今日も人間心理のお話です。

ネガティブになると、抑圧や深層心理が見えてくる、というお話をしてみましょう。

 

ちなみに今回は、新概念が出てきます。

 

嘔吐恐怖症をどうすればいいのか

こういう質問があったので、ご紹介。

私は嘔吐恐怖症で、嘔吐を避けることが意識の多くを占めているため、飲酒を避け、夜の繁華街を避け、遅い時間の電車を避け、嘔吐描写のある創作を避け、などなど非常に不便でめんどうな生活をしています。

が、最近マンガを読んでいて気づいたのですが、吐血の描写は平気なのです。

ということはもしかして、嘔吐ではなく吐瀉物が怖いのか? と思ったのですが、ここから考えを進めることができずにいます、無意識に避けようとしてるのかもしれません。

なので、もしあやえもんさんにこのあたりを言語化なり解きほぐすようなことをしてもらえたら、少し自分のことをわかれるかも、と思ってリクエストしました。

 

質問の内容は、「嘔吐恐怖症を持っているけど、その原因や対策が分からない。どうすればいいのか」ということですね。

 

ネガティブになると、抑圧の原因が見えてくる

最近は抑圧についてよく語っていますが、まさにこれが抑圧の典型例のように思います。

私たちは「こういう風に生きなきゃ」という思い込みを持っていますが、なぜそう思い込んでいるのか、原因が分からないことがほとんどなんですよ。

そして自分でもよく分からない「自分の中にある、意味不明な価値観」によって、突き動かされてしまっていると。

 

その場合、よりネガティブになると、そういう抑圧の原因が見えてくるかと思います。

なので今日は、そのメカニズムを説明してみようかと思います。

 

精神構造図とは

それを説明するために、精神構造図を使ってみようかと思います。

先日の記事で、精神構造図を説明しましたよね。

↑ これです。

 

私たちの中には、「自分の価値観、他者の価値観、代償欲求」という3つの価値観があって、それぞれ「ポジティブ、ネガティブ」という状態があり、合計6つの状態があります。

 

精神構造図を「深さ」で見てみる

なら今回はこれを、表層意識から深層意識までの「深さ」で見てみましょう

すると、次のような図になります。(初出の図です)

 

これは、次のような4層であると言えます。

  • 第1層「普段の意識」: 「他者の価値観ポジティブ」と「代償欲求ポジティブ」で構成。普段活動している時の意識レベル。
  • 第2層「トラブルシューティング意識」: 「代償欲求ネガティブ」で構成。「普段の意識」でうまくいかない場合に出てきて、活動量を抑えて、事態の悪化を防ぐ。
  • 第3層「自分内OS」: 「自分の価値観」で構成。自分のハードウェア(肉体と肉体的遺伝子)と密接しているので、基本的に変えられない。
  • 第4層「抑圧領域」: 「他者の価値観ネガティブ」で構成。「他者の価値観」を生む原因が封じられている。最も奥深くにあるので、通常の意識では開けない。

 

以下で、それぞれの層について詳しく説明してみましょう。

 

第1層「普段の意識」

最も表層にある第1層「普段の意識」は、「他者の価値観ポジティブ」と「代償欲求ポジティブ」で構成されています。

これは、私たちが普段の活動するために、意識している意識レベルですね。

この両者は、片方では「食料を得やすくなるけど、ストレスを抱えること」をして、もう片方では「ストレス発散できるけど、大切な資源を使うこと」をする、トレードオフの関係になります。

 

「他者の価値観ポジティブ」では、「食料を得やすくなるけど、ストレスを抱えること」をすることになります。

これは、「あれをしなきゃ、これをしなきゃ」と、やるべきことを考えて、「社会から求められること」を遂行します。

例えば「仕事しなきゃ」とか、「礼儀正しくしなきゃ」みたいなものがそうでしょう。

 

また、幼い頃の経験によって、「私は評価されなきゃいけない」、「売れなきゃいけない」、「嫌われてはいけない」、「失望されてはいけない」みたいな行動もすることがあります。

ある意味、「仮面」と表現できるでしょう。

冒頭の嘔吐恐怖症もここに該当して、「嘔吐を避けなきゃいけない」という行動がここで起こります。

そんな風に、「そうしなきゃ、生きていけない」と思っている行動ですね。

 

ただ、いつでもそのような「他者の価値観ポジティブ」を実現できるわけではありませんし、私たちができる我慢には限界があります。

 

その場合、「代償欲求ポジティブ」で、「ストレス発散できるけど、大切な資源を使うこと」をします。

「これをしたいなぁ。これができればなぁ」と、したいことや願望を考えます。

 

これは、自分の欲求を満たすけれども、資源は有限であるので、そういう点で葛藤を持ちやすいものです。

「仕事をサボりたいな。でもサボると評価が落ちるしな」、「おいしいもの食べたいな。でもお金を浪費できないな」、「そろそろ旅行にも行きたいな。だけど時間とお金が」みたいに、使える資源で悩みやすいでしょう。

 

実際に私たちも、普段はこの両者で「これをしなきゃ。でも、これ以上はストレスでできない」と「これをしてストレスを発散したい。でも資源が」という間で揺れ動いているかと思います。

これが、最も表層にある「普段の意識」ですね。

 

第2層「トラブルシューティング意識」

次にあるのが、第2層の「トラブルシューティング意識」です。

 

これは、「普段の意識」でうまくいかない場合に出てきて、活動量を抑えて、事態の悪化を防ぐ役割を持ちます。

例えば「仕事をしなきゃ。でももう精神的にも、肉体的にも限界。憂さ晴らしをするお金も余裕もない」という状況では、「仕事か、憂さ晴らしか」という両者を選べません。

基本的に憂さ晴らしをすればストレスを発散できるんですが、そのストレスを発散できないわけですね。

 

その場合、「代償欲求ネガティブ」が出てきて、最初に「自信を失う」という軽度の自己否定が起きます

それによって行動量を控えて、これ以上無理なストレスがたまるのを防ぎます。

で、時間が経過することで状況が変わりそうであれば、状況が変わるのを待ちます。

 

ただしそれでも無理に「ポジティブでなきゃ!」と行動してしまい、うまくいかなければ、強めの自己否定が起きます。

これは、「私はダメな奴だ」と自分を否定することですね。

それによって、強烈に行動を制限しようとします。

 

なのに、さらに無理をして活動してストレスを抱えると、最終的に「うつ」が出てきます。

言うなればこれは、「肉体的な強制停止」です。

それによってストレスが肉体を壊す前に、身体的な活動を停止させるわけです。

 

ただし、強めの自己否定やうつを起こさずとも、「この『普段の意識』ではダメだ」とネガティブになれば、自然とより意識を深層レベルに持っていけます

それによって、より深い意識を認識できるようになります。

 

第3層「自分内OS」

さらに深層意識側にあるのが、第3層「自分内OS」と呼ばれる意識です。

これは「自分の価値観」で構成されていて、自分の「ハードウェア的な性質」について意識できるようになります。

 

なのでネガティブになって自己否定をしてゆくと、ふいに「そういえば私は、これが好きだったな」と気づいたり、思い出すことがあります

「そういえば中学生時代、漫画を描くのが好きだったな」とか、「そういえば高校時代、バンド活動をしていて楽しかったな」みたいに、喜びや楽しいことを思い出したり。

 

他にも、自分の性質について気づくことが多いでしょう。

例えば「私は働いてばかりだったけど、もっと休みたかったんだ」とか、「インスタント食品ばかりだったけど、身体が栄養を欲していたんだ」みたいに、身体の声を聴けるようになったり。

それとか、「そういえば私は、チームワークは苦手だったな」とか、「集団行動が苦手だったな」、「自由にできるのが好きだったな」みたいに、自分の性質に気がついたり。

 

この「自分内OS」は、自分のハードウェア(肉体と肉体的遺伝子)と密接しているので、基本的に変えられないものです。

なのでこの層に意識が向けられると、「変えよう」とするのではなく、「気づく」ばかりになります。

「そうか、私はこういう性質なんだ」と気づくばかりになる、ということですね。

 

多くの場合、この「自分の価値観」に気づくことで、それをフィードバックとして「普段の意識」を調整します

それによって、より自分の価値観(自分というハードウェアに合うもの)に基づく生活を送れるようになります。

また、自分の価値観を多少なりとも含められるので、第1層の「代償欲求ポジティブ」をさして使わずともストレスを解消できるようになります。

 

ですがそれでもストレス解放が間に合わない場合、さらにネガティブを継続することで、最も深層にある意識に触れることになります。

 

第4層「抑圧領域」

そして私たちの意識でも、最も奥深くに封印されているのが第4層「抑圧領域」です。

これは、幼い頃の「こうしなければ生きていけない」という学習を作った、その原因となる出来事が封じられています。

 

この領域は基本的に、いわゆる「不可侵の聖域」として扱われます。

というのも、「こうしなければ生きていけない」という超絶高リスクな内容は、少しでも疑ってしまうと生命に大きな危険をもたらしまいます。

 

例えば「こうしなければ、親から見放される」みたいな「見放されうる態度」は、何度も親に見せるわけにはいきません。

もしそんな疑いを何度も親に見せてしまうと、見放されてしまうんですから。

 

つまり、「何度も疑ってしまうこと」自体が破滅を生みかねないと。

だから、絶対にためらわずにそのルールに従う必要があるわけですね。

 

そのために、根本原因をこの抑圧領域に保存して、可能な限り思い出させないようにするわけです。

そしてこの「記憶や因果関係を抑圧領域に移動して、原因を疑うことすらやめさせること」を「抑圧」と言います。

 

そうすることによって、私たちは「後天的に得た、生命に関わる瞬間的判断を必要とされる学習」を保持できます。

なので様々な恐怖症を引き起こす原因だとか、冒頭の「嘔吐恐怖症を引き起こす原因」も、この領域に保存されています。

 

そして本来なら、14歳ぐらいからの反抗期で、すべてに対してネガティブになることで、抑圧を解放します。

だからこの第4層の抑圧領域は、「記憶や原因を完全に消去する」ことはせずに、「本当にネガティブになると、触れられる場所」に保管してあります

つまりその抑圧が問題になった場合のために、わざわざ書き換えられるようにしている、ということです。

 

深層心理の構造が分かると、心理のフィードバックを加えやすくなる

そんな風に、深層心理はこれら4つの層でできていると分かります。

そしてこの深層心理の構造が分かると、心理のフィードバックを加えやすくなると分かります。

 

私たちが普段言う「ポジティブになろう」は、「表層意識を強めて、外部を変えましょう」ということです。

一方で「ネガティブになろう」は、「より深層意識に触れて、自分の内面を知りましょう」というアプローチです。

 

なら、「ネガティブになる」というのは、「内面を変えやすくなる」と分かります。

より正確に言うと、「内面を変える」というよりも、「内面を知ることで、フィードバックを加えられる」と表現する方が適切かもしれません。

自分の内面、すなわち「第3層:自分内OS(自分のハードウェアの性質)」と「第4層:抑圧領域(過去の抑圧)」について知ることで、知ることが変わることになる、ということです。

 

一般的に言う「ネガティブ」でも、2種類ある

そして一般的に言う「ネガティブ」でも、階層の違いで2種類のネガティブがあると分かります。

 

1つめのネガティブは、(少しややこしいですが)「第1層の代償欲求ポジティブ」に該当する「ネガティブな行動」です。

例えば「普段から愚痴ばかりを言う人」って、その愚痴は憂さ晴らし、つまり「第1層の代償欲求ポジティブ」だと言えます。

愚痴や不平不満、泣き言を言うことで、憂さ晴らしをしているんですから。

そういう「第1層にしかアクセスしていないネガティブ」もあるわけです。

 

そして2つめのネガティブは、「より下の層にアクセスするためのネガティブな意識」です。

それは、「深層意識を知るためのネガティブ」だと言えます。

 

そういう風に、一般的に言う「ネガティブ」でも、「代償欲求」か「深層心理を知るため」かで違いがある、ということですね。

 

「フォーカスの広さ」が人によって違う

そして人によって、「どの階層までを意識できるか」という「フォーカスの広さ」で違いがあると分かります。

 

例えば上記の「愚痴や不平不満、泣き言ばかりを言って憂さ晴らしをする人」のように、「ほぼ第1層しか意識できない」人を、「フォーカスが狭い」と表現できます。

そういう人って、自分の好きなことには意識が向いていません。

だって、自分が本当に好きなことをしたり、自分に必要な休息を得られると、愚痴を言って憂さ晴らしをせずとも元気を出せるんですから。

 

それなのに、そういう「自分の価値観」に触れずに憂さ晴らしばかりしているのは、「深層意識までアクセスできていない」と言えます。

 

一方で本当の意味でネガティブな人は、フォーカスが広くて、第3層「自分内OS」までアクセスできていると言えます。

そして普段から「これは自分に合うのだろうか?」と検討することで、それで合うのであれば自分の生活に取り込めます。

また、新たなものにも「合うかどうか分からない」と身構えることで、常に自分の価値観と照らし合わすことができます。

 

そしてそれって、すっごいネガティブさを必要とすると分かります。

だって、「他者がどんなに評価していることでも、素直に受け入れない」ことを意味するんですから(笑

実際に「(フォーカスが広い意味での)普段からネガティブな人」って、自分の好きなことを理解できている人が多いように感じます。

 

フォーカスが広い人ほど、フラッシュバックが多い

そしてこれは私の予想ですが、そういう「フォーカスが広くて、普段から深層意識までアクセスできている人」ほど、フラッシュバックが多いんじゃないかと思います。

それは、「自分の中にある過去」にアクセスしやすいからでしょう。

関連する過去を思い出しやすいし、だからこそその苦しみでもあるフラッシュバックを起こしやすいと。

 

とはいえ、どんなに過去を思い出しやすいタイプでも、「第4層:抑圧領域」は別格です

これは、少々のネガティブ度では思い出せませんからね(笑

 

そのためには、大きなクラッシュがあって急激にネガティブになるか、時間をかけてネガティブに落としてゆくか、どちらかが必要でしょう。

でもまぁ普段からネガティブな人ほど、抑圧の解放はしやすいように思います。

 

まとめ

なのでこういう深層意識の構造まで理解できると、「ネガティブになる」という意味が分かるかと思います。

「ネガティブになる」というのは、言い換えると「深層意識にアクセスする」、「自分の性質を考慮して、表層の行動にフィードバックを加える」ということです。

 

そして改めて考えてみると、このメカニズムはとても効率的にできていると分かります。

社会と調和させて、それでダメなら自己否定をして行動を制限して、ネガティブに落ちることでより自分の性質を考慮して、フィードバックを加えて行動を修正してゆくわけですから。

 

だからネガティブになるのは危険なことではなく、むしろ心地よく安全に生きることを意味すると分かります。

ある意味、「より細かく軌道修正をできる」とも言えるでしょう。

 

なのに私たちは、なぜか「ネガティブになってはダメだ。ポジティブでなきゃ」としてしまうわけです。

すると、第2層から下に落ちることができずに、第1層と第2層を行ったり来たりして、それで混乱して限界が来ます。

結果として、第1層の「代償欲求ポジティブ」で依存症を持つし、最悪の場合は「楽になるため」というポジティブさで自殺をしてしまうと。

 

そういう「ポジティブでなければならない」という教えや思い込みが、自分の性質に合わないことを続ける要因になっているように思います。

 

冒頭の嘔吐恐怖症も、きっとその原因は「第4層:抑圧領域」に格納されていることでしょう。

私には分かりませんが、ひょっとすると過去に、死や恐怖に直結することがあったのかもしれません。

「幼い頃に、身近な人が嘔吐をした直後に死んでしまった。だから嘔吐=死としてしまった」

「幼い頃に、学校で嘔吐をしてしまって大いに笑われて、強烈な恥ずかしさや恐怖、疎外感を味わった。だから嘔吐=社会からの排除、としてしまった」みたいな。

 

もしその辺に向き合いたいのであれば、ゆっくりと意識をネガティブに落としてみるのもいいでしょう。

すると第3層で「好きなこと、合わないこと」も理解できるし、その奥にある第4層の抑圧も理解できるかもしれません。

 

そして第4層の抑圧領域で根本原因に触れた瞬間、おそらく同時にその嘔吐恐怖症も「もう必要ない」と理解できて、消えるかと思います。

 

ということで今日は、ネガティブになると、抑圧や深層心理が見えてくる、というお話でした。

今日はここまで~。

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