今日は作家向けのお話です。
「物語の構成力を身につける方法」ということで、お話ししてみましょう。
作品として破綻していないか、面白さのポイントを押さえてるかをチェックする方法
こういう質問をいただいたので、ご紹介。
私はキャラクターの設定や、やりとりのワンシーンを考えることは好きなのですが、キャラクターの性格を深く掘り下げられないというか、
キャラクターの葛藤や、それを乗り越えて成長するエピソードがなかなか思いつかず、完成させるのにかなり時間がかかってしまいます。作品として破綻していないか、面白さのポイントを押さえてるかをチェックする方法というものはあるのでしょうか?
こういう悩みを抱えている人って、結構いると思うんですよ。
破綻していないか、面白さのポイントを押さえているか分からない、というのは、「全体の構成がしっかりできているかどうか分からない」ってことですからね。
これは家を建てることでたとえて言うなら、「この家を建てたけど、この家が住んでも壊れない家か分からない」という状態と同じです。
そう考えると、家を建てる側とすれば、結構怖いですよね。
もちろん住む側も怖いですし(笑
そういう物語の構成力がまだ得られていない段階では、どうしたらよいのか。
で、こういうスキルレベルの対処法は山ほどあるんですが、今日は二つのアプローチをご紹介してみましょう。
一つは、構成力を実際に身につける方法。
もう一つは、構成力をあえて手放す方法(描写に集中すること)です。
構成力を身につける方法
一つ目の方法は、物語の構成力を身につけることですね。
これは実際に構成を学ぶことで、そのスキルを身につける方法です。
物語における構成(破綻していないか、面白さのポイントを押さえているか)というのは、簡単に言うと、「何を伝えたいのかを、分かりやすく伝える力」のことです。
例えば質問者さんの場合、おそらく質問者さんは女性の方だと思うんですが(違っていたらごめんなさい)、お友達と話すこともあるかと思います。
そういうとき、自分の気持ちをばーっと話すのは気持ちいいですが、途中から「あれ? 元々何の話だったっけ? 何を話したかったんだっけ?」みたいに思うことはよくあるんじゃないかと思います。
これは質問者さんだけでなく、特に女性の方なら分かるかと思います。
話をしていたら気持ちよくなって、すぐに元々の話題を忘れちゃうでしょ(笑
これがまさに、構成力なんですよ。
一つの話題に対して、筋道を立てて話せるかどうか、ということです。
「元々何の話だっけ?」というのは、筋道を立てて話せていないことになります。
ぶわーっと話していると、情景や気持ちを伝えることが気持ちよくなって、いつしか脱線しまくって、話題が移りまくって、話の筋として訳が分からなくなると。
まさに、物語でもそれと同じことをしているわけですね。
物語で「こういうワンシーンを描きたい」というのがあって、それをぶわーっと描こうとして気持ちよくなっていると、いつしか「あれ? なにを話したいんだっけ?」みたいになっていると。
双方向の会話では、「それってどういうこと?」みたいに確認できるので、別にそういうスタイルでもいいんですよ。
でも作品の場合は、作者から読み手への一方向になるので、脱線があればあるほど読み手は理解不能になるわけです。
もし脱線がある場合、「これから少し脱線しますよ」、「さて、脱線はここまでで、元のこの話題に戻しますよ」と伝えないといけないと。
これが構成であり、それを作る力が構成力です。
すなわち、構成とは「伝える技術」だということですね。
「何を話したかったのかを覚えておく」だけで、構成力は身につく
じゃあ、そういう構成力をどうすれば身につけられるのか、ということですね。
これは結構簡単で、身近なコミュニケーションで学べます。
それが、「何を話したかったのかを覚えておく」だけで大丈夫です。
構成というのは、単純に言うと「何を伝えたいのか」ということです。
「何を話したかったのか」を覚えておけば、脱線したときに「あ、話が脱線した」と気づきます。
ほら、女性の会話でも、よく「そうそう、それで思い出したんだけど~」とかいう前振りがあるでしょ(笑
これが脱線の元なんですよ。
だから、「何を話したかったのか」を覚えておくだけで、脱線したときに話を戻すなり、その話題を終えると結論を出せば、その話題をしっかりと終えて、次の話題に移れます。
最初は、メールでも会話でも電話でもSNSでも、「何について話すのか」を紙にでも書いておくといいでしょう。
すると、「話の筋」が見えてきます。
これが見えるようになったら、「どんな話にも、筋道がある」と分かってくるので、破綻していないかは見抜けるようになります。
で、これさえ頭に入っていれば、「どう伝えるか」という方法は、次第に見えてきます。
「この伝え方、うまいな!」というのが、他の作品を見ていても理解できるようになってきます。
これが、「面白さのポイント」になります。
なので、破綻していないか、面白さのポイントを押さえてるかをチェックするためには、日常的に「何を話したかったのか」を覚えておくといいでしょう。
すると、構成力が上がって、筋が通ってしっかりとした物語を作れるようになるでしょう。
構成力をあえて手放す方法(描写に集中すること)
で、ここまでが「構成力を実際に身につける方法」でした。
ここからが、二つ目のアプローチである「構成力をあえて手放す方法(描写に集中すること)」です。
構成力を学ぶことが好きであれば、どんどん学べばいいかと思います。
でも、もしそういうのが好きではない場合、構成なんか学ばなくても何とでもなります。
その一つが、描写に集中することですね。
これで、結果として構成力を上げることができます。
作品では、「物語的な作品」と「詩的な作品」があります。
で、「物語」というのは、時系列での変化を描くものです。
一方で「詩」というのは、一場面での空間や情景を描くものです。
言うなれば、「物語」を「動画」とすると、「詩」は「写真」に対応します。
「物語が苦手なら、詩を伸ばせばいい」、というアプローチ
で、時系列での物語を作るのが苦手なら、詩を作ればいいんじゃないかな、とも思います。
例えば新海誠さんという映像作家さんがいるんですが、彼は物語を作るのが超苦手なんですよ。
でも、彼は詩の力(情景を描写する力)を圧倒的に引き上げることで、爆発的に売れたわけです。
だから、彼の作品を見たら分かりますが、物語としてはそれほどレベルが高いわけではないんですが、詩としては類を見ないほど美しいと。
そしてそんな「場面」をつなぎ合わせることで、「物語っぽい長編の詩」を作っていると。
そういうアプローチもあります。
この場合、「ワンシーンを深める」という考え方をするといいでしょう。
伝えたいワンシーンを、どれだけ美しく演出できるか。
例えば「恋人との素敵な告白シーン」を描きたい場合、どうすればそれを美しく演出できるのか。
これを深めていくと、別の「友人との恨みのシーン」とか、「進路で悩むシーン」とかの重要度は低くなりますよね。
すると、作品では自然と「恋人との素敵な告白シーン」を引き立てるシーンだけが残って、洗練されていきます。
結果として無駄なシーン(無駄な話題)が取り除かれて、いい構成になる、ということですね。
ワンシーンを深める(構成を手放して、情景を描写する力を引き上げる)ことでも、結果として構成力を上げることができると。
まとめ
そんな風に、構成力というのは、「何を伝えたいのかを、分かりやすく伝える力」のことです。
で、会話でもメールでも、「何を話したかったのか」を覚えておくことで、構成力を上げることができます。
構成力を学ぶのが苦手な場合でも、構成を手放してワンシーンを深めることでも、結果としていい構成にすることができます。
「ストーリー作家のネタ帳」シリーズは、その構成をサポートするツールだと思えばいいでしょう。
構成が苦手な人は、これらの王道プロットに当てはめることで、構成を簡単に作れますよと。
分かりやすい構成というのは、「一つの作品で、一つの話題について触れていること(一本の筋があること)」です。
筋がごちゃごちゃしていると、読み手にとっては「分かりにくい」ものになりますからね。
で、ネタ帳の王道プロットは、その「一つの筋」に絞って説明している、ということです。
その物語中にある一番大きな筋のことを、「メインプロット」と呼びます。
だから、メインプロットが一番大切で、それが一番の筋になるわけですね。
そして、メインプロットは、ネタ帳で示したぐらいにシンプルにするのが理想です。
余分なものは、全てサブプロットとして実現すると。
すると、分かりやすい物語(=伝わりやすい物語)になります。
そういう構成力を身につけることで、伝えたいことをより伝えられるようになる、ということですね。
これは単純にスキルの問題なので、意識したり学べば身につけられます。
質問者さんの場合、学び好きで向上心があるので、うまくいくのは時間の問題だと思いますよ。
あんまり不安を持たずに、焦らずに、「私は大器晩成型だ。少しずつ願いを実現していくタイプなんだ」と安心して進める方が、結果として早く成果を出せるかと思います。
ということで、今日は「物語の構成力を身につける方法」ということでお話ししてみました。
今日はここまで~。