今日は、ビジネスっぽいクリエイティブなお話です。
「個性を商品にした具体例」ということで、お話ししてみましょう。
「すみっコぐらし」というキャラクター商品
面白い商品があったので、ご紹介。
「リラックマ」というキャラクター商品は有名なので、ご存じかなと思います。
そのリラックマを作った会社が、リラックマの次に売りにしているキャラクター商品らしいです。
で、このキャラクターたちがとても個性的だったんですよ。
実際に見てみると分かりますが、「キャラクター単体のデザイン」を見ると、さほど特徴的ではないんですよ。
「よくある、なごみ系のキャラクターだな」程度で、それほど印象的ではありません。
圧倒的なのは、その背後にある世界観なんですよね。
その世界観があるからこそ、ありふれた見栄えのキャラクターたちが、一気に魅力的になっていると。
実際に上記キャラ紹介のページから、各キャラをクリックして詳細設定を見てみるといいでしょう。
すると、どのキャラもたいていが「自分らしさ」を発揮できない状態にいて、社会に対してなじめない性格のキャラクターばかりだと分かります。
暖かいのが好きなしろくまであったり、残されたとんかつのかけらだったり、本当は恐竜なのにトカゲだと偽っていたり。
そういうそれぞれの「社会になじめない」という性質を持つキャラクターたちが、「すみっこが好き。ここが落ち着くんです」という世界を描いているわけです。
「社会にいる境地開拓型人間」という暗喩
これはまさに、「社会にいる境地開拓型人間の感覚」だと言えます。
で、この世界をうまく描いて共感性を作っているから、魅力的な世界観になっているんじゃないかな、と思います。
よく私が提案している人間の分類として、「社会維持型人間」と「境地開拓型人間」というものがあります。
久しぶりなので再度説明すると、生命は「種を発展・繁栄させる」という目的を持って生きています。
すると、例えばアリで言うと、「巣の近くでえさをとって、個体数を維持する」という役割のアリ(社会維持型)と、「巣から遠く離れて旅をして、新たな境地を見つける」という役割のアリ(境地開拓型)がいます。
巣の近くだけでえさをとっていたら、万が一環境変動でえさが取れなくなったら、全滅してしまいます。
だから、少数の境地開拓型のアリは、単独、もしくは少数で遠くまで出て、新たな生息地を見つけて活動領域を広げる、という役割を持っているわけですね。
「人間も、こういう2種類の人がいる」、というのが私が提案しているモデルです。
私の感覚では、8割方の人間が社会維持型で、残りの2割ぐらいが境地開拓型の人です。
刺激に鈍い社会維持型、刺激に鋭い境地開拓型
で、社会維持型の人の特徴として、「感覚が鈍い」ということがあります。
というのも、社会って多くの人が集まるから、基本的に安全な場所ではあるんですが、ストレスが多い場所なんですよ。
また、「人とのやりとり」というのも、刺激が強いものになります。
だから、社会では「鈍感な人」ほどそういうストレスを気にせずに行動できるので、「器が大きい、素晴らしい人だ」と賞賛されます。
そして、社会維持型の人は、たいていが刺激に鈍い「鈍感な人」だと言えます。
サラリーマンであったとしても、毎日嫌なことをしていたとしても、我慢ができるタイプですね。
一方で境地開拓型の人は、「感覚が鋭い」という性質を持っています。
というのも、人が立ち入らないような境地では危険が多くあるので、リスクに対する感度を高める方が生き抜けます。
どこから虎や蛇が出てくるか分かりませんし、道に迷う可能性も大いにありますからね。
助けてくれる人がいない境地では、ひとたびそんなリスクが実現すると、命取りになってしまいます。
だから、境地開拓型の人は小さな刺激でもちゃんと感じられるような、「敏感な人」だと言えます。
そして、「自分が望む方向に行きたい」という性質が強い、「毎日ワクワクする方向に、我慢せずに向かう」というタイプです。
こうして「すみっこが落ち着く」になる
で、もしそういう刺激に敏感な人が、刺激だらけの社会にいたら、どうなるでしょう?
「敏感」というのは、裏を返すと「強い刺激に弱い」ということです。
ガンガンと鳴り響くうるさい音、わめき散らす人の声、すし詰めの満員電車、切った張ったの血みどろの戦い、ドロドロとした人間関係……
そういう場所に居続けると、簡単に「刺激の許容量」を振り切ってしまうわけですね。
だから、刺激の少ないような「すみっこが落ち着く」、「静かな場所で、一人でいるのがいい」という風に感じるわけです。
そういう「すみっこが落ち着く人」の目から見ると、「みんな、あんなにも打たれ強くて、忍耐力があってすごいなあ」と感じるものです。
だって、周囲にいるほとんどの人が「鈍い人」で、自分だけが「鋭い人」なんですから。
「すみっコぐらし」が作る共感性
ある意味、「すみっコぐらし」のキャラクターたちは、そういう「醜いアヒルの子」的な状態を持つわけです。
そして、「すみっコぐらし」は、そういう「社会で生きる、境地開拓型人間」の性質をうまく具現化したものになります。
本来は境地に向かうはずの人が、社会に居続けてしまうと、できるだけ刺激が少ないすみっこであったり、自分の部屋だったり、刺激をシャットアウトできる静かな場所を好むようになると。
これはある種の、「社会で生きる、境地開拓型人間」の安らぎの場ですよね。
そういう「共感性」を作れているのが、「すみっコぐらし」の強みかと思います。
「すみっこが好きって、分かる分かる~♪」という、親しみなんだと。
ある意味、「すみっこが好き、分かる」という人は、どちらかというとマイナーな性質です。
世の中の8割は社会維持型なので、大多数の人は「すみっこが好きって、分からない」という人たちばかりです。
で、そういう大多数の人たちは、サンリオやディズニーのような、メジャー向けキャラクター商品を好むと。
一方で、この会社は「リラックマ」だとか、「すみっコぐらし」だとか、メジャーの中でもちょっと端っこを狙っている、そういう戦略なんですよね(笑
そういうちょっとマイナー向けでも、共感を得られれば売れる、ということです。
まとめ
「すみっコぐらし」は、そういう個性をいい形で商品にした、いい世界観を持っていると。
ここで出てくるキャラは、だいたいがちょっとネガティブな性質を持っています。
でも、そういうネガティブなものでも、「可愛い」(=親しみが持てる)になるわけですね。
こういう風に、個性を商品にすることもできるわけです。
ここには、世界観の設定(キャラクターの設定)だけがあって、特徴的なデザインも、壮大なストーリーも、派手な演出も何もありません。
そんなストーリーや演出なんて、必要ないわけですね。
そして、キャラクターがネガティブであっても、問題ないんだと。
これが分かれば、ちゃんとした世界観があれば、その世界観の魅力だけで売れる、と分かるんじゃないかと思います。
ということで、今日は「個性を商品にした具体例」ということで、お話ししてみました。
今日はここまで~。