今日は、未来のお話をしてみましょうか。
作品の単価がどんどん安くなっていく時代、というお話です。
今日の記事を10秒で分かるようにまとめると、次のようなものになります。
- これからは、一作品の単価はどんどん落ちていく
- 低価格路線はメジャーが有利になるので、個人や小規模チームでは勝ちにくい
- だから、「この人でなきゃダメ」、「この作品でなきゃダメ」という独自性を出して、高価格路線を行きましょう
……という内容です。
本屋もどんどん閉店していく時代
ちょっとした記事があったので、ご紹介。
「なんてこと…」神保町の老舗“書泉ブックマート”の閉店発表に衝撃が広がる(IROIRO)
神保町というと本屋さんで有名ですが、私は会社勤め時代に、一度だけ出張時に、歩いて通り過ぎた程度だったりします。
で、どんどん老舗の本屋も閉店していく時代ですよね。
実際に、私も最近漫画は全部Kindleで見るようになりましたからね。
去年の今頃は普通に「紙媒体がいいな」と思っていたのが、あっという間にデジタルに慣れてしまったという(笑
本で見るのは、ツタヤの漫画レンタルぐらいでしょうかね。
今までは、作品でも新陳代謝があったんですよ。
例えば本屋では、店舗のスペースが限られているじゃないですか。
だから、新作が出たら、古くて売れない作品は、どんどん返品したりしてなくしていたわけです。
一部のロングセラーだけが残って、後はどんどん入れ替わっていたんですよね。
だから、どんどん新作が出ても、「新しいものしか置いていないから、新しいものが売れていた」わけです。
でも今では、電子媒体で作品を見るようになりました。
すると、作品の新陳代謝が起きなくなるわけです。
少し前まではメディアやフォーマットの違いで新陳代謝があったんですが、今ではネットでつながるようになって、メジャーなフォーマットでは、コンバーターも出ますからね。
この「過去の作品が劣化しない」というのは、すごいインパクトをもたらすものなんですよ。
言うなれば、本屋さんでほぼ無限の本を置くスペースがあると。
そして、紙とかないので、いつまでも劣化しないと。
で、検索しさえすれば、メジャーなものでもマイナーなものでも、すぐに手に入れることができると。
すると、「本」が作られれば作られるほど、積み上がっていきますよね。
だって、「減らない」んですから。
私たちの体で言うと、新たな細胞が日々生まれるのに、死ぬ細胞がほとんどなくなるようなものです。
だったら当然のごとく、価格は下がっていきますよね。
そういう時代に入ってきている、ということです。
どうすれば、この時代を乗り越えられるのか
じゃあ、どうすればクリエイターはこの時代を乗り越えられるのか、ということです。
結論から言うと、「高級路線を走りましょう」ということですね。
例えば漫画で言うと、「ちょっと気分転換に見よう」という「タイトルを目的としないもの」と、「これを見たい」っていう「この作品だと決まっているもの」という2種類があります。
すなわち、「他の作業がメインで、ついでに見る(サブに位置する)漫画」と、「漫画を見ることをメインとした、メインに位置する漫画」の2種類があると。
前者の「サブ的な漫画」というのは、通勤中に見たりだとか、休憩時間に気分転換に見るようなものです。
これは、通勤がメインだったり、気分転換がメインになる作業なわけですね。
紙媒体の本で言うと、雑誌形態がこれに当たります。
一方で後者の「メインの漫画」というのは、「よーし、漫画を見るぞ-」と、漫画を楽しむことをメインにするものですね。
紙媒体の本で言うと、単行本がこれに当たります。
で、時代の流れで見ると、ニーズにおいては、どんどん「サブ的な漫画」に主流が移りつつあります。
今の人たちは、やりたいことがいっぱいあるので、一つのことにあんまり時間をかけられなくなってきたんですよ。
すると、「細切れ時間を有効に楽しみたい」という新たな欲求が出てきました。
そこで、Web漫画みたいな手軽に読めるものが、どーんと上がってきたわけですね。
手軽に味わいたいので、分厚い紙とか持ちたくないですよね。
だったら、スマホで読めるなら、どんどんそっちに移っていくようになるわけで。
こうして、漫画でも物語でも動画でも、細切れ時間に楽しめるものが求められるようになったと。
「細切れ時間向け」は、求められているが、利益を出しにくい
ただし、細切れ時間に楽しむものは、結構ジャンクなもので満足できるんですよ。
私たちだって、昼食とか夕食は、食事そのものをメインにするので、クオリティの高い美味しいものを食べたいですよね。
でも、昼過ぎにちょっと小腹が空いた場合って、ちょっとしたお菓子とか、ジャンクなもので十分じゃないですか。
少しぐらい健康に悪くても、安価で口当たりがよくて、ちょびっとだけ空腹感を紛らわせることができれば、それでいいと。
なので、ニーズはあっても、「細切れ向け」では利益は出しにくいんですよ。
ジャンクなものには、ほとんどお金を使いませんからね。
言うなれば、人はお金を使う場所を選ぶようになる、ということでしょうか。
自分にとって「これはいい」と思うものには、どんどんお金を使うと。
でも、ジャンクなものには、徹底的にお金は使わなくなる、ということです。
ブランドもののバッグを持つ女性が、100円ショップで雑貨を買うようなものです。
「バッグ」というメインのものにはお金を惜しみなく使うのに、「雑貨」というサブのものには、徹底的にお金を使わないようにする、ということですね。
なので、しっかりとした収益を生み出すには、「作品をメインにする」という部分を構築することが必要になります。
これは、「細切れをやめろ」というのではなくて、両立できることです。
「細切れ時間向けでお客さんを確保して、メインとなる作品で利益を上げる」ということもできます。
「雑誌でお客を確保して、単行本で利益を出す」というのと似たようなものです。
今、チャンスは細切れ時間向けの媒体に山ほどあります。
でも、そこでは利益は上げにくいと。
だから、「利益を出す高額部分」をしっかり作っておきましょう、ということです。
「細切れ時間向けだけに専念する」のはやめておいた方がいいでしょう。
これと同じ流れは、どの業界でもあるものなんですよ。
言うなれば、「低価格路線」と「高額路線」の二つと同じです。
例えば駄菓子業界で言うと、日本でも戦後しばらくして、機械技術が進んで、機械でお菓子を作れるようになりました。
すると、今まではずっと職人が駄菓子を作っていたのに、一気にコストが下がって、お菓子職人が大勢職を失った、という流れがあります。
そんなときには、価格競争から抜け出した方がいいんですよ。
というのも、機械的に作れるものほど、資本のある大手が有利になるからですね。
逆に、個人であったり、弱小チームほど、どこかで独自性を出して、こだわる人に向けたものを出して、高額で買ってくれる人を見つける方がよくなるんですよね。
細切れ時間向けでも、今はまだチャンスがありますが、次第に飽和状態になっていきます。
それまでに、しっかりと自分なりのポジションを作っておくといいでしょう。
まとめ
なので、これからどんどんと、一作品の単価は落ちていくことになります。
ジャンクなものなら、既に無料が当たり前ですからね。
そこで利益を出すならば、どこかで「作品をメインにする」という必要があるわけです。
ならば、細切れ時間向けでもメイン向けでも、どちらにしろ「他の本じゃだめなんだ、この人の本じゃなきゃ!」という「何か」が必要になるということです。
それがある人ほど、生き残って、しかも利益を出してゆけるでしょう。
今はまだ、時代の過渡期なので、低価格路線で進めても十分に利益があるでしょう。
ただ、もうしばらくすると、個人での低価格路線では立ちゆかなくなるような気がします。
きちんとした「自分軸」を持って、「これが好きなんだ!」というこだわりがあれば、ちゃんと選ばれて、利益を出し続けられるんじゃないかと思います。
他の人と同じことをしていても、これからの時代はダメだということですね。
ということで、今日は作品の単価がどんどん安くなっていく時代、というお話をしてみました。
今日はここまで~。