「批判」ってありますよね。
結構痛くてモチベーションを落とすことも多いわけですが、でも多くの人が「批判には真摯に耳を傾けなさい」と言っているわけで。
なら、これからの時代、批判とどう付き合ってゆけばいいのかを少し説明してみようかと思います。
で、最近思うのが、クリエイターにとっても今までとは大きく変わったことがあるんですよ。
その一つが、「これからの時代は、批判を受け入れる方がリスクになる」ということです。
今まで(インターネット登場前ぐらいまで)は、「お客の言うことは全て真摯に耳を傾けなさい。そしてできるだけ改善してゆきなさい」という考え方だったんですよ。
そして、こちらの考え方の方が圧倒的によかったわけです。
なぜかというと、インターネットが登場する前は、ほぼ全てのビジネスが、工業社会の大量生産大量消費モデルで動いていたわけです。
というのも、人々は大きな企業が公開する情報にしかアクセスできなかったからですね。
主にテレビや雑誌、新聞がそれに当たっていたわけですが。
企業は本でも、服でも、家電製品でも、とにかく一つのメインとなる商品を大量に作って、大量に流通させるのが効率的だったわけです。
そういう場合、「できるだけ多くの人に適合する商品作り」が大切になってきます。
つまり、マス(大衆)に売るということなので、多くの人に合致する商品の方が、より売れますよね。
だから、一部の人の声をも受け入れて、可能な限り多くの人のアイデアを取り込む方が、ビジネスとして儲かったわけです。
ですが、インターネットの登場による情報革命で、それは変わったんですよ。
インターネットの登場によって、小さな企業でも、さらには個人でも誰でも情報を発信できるようになって、「専門に特化した商品」をリリースした方が売れるようになりました。
すると、人々は汎用的なものよりも、自分の使い方に合った、専門的な商品を選ぶようになります。
つまり、これが「マス(大衆)から個人へ売るようになった」ということですね。
こういう風にある領域に特化したものを作るようになった場合、「全ての人の意見を取り込む」のは逆にリスクになりますよね。
だって、例えば「うちは超多機能な多関節デッサン人形を作っています」という専門領域で戦っている場合、その魅力は「多機能な多関節デッサン人形」というニッチな部分であることですよね。
でも、例えばそこに「もっとシンプルなのが欲しい」と言うお客がいたとしましょうか。
それを取り込んで関節数を減らすと、元々ある魅力が一気にがた落ちして、「そんな一般的な製品なら大手の方が安心だから、そっちを買うよ」となり、誰も買わなくなるんですよ。
他にも、例えばホラー作品を作っているチームの場合、「笑いがない」とかいう批判をする人がいたとしましょう。
ホラーなのにその意見を取り入れて笑いがどんどん入れてしまったら、もう魅力激減でしょ。
こんな風に、自分の領域外の要求を受け入れてしまうのは、大きなリスクになるわけです。
現在では、どの企業も何かに特化した事業をしています。
汎用的なものは一部の超大手にしかできなくなるので、小さな企業や、ましては個人では、何かに特化しているからこそ魅力があるわけです。
そんな場合、「批判」というもののほとんどが、専門領域外の要求であるものなんですよね。
だから、現代では批判は受け入れない方が、リスクが少なくなるわけです。
ただし注意が必要なのは、「批評」と「批判」は違うということですね。
しっかりとその会社の特異性を認めた上で、そこでの専門領域内での助言を「批評」と言います。
こういう批評は耳を貸した方がよいでしょう。
それは主に、何度もリピートしてくれるお客さんか、もしくは新規でも建設的な意見を言ってくれる人から得られるものだと思います。
10年ぐらい前までは、ふらっとやってきた初めての人の意見は、とにかく重要視されていました。
それが大きく役に立ったんですよ。
しかし今の時代、最も耳を貸してはいけないのは、そんなふらっとやってきた初めての人の否定的な意見です。
これはその人の特異性や魅力を失わせるだけではなく、モチベーションまでをも奪ってしまう、要注意なものです。
なので、意見を聞くのはリピーター客に絞るとよいでしょう。
もしくは、「ふらっとやってきた人の、建設的意見」を取り込むようにしましょう。
それが、その人の特異性を認めた人たちの発言になるでしょうから。
今となっては、それ以外の意見や批判を取り込むのは、リスクが大きいということですね。
人によっては、「売れないのはもっと多くの人に売れるような形にしなきゃいけない」と思い込んでいる人がいるかもしれません。
ですがこれからの時代は「まだ全然特化していない、汎用的なものだから大手との競合に負けて売れていないんだ。もっと特化しないと」という風に、「考え方の転換」が必要になるでしょう。
そんな風に、まだまだ古い価値観を引きずって、「全ての人の意見を聞かなきゃいけない」と思い込んでいるクリエイターさんがいるので、ちょっと触れてみました。