今日は、「職人技」についてお話ししてみましょうか。
スキルのお話です。
デザイナーはなぜ、MS Pゴシックを使わないのか
久しぶりに「これは職人技だ」と感じた内容があったので、ご紹介。
デザイナーはなぜMS Pゴシックを使わないのか? – エディトリアルデザイナーに聞いてみた(マイナビニュース)
この記事では、プロのデザイナーに「なぜMS Pゴシックを使わないのか」と尋ねているんですが、その答えがすっごい職人技なんですよ。
私たちの場合、「なんか見慣れているから」とか、「なんかダサいから」みたいな、そんなアバウトな答えしかできないじゃないですか(笑
でも、本職のデザイナーは、さすがに具体的に指摘するわけです。
「これらの文字は、他の文字に比べて少し太く見えますよね」
「この文字だけは、直線的に見えて、バランスが欠けてますよね」
言われてよーく見てみると、まさにそうなんですよ。
ちなみに私の場合、太さの違いは、言われていても、最初のぱっと見ではよく分からなかったぐらいでした(笑
こういうのをびしっと言われると、「職人技だ!」って分かりますよね。
これは、「情報」じゃないんですよ。
このデザイナーは、情報として「これらの文字は太く見える」とか「この文字は直線的に見える」と知っていたわけじゃないと思います。
スキルとして、それを見抜く目を持っているわけですね。
だから、別のバランスの悪いフォントやデザインを見ても、すぐに「ここを修正したらいい」と分かることでしょう。
こういう「職人技」って、「情報」があふれている今では、感動しますよね。
だって、情報を越えた次元の話なんですから。
どんなに調べても分からなくて、その人のスキルがなければ分からない、みたいな。
「プロット分解」という職人技
で、ふと思ったのが、一昨日、昨日と、プロットの改善案についてお話したじゃないですか。
実はあのプロット分解も、結構な職人技なんですよね。
あの記事では、「この物語は、4つのプロットに分解できます」って、すごく簡単そうに言ったじゃないですか。
でも実は、この「4つに重なったプロットを、一つずつ分解する」っていうのは、ストーリー分析でもSクラス級の難易度なんですよ。
この難しさは、たとえて言うなら、「完成された料理から、その中で使われている調味料を当てるようなもの」だと思えばいいでしょう。
2つとか3つの調味料なら、結構すぐに分かりますよね。
でも、それが5つとか10とかも使われていたら、急激に一つ一つの調味料に分解するのって、難しくなるじゃないですか。
味が混じり合っていればいるほど、理解不能になるものなんですから。
しかも、いくつ調味料が使われているのかすら、分からないわけです。
プロットが2つ重なっている、とかならよくあるんですよ。
だから、そういうのは見慣れているので、わざわざ解説したくなるようなものでもないんですよね。
でも、それが4つですよ、4つ。
そして、これは最初から「この物語には4つ、プロットが含まれています」なーんてことは分かりませんからね。
ごちゃーっと絡まり合った糸があって、「何本糸があるのかすら分からない」という状態と同じです。
そういうこともあって、「うおお、4つものプロット分解ができた!」と興奮して、昨日、一昨日と記事を書いたわけです(笑
だから、4つものプロットが一つのキャラクターに入っていて、冒頭を見ただけでそれを指摘するとか、もうありえない難易度なんですよ。
まあ、それだけテーマを詰め込む作家なんて滅多にいない、という事情もありますが(笑
実際にプロット分析には自信がある私でも、初めてあの漫画を見たときに、何が問題なのか分からなかったんですよね。
それぐらい、問題が入り交じっていたと。
そういう風に考えると、昨日の「4つものプロットを分解する」というのが、どれほどの難易度で、職人技かが分かることでしょう。
実際に、「よく分からない」という物語のテーマを分解してみようとするといいでしょう。
普通の人は、冒頭を見ても、1つのテーマですら見抜けないことがほとんどですから。
作家志望の人ですら、物語全体を見た上でも、2つのテーマが入っていることを見つけられないぐらいですしね。
そんな風に、我ながら「これは職人技だ」と思ってしまったり。
まとめ
クリエイターの人って、だいたいそういう「職人技」を持ってるものなんですよ。
自分で気づいていないだけで。
絵描きさんとか漫画家さんなら、他の人よりもはるかに細かいグリッドで、線を操れるわけです。
普通の人なら5ミリ単位で線を調整するところを、絵描きさんや漫画家さんは0.05ミリ単位で違和感に気づけたりするものなんですよね。
ストーリー作家なら、他の人よりもはるかに細かいグリッドで、物語展開を把握できるわけです。
普通の人なら、「中盤の盛り上がり、クライマックス」ぐらいしか言えないところを、ストーリー作家は12とか14、16とかでストーリーを区切って、展開を詳細に見抜けるわけです。
「神話の法則」モデルは12ですし、私の「ストーリー14のステップ」は14で、単純に「三幕構成を2階層で」でも、4×4=16ほどできますからね。
下手すると、本気で分析する場合、3幕構成に区切った上で、さらに12とか14で分析するので、30とか40ぐらいの区切りで見抜くこともあるわけです。
そういう職人技がある、ということをしっかりとファンにも伝えられていると、ファンも「そうなんだ~」と、その人のすごさを再認識するんじゃないかな、とも思ったりもします。
ファンの人は、職人技を知りたいものですからね。
そういうのを説明するのも、いいかもしれません。
ということで、今日は職人技についてお話ししてみました。
今日はここまで~。