今日は心理解説です。
なぜ「常識外の人」を知ると、私たちはショックを受けるのか、ということでお話ししてみましょう。
少し長くなったので、今日はその前編です。
マスクをせずに笑う「常識外の人」
こういう質問をいただいたので、ご紹介。
以前バスに乗っていたところ、マスクをしていないカップルがいました。(中略)
男はわざと大きな声でセキやクシャミをして、彼女にケラケラと笑っています。
女の方も彼にベタボレという感じで、腕を抱かれて嬉しそうにほほ笑んでいます。(中略)強いショックを受け、誇張なく本当に寝込んでしまったり、年単位で落ち込んだりするので、私は外に出るのが苦手だったりするのですが……。
ちょっとでもそういう人たちの行動原理を理解して、自分なりにかみ砕ければ、こんなに長く落ち込んだり寝込んだりすることも無いのかなと思い、質問させていただきました。
内容はというと、「常識外の人」を知って、ショックで寝込んだり、落ち込んだりしてしまった、という内容です。
質問者さんの場合、「町中でもマスクをせずに、むしろそれで周囲に嫌がらせをして喜んでいる人たち」がいて、ショックを受けたと。
ひどいことに出会うと、ショックを受ける
このブログを読んでいる方なら、実際にこれと似たような経験したことが人は、それなりにいるかもしれません。
実際に、「こんなひどい言動をする人がいるなんて、信じられない」って出来事に出会うと、ショックですよね。
それは見ず知らずの人だけでなく、親や身内、周囲などから、心ないことを言われた場合にも、同じようにショックを受けることがあるかと思います。
「こんなに尽くして頑張っているのに、全然配慮してくれなかった」とか。
「こんなに気を遣っているのに、相手は私の気も知らないで、さらに私を傷つけるようなひどいことを言った」みたいな。
そういう場合でも同様に、私たちはショックを受けて、眠れなくなったりするものです。
「ショックを受けて、落ち込む」メカニズム
じゃあなぜそんな風に「ショックを受けて、落ち込んで、眠れなくなる」という現象が起きるのか。
今日はそのメカニズムについてお話ししてみましょう。
とりあえず結論から言うと、これは次のような2つの「認識のズレ」があることで起きます。
- 「現実」に対する認識のズレ
- 「現実と理想をごっちゃにしている」という問題
なので、「現実」という外の世界を把握した上で、「なぜ私の中では、理想と現実がごっちゃになっているのか」という内面を解決できると、このショックや混乱を解決できるかと思います。
今日は前編ということで、その「現実」に対するお話です。
「気を配らない人」の戦略
まずは「現実」という、外の世界を見てみましょう。
とりあえず、「周囲に迷惑をかけて、笑っている人」というのは、現実としてよくいるものですよね。
それはまさに、社会ではそういう「周囲に気を配らずに、周囲に圧力をかけられる人」ほど「強い」と認識されるからです。
実際に、周囲に対して忍耐強く、強い要求ができる人ほど、社会的に影響力を発揮しやすくなるかと思います。
特に、「周囲が気を配るばかりで、主張をしない人たちばかり」という社会では、「気を配らないタイプ」は周囲に大いに圧力をかけることで、自分の望みを楽に実現できます。
そして日本はそういう「気を配ることを重視する社会」です。
なので、そういう「気を配らないタイプ」ほど、強く要求し続けることで、楽に願いを実現できるメリットがあります。
価値観には、同程度のデメリットがある
ただしどんな価値観でも、メリットがあれば、同程度のデメリットもあります。
つまりは、「強いメリットがあるほど、状況が変わると強いデメリットになる」ということです。
なので、そういう「気を配らない人」は、社会からつまはじきにされるリスクもあるし、状況や世の中の流れが変わると、一瞬で落ちぶれて、死んでゆくリスクが高いものです。
ある意味そういう人たちは、「刺激にニブくて奪い合えるけど、最も環境変動に弱く、簡単に死ぬ生命である」ということですね。
「抱える苦しみは少ないけど、単体ではすぐに死ぬタイプ」だということです。
実際に、そういう人たちは変化ができません。
台風が来ていても準備ができないし、災害に逃げ遅れるタイプだし、インフレが来たら一瞬で財産を失うでしょう。
だから、そういう人たちは社会の中心でしか生きられないし、「社会に守られた、絶対に安全な場所」からは出られません。
未来を考えられずに、配慮できずに、準備もできない弱い生命だから、社会の中心で生きるしかできないし、そこで奪い合って生きるしかできないわけです。
「変化できる」というメリット
一方で、私たちや質問者さんは、変化に対応できていますよね。
ウイルスが来たら手洗いをして予防をしたり、マスクをして周囲に配慮したりと。
それは、「環境変化」を適切に理解できているから、できることなんですよ。
そして、別に社会の中心でなくとも、人が少ない場所とか、環境変動が大きい場所、外国や違う文化圏でも、適応して生きやすいと言えます。
つまり、「環境変動に強くて、いろんな場所で生き延びやすいけど、刺激に鋭くて奪い合いは苦手」ということです。
性質はトレードオフでしかない
なので、そういう「悩みやすいタイプ」は、「抱える苦しみや葛藤は多いけど、単体ではなかなか死なないタイプ」です。
「悩みや葛藤が多い」=「最善な手段を検討できる」、ということですからね。
「悩みや葛藤が多い」のは、生存戦略を立てる上ではいいことなんだ、ということです。
この「強いメリットがあるほど、状況が変わると強いデメリットになる」という現実が適切に理解できれば、「性質なんて、ただのトレードオフでしかない」と分かります。
だから、「そういう戦略だ。世の中には理不尽なんてない」と分かるかと思います。
「気を配らない人」をうらやむ必要も、ねたむ必要も、批難する必要も、見下す必要もなくなります。
なぜ「現実」にショックを受けるのか
なのに、なぜか私たちは、それに対してショックを受けてしまうわけです。
そもそも「現実」というのは、私たちの基盤になるものなので、「現実は受け入れるしかないもの」ですよね。
それに本来なら、目の前の現実を受け入れる方が、現実に即した対処ができるものです。
実際に上記の「マスクをせずに、わざと咳をして笑っているカップル」も、「そういう人たちがいるのが、現実だ」と認識すればいいだけです。
じゃあ、なぜその「現実」にショックを受けてしまうのか、ということです。
そして、なぜ私たちはそういう現実を否定したくなったり、「信じられない」と反応してしまうのか、ということです。
そこで、現実とは反対に、私たちの内面側の問題が出てきます。
それが、「理想と現実がごっちゃになっている」ということですね。
これについては、また明日にでも、後編として語ってみることにしましょう。
まとめ
そんな風に、「常識外の人」に触れてショックを受けた場合、まずは「現実」を見てみるのもいいでしょう。
で、現実を現実として受け入れられると、次に説明する「現実と理想をごっちゃにしている」という内面問題が理解できるようになるかと思います。
ということで、今日は長くなったので、続き(後編)は明日にでも書こうかと思います。
今日はここまで~。