今日は久しぶりに、作家向けのお話をしてみましょうか。
「ストーリーとキャラクターと、どちらが大切か」というお話です。
ストーリー構成とキャラクター、どっちが大切?
とある作家さんが、「ストーリー構成とキャラクター、どっちが大切なんだろう?」みたいなことを言っていたんですよ。
今回はこれを、私なりの観点でお答えしてみましょう。
もう結論から言うと、「どっちでもいい」です(笑
どっちでも同じことをしているので、好きな方を選べばいいと。
で、片方をしっかりと決めれば、もう片方は自然と決まります。
その上で、自分に合った方法で作ったり、相手に合った方法で見せればいい、ということです。
これは言うなれば、「車でエンジンとハンドル、どちらが大切か」と言っているようなものです。
車では、エンジンもハンドルもどっちも大切ですよね。
で、エンジンのパワーとサイズを決めたら、軽自動車か普通車か、大型車かは決まるので、ハンドルの形も自然と決まるものです。
一方で、ハンドルのサイズを決めても、それを実現するエンジンのパワーとサイズは決まるものです。
別の例で言うと、家を建てるときに「柱と外観、どちらが大切か」と言っているのと同じです。
どちらも大切なんですよ。
で、外観が決まったら、その外観を実現するような柱の配置は一意に決まりますよね。
逆に、柱の配置を先に決めれば、その間取りで実現できる内容、すなわち外観は決まるものです。
だから、どっちを先に作ってもいいんですよ。
なぜこんな違いが出てくるのかというと、世の中には「目に見えることを把握するのが得意な人」と、「目に見えないことを把握するのが得意な人」という二種類の人がいます。
キャラクターとか世界観は、目に見えるものですよね。
一方で、ストーリー構造とか王道プロットなんかは、目に見えないもののさえたる例です。
で、この「目に見えるものが得意な人」と「目に見えないものが得意な人」の比率は、私の感覚で言うと、9:1か、8:2ぐらいです。
私は完全に、「目に見えないもの」の方が得意なタイプです。
「伝えたいこと」を強く持つ人ほど、ストーリー構造を重視する
で、これは私の予想ですが、「伝えたいこと」を強く持つ人ほど、ストーリー構造を重視するように思います。
というのも、伝えたいことや表現したいことがある人っていうのは、その気持ちや感情を伝えたいわけです。
「こういう感動を表現したい」とか、「こういう興奮を伝えたい」、「こういう恐怖を作りたい」というものを持っていると。
でも、こういうのを作りたい場合、キャラクターを作ったとしても、それを作れないんですよ。
感動とか興奮、恐怖って、時系列で変化するものなので、目に見えないものですよね。
だから、自然とストーリー構造から作るようになるわけです。
こういうタイプの人は、キャラクターを作るのが苦手というか、そもそも興味がないんですよ。
だって、作りたいのは「伝えたいこと」なんですから。
だから、こういうタイプの人は、キャラクターの名前をつけるのがすっごい苦手だと(笑
これは、そもそもネーミングやキャラ設定に興味がないからなんですよね。
でも、一度自分のキャラを作って動かすと、他人が作ったどのキャラよりも、自分が作ったキャラを愛するようになります。
その上、こういうタイプの人はオリジナルが大好きで、あまり二次創作はしないと。
これも、自分の伝えたいことを作るには、二次創作では制限がありすぎてできないんですよ。
もしやるとしても、本当に感情移入できた作品だけ二次創作をすると。
個人で同人誌を作る場合、だいたい「物語」を作ります。
時系列で考えることが得意で、未来をしっかりと考えるタイプの人です。
一方で、伝えたいことを持たない人ほど、見た目の設定を重視するかと思います。
というのも、そもそも構造自体を必要としないからですね。
だから、キャラクターの設定や世界観を重視して、ビジュアルを作るのが得意になります。
こういうタイプの人は、「設定」を作るのが大好きです。
このキャラはこういう名前で、こういう髪型で、こういう服装で、という設定をどんどん作れます。
また、二次創作が大好きで、オリジナルはあまりやりません。
自分が作ったキャラよりも、他の人が作った良質なキャラを愛する傾向にあります。
個人で同人誌を作る場合、だいたい「設定集」を作ります。
「伝えたいこと」を持つ人と比べると、時系列ではあまり考えずに、今を重視して生きるタイプの人です。
適切な人に、適切な方法を使えばいい
で、適切な人に、適切な方法を使えばいい、ということです。
どっちでも、結果的に仕上がるものは同じなんですよ。
ストーリー構造ができれば、その構造を実現するキャラクターは一意にできるものです。
逆に、キャラクターができれば、その性質を実現するストーリー構造は、一意に決まります。
ただし、世の中のほとんどの人は、見た目を重視します。
というか、「伝えたいこと」を持つのは、クリエイターぐらいしかいないわけですね。
お客やファン、出版社の編集者とかは、まず間違いなく見た目重視です。
なので、もしお客やファン、編集者に作品の概要を見せる場合は、キャラ設定を提出する方がいいでしょう。
彼らはストーリー展開的な構造を理解できません。
彼らは見た目でしか、作品の概念を把握できないんですよね。
また、彼らからのアドバイスやフィードバックも、見た目的な内容しか得られないことを意識しておくといいでしょう。
彼らは一様に、「キャラクターと世界観を魅力的にしろ」と言うでしょう。
だって彼らは、「ストーリー構造から物語を作る」という作家側のスタイルを理解できないからですね。
一方で、自分が表現したいものを作る場合であったり、同業種で同じ作業をしている人とやりとりをする場合、ストーリー構造を提出するといいでしょう。
彼らには、見た目を渡しても意味がないわけですね。
まとめ
そういうこともあって、「伝えたいことがあり、それを自分の内部で作る段階は構造重視」、「同じことをする仕事仲間に見せる場合は構造重視」にするといいでしょう。
一方で、「お客や編集者に見せる場合は設定重視」、「仕事仲間でも、アシスタントや別作業を任せる場合、設定重視」にするといいでしょう。
そういう違いを理解できると、適切な相手に、適切な方法で伝えられるかと思います。
作家や人にも得意なタイプがある、ということですね。
ってことで、今日は「ストーリーとキャラクターと、どちらが大切か」というお話をしてみました。
今日はここまで~。