今日は、クリエイティブなお話です。
「これさえあれば大丈夫発想」をビジネスに生かそう、というお話です。
「これさえあれば大丈夫」を先に作る戦略
最近、よくこのブログで「これさえあれば大丈夫、というものを最初に作ろう」という戦略を説明していますよね。
まずは必要最小限の満足できる環境を整えて、そこから豊かさを広げよう、みたいな。
プランAが「社会の競争に勝って、お金持ちになることで自由を得て、遊んで暮らす」だとしても、なかなかこれは実現できないわけです。
そもそも私たちは社会の我慢比べに我慢できませんし、これ以上自分を変えることは苦痛ですし、だいたい競争に勝てないから悩んでいるわけで。
なら、プランB「できるだけお金をかけずに、それでも自由に満足できる環境を作って、そこから豊かさを広げていく」という戦略もあると分かります。
最初は質素でも、十分な自由と、人目を気にせずに作れる空間があれば、後は工夫次第で楽しく向上してゆけますからね。
どうすれば「これさえあれば大丈夫発想」をビジネスに生かせるのか
ここでは、このプランBを「これさえあれば大丈夫」発想と呼ぶことにしましょう。
「これさえあれば大丈夫」という土台を先に確保することで、安心して、そして前向きに楽しく未来を作っていくと。
すると、不安を最小限にして、希望を持って生きられるわけです。
で、どうせなら、そういう「これさえあれば大丈夫発想」を、ビジネスに生かしたいじゃないですか。
そういう「最低限を確保すること」が、同時にお金になれば、最高ですよね。
じゃあ、どうすればいいのか。
そこで今日は、そういう「これさえあれば大丈夫発想」をビジネスにつなげるお話をしてみましょう。
「Embrace」という保育器を開発した人の例
ここ最近、「SmartCuts」という本を読んでます。
実はこの本も、このブログの読者さんから「あやえもさんにおすすめですよ」と送っていただいたもので、実際に面白い事例がいくつも載っているんですが。
で、その中から、「Embrace(エンブレース)」という、未熟児用の保育器を開発した人の例を紹介してみましょう。
台湾系アメリカ人にジェーン・チェンさんという人がいるんですが、彼女はアメリカのコンサルティング会社で働いていたんですよ。
でも、あるときニュースで、「中国でHIVが猛烈に広がりつつある」という事実を知ります。
そして「ちょっとした運の善し悪しで、自分もあの渦中で苦しんでいたかもしれない。たまたま自分は宝くじに当たったようなものだ」と感じます。
それがきっかけで、彼女は生き方を変えるわけです。
仕事を辞めて、「自分よりも貧しい人の力になれるように生きたい」と、貧困層向けの商品デザインを考えるようになります。
そして彼女がNPO(非営利団体)の活動を通して、「途上国で早産された多くの乳幼児が、先進国のような新生児用の設備(保育器)がないために、命を落としている」という現実を知ります。
でも、その保育器は、だいたい200~400万円もする高価なものです。
それを途上国で多く購入させるなんてできませんし、そもそも途上国の農村地帯では、保育器を稼働させる電気そのものがないことだってあるわけです。
「保育器で、『これさえあれば大丈夫』という要素は何だろう?」
最初は彼女も、「どうやって保育器のコストを落とすか」を考えていたと言います。
でも、生命維持装置はどうやっても高額ですし、材料費を削減するにも限度があるわけで。
そこで彼女は、発想を変えてみたわけです。
それが、「保育器で、『これさえあれば大丈夫』という要素は何だろう?」と考えたことですね。
そもそも保育器には温度や湿度、酸素濃度を調整したり、ガラスケースで隔壁を作ることで感染症を防いだり、それらが正常に稼働しているかをモニターするセンサなどがあるわけで。
でも、本当の意味で、「早産された赤ちゃんが生き延びるために必要なものは、何だろう?」と、本質を考えたわけです。
すると、たどり着いた答えは、「暖かささえ確保できればいい」だったわけです。
ガラスケースなんていらないし、センサーも全部取っ払って、確実に温度を37度に保てる環境があればいいと。
なら、電気を使わなくても一定の温度を保つ保温素材があることを知り、それを調整して37度に保てるようにすればいいと気づきます。
そして保温器は丸洗いできるように布製して、寝袋のような形で、それに保温素材を取り付けることで、「これさえあれば大丈夫な保育器」を実現します。
200万円の効果を2500円で実現するインパクト
結果として、「Embrace」という商品ができます。
まさに乳幼児用の寝袋で、特殊な保温素材を熱湯で温めると、6時間ぐらい37度を保ちます。
その保温素材を6時間おきぐらいに交換するだけで、最低限必要な保育器ができると。
そしてその価格が、2500円程度で提供できるわけです。
普通なら200万円が、2500円ですからね。
このインパクトは大きいですよね。
そりゃーもう、必要とされて当然ですし、歓迎されて当然でしょう。
自分の環境で、「これさえあれば大丈夫発想」を当てはめてみよう
「これさえあれば大丈夫発想」を使うビジネスアイデアというのは、こういうものです。
自分が作った「これさえあれば大丈夫」を元に、自分よりも力を持たない人たちに貢献する、ということですね。
どれだけ優れた保育器を作るのかではなく、どれだけシンプルを極めた保育器を作れるのか、という発想です。
高額な専門機器を使って満たすのではなく、自分の周囲でありふれたものや、余ったものを工夫することで、最低ラインを確保することです。
こういうのは、「コストを落とす」と似たようなものなんですが、発想が違うんですよね。
「コストを落とす」だと、「保育器はこういう形」という構造そのものが残ってしまうものです。
「これさえあれば大丈夫」はそうではなくて、完全に保育器の概念を再構築するようなイメージです。
「今の形」という常識を一回全部取り払って、部品レベルに分解して、その中から絶対に外せないものだけをピックアップする、みたいな流れですね。
じゃあ実際に、私たちにおいても、自分のやりたいこととか、自分のビジネス、商品にこれを当てはめて考えてみるといいでしょう。
「コストを落とす」じゃなくて、一回全部、部品や工程レベルにまで分解してみます。
で、自分の目的や欲求を満たす上で、絶対に外せないものだけをピックアップすると。
そのためにも、「何が実現できれば、自分は喜ぶのか」という目的をしっかりと把握することが大切です。
そこでは、「保育器は最低限、保温さえできればいい」という風に、発想の切り替えが必要になるからですね。
まとめ
そんな風に考えると、「これさえあれば大丈夫発想」をビジネスに応用できるかと思います。
一度自分の望むものを分解して、その中から「これさえあれば大丈夫」という要素をピックアップすると。
高額な専門機器を思い切って手放して、ありふれたものだけで再構築するわけです。
もちろんこれはビジネスだけでなく、プランB「できるだけお金をかけずに、それでも自由に満足できる環境を作って、そこから豊かさを広げていく」という発想にも応用できます。
両者はどちらも同じ発想ですからね。
すると、「こんなもの、実はいらなかった」というものが、どんどん見つかるでしょう。
そして自分の豊かさを確保しつつ、同時に周囲を喜ばせることができるんじゃないかと思います。
ということで今日は、「これさえあれば大丈夫発想」をビジネスに生かそう、というお話をしてみました。
今日はここまで~。