今日は日記というか、雑記です。
目覚めない少女の寝息を聞きながら廃墟を進むゲーム「CORNEA」のストーリーを考えてみる、ということでお話ししてみましょう。
廃墟系ゲームコンセプト「CORNEA」のストーリーを考える
おとといの日記で、すてきな世界観のコンセプトアートがありましたよね。
目覚めない少女の寝息を聞きながら廃墟を進むゲーム pic.twitter.com/tzfJ8xQajr
— あすてろid (@asteroid_ill) July 9, 2021
↑これです。
で、今日は、この世界観から、実際にストーリーを考えてみましょうか。
ゲームには、いろいろ制約がある
ゲームって、音楽とか映像、システムの関係もあって、いろいろと制約があるんですよ。
そんな「できることと、できないこと」というしがらみの中から、最適解を見つけていくことになります。
なので人生でも応用できて、「自分の個性で、できること、できないことを含めて、能力を発揮してゆく」という具体的な考え方としても参考になるかと思います。
まぁ私は一応、ゲーム制作監督として独立した人なので、多少は参考になるかなと。
なら、実際に具体的な部分を語っていきましょうか。
例えばこういうゲームの場合、3Dで実現しますよね。
すると、3Dモデルでキャラを作る場合、キャラを1体作るだけでもだいぶコストがかかってしまうので、キャラ数をあまり増やしたくないと。
なので、できる限り少人数で、できれば「主人公+背負っているキャラ」の2人だけ、ぐらいで物語が進む方が、開発費としても楽になります。
それに、キャラも「服装を変える」とかするとコストがかかるので、服装は可能な限り変更させない必要があります。
ただし、汚れとか、血のエフェクトみたいなテクスチャ変更だけでできるものは、すぐにできるので可能です。
シナリオライター側は、その辺も考慮して物語を作る必要があるわけですね。
アクション系ゲームの場合、シンプルなストーリー構成がいい
で、こういうアクションを含むゲームの場合、イベントシーンは増やしたくないので、シンプルなストーリー構造の方が好まれます。
イベントシーンを作るのって、結構なコストですからね。
それに、ゲーム中ではパズルなり戦闘なりのゲーム性を楽しみたいので、無駄にややこしい関係とか思惑は必要なくて。
すなわち、「この目的地へたどり着く」とか、「この敵を倒す」、「このアイテムを得る」みたいな、明快な目的を作って、それを階層的に組み合わればいいと。
なので、イベントシーンは「オープニング、エンディング、中盤の盛り上がり」の3つぐらいでいいかなと思います。
そのほかは、ゲーム中で短い会話として説明すればいいかなと。
イメージするなら、PlayStation用ゲーム「ICO」とか「ワンダと巨像」のようなスタイルですね。
知っている人もいるかもしれませんが、3Dマップの中で、戦闘やギミックを操作しつつ、目的地へと進んでゆく流れです。
ストーリーの大枠を作る
なら、まずはシンプルに、ストーリーの大枠を作ってみましょう。
コンセプトアートから、必要な制約を抽出します。
ここでは「廃墟の中」、「高度に発達した未来的建築物」、「目覚めない少女を背負って歩く」、「主人公は義足」、「動物の登場はOKっぽい」という制約があるので、その辺を含めるように設定を作ります。
とりあえず、最終目的を決めます。
ここでは、「目覚めない少女を、目覚めさせるために、目的地へと向かう」としましょうか。
ゲーム途中でヒントを得てもいいし、最初から目的地を決めてもいいでしょう。
なら、次のような骨組みにできるでしょう。
「廃墟となった世界で、主人公たちは目覚める。だけど、パートナー役の少女は、いつまで経っても目覚めない。
だから主人公は、少女を背負い、目覚めさせることができる場所へと向かうことになる。
そして敵を倒し、ギミックを解きつつ、目的地へとたどり着く。
最終的に少女を目覚めさせて、人類がまだわずかに生き残っていることも確認して、ハッピーエンド」
詳細な設定を作り込む
大まかな骨組みができれば、その骨組みを補強する設定を追加します。
「なぜ人類が滅亡したのか」、「なぜ主人公たちだけが生き残ったのか」、「少女はどういうメカニズムで眠っていて、どういうメカニズムで起こせるのか」みたいに、その辺を仕上げていきます。
なら、ここではこういう設定を作りましょう。
「主人公と少女は、生まれながらにして自由を奪われた、生物科学研究所の人体実験モジュールだった。だから、様々な実験や改良テストを施され、人とは少し違う生命体になった。
何百年と生きることができるし、ゲーム内で必要な特殊能力(戦う力とか、情報を得る力、素養など)も持つ。
そんなとき、別の研究室で、驚異的な生物兵器もしくはウイルスが暴走して、人類は滅亡することになった。
だけど、主人公とパートナーの少女だけは特殊な生命体になっていたので、生き残ることができて、人類滅亡から100年後ぐらいに目覚めることになる。
ただし、パートナーの少女だけは、目覚めない事情を持つ」
後は、どんどん設定を突き詰めていきます。
ゲームで戦闘性を重視するなら生物兵器にして、ギミック性を重視するならウイルスがいいでしょう。
で、「ボスを倒せば、他の生物兵器も死ぬ」とか、「この装置を発動させれば、ウイルスは滅ぶ」みたいにすればいいと。
「なぜパートナー役の少女が目覚めないのか」という部分では、主人公と少女の過去を設定します。
ここでは、「人類滅亡前の人体実験中、病気の主人公をかばって、少女は主人公を助けるために、自分から願って、負荷のかかる実験を引き受けた。だからその反動で、目覚めなくなった」としましょう。
主人公は、そんな少女の優しさを、恩に感じていると。
なら、主人公が「背負ってでも歩き、少女を助けようとする」という動機にもつながります。
実際のストーリー
なら、クライマックスの盛り上がりも含めて、以下のように仕上げられるかと思います。
(オープニング)
主人公は、人類滅亡から100年ほど経過した、研究室のベッドで目が覚める。
この研究室だけは自前の発電プラントがあり、生命維持装置が生きていたため、主人公とパートナー役の少女の2人だけは、生きながらえることができた。
しかし、少女はいつまで待っても目覚めない。(50年ぐらい待つ、とかしてもいいかも)
そんなとき、研究所の崩落なり、電力を失うなりで、主人公たちは研究所にいられなくなる。
研究所の外は、人類が滅んだ廃墟の世界。
だから主人公は、眠り続ける少女を背負い、「少女を目覚めさせ、ふたりが幸せに生きられる場所」を求めて、廃墟の中をさまようことになる。
(ゲーム中)
戦闘なり、ギミックを解決しつつ、この世界の情報を得てゆく。
なぜこのような高度な技術を持ったのか、なぜ人類が滅んだのか、なぜ主人公たちだけが生き残ったのか、その辺を少しずつヒントアイテムなどで明かしてゆく。
同時に、他の研究所があるという情報を得て、なおかつそこには少女を目覚めさせる方法(薬とか装置)があると知り、そこに向かうことになる。
唯一の仲間として、死にかけの野良犬と出会い、治療してエサを与えると元気になり、なつかれる。
主人公は犬に「わんこ」とか適当な名前をつけて、かわいがる。
すると、犬も戦闘に参加したり、ギミック解決に協力してくれるようになる。
エンディングでの解決への伏線として、主人公は旅の日記を書くことにする。
また、その日記を通して、主人公と少女の過去を、少しずつプレイヤーに説明してゆく。
生まれた時から人体実験モジュールだったこと、少女が眠り続ける原因のこと、少女の深い優しさや、主人公との信頼関係など。
(ラスボスへの前振り)
主人公はラスボスの情報も得て、ラスボスを倒せば人類への脅威となった根源が消えると分かる。
一方でラスボスは、主人公たちの存在を知り、「主人公もしくは少女を食べることで、完全体になれる」と分かる。
なので、ラスボスは主人公たちを狙ってゆく。
主人公たちは、ラスボスから逃れるようにして、生き延びてゆく。
(中盤の盛り上がりイベント)
中ボス、もしくはギミックによる脅威で、主人公は危機的状況を向かえる。
そんな中、わんこが自分の命を呈して主人公を救う。
で、わんことの別れが中盤の盛り上がり場面。(廃墟という孤独の中なので、中盤の盛り上がりには、別れが効果的)
演出例としては、致命傷を負ったわんこが、急に主人公に吠えるようになり、拒絶する。
主人公は急に嫌われるようになり、さみしくわんこと別れる。
で、主人公と別れたわんこは、血を吐き、主人公のくれた毛布にくるまるなり、主人公との幸せな記憶を回想しつつ、しっぽを振り、幸せそうに死んでゆく。
わんこは「主人公を大好きだった。主人公を哀しませたくなかったから、そうした」と分かるように演出することで、わんこの優しさを描く。
(ラスボス戦)
主人公は目的となる研究所にたどり着き、少女を目覚めさせるために、必要な装置に少女を設置でき、装置を起動できる。
しかし、ラスボスが襲来することで、最後の戦闘になる。
ちなみにラスボスが人類を滅亡させたり、街を破壊し尽くせるほど強い相手なら、主人公は何か特殊アイテムを使って大ダメージを与えて、対等に戦えるようにする。
(エンディング)
主人公はラスボスを倒すが、ラスボスの「滅びの前の、最後の一撃」を食らってしまい、致命傷を負う。
そしてもう少しで目覚める少女の横で、「起きたら一緒にこうしよう。一緒にこう楽しもう」と幸せな夢を描きつつ、目を閉じ、意識を失う。(死んだように見せる)
主人公が目を閉じ眠ったすぐ後に、少女が目覚めて、起き上がる。(ロミオとジュリエットみたいな演出)
それで、死んだ主人公の、幸せそうなほほえみを写しつつ、エンディングロールへ。
(エンディングロール後)
主人公が目を覚ますと、春の陽気に照らされた病室だと分かる。
病室の外からは、子供たちの笑い声も聞こえる。
枕元には、自分の日記と、新たな日記がある。
その日記を読むと、あれから500年経過していること、そして少女は主人公を目覚めさせるために、500年ほど主人公を背負い、歩き続けたことを知る。(主人公を救うために、主人公の100倍ぐらい苦しんだ、みたいなことが分かるといいかも)
そしてついに主人公を救える装置を見つけて、残った人類の協力を得て修復し、目覚めるのを待ち始めたこと。
ふと見ると、ベッドのすぐ下に、少女が眠っている。
そして少女が目を覚ますと、主人公の目覚めを知る。
で、「君が目を覚ますのを、待っていたんだ」、「待ったのは、私の方だよ」みたいに言って、ふたりは抱きしめ合って喜んで、ハッピーエンド。
(もし永遠に生きることへの懸念があるなら、主人公と少女の生命維持装置が残り100年ぐらいしかない、という寿命を設定してもいいかも)
まとめ
こんな風に、シンプルにストーリー構成ができると分かります。
これなら、分かりやすいし、キャラも少なく、実現しやすいかなと思います。
いやまぁ、「エンディングロール後のふたりの服装はどうすんねん」とかツッコミを入れられると、困るんですが(笑
とはいえ、「作るなら、おそらく開発費用の80~90%は、ビジュアル作りに配分されるだろうな」と予想したりもします。
まぁ、ゲームの制作費用なんて、やっぱりそうなるものですよね。
特に、今回のように廃墟的なコンセプトの場合、いろいろマップとか風景作りが大変そうだな、と思ったりもします。
でもまぁ、こういう企画を考えるのは面白いですよね。
作るのは大変ですが、妄想するのは簡単ですからね!(笑
ということで今日は、目覚めない少女の寝息を聞きながら廃墟を進むゲーム「CORNEA」のストーリーを考えてみる、ということでお話ししてみました。
今日はここまで~。