今日は昨日に引き続き、金融と心理メカニズムについてです。
「なぜバブルの時に、渦中にいる人は『自分がバブルの中にいる』と気づかないのか」、というお話です。
今日も新年スペシャルということで、趣味のお話が炸裂しています(笑
ブームやバブルで破滅する人
昨日の記事でも触れましたが、ちょっと人間の性質と原理について見てみましょう。
過去にブームとかバブルって、ありましたよね。
で、ブームには大小様々なものがあるものです。
日本経済のバブルだとか、ドットコムバブル、タピオカブーム、マリトッツォブーム、ビットコインブーム、鬼滅の刃ブーム、VTuberブーム、マスクの買い占め、トイレットペーパーの買い占め、みたいに。
その場合、ブームが大きいほどバブルになるんですが、そういう時ほど「ブームやバブルに乗って破滅してしまう人」がよく出てきます。
チューリップバブルで破滅する例
例えばその昔、オランダで「チューリップバブル」というのがあったんですよ。
これは、「チューリップの球根を買うと、お金持ちになれる」ということで、誰もがチューリップの球根を買おうとしたわけです。
その当時、チューリップが珍しく、チューリップの球根が大きく値上がりしていました。
なので、それまで球根を買っていた人が、お金持ちになっていました。
なら、「私はチューリップの球根で、お金持ちになれた!」という人が出てくるので、周囲が「私も欲しい!」と殺到します。
すると、もっとチューリップの球根が値上がりするので、さらに「お金持ちになれた!」という人が多く出てきます。
こうして、「チューリップの球根を得れば、お金持ちになれる。だって、今までがそうだったから」という理論ができてしまいます。
チューリップはオランダにとって新しい要素だったので、「チューリップはオランダだけでなく、ヨーロッパ全土を変える」と予想されたわけです。
そして、球根1個に、土地5ヘクタール(学校のグラウンド5個分)と交換申し込みがあった、とかいうほどだとか。
革命的な新しいものほど、バブルが起きやすくなる
こういうのは、革命的な新しいものほど、バブルが起きやすくなります。
というのも、「これは世界を変える」と人々は未来に可能性を見るので、「この革命で、恒久的に世界が変わる」と、人は価値観が揺さぶられてしまうからです。
例えばチューリップバブルでは、それまでヨーロッパではチューリップみたいな花はなかったので、「これがヨーロッパの風景を変える」と予想されていました。
ドットコムバブルも、当時はインターネット黎明期だったので、「インターネットは世界を変える」と予想されていました。
ビットコインや暗号資産も、今はデジタル通貨黎明期なので、「ビットコインは世界を変える」と予想されているのと同じです。
日本のバブルも、当時は高度経済成長期の末期だったので、「日本は世界を変える」と誰もが思っていた時期です。
そういう風に、人々が「革命だ。価値が飛躍的に高まる」と希望を感じてしまうことで、価値の絶対感覚がなくなりやすくなるわけです。
こうして、人々は「未来は変わる」と、熱狂してしまいます。
そして「それらを買って所有し続ければ、お金持ちになれる」と思って、多くの人が欲に駆られて、信じられないほどの高額で買ってしまうと。
バブルの中にいる人は、異常な価格に気づけない
ただ、冷静に考えると、チューリップの球根がそれほどの価値を持つわけではありませんよね。
ものには「適正価格」というものがあって、明らかに高すぎるものは「これは異常な値段だ」と分かるものです。
これは、ブームに乗れない人ほど、「異常だ。これはバブルだ。かならず崩壊する」と分かるんですよ。
だって、チューリップの球根とか、1つの会社、1つの土地に、明らかに異常な額がついているんですから。
なのに、バブルの中にいる人は、それに気づけないわけです。
前置きが長くなりましたが、ここからが今日の本題です。
なぜ、「なぜバブルの時に、渦中にいる人は『自分がバブルの中にいる』と気づかないのか」、ということです。
昨日の記事でもその原理について少し説明しましたが、今日はそれをもっと詳しく掘り下げてみましょう。
アキレスと亀のパラドックス
これは、人々が「今までがこうだったんだから、これからもこうだ」という絶妙な論理にだまされてしまうのが原因で起こります。
だから、この論理矛盾に気づきにくくて、だまされてしまうわけです。
なぜこの論理に多くの人がだまされるのかというと、実はこれは、「アキレスと亀のパラドックス」と同じ論理だからです。
「足の速い走者アキレスが、足の遅い亀の後ろから走ってきている。
アキレスは亀に近づくまでに、亀は少しだけ進む。
そしてアキレスがさらに亀に近づくまでに、亀はもう少しだけ先に進む。
両者はこれを繰り返す。だから、アキレスは永遠に亀に追いつけない」
パラドックスに含まれる矛盾
これは言い換えると、「今までアキレスは亀に追いつけなかった。だからこれからもアキレスは亀に追いつけない」という論理です。
「今までチューリップの球根の値段が上がっているんだ。だからこれからも、値段は上がり続ける」
バブルの中にいる人と、まったく同じ論理でしょ。
この矛盾を説明できる人が少ないから、多くの人がこの罠にはまってしまうわけです。
詳しい解説は、以前にこの記事(アキレスと亀のパラドックスを、分かりやすく説明してみる)で触れたので、そちらを見てください(笑
簡単に言うと、「アキレスと亀の間の距離」という狭い空間だけで考えると、アキレスは永遠に亀を抜けません。
だけど、「1キロの直線上の中に、アキレスと亀がいる」という風に、広い空間で見ると、「簡単に抜ける」と分かります。
この定義、すなわち「視野」の問題です。
「今までもこうだったから」の罠
どの時期にも、「バブルだ、気をつけろ」と警告を発する人はいるんですよ。
だって、冷静に全体から見たら、明らかに異常な値段がついているんですから。
なのに、バブルの中にいる人で、自分がバブルの中にいると気づかない人は、ほぼ必ず「今までもこうだったから、これからもこうだ」という論理で反論します。
実際に、今の暗号資産会社のCEOとか、日本のMMT(現代貨幣理論、「政府財政が危機でも、中央銀行がお金をすれば大丈夫」)論者は、まさにこの論理を多用しているものです。
「革命期の序盤」にバブルが起きる
でも、それこそが「アキレスと亀のパラドックス」にはまってしまっていることになるんですよね。
その背後には、技術革新があることで、「未来はこの技術で革命が起きる。私たちは革命のさなかにいる」と、正常な価格感が混乱していることによってもたらされます。
チューリップも、日本のバブル期経済も、ドットコム会社も、ビットコインも、インパクトがあるものほど「革命期の序盤」にバブルが生まれます。
確かに、チューリップはオランダやヨーロッパの風景を変えたし、インターネットも世界を変えたし、デジタル通貨もこれから世界を変えてゆくでしょう。
MMT(現代貨幣理論)も、ひょっとするとデジタル通貨と組み合わせれば、なじむかもしれません。
でも、物事にはタイミングや流れがあるし、その段階でその値段がつくのは異常である、ということです。
「1キロの直線上」という広い視野で見れば距離感が分かるのに、「アキレスと亀の間」だけでしか見ないから、論理で現実が見えなくなってしまうと。
今はバブルが大きい時期
そして、今、いろんなところでバブルが起きているように思います。
国債はバブルだし、株式も多くがバブルだし、不動産も多くの国でバブルになっていて。
多くの人が、「チューリップの1株に、学校のグラウンド5個分の土地の価値がある」と思い込んでいます。
いろんな変化による価値観の変動とか、「今までもそうだったから」という論理、そして恐怖と欲望に駆られて、絶対的な感覚がおかしくなっているわけですね。
で、私はそれを変えようとはしません。
だって、それは昨日の記事で触れたように、社会で生きる人ほど「ブームには乗らざるを得ない」という性質があるので、避けられないことだからですね。
そもそも「ブームに乗る人:乗れない人」の比率は、8:2ぐらいです。
だから、どんなに大声を出して「バブルだ!」と言っても、多数派にいることに安心する「バブルの渦中にいる人」が、聞く耳を持つことはありません。
社会がクラッシュしても、自分の利益にできる
でも、それを外から冷静に見られると、逆にそれをチャンスにできると分かります。
社会がクラッシュしても、私たち「準備をしていた個人」はそれを利益にできる、ということですね。
「高い時期に売っておいて、暴落したら買い支えてあげる」とか、「今安くて危機に瀕している、価値のあるものを買って買い支えておけばいい」と分かると、それだけ利益になります。
社会が熱狂しているほど、私たちはそれを大きな利益にできるわけです。
そしてそういう利益を作ることが、社会のためになるんですよね。
なぜ社会の利益になるのかというのは、また後日に改めて説明してみましょう。
まとめ
そんな風に、「今までもこうだったから、これからもこうだ」という論理展開に出会った場合、「アキレスと亀のパラドックス」を思い出すといいでしょう。
すると、視野を広められて、冷静な判断ができるかと思います。
私自身は、今の世界的バブルも、日本の経済も、近いうち(5年以内ぐらい、早ければ3年以内)に一度大きくクラッシュすると予想しています。
そして、そのクラッシュから回避することは、もはや不可能だろうと思っています。
「日本のバブル期の頃は、今と比べてこんなに感覚が狂っていた」と言われるぐらい、クラッシュ後は「2022年の最初頃は、これぐらい感覚が狂っていた」と言われるかと思います。
で、その「今までもこうだったから、これからもこうだ」という前提が覆された瞬間、それを信じていた社会ほど、大きなクラッシュと混乱を生みます。
まぁ当然で、人は信じていたものがくつがえると、何を信じたらいいのか分からなくなりますからね。
歴史をひもとくと、「あいつが悪い」となすりつけて争いや戦争を引き起こしたり、混乱して買い占めや投げ売りを起こしたりするんですが。
ただ、繰り返しますが、社会がクラッシュしても、私たちはそれを大きな利益にできます。
そしてそこで利益を作ることが、クラッシュの悲惨さを減らすことにもなります。
なので、買い占めに対しては必需品は多めに準備しておいて、投げ売りに対しては買い支えられるだけの余裕を作っておくと。
そういう準備をしておくのも、いいかなと思ったりもします。
「いつ頃クラッシュが起きそうか」というのは、また後日に説明してみようかと思います。
ということで今日は、「なぜバブルの時に、渦中にいる人は『自分がバブルの中にいる』と気づかないのか」というお話でした。
今日はここまで~。