める、ということですね。
そんな感じで、今日は「ダムマンガ」からニッチな生き方を説明してみました。
今日はここまで~。
(しょーもない追記)
ちなみに第8話で「空海(そらみ)まお」という名の教師が出てきますが、弘法大師空海の幼名が「真魚(まお)」です。
作者さんは仏教か密教かにも親しい人なのかな、とか思ったり。
こういうところにも、好きなものを暗号のように入れているんですよね。
すると、分かる人には分かって、空海が分かるファンから「空海好きなんですか?」、「そうなんですよ!」、「私もです!」みたいなつながりができていくと。
そうやって、さらにニッチで強固なファンができてゆくわけですね。