今日は、世の中の仕組みについてお話してみましょう。
なぜ好景気を続けようとすると、暴力的に不景気がやってくるのか、というお話です。
経済には波がある
昨日の記事で、「経済には波がある」って触れましたよね。
で、好景気の時というのは、新たなものを作ったり、広げていく時期です。
一方で不景気の時というのは、無駄なものを手放して、効率化してゆく時期です。
だから、好景気と同じように、不景気も必要なものだということです。
それなのに、多くの人が「景気はよくばるばかりがいい、悪くしてはいけない」とか、「得るばかりがいい、手放すのは嫌だ」と考えているものです。
いわゆる、「ポジティブがいい、ネガティブはダメ」というのと同じですね。
実のところ、そういう風に好景気を続けようとしても、結局は暴力的に、それだけ強烈な不景気がやってくるものなんですよ。
つまり、好景気を続けようと高めたところで、しばらくすると高めた分だけ暴落することになって、結局はつじつまが合うと。
じゃあなぜ好景気を続けようとすると、暴力的に不景気がやってくるのか、今日はそのメカニズムについて説明してみましょう。
「欲にまみれたポジティブさ」がクラッシュを生む
この原理はシンプルで、人は「より楽に、より大きく豊かさを得よう」とする性質があるからですね。
すると、中には欲に駆られてリスクを度外視して、「もっと大きな豊かさを得よう」とする人が出てきます。
そういう「欲にまみれたポジティブさ」がクラッシュを生むことになります。
実際に、不自然に好景気が続くと、人は借金をしてでも、豊かさを作ろうとし始めます。
例えば100万円を借りて投資をすれば、好景気であれば翌年に110万円になっているとしましょうか。
で、「これからも好景気が続く」と分かっているのであれば、人はどんどん借金をして投資をします。
すると、不自然に好景気が続くほど、膨大な借金をしてまで投資をするような、欲にまみれたイカれた人たちが出てくるんですよ(笑
この「借金をしてまで投資をすること」を、金融業界では「レバレッジをかける」とも言います。
つまり、とんでもない高レバレッジで投資をする人が出てくると。
値段が上がる中でも、下落は起きる
だけど、現実ではどんな時期でも、ある程度の売り圧力があります。
元々所有していた人が、「なんか最近は値段が上がりすぎているから、売りに出そう」と利益確定をする人もいるでしょう。
他にも、借金は一定期間後には返さないといけないし、借金の利率支払いや手数料も必要になるものです。
なら、借金をして投資をしていても、返済の期限が来たり、大きな利率や手数料支払いのために、手持ちの分をいくらか売らなきゃいけなくなる人もいます。
すると、「欲しい!」という人が多くいて値段が上がっている中でも、ふいに売りが多く出て、価格が少し下落することがあります。
その場合、最も欲にまみれて借金をしまくって、高レバレッジで投資をしている人が、その価格下落に耐えられなくなります。
だって、その人は「絶対に上がり続ける」と信じているから、少しの価格下落で借金を返せなくなったり、借金の手数料を払えなくなるからですね。
こうして「損切りの連鎖」が起きる
なら、その「最も危険な借金をした人」は借金を返すため、もしくは借金の手数料を支払うために、いくらか売らざるを得ません。
すると、その分だけ、さらに価格は落ちます。
なら次は、「2番目に危険な借金をした人」が、その価格下落に耐えられなくなって、借金や手数料を支払えなくなります。
だから、その人もいくらか売りに出さざるを得なくなって、さらに価格が落ちます。
すると、次は3番目に強烈な借金をした人が……となってゆきます。
こうして、「強烈な借金をしてまで投資をしていた人が、価格下落でどんどん借金を維持できなくなって、売りが売りを呼んで暴落する」という現象が起きます。
いわゆる、金融業界で言う「損切りの連鎖」ですね。
つまり、上がった分だけ暴力的に落ちて、結局はつじつまが合うと。
そして今は、リーマンショックが起きた2008年のおよそ2倍という、イカれた額の「借金をしてまでの投資」があります。(参考:MacroMicro Margin Debt)
だからバブルが起きる
だからそういう「不自然に好景気が続く時期」には、バブルが起きやすくなるわけです。
だって、もし今後も好景気が続くと分かっているのなら、「上がっているものに、もっと借金をして投資をすれば、それだけ楽に儲かる」んですから。
本来なら、好景気と不景気が交互に、細かくやってくることで、「投資をしてもうまくいかないこともある」と分かるものなんですよ。
だから投資する側も、より「価値があるものを選んで、価値がないものからは撤退しなきゃいけない」と判断できます。
つまり、投資する側も「得るのと同時に、撤退も必要になる」、「価値をうまく作り出す企業を見極めなきゃいけない」ということです。
そうすることで、無駄な投資を手放せて、不景気になる企業も生まれて、無駄な会社はつぶれるなり効率化をすることで、バランスが取れます。
こうして一度の暴落で、すべてを失ってしまう
だけど、例えば中央銀行がお金を作り続けてばらまくことで、無理矢理景気をよくすることがあります。
すると、「何でもいい、とにかくお金を借りて投資をしさえすれば、儲かる」となります。
そして、実際に上昇している時は、「上がっているもの」に投資していれば、どんどん利益になるわけです。
だから、多くの人が「投資なんて簡単だ。お金を借りたり、レバレッジを上げて、上がっているものを買うだけで利益になるんだから」なんて言い始めます。
そして、「地道にコツコツ働くなんて、バカがやることだ」みたいに、普通の人が仕事をやめて、投資ばかりし始めるわけですね。
その象徴が、今で言う「S&P500に投資しさえすれば、お金持ちになれる」、「ビットコインを買いさえすれば、楽に稼げる」ですね。
そして実際に、暴落するまでは上昇するので、多くの人が「本当に値上がりした。なら、全財産をそれに投資しよう。レバレッジも高めよう。その方がより早く、楽にお金持ちになれる」とします。
で、欲に駆られた人ほど、リスク感覚を失って、膨大な借金をしてまで投資をし始めると。
こうして一度の暴落で、すべてを失ってしまうわけですね。
なぜウォーレン・バフェットは、今でも世界一の投資家なのか
実際に、例えばウォーレン・バフェットは、そういう「一度の暴落で、すべてを失うような投資」からは距離を取っているわけです。
最近でも、「ウォーレン・バフェットは、ここ20年ぐらいはたいした運用成果を上げていない。S&P500やビットコインに投資する方が賢い」とかよく見かけるんですよ。
「じゃあなぜ、そんなバフェットが90歳近くになっても、今でも世界一の投資家なのか」が理解できないと。
だから、好景気になって人々が浮かれて踊るほど、「バフェットは終わった。これからはS&P500やビットコインだ」とか言う人が多く出てきます。
そして暴落が起きた時、人々は多くを失い、逆にバフェットはその時に利益を得るでしょう。
こうして、「本当は誰が賢く、誰が愚かだったのか」が分かると。
「ポジティブがいい、ネガティブはダメだ」とまさに同じ
これは、「ポジティブがいい、ネガティブはダメだ」と行動する人とまさに同じ原理です。
「ポジティブばかりがいい」と行動しても、その後に暴力的に、ネガティブなクラッシュが襲ってくるものです。
それは、実際に不自然にポジティブなことが続くと、「もうネガティブなことは起きない」と、ポジティブ前提で勢いをつけてしまうからでしょう。
「もう私は後ろ向きにはならない」、「もう私は落ち込まない」、「もう私は得るばかりだ」、「もう私はハッピーラッキーの連続だ!」みたいな。
なら、「リスク対策なんて必要ない!」、「どんどん積極的に出よう!」、「失敗なんてしないんだから!」と感じて当然です。
つまり、それだけ高レバレッジでポジティブ行動をしてしまうと。
その後に起こることは、もう分かるでしょ(笑
どんなときでも、失敗や不運はあるものです。
すると、不自然にポジティブが続いたほど、一つの小さな失敗や不運が、次々と大きなクラッシュを生んで、暴力的にネガティブな現実に襲われると。
それでも無視して自分の価値観に固執すると、「私が絶対に正しい。私に不足をもたらす周囲が悪い」と、戦争や奪い合いを始めてしまうように思います。
まとめ
だから、無理に好景気を続けようとしても、結局は暴力的に不景気がやってくるだけです。
ポジティブでも同じで、無理にポジティブを続けようとしても、結局は暴力的なネガティブがやってきます。
むしろ、落差が大きくなることで、普通よりも大きなショックとして苦しむことも多いものです。
なら、うまく「得ることと、手放すこと」を組み込むことで、自然なスタイルで変化できると分かります。
ゆったりと生きたい人ほど、こういう「陰と陽」的な、対極を含む生き方が合うようにも感じます。
すると、「手放す時期は、潔(いさぎよ)く手放そう」とできて、うまく変化を作れるかもしれません。
ということで今日は、なぜ好景気を続けようとすると、暴力的に不景気がやってくるのか、というお話でした。
今日はここまで~。