さてさて、今日は昨日の続きで、シナリオライター向けなお話です。

前回を簡単にまとめると、紙媒体の出版業界はこれから落ちる一方で、そして大手作家のみが生き残って中間層以下は全滅という様相を呈してくる……ということでした。
だとすれば、新規参入者は、よっぽどの実力がない限り売れないということになるわけですね。

でも、ある業界が落ちたということは、「人々がその業界から他の業界に移った」とも見ることができると。
じゃあ、その他の、人が集まりつつある業界に移ればいいだけなんですよね。

普通、競合と言うと、ある場所にスーパーがあったとすると、その近くにある同じようなスーパーが競合になりますよね。
文房具店なら、近くの文房具屋が競合になったり。

でも、情報通信が発達してくると、本屋の競合がアマゾンみたいな通販ショップになったりとか、コンビニになったりとか、いろんな競合が出てくるようになるんですよ。

例えば一眼レフのカメラを作っている会社の場合、競合は他の一眼カメラでもあり、携帯でもあり、スマホでもありますよね。

同じように、「出版」を食っているものは、いわば「デジタル全体」なんですよ。

例えば雑誌とか、もう見ないでしょ。
その代わりに、ツイッターとかニュースサイトとか、まとめサイトやメール、ブログみたいなものを見ているわけです。

出版業界の競合が、そういう「デジタル全般」になってきているわけで。

既に世の中は変わりつつあるわけで、ならそういう「新しく人が集まる場所」でお金を得ていく必要があるわけですね。

 

なら、これからの時代、どういう媒体やジャンルが上がっていくのか。

まず媒体で言うと、紙媒体で稼ぐことをこれから目指すのは完全に終わりつつあります
紙媒体の書籍は便利なので完全になくなることはありませんが、そこは大手のみが生き残れる場所なので、新規参入者が戦えるような場所にはならないでしょう。
個人でアメリカ軍に戦いを挑むようなものですね。
「書籍を出版するだけで、作家として生きていきたいんです」という夢を持っていたとしても、まぁ止めはしませんが、ほぼ間違いなく徒労に終わるでしょう。

もし紙媒体で出すとするなら、他に儲かる本業があって、そこに行動を促す販促ツール的な位置づけになるでしょう。

例えばビジネス書籍の場合、その本単体で儲けを出すのではなくて、その本で儲けは考えずに、その本を読んでくれた読者に自分の会社のサイトを見てもらったり、会員になってもらうように促す……そういうものですね。
萌え系とかであれば、本単体では儲けを出さずに、その背後にあるグッズ販売とか版権販売などで利益を出すと。

そんな風に、紙媒体そのものはコストも大きいし利益率も低いので、広告代わりにしか使えなくなってくるでしょう。

なら何がいいかというと、これからは電子媒体が大きなチャンスを持っています。
電子書籍に限らず、テキスト+動画、テキスト+音声まで含めた、電子媒体ですね。

特に電子書籍は、日本では大手出版社は今のところ電子書籍に全く興味がないので、大きな競合が少ないんですよね。
個人のような小さな規模であれば、よりチャンスが広がっています。
しかも、ほとんどの人がスマホを持ちつつあるこの現状で、これからもスマホは普及していくという状況なので、読むためのプラットフォームは完備しているどころかさらに増えていく方向性で、そして大手がいない。

これ、最高にチャンスでしょ。

そんな中で、キーワードは「分量を小さく」「必要なものだけを」「すぐに手に入れられる」ですね。

これはライフスタイルと関わってくるので、話すと長くなるのでまた今度にしましょうか。
とにかく電子媒体で出すのであれば、小さくコンパクトにすること、読み手が欲しいと思っているものだけに凝縮して、無駄なものはできるだけ排除すること、そして「欲しい」と思ったらオンラインで2~3分後には購入完了できること……ですね。

 

シナリオのジャンルで言うと、次の2つのジャンルが盛り上がっていくでしょう。

  • 一つ目は、リアルに片足を置いたシナリオ
  • もう一つは、極端に非現実を極めたシナリオ

一つ目の「リアルに片足を置いたシナリオ」というのは、何かしら現実に沿ったシナリオだということですね。

今年でも、「永遠の0」とか「海賊と呼ばれた男」とかは、実際にあった史実や人物を元に書かれたものです。
それとか、漫画で言うと「くるねこ」とかありますよね。
これは、猫との毎日の生活というリアルを、漫画にして掲載しているというものです。
他にも、「中国嫁日記」とか「日本人の知らない日本語」みたいに、実際に中国人の嫁を持った漫画家の毎日とか、日本語学校教師の毎日とか、そういうのを面白くしたものが売れてきていますよね。

こんな風に、実際にあった出来事とか、経験を元にしている、「リアルに片足を置いた」シナリオですね。
それが、これから売れてゆくものの一つ目です。

 

もう一つ、売れてゆくのは「極端に非現実を極めたシナリオ」になるでしょう。

萌えとかBLとかでも、もう「こんなの現実にありえない」ぐらいまでに極端に、究極に走ったものが売れてゆくと。

私は最近はもう萌え系とかさっぱりな状態ではありますが、最近ぱっと目についたもので「時代に合ってるな~」と思ったものは、漫画で「私がモテないのはどう考えても~」ですね。
中身までは見てないんですが、主人公は病的で劣等感抱きまくりな、ものすごい極端なキャラだと思うんですよ。

他のジャンルでも、BLも究極に走っていて、ラノベも美少女ゲーム寄りになってきているわけで。

そんな風に、とにかく現実では絶対にありえないのを、さらに突き詰めた「究極の~~」みたいなものが、もう一つのこれから売れるものになるでしょう。

 

これらの傾向は、言い換えると、「中途半端なフィクション」が売れなくなる時代なんですよね。

上記2つの中間であればあるほど、これから売れなってゆくでしょう。
「ちょっと非日常な、日常的フィクションのシナリオ」とか、まぁ業界全体では売れるでしょうが、それは一部の大手作家から売れるもののみで9割以上を構成していて、新規参入者が出したものはほぼ全く売れなくなる……というか、既に売れなくなっているものなんですよね。

というのも、ネットで得られる情報がこれだけ広がったら、世界中からリアルで奇抜な情報が入ってくるようになるんですよ。

最も顕著な例が、数年前に起こった東北の大震災ですよね。
あれは、いわば「リアルがフィクションに勝ってしまった」という象徴的な出来事でした。

他にも、9.11のテロとか、インドの津波、ハリケーンカトリーナ、ニュージーランドでの地震、タイの洪水、オーストラリアの大干ばつ、今年のフィリピンでの台風……などなど、もう少々のフィクションではリアルに対抗できなくなってきているんですよ。

それだけでなく、世界中で様々な、奇抜で不思議でとんでもない出来事や謎が毎日のように起こっているわけで、そしてそれがいくらでも自分のツイッタータイムライン上に流れてくるわけで。

それほど、「並大抵のフィクション」はつまらなくなってしまったんですよ。

 

なので、これからシナリオライティングで稼いでいきたい場合、「リアルに片足を置く」か「究極の~~に走る」か、そのどちらかでないとうまくいかなくなるでしょう。
既に、人々はそういうスタイルになってしまっているんですから。

ということで、今回はジャンルや媒体について、少し話してみました。

もう少し話せることがあるので、それはまた次回にでも。

この記事をシェア:
Share