今日は、好きなことをすることについて、お話ししてみましょうか。
「やりすぎるぐらいでちょうどいい」みたいなお話です(笑
久しぶりに、「こんなの作る作者は誰だ!?」と気になった作品
現在新作本を書いていて、それなりに膨大な数のプロット具体例を追加しているんですよ。
で、「ありふれたキャラと世界観の設定例」が多く必要になって、Kindleで何かないかな~とか見ていたわけです。
すると、少女漫画の「なかよし」で、「連載中作品の第1話特集号」みたいなのが無料で公開されていたので、「これはちょうどいい」みたいなノリでダウンロードしたんですよ。
というのも、少年漫画は銀河系を舞台にしたりとか、マイナーなスポーツを舞台にしたりと、奇抜だったり突飛なキャラや世界観が多くて、設定の幅が広いんですよね。
でも、少女漫画は比較的現実的な設定が多くて、ありふれた設定を参考にするにはもってこいなんですよ。
これは、女性の方がより現実的な思考を好むからかな、と思ったりもしますが。
必要なのはキャラ設定と世界観だけなので、作品数も多くて、これはもううってつけだなということで、見てみたと。
で、その「なかよし第1話特集号」を見ていたら、サスペンスありーの純愛ありーのでバリエーションも幅広くあったんですが、やっぱり「王道だな」って感じがするんですよ。
ありふれているけれども、構造はしっかりしていると。
でも、この一番最後にひっそりと、明らかに異色の作品があったんですよ。
唯一私が「これはすごい! こんな作品を作る作者は、どんな人だ!?」みたいに、思わず調べてしまうほどに。
それが、「利根川りりかの実験室」という作品ですね。
「利根川りりかの実験室」という作品
内容を簡単に説明すると、主人公として科学や理系全般が大嫌いな少女、利根川りりかが登場します。
そんな主人公が、ある日、ある青年と出会います。
その青年は、現代でなぜか復活したアルキメデスなんですよ(笑
少女漫画なので、当然アルキメデスは超イケメンです(笑
それで、主人公が抱える身近な問題を、科学の力(ちゃんとした原理があって、解説付き)で解決してゆくと。
で、科学万歳なアルキメデスは、科学嫌いな主人公に、「俺が来たからには、お前を科学好きにしてやろう」と言うわけです(笑
そして、主人公に「名だたる歴史上の科学者を呼び寄せるフラスコ」を与えると。
きっと、歴史上の科学者をどんどん呼び出して、問題解決をさせてゆくんだと予想したり。
これを少女漫画でやるわけです(笑
もうね、テーマだけでなく、中身もいろんな意味でぶっ飛んでいると(笑
「あんた、やりすぎやで!」みたいな(笑
「科学が大好き!」だからこそできること
これを見た瞬間、 米村でんじろう先生の実験パフォーマンスを思い出したんですよ。
ああいうのって、面白いですよね。
まさに手品と同じなんですが、その背後にはれっきとした理論があって、「こういう原理でこうなるんですよ」と教えてくれるというか。
でんじろう先生って、科学が大好きだと思うんですよ。
だから、大好きなことをしていたら、いつの間にかあれだけ詳しくなってしまったと。
で、この「利根川りりかの実験室」という作者も、同じタイプだと思うんですよ。
まさに、でんじろう先生と同じような人で、その作品は、科学実験パフォーマンスショーを見ているようなものです。
「きっと、これから主人公にいろんな身近な問題が起こって、アルキメデスが科学原理を用いて解決するんだろうな。主人公がそれで助けられて、少しずつ科学に興味を持っていくんだろうな~」
みたいな構造は分かるんですよ。
詳しくプロット構造を語り出すときりがないので、やめときますが(笑
でも、構造は分かっても、科学の原理とか、「身近な問題への科学的解決方法」とか、想像すらできないでしょ!(笑
「いったい、何が起きるんだ!?」みたいな。
だいたい、「科学」なんてものは、身近なものではないわけです。
「身近なもの」の対極にあるのが、「科学的法則」だとも言えるでしょう。
それを、中学生ぐらいの身近な問題に強引にでも結びつけて、科学で解決しよう、っていうんですから。
こんな発想、ぶっ飛んでますよね。
常識的な思考では、こんな発想は出ないわけです。
ストーリーを作っている人なら、「順当な発想」ではこんなものはできないと、イメージできるかなと思います。
「好き」を極めるからこそ、できること
こういう発想って、「好き」を持っている人でないと作れないんですよ。
嫌々学んだものでは、この発想とか、楽しさは作り出せないわけです。
でんじろう先生は、科学が大好きで、だからその楽しさを伝えられるわけで。
この漫画では、作画とは別に原作者がいて、調べてみると科学とか数学大好き人間のようで。
そして、この作品を見ていたら、「ああ、この作者は科学が大好きなんだな~」と感じられて、すごく嬉しく感じるものなんですよね。
そういう人だからこそ、ぶっ飛んだ発想ができるんですよ。
「好き」を強引に当てはめちゃう、みたいな(笑
で、「利根川りりか~」の作中の理屈とかも、結構強引だったり、こじつけだったり、無茶苦茶なこともあるわけです。
それどころか、相当やり過ぎ感が漂っているぐらいで(笑
それでも面白いと。
むしろ、やり過ぎるぐらいだからこそ、面白いんですよね。
他の人が好きなことをやっているのを見る場合でも、「あんた、それやりすぎっ」みたいな方が、ワクワクしますよね。
中途半端に自制していたり、周囲の顔色をうかがっている人や作品って、なんかつまらないじゃないですか。
逆に、アホほど自分をさらけだして、「俺はこれが好きなんだー!」とパフォーマンスをしている人って、好感が持てますよね。
「あ、私もあんな風に生きていいんだ」みたいな勇気が得られるというか。
まとめ
そういう「作者の生き方」というものを、作品を通して感じる、ということでしょうか。
もちろん、読み手が楽しめるように、ちゃんと見せ方とかも(多少は)工夫されているんですよ。
でも、その根源には、あふれ出んばかりの「これが大好き」というエネルギーがあると。
そんな感じで、「利根川りりかの実験室」では、久しぶりに「あんた、これが本当に好きやな!」みたいなものを感じられた作品でした。
こういうやり過ぎ感あふれるような、エネルギー重視の作品って、大好きです(笑
作者の、「科学って面白いんだよ。女の子にも、この面白さを味わって欲しいなあ」みたいな気持ちが伝わってくるというか。
この作品は絵と原作が違うので、原作という次元だけで見ると、この感覚が分かるでしょう。
そういう「あんた、やり過ぎ」というエネルギーを持てると、どんどん突き抜けることができて、ファンもできるんじゃないかと思います。
「利根川りりか~」は、第1話特集号の一番最後にありますし、突飛な作品なので、あんまり人気はないのかな、とか思ったりもしますが。
ちょっと玄人向けの作品って感じなので、小さな女の子には合いそうにないような気もしたり。
ま、大人の観点で「子どもに読ませたい漫画」というくくりでは、ダントツトップな作品だろうとは思います(笑
こういう作品、というか作者には、活躍してもらいたいものですね~。
ってことで、今日は「やりすぎるぐらいでちょうどいい」というお話をしてみました。
今日はここまで~。