今日は、戦略についてお話ししてみましょうか。
「私が今から漫画家を目指す場合、どういう戦略をとるか」というお話です。
私はいろんなことを全くのゼロから始めて成長するのが好きな人なので、「全くの能なし状態」からうまくいくコツが少しずつ分かってきたんですよね。
で、「私の場合、漫画家を目指すとすると、どうするだろう?」と考えてみたんですよ。
まあ、今回の話は実際にやったことがない人が言う想像の話なので、適当に聞き流してください(笑
とてつもない漫画業界のレベル
ちなみに最近の漫画レベルは、すごいことになってますよね。
新人賞レベルでも絵が上手いことは当たり前で、その上ストーリーも面白いんですから。
10年前や20年前の一般的プロレベルでは、今の新人賞ではかすりもしない状態でしょう。
私は以前、知り合いの漫画家さん(今はプロの人)がアマチュア時代、その原稿を見せてもらったことがあるんですよ。
すっごいレベルの高い作品で、絵がいいのは当然で、ストーリーの完成度も高かったんですよ。
だから私は「こんなレベルの高い新人おらんだろ」とか思って、「これなら持ち込みでも新人賞でも、何でもうまくいくだろう」と内心思ってたんですよね。
でも現実では、新人賞を取れなかったんですよ。
「今の漫画レベルって、そんなに高いのか!」と衝撃に思ったことを、よく覚えてます。
昔は「漫画家」というのは、結構劣った職種だと思われていたんですよ。
それを、手塚治虫とか、トキワ荘世代の人たちが活躍することで、今ではあこがれの職業になったわけです。
昔は「お笑い芸人」とかも、どこにも就職できないような落ちこぼれが入る場所だったんですよね。
でも、ダウンタウンとかウッチャンナンチャンの世代でお笑い芸人がテレビで活躍するようになって、あこがれの職業になってしまったと。
すると、自然とレベルが上がってきて、すごい競争率になるんですよ。
需要よりも、供給の方が多くなりすぎてしまうと。
すると、「普通の実力」では太刀打ちできなくなるわけです。
そして、今では完全に市場が飽和しているように思えます。
いわば、漫画家の需要よりも、漫画家志望者の方が多くなりすぎていると。
そんな環境の場合、私ならどうするのか。
ちなみに私は、「競争しない」、「戦わない」という戦略が好きなわけです。
で、有利不利というのは、「競争率」で決まると。
それでリスクを取って動く場合、どうするかを考えてみました。
全くのゼロから漫画家を目指すなら、私ならどうするか
まずは、能力がない場合、最低限の能力を身につけるのが必要ですよね。
その「最低限」というのは、「お金を払って買ってくれる人がいる」、「ファン(毎回新作を買ってくれる人)が十人以上はいる」ぐらいでしょうか。
それまでは、徹底的に基礎を学びます。
その基礎も、「学ぶ」というよりも、「作品をリリースすることで学ぶ」という実戦形式にします。
「練習作」なんか一切作りませんし、仕上げたものは全て公開します。
全て作品で、一作一作が人生最後の作品で仕上げます。
それで、最低限の技術とファンを作ります。
で、好きな漫画を描いて実戦形式で学んで、リリースしていくことでしょう。
でも、先に説明したように、漫画家はすごい競争率で、私が新人賞に応募してもかすりもしません。
細切れ時間向けのWeb漫画を連載したとしても、売り上げが上がらなかったとしましょう。
なら、どうするかというと、私は「競争率」を考えます。
「より楽に勝てる場がないだろうか」と、「より小さい市場で、競争率が低い場所」を探そうとします。
多くの人が、「市場が大きい方が儲かる」と勘違いしているんですよね。
実際は、これまで何度も触れたように、有利不利は「競争率」で決まるんですから。
だったら、より規模の小さな市場を探し始めます。
例えば「週刊誌連載」が一番規模が大きいとすると、次は「月刊誌連載」、「専門誌」、「隔月誌」、「地域誌」、「漫画以外の専門誌」、「漫画以外の地域雑誌」みたいに小さくなっていきますよね。
市場が小さくなればなるほどレベルは低くなるので、次第に勝てるようになります。
そこで、最大限に有利な場所を見つけようとします。
(本当は時代の流れとかも考えるんですが、話がややこしくなるので、それはここでは無視しておきます)
ここで、「好きなこと」とか「得意なこと」を軸に含んで、より広い世界で、細かく見てゆくとよいでしょう。
例えばスキーが好きなら、「スキー場向け」という小さな市場で、より広くアプローチできるでしょう。
例えば今いる市が好きなら、「市内向け」という小さな市場で、より広くアプローチしてゆきます。
「海外」という可能性
私の場合ならどうするかというと、私は海外の人と手を組むのは今まで何度も経験してきているので、「地域」は海外も含みます。
そして私は、海外こそ最高のチャンスがあるように思えます。
というのも、はっきり言って日本の漫画レベルは世界最高峰なんですよ。
その上、激戦区だと。
じゃあ、世界に出ればいいんですよ。
すると、日本人の「普通の漫画家レベル」なら、おそらく海外では相当勝ちやすくなるでしょう。
例えば日本食は、世界でも有名なんですよ。
2000年代ぐらいから、世界中で健康食志向になってきて、そこで和食ブームが起きました。
そして、今でも世界中のレストランが和食を作れるシェフを求めています。
特に寿司職人とか、世界中で引く手あまただって言うんですよ。
でも実際では、海外では「日本食」とか言って、出てきたのは中国人とかフィリピン人が作った、わけのわからないものが多いわけです(笑
それぐらい、日本人の職人は外に出ないんですよね。
漫画業界でも、コロンビア(中米の国)に住んでいるある人が言っていたんですが、日本の漫画は現地で大ブームらしいんですよ。
でも、全然入って来ないと。
圧倒的に、供給が追いついていない状況なんですよね。
そういう場所で出せれば、実力が弱くても勝てるんですよ。
そして、市場が小さくても、競争率が低いから、結果的に利益は上がると。
「日本では戦わない」という「可能性」
なら、私はハナから海外向けにターゲットを絞って、「日本市場では戦わない」という道を選ぶでしょう。
言葉ができないのは、問題ではありません。
工夫すれば、いくらでも道は開けます。
例えば私は、「アルフール小国物語」というFPSゲームを作りましたが、私はほぼ英語を使わずに英語版を海外でリリースできました。
それは、「ローカライズ(翻訳)専門の会社」と手を組んだからですね。
ローカライズ会社は、安価で翻訳をしてくれます。
中には、海外市場でも売ってくれるものもあります。
私の場合、インディーズゲームのローカライズと販売を専門にしている会社とパートナーシップを結んで、制作をしました。
すると、私は原文リストをその会社に送ると、翻訳版を送ってくれます。
で、その翻訳版を仕上げてその会社に完成品を送って、海外で売ってもらったわけですね。
私のFPSゲームの場合、「売り上げの中から翻訳費用を払う」という契約形態にしていたので、私は一円も使わずに海外版を作ることができました。
だったら、自分の作品が、海外の人の目に止まるんですよ。
すると、その作品がしっかりとしたレベルであれば、海外の会社から「その作品、うちでも売らせてくれないか」っていう問い合わせが来るようになります。
実際に私も、海外からそういう問い合わせがありましたからね。
私の場合、販売会社と一定期間の独占販売契約を結んでいたので、他の会社には委ねられなかったんですが。
でも、そういうところから、日本にいながらも目立って、販路を広げてゆけるわけです。
当然、インディーズゲーム業界は世界的にレベルが高いので、目立つエッジなもの(とがったもの)を作るのは当然です。
ただ、世界の漫画業界の場合、そこまでとがる必要はないようにも予想したりもします。
工夫すれば、道は開ける
別に、ローカライズ会社に任せなくてもいいでしょう。
これもFPSゲームで、ちょっとした海外の記事で、ある翻訳チームにお世話になったんですよ。
そのチームはイギリスのチームで、数人規模の小さなローカライズサービスをするグループでした。
そういう小規模チームを利用する手もあるでしょう。
そうでなくとも、漫画ならセリフ数も少ないし、絵で内容を推測できるので、海外に友人を作って、その人にチェックしてもらうこともできるでしょう。
海外のファンができれば、そのファンに任せることもできるでしょう。
実際、私は本の誤字脱字チェックをファンの方々にしていただいているわけですし。
方法はいくらでもあります。
過去は、私は台湾やらタイやらマカオの人たちと一緒に制作もしていたので分かりますが、カタコトでも何とでもなるものです。
度胸さえあれば、海外の人と手を組むのは、難しいことではありません。
FPSゲームを仕上げたり、漫画を1作品仕上げることの方が、よっぽど難しいものです(笑
出版社の編集者とやりとりする苦労と、さほど変わらない程度です。
別に、海外版を出せと言っているわけではありません。
それと同じ要領で、「より小さな市場」で、かつ「自分が好きで得意なこと」ができる分野に絞り込むわけです。
自分なりの「好きでかつ小さな、勝ちやすい市場」で勝つ、ということですね。
すると、成果が出るので、楽しくなってきます。
また、それが強みにもなります。
後は、強みを発揮して、どんどん成果を大きくしてゆけばいいだけです。
現状維持型の多くの人が、「そんなのうまくいくはずがない」、「だって、誰もやってないし」、「それで儲かるなら、誰かがとっくにやってるよ」と思うかもしれません。
一方で、境地開拓型の人は、「そういう未開の地があったのか!」、「そういう開拓もできるのか!」と、可能性を感じるでしょう。
これが、「奪い合う社会」にいる人か、「境地」に行く人かの感性の違いですね。
ビジネスでよく言う、「未開の地で、原住民は誰も靴を履いていなかった。あるビジネスマンは『ここはダメだ』と言い、あるビジネスマンは『最高だ! 靴を売りまくれる!』と言った」というのと同じです。
奪う感性か、開拓する感性かで、反応が全く違う、ということですね。
まとめ
そんな風に、私の場合、「競争に勝つ」ということは極力避けるでしょう。
そして、新たな境地に出て行くと。
ただし、それは「自分を変える」という必要があります。
試行錯誤をして、うまくいく方法を見つけ出して、自分を環境に合わせることになります。
そういうしんどさはありますが、それも「楽しいこと」ですからね。
そういう境地で、より有利なポジションを模索するでしょう。
ただし、「私は漫画家ですよ。こんなコミックスも出しているんです。すごいでしょ」という自慢はできなくなります。
小さな市場では、威張れませんからね(笑
むしろ、周囲の人からは「あの人、あんな小さな市場でやっていけるの?」とか陰で思われるでしょう。
でも、実際は「大きな市場よりも、小さくても競争率の低い市場の方が、儲かる」わけです。
これが、「競争率」のトリックなんですよね。
で、私は今は、極めて低い競争率の場所で活動しています。
「王道プロット集」とか出す人は皆無なので、競争率は1.0倍、すなわち「私だけ」ですからね(笑
多くの人は、そんな市場があることすら知らないでしょう。
そして、自慢もできないと。
ただ、私は自己啓発というより大きな市場よりも、その王道プロット集という超小さな市場の方が、はるかに高い利益を出している、ということです。
そういう風に、「場」を模索してゆくわけですね。
すると、自分に合った、いいポジションが見つかるんじゃないかと思います。
私ならこうして、「短期間で、大好きなことをして、お金を得る」を実現してゆくでしょう。
まあ、これは8割の人に通じないことです。
ほとんどの人が、「未知のこと」に震え上がって、「みんなが成功している道」に向かいますからね。
その上、リスクも取らなければならないわけで。
だからこそ、「戦わない」というのが「誰もいない道」になって、いい仲間と巡り会えて、協力して、分かち合って進めるようになるわけです。
ということで、「私が今から漫画家を目指す場合、どういう戦略をとるか」というお話をしてみました。
今日はここまで~。