今日は、時代の流れについてお話ししてみましょうか。
クリエイターにとっての、未来につながる考え方です。
今回は10年とか20年というスパンでの未来の話なので、長い視線での話になります。
音楽業界を見れば、クリエイティブな業界の未来が見える
エイベックスとサイバーエージェントが定額制音楽配信サービス「AWA」を開始(Biglobeニュース)
だんだんこういうのが出てきましたよね。
Amazonでも、日本ではどうかは知りませんが、音楽定額制サービスが始まりましたし。
「作品」に対する流れというのは、次第にこうなってゆくように思われます。
これは、音楽業界が一番進んでいるんですよ。
だから、音楽業界を見れば、作家・出版業界だとか、漫画業界、ゲーム業界の近い未来も見えてきます。
音楽は、昔は1曲1曲を売る形でしたよね。
「シングルCD」とかあって、昔はCD1枚に1000円とかお金を払っていたわけです。
ですが、シンセサイザーの普及や技術革新もあって、素人でも高品質な音楽が作れるようになりました。
するとアルバムしか売れなくなり、ネットで曲が購入できるようになると、CDというパッケージすらほとんど消えてしまいました。
今では、音楽は超有名どころしか買いませんよね。
例えばニコニコ動画にでも行けば、無料でメジャーで、しかもそれなりに高品質な音楽があふれているわけです。
初音ミクの歌にしろ、それを「歌ってみた」にしろ、「演奏してみた」にしろ、どんどんバージョンアップして、無料のものがハイクオリティになっているわけです。
昔はなぜ音楽CDを買っていたのかというと、その背後には「カラオケで歌う」という事情があったんですよ。
後は、「みんなと会話する」みたいな、コミュニティ的な目的もあったと。
ですが、初音ミクにしろ「歌ってみた」にしろ、どんどんカラオケ配信もされてゆきますし、コミュニティができているので、その音楽についての会話もできるんですよ。
だったら、わざわざお金を出して曲を買う必要なんか、なくなりますよね。
音楽業界と同じことが、他の業界でも起こってくる
これと同じことが、作家や出版業界、漫画業界、ゲーム業界でも、これから次第に起ってきます。
1作品あたりの単価が急激に落ちてきて、特別なものでない限り、わざわざお金を出して買うまでもなくなってゆくでしょう。
小説だって、オンライン小説なら山ほどあるわけです。
ゲームでも、良質なフリーゲームは山ほどあるわけで。
そして、本やゲームの「パッケージ」という概念すら、だんだんと消えていくでしょう。
漫画も、現在ではプロの描く漫画の最新話が、週刊もしくは月刊でWeb漫画として掲載されますよね。
これは、週刊誌や月刊誌では、ジャンプやマガジンのようなメジャー雑誌でも、雑誌単体では利益が出せない状態なんですよ。
コミックスで利益を出している状態で。
なら、雑誌が儲からないなら、「紙面の雑誌」を出さなくて、Web漫画としてコストカットをして、コミックスで売る……という流れも当然出てくるわけです。
それが、今の漫画業界に起きている変化ですね。
だから、紙面の漫画家がどーんと減って、Web漫画家がどかーんと増えたわけです。
すると、音楽にしろ小説にしろゲームにしろ、1作品当たりの単価がどんどん下がっていって、「1作品単体」では売れなくなってゆくわけです。
だったら、次は「バンドル」という売り方になってきます。
これは、「多くの作品を一つにまとめて、まとめたものを安価で売る。売れた分を、クリエイターに分配する」という方式になります。
これが、冒頭で説明した「音楽定額制サービス」ですね。
PCのインディーズゲーム業界では、海外では実は既にこれが主流になりつつあります。
「バンドルパッケージ」とかよく言うでしょ。
出版業界でも、海外では既にKindle Unlimitedみたいな定額読み放題サービスが始まりましたよね。
漫画は今のところ少ないですが、これも少しずつそういうバンドル形式が増えてゆくことでしょう。
次第にそういう流れになることは、避けられないでしょう。
例えば昔は、内職と言えば「造花を作る」っていう、そういう有名な内職があったんですよ。
もしくは、「ペンを組み立てる」みたいな。
でも、自動で作れるようになって、コストが低くなった今では、そんな職はありませんよね。
同じように、音楽や小説、漫画やゲームの多くが自動で作れるようになってゆくにつれて、そういう「専門職」はなくなってゆく、ということです。
今から五十年後、「作曲家」なんて仕事を専業でしている人は、ほとんどいないでしょう。
「小説家」、「漫画家」、「ゲームクリエイター」なんて職業も、ほとんどなくなっているでしょう。
それは、現代の人が「造花を作る? そんな仕事がかつてあったの!?」と驚くのと同じように、「作曲家? 小説家? そんな仕事がかつてあったの!?」と言われるようになると。
「作品ではなくて、作品を通して、別のものを売る」という発想
じゃあ、これからクリエイターはこれからどうすればいいのか。
それが、「作品ではなくて、作品を通して、別のものを売る」という考え方ですね。
作品単体では売れないから、「作品を、別の目的の手段とする」わけです。
だったら、これからどういう業界が売れていくのか、それを知っておくことが大切になりますよね。
大きな流れとしては、産業革命後に工業製品が売れるようになって、次に家電が売れるようになって、その次にPCが売れるようになって、今では通信機器を含んだ小型PC(携帯やスマホ)が売れるようになりました。
この裏には、「食べ物を豊かにしたい」、「嫌なことをせずに済ませたい」、「コミュニケーションを楽にしたい」っていう流れの動機があります。
これは言うなれば、マズローの欲求階層説の、下の層から満たされている、ということです。
マズローの欲求階層説は、有名ですよね。
これは、「人が欲求として持つものには、階層がある」、ということです。
下から順に、生命維持や食料、安全、所属や愛情、自尊心、夢の実現、となってゆくと。
で、工業製品っていうのは、食料を作って運ぶためのものがメインだったわけです。
そして、日本では安全が既にありますよね。
まあ、「食の安全」、「水の安全」などもあるでしょうが、この辺は既に大企業が競争しているので、個人では入れないものでしょう。
なら、これからは、「所属や愛情」、「自尊心」、「夢の実現」を実現するようなものが、売れてゆくようになるでしょう。
そして、上の層になればなるほど、個人でやるにはチャンスがある、ということです。
だから、自尊心を満たしたり、相手の夢実現をバックアップするような、そんなものがどんどん売れてゆくようになってゆくと。
その手段として、作品を使いましょう、ということです。
作品単体を売るのではなくて、作品を手段にするわけですね。
すると、作っているのは作品でしょうが、「売っているもの」は「心の健康」とか、「勇気を得られる体験」だとか、「夢を叶える方法」とかになると。
例えば私がしっているある麹(こうじ)屋さんでも、彼らは米の麹(こうじ)を売ってるんじゃないんですよ。
彼らは「毎日を元気に生きられる健康の源」を売っているわけです。
だから、麹(こうじ)に限らず、自分なりの価値観に合うような、そんな健康につながるものなら店に置きますし、お客さんやファンにも紹介すると。
彼らが作っているメインの作品は麹(こうじ)なんですが、彼らは「麹屋」ではなく、「健康をサポートして、相手の夢を実現してもらう夢実現の応援屋さん」なんですよね。
それと同じで、クリエイターは、「私は作品を作る人である」という考え方から脱却していく必要があるでしょう。
作っているのは確かに作品なんですが、「与えている価値は、別次元のもの」ということですね。
クリエイターは、ただ単純に「作品を作って売る人」ではなくて、「私は心の健康を与える疑似カウンセラー」とか、「私は夢実現を応援するノウハウ屋さん」とか、「私は行動する勇気を与える励まし屋さん」とか、そういう「価値次元」での専門家になることです。
そしてそれは、「作品」という次元ではなく、「生き方」とか「作者」のあり方が重要になりますよね。
だから、これからの時代は、作品そのものよりも、作者の生き方とか、作者の価値観が重要になるかと思います。
まとめ
そんな風に、作品単体では売れなくなっていく時代なら、「作品を通して、売れるものを売る」という発想が重要になるんじゃないかと思います。
ソフトウェア業界では、ソフトシンセとか初音ミクが売れましたよね。
「初心者でも簡単に作れるような技術やノウハウ」というのは、まさに「夢実現を応援するもの」ですよね。
彼らが作っているのは、普通のソフトウェアなんですよ。
プログラマーにとっては、「ソフトウェア開発」をしていることは、初音ミクを作ろうが、フリーソフトを作ろうが、どれもやってることは同じですよね。
OSとかエディタ、ワープロソフトみたいなものを作っても、今さら誰も買わないわけです。
でも、夢を叶えるものなら、どんどんお金を出してでも欲しくなる、ということです。
同じように、小説だろうが音楽だろうが漫画だろうが、書いているものは同じでも、提供しているものが何かによって、お金になるかならないかが大きく変わってくる、ということです。
そういう風に考えていくと、クリエイターの未来が見えてくるんじゃないかと思います。
ということで、今日はクリエイターの未来についてお話ししてみました。
今日はここまで~。