さてさて、今回も引き続いてシナリオライター向けなお話です。

今回は、これからの時代に合った、よりクリエイティブなシナリオライティングで稼ぐ方法について紹介してみようかと思います。

既に時代として、「シナリオ単体」では売れなくなっている時代なのは、感覚として分かることでしょう。

ネット上で小説とか検索してみれば、これでもかっていうぐらいフリーの小説が溢れているわけで。
さらにはフリーの動画とかニュースサイトとかまとめサイトみたいな面白いコンテンツがある上に、Amazonでも無料で著作権切れの名作を電子書籍で無料で入手できるんですから、「なんでお金を出してまであんたの小説を買わなあかんねん」ってことになりますよね。

村上春樹みたいに話題性があるとか、アニメ化や映画化とか、そういう別の話題がなければ、シナリオ単体では売れない時代になってきているわけです。

で、ちょっとクリエイティブに考えれば、「単体でなくて、他の価値を加えればいい」というのは思いつきますよね。

なら、どういう価値を加えればいいのか。

真っ先に思いつくのが、ゲーム形式や動画などの、「映像や音楽」を加えることでしょう。
シナリオよりも、ゲームやアニメ形式の方が飛びつきやすいものですよね。
これも確かに一つのアイデアで、シナリオ単体よりかはまだ見てもらえるチャンスはあるでしょう。

でも、「稼ぐ」となると、これでも相当厳しくなってきているのが現状です。
というのも、これからはさらに誰もがそういう動画やゲームを作れる時代になってきているので、こういうのもほぼフリーで入手する時代になってきているからですね。

五年後にはもう、動画やゲームで稼いで利益を出せるのは、ごく一部だけになっているでしょう。
特に、これから新規にシナリオライティングで生きていきたいという人にはオススメできないものになってきています。

 

ならば、どうすればいいのか。

 

そこでこれからの時代に合う考え方として、「自分自身の持つ『別の特性』と結びつける」ことがあります。

別の表現で言うと、「体験を与える」とも言えるでしょうし、「リアルに片足を置く」とも言えるでしょう。

今までは純粋に「面白いシナリオを書く」という1つの能力で勝負してきた時代でした。
ですがこれからは、「面白いシナリオ」プラス、自分だけが持っている別の能力を付加して表現することで、価値を高めるわけですね。

これはどういうことなのか、新時代のシナリオライターの稼ぎ方の例を、2つほど挙げてみましょう。
以前もうちのスタッフさんをモデルにした話をしましたが、今回もそんなノリで、私の経験から得た人を作り出してご紹介しましょうか。

 

一つ目:SM好きなシナリオライター、江洲さんの例

江洲さんは女性なんですが、SM好きなんですよ。
しかも真性のS(笑

で、SM好きなので、趣味でそういう小説を書いてネットで発表していたりします。
過去に何度もSM系な出版社の新人賞に送ったりしていたんですが、全部だめ。
いや、正確には一度だけかすって佳作をもらったことがあったんですが、出版までには至らずに終わってしまって。
電子書籍を出してもなしのつぶてで、サイトに来る人も少なくて。

なので、近所のスーパーで販売員をしながら、小説家を目指しながら書くというスタイルでした。

で、彼女はドSなので、趣味でそういうSM物品の通販サイトでそれ系のアイテムを買ったりしてるんですよ。
いや、私は詳しくないので分かりませんが(笑
本人は「使う相手がいないから、もったいないんですよ。だから妄想が炸裂して書けるのかも、ハハハ」と笑っていたり(笑

そして、その通販サイトにはフォーラムがあって、そういう系の人たちがアイテムの善し悪しとかを評価していたり、新しい使い方を紹介してしたんですよ。

そこで彼女は、自分が買った一つの商品が話題になっているときに、「こういう使い方もアリだよな……」と、短い小説にして公開して、フォーラムにリンクを張ったんですよ。
彼女は長編は苦手で、詩とか短編が得意だったので、ほんと短い文章で仕上げたSM短編小説で。

すると、そのサイトではその店の売り上げランキングみたいなものがあるんですが、そのときを境にその商品がしばらくランキング1位になったっていうんですよ。

小説の評価も少しだけですが、そこそこあったりして。

彼女は面白がって、しばらくして別の商品を使って同じように短編小説を書いたら、次はそれがランキング1位になって。

もうこうなったら、面白くてやめられないでしょ(笑

そして次の商品はどれにしようかな~と思っていたら、ある日突然、その物販サイトの店長からメールが来るんですよ。
「うわ、やばい、やりすぎたかな……」とかビビッていたら、こういう内容でした。

「これからこの商品を大きく売りに出したいんですが、もしよかったらフォーラムにあるような小説を書いていただけませんか? もちろん、謝礼は出します」と。

まさかの店長からのオファーが!(笑

そりゃそうですよね。
彼女の短編小説は、その店で最高の宣伝材料になるんですから。

もちろん彼女は喜んで、タダで商品を送ってもらった上に、楽しんで小説を仕上げて、それも評価は上々で売り上げも伸びて、その上に謝礼も少しもらえたんですよ。

元々が真性のSなので、Sの気持ちが分かるんでしょうね、きっと(笑
そして小説形式なので、「こういうシチュエーションで、使い方で、こういう悦び方もあるんだ」みたいなのをありありしたイメージを伝えることができたのかなと思います。
彼女もそういう「新しいシチュエーション、新しい悦び方」を考えるのが好きなようで(笑

それが何回か続いたら、今度は彼女自身が商品を選んで毎月紹介したりするようになったりして、着実にそのSM通販ショップの売り上げは伸びていったんですよ。

すると、店長はさらに別のアイデアを提案してきます。

「お客を囲い込みするためにも、毎月定額有料で、定期便として商品を発送する……そういう商品を作りたい。そこで、貴方の名前を商品に入れて、毎月1つの商品を選んで、その使い方を考えてくれませんか。今度は売れた歩合制でお支払いできるので、より商品が売れそうな方法や小説を考えてくだされば」と。

もう彼女は即答でOK!みたいな(笑

そこそこの売り上げがある通販ショップだったので、そこからの収入だけで、彼女は暮らしてゆけるようになりました。

なので彼女はスーパーの店員をやめて、専業でSMショップの小説を書くようになって、今は他のSM関係にも売り込もうかとか考えているところだということです。

……彼女の例は、「シナリオ単体で売る」のではなくて、「ショップの商品と重ね合わせて売る」というように、「商品(SM系アイテム)」というリアルに片足が置かれているんですよね。

そして、彼女の短編小説を読んで買った人は、彼女の小説を読んでイメージして、同じように使っているだろうと(笑
いわば、彼女はお客に「アイテムの効果的な、新しい使い方を考える研究者」であり、同時に「教える教師」でもあったと言えるでしょう。

こんな風に、「面白いシナリオを書く」だけでなくて、「研究者や教師という自分自身の別の特性」を発揮して、より高い価値を与えているんですよ。
言い換えると、「リアルに片足を置く」とも表現できますし、「体験を与える」とも言えるでしょう。

すると、ただ単純にシナリオ単体を「これSM小説です、読んでください」と言って出すよりも、よっぽど効果的で、かつ価値が高いもので、そして他の人には真似されにくい、その人独自が持つ才能になってますよね。

これが、一つの例ですね。

もう一つ、新時代のシナリオライターが稼ぐ例を挙げてみましょうか。

 

二つ目:児童文学や絵本が好きなシナリオライター、道寺さん

道寺さんは未婚の女性で、絵本とか児童文学を作るのが好きでした。

もちろんお約束のように新人賞に送ってもだめで、会社勤めをしながらほんと趣味で書いている程度でした。

実家で暮らしていたんですが、姉(既婚者で小さな子どもが2人いる)の家族が帰ってきたときに、よく絵本(というか紙芝居みたいなもの)を作って読み聞かせしていたりしたんですよ。
読み聞かせしている時は、さっきまでばたばたと駆け回っていた子どもたちが、自分の目の前で、自分の作った物語に次第に没入していく……そういうのを感じるのがとても気持ちよくて、楽しんでもらえているのがありありと伝わってきて、大好きでした。

そういうのをやって個人で楽しんでいたのが、ある日、姉と姉の友達家族も呼んで来た日にも、その読み聞かせをしたんですよ。

すると、その友達家族がすごく感動してくれたようで、「すごい!」と言ってくれたんですよね。
道寺さん自身は新人賞に落ちまくっている人なので、すごいと言われるのは照れくさかったようですが。

そして、そういうのをきっかけにして、開けてゆくものなんですよね。

その友達家族から話が広がって、道寺さんは、近所の児童会館みたいな小さな場所で読み聞かせをするようになったり、近所の書店で読み聞かせイベント(もちろん彼女の作品ではなくて、大手作家の作品メインですが)をするようになったりしたんですよ。

また、それに気をよくした彼女は、どんどん全面に出て行く性格の持ち主なので、子持ちの友人の家族から幼稚園に話をつけてもらって、その幼稚園で自分の作品の読み聞かせをしたりとかするようになりました。

ほぼギャラなしでしたが、子どもたちの反応を見るのがとても楽しくて、嬉しくて、やめられなかったようで。

でも、こういう活動をしていれば、少しずつ広がってゆくものなんですよね。

ついにオファーがやってきました。
それは、全く予想をしていなかった「住宅会社」からでした。

住宅会社っていうのは、メインターゲットが「小さな子どもが生まれた家族」みたいなんですよ。
子どもを持つようになったら、やっぱり戸建ての家が欲しくなる……みたいな感じでしょう。
なので、週末によく住宅展示場でイベントをやって、家族連れを招いているって言うんですよ。

そういうイベントで、ほんの少しですが、ギャラがもらえるようになりました。
もちろんそれだけでは、まだ生活はできないんですが。

で、それで活動をしていると、さらに次にオファーがやってきます。
今度は、「老人養護施設」からでした。
これも全くの予想外で。

老人養護施設は結構何かしらの入所者向けのイベントをしているようで、そこで読み聞かせをやってくれないかと。
そして、そこからのギャラは、今までのお小遣い程度ではなく、そこそこの額だという。
まさかの展開でしょ(笑

彼女はそういうのを繰り返して、今、上りつつある状況です。
どんどんいろんな予想外な場所からのオファーがあって、向上していくのとか、世界が広がっていくのが実感できて、面白くて仕方がないようです。

そして同時に、既に「独立して読み聞かせだけでやっていく」というのは選択肢の一つに入ってきている段階です。
すると、全力で喜んでもらおうとしたり、いろんな知恵も出てきて、やっているのが楽しくて仕方なくなるんですよね。

そんな風に、彼女は「絵本を書く」だけでなくて、「読み聞かせをする」「イベントに出演する」みたいな、役者的な特性と結びつけて、シナリオを表現したわけですね。

これも言い換えると、「リアルに片足を置く」とも言えますし、「読み聞かせ」という、いわば臨場感のある「体験を与える」とも言えるでしょう。

 

少しまとめてみましょうか。

古い20世紀型のシナリオライターは、「シナリオ単体」で稼ぐ時代でした。
シナリオを書いて、後は出版社とかゲーム会社に送ってそれでおしまい、みたいな。

ですが、これからの21世紀型のシナリオライターは、「別の特性と結びつける」ことによって、自分にしかできない表現を作り出してゆく……とも言えるでしょう。

それはただ単純に、シナリオに音楽や絵を追加したり、動画やゲームにしたりというものよりも、さらに幅広く、より「自分にしかできない、特性のオリジナルミックス」とも表現できるかもしれません。

作家の本田健氏は、これを「才能のかけ算」とも言っています。
かけ算のように、才能が重なれば重なるほど、倍々で価値が増えていく……ということですね。

上記の二人のように、「教師」や「役者」だけではないでしょう。
いろんなミックスが考えられます。

  • リアルの「物品(商品)」と組み合わせる
  • 「教える」と組み合わせる
  • 「研究する」「開発する」と組み合わせる
  • 「味わう」と組み合わせる
  • 「演じる」と組み合わせる
  • 「グッズ」と組み合わせる
  • 「イベント」や「人を集める能力」と組み合わせる
  • 「コミュニケーション」や「カウンセリング」と組み合わせる
  • ……etc.

……みたいに、その人の特性によって、「自分にしかできない最高のポジション」みたいなものが、必ずあるものなんですよ。

例えば元音楽プロデューサーの四角大輔氏は、登山やトレッキングが好きで、文章を書くこともできる。
そこで彼は、新しい登山向けの商品開発会社へアドバイスをしたりとか、それ系の雑誌に記事を書いていたりしています。
ただ登山の文章を書くのではなくて、「研究開発」や「教える」という才能を生かしているわけですね。

他にも、絵本作家で有名なきむらゆういち氏は、絵本で売れる前は、子ども向けの「おもちゃの作り方本」みたいなものを作って、幼稚園に売っていたり、実演していたりしました。
これも、研究開発とか、演じたり、グッズにしたり、そういう才能とかけ合わせて一つの「きむらゆういちワールド」ができているわけですね。

だから、彼らは「私は作家です」とはほとんど言えないんですよ。
共通しているのが「文章も書いているけど、研究もやっていて、販売もやってるような……なにやらよく分からない職種」、みたいな表現でしか言えない形態がほとんどなんですよね。

それはつまり、「シナリオ単体」では勝負していないということですね。
そういうのが今の時代、どんどん増えてきている……すなわち、上昇気流に入っているわけです。

その才能をかけ合わせる、「最高のポイント」を見つけ出すのが大切になるでしょう。

すると、それを見つけ出したら、競合はほとんどいなくなるんですよ。
だって、そんな芸当ができるのは世界でただ一人ぐらいですからね。
だから、売り上げが奪われることもなく、「世界に自分しかできないこと」ができるわけです。

 

なので、これからの時代は、自分の内側との対話が特に重要になるでしょう

外を見て「何が売れている」「何がブーム」とか、「こういうテクニックが売れる」とか、そういうのは二次的なものになって、メインは「自分との対話」を経たものに、新しい可能性が生まれるのです。

経営用語で言うと、マーケティングの時代は終わったと。
これだけ市場がぐちゃぐちゃに混じり合ってくると、「マーケット」という概念そのものが、もう古くなってきたわけです。
プロダクト・アウトでもなく、マーケット・インでもなく、これからは「エクスペリエンス・アウト(経験・体験を元にする)」だということですね。

なので、これからは外部のノイズにまどわされずに、自分はいったい何ができるのか、何をしたいのか、そういう対話を続けてゆくことが大切になる時代だということですね。

そしてそれができればできるほど、より成功しやすく、そして稼ぎやすくなるということです。

ですがこれは、言い換えると「先が見えない不安」との戦いにもなります。

これまで、「新人賞を取って宣伝は出版社に任せて自分は書くだけでいい」というのは、いわば他人が作ったレールなので、見通しもきいて、気楽な旅だったことでしょう。
ですが、大手が作ったレールは古くなって便数も減り、もはや超満員で進めなくなっています。

だからこそ、「自分で道を切り開く」、「自分の人生は、自分でレールを造り出す」という姿勢を持つクリエイターであるほど、これからの時代に上昇してゆくでしょう。

というのも、チャンスはどこから来るのか分からない、ということもあるでしょう。
たまたま投稿したフォーラムの、その店長から来るかもしれませんし、姉の友人から話が広がることもあるかもしれません。

だから、「計画」とか「戦略」といったものも、これからは今までほど重要ではなくなってくるわけですね。
でも、完全にノープランで進めるわけではありません。
プランは持ちつつも、チャンスがどこから来るかは分からないので、常に変化に対応できるようにする……そういう「変化に適応できる姿勢」が大切になるということですね。

で、「自分らしさ」を追求していると、必ずあるところで「呼びかけ」みたいなものがあるんですよ。
私はそれを「Calling(コーリング)」と呼んでいるんですが。
天から「こちらに行きなさい」というメッセージ、みたいな。

それに乗っかることで、より未来は開けてゆく……ということですね。

 

そんな風に、その「自分なりのオリジナルミックス」の最高のポイントをいち早く見つけるお手伝いができればと思い、現在いろいろとその辺の教材作りを考えています。

それができたらこのブログでも公開できればと思いますので、お楽しみに。

長くなりましたが、今日のお話はここまで!

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