今日は、成功と苦しみのお話をしてみましょうか。

「デビュー作で大ヒットすると、後が苦しい」、というお話です。

 

「ど根性ガエル」作者の娘のお話

ちょっとしたオンライン漫画のご紹介~。

もう1つの泣ける『ど根性ガエル』連載開始 知られざる家族の再生物語:『ど根性ガエルの娘』第1話(週刊アスキー)

父親が「ど根性ガエル」の作者だったという娘のお話ですね。

簡単に内容を言うと、この人の父親は漫画家で、デビュー作で「ど根性ガエル」という大ヒット作品を出してしまいます。

でも、「ど根性ガエル」が終わった後、スランプに入ってしまい、落ちぶれていく……という流れなんですが。

 

「デビュー作や活動初期で大ヒットすると、後が苦しくなる」という教訓があります。

例えば落語界では、立川談志という人がいました。

彼は落語でも若い頃から「天才」だともてはやされて、どんどん成功するんですよ。

でも、人生初期のうちにあまりにも全てがうまくいったので、「うまくいって当たり前」と感じるようになったんですよね。

で、人生の後半では、売れていたとしても人生が面白くなくなって、ずっと自殺願望を持っていたという。

本人も、「自分は早いうちから成功しすぎた」と、成功を悔やんでいるんですよ。

 

これは、ちょっとした心理メカニズムを知らないことで、これが起こるんですよ。

 

まあ、大前提は「好きなことをすること」です。

好きなことをしていれば、つまらなくなったら離れられますからね。

離れられないから、「ど根性ガエル」の作者みたいに悩んだり、苦しむわけです。

そして、「売れなければならない」、「売れているのが当たり前だ」という風になり、「持っているものを失わないように」という現状維持をし始めて、失ってゆくことに不安を得るようになると。

 

でも、好きなことをしていたら、これは回避できます。

例えば宇多田ヒカルは、売れているのにあっさりと休養宣言したり、Twitterを中断したりしてますよね。

これは、彼女が「好き」で動いているからでしょう。

すると、売れていたとしても、そこにしがみつかずに、「素人」に戻れるんですよ。

だったら、「上昇してゆく余地がいつでもある」、「売れていない状態が当たり前」という風になり、「前向きに挑戦しよう」と希望を持てるわけです。

こういう風に「好き」で動いていれば、「ど根性ガエル」の作者のように苦しむことはありません。

 

それらは「好きなことをするかどうか」で決まるわけですね。

好きでもないから、そこに固執してしまうと。

「ど根性ガエル」の作者も、最初は漫画が好きだったかもしれませんが、「作ることが義務」になると、苦しくなるものですよね。

すると、たとえ売れたとしても、こうなっちゃうわけです。

 

見ている人全てが「ファンだから見る」わけではない

で、実はデビュー作とか人生初期でブームに乗っかってしまうと、「勘違い」を起こしやすいんですよ。

それが、「見ている人が自分のファン」だと勘違いしてしまうことです。

 

実は世の中には、「こだわりがない人」と「こだわりがある人」の2種類がいます。

「こだわりがない人」のことを、同調型人間だと呼ぶことにしましょう。(これは言い換えると、外向型であったり、私が言う「社会維持型」の人と同じです)

「こだわりがある人」のことを、こだわり型人間だと呼ぶことにします。(これは内向型であったり、私が言う「境地開拓型」の人のことです)

 

で、同調型の人は、人口比で言うと80%ぐらいという、すっごい数がいるんですよ。

同調型の人は、さほどこだわりはありません。

こういう人は、「他の人が見ているから、見る」という動機で動きます

 

ほら、車とかでも、「車ならトヨタ」みたいな人がいますよね。

それは、「みんなが乗っているから、大丈夫そう」という理由で選ぶんですよ。

同調型の人は、「みんな、これを選んでいますよ」、「みんな、これがいいと言っていますよ」と言われると、それで選んでしまうような人です。

だから、映画とかでも、特にこだわって見ているわけではありません。

「みんなが見て話題にしているから」、「売れているから」、「行列ができているから」みたいなものが、メインの動機になると。

 

一方でこだわり型の人は、20%ぐらいと、少なめです。

クリエイターの人は、こだわり型がほとんどです(笑

こだわっているから、世の中にあるものでは満足できずに、わざわざ「自分で作ろう」と思うぐらいの人ですからね(笑

こういう人は、あんまり周囲に影響されません

自分の価値観で動きます。

みんなが「新作だから」、「売れているから」で飛びついていても、「私はこれが好き~」で、我が道を行くタイプです(笑

 

メジャーは「同調型人間」に売っている

実はメジャーとなるような産業やエンターテイメント分野って、「同調型人間に売る」というアプローチを取っています

彼らは巨大な広告費を使うことで、80%以上という膨大な人たちに訴求して、どどーっと行列を作らせることで利益を作っています。

でも実は、そういう同調型人間は、「売れているから買う」という程度のものなんですよね。

「その作者だから買う」のではないわけです。

すなわち、「ヒットしていて、熱狂的に見てくれていたとしても、ファンではない」という現象が起こります。

 

メジャーでいきなり売れてしまうと、これを勘違いしてしまうんですよ。

だから、「ど根性ガエル」の作者も、テレビアニメで大ヒットして、「見てくれている人たち全てが自分のファンだ」なんて盛大な勘違いをしてしまったわけです。

実は、80%もを占めるほとんどの人は、「特定の作者のファンになる」ということはありません。

彼らは宣伝や口コミで動き、「みんなが見ているから」で動いているだけです。

彼らは大規模で、宣伝や口コミで動くから、どーんとブームが起きます。

なので、「ブームというのは、実力(ファンの多さ)ではない」、ということですね。

 

ある作家さんが言っていたことで、私は「確かに」と思った言葉があるんですよ。

それは、こういうものです。

「ずっと5千部ぐらいを売っていた作家が、あるとき10万部のヒット作を出した。その次の作品は、1万部ほど売れることを目標にしなさい」

まさにこれなんですよね。

 

10万部を売ったからと言って、全てがファンになっているわけではないんですよ。

むしろ、そこで新たに買った「9万5千人」もの人は、実は日和見な「同調型人間」であることがほとんどなわけです。

「みんなが買っているから買った」という、一時的な突風上昇サイクルに入っただけなんですよね。

でも、中にはこだわり型人間が手にした人もいるので、「1万部を目指しなさい」となるわけです。

 

で、「同調型人間」へ売るのは、大手広告会社が全て独占しています。

これは広告費がものを言う世界なので、私たちのような弱者が入れるようなところではありません。

逆に、私たちのような弱者は、「こだわり型人間」に売ることですね。

彼らはちゃんとこだわって「自分に合ったもの」を選ぶので、確実にファンになります。

そして、ファンになった人は、しっかりと継続的に買ってくれるものです。

 

ほら、レストランでも、「ブームの後に閑古鳥が鳴いて、閉店する」っていうのがよくあるじゃないですか。

これは、ブームで「同調型人間」が行列を為すことになります。

でも、「こだわり型人間」である固定ファンは、その時に「入れなくなった、座れなくなった、落ち着けなくなった」となって、店から離れていきます。

そしてブームが終わると、同調型人間は来なくなるので、結果として誰も来なくなった……となってしまうわけですね。

 

まとめ

このメカニズムを知らなければ、メジャーの力を借りてどーんとヒット作が出た後で、勘違いを起こして、苦しむことになりがちです。

特にデビュー作とか、制作初期の段階では、そういうことなんか知る余地もありませんからね。

なので、早い段階で成功しすぎると、後々が苦しくなると。

 

これは早い段階だけでなく、ブームに入った人は、よくよく気をつけないといけないことなんですよね。

だから、あえてブームを作らずに、「同調型人間」によるブームをあえて排除するレストランとかもあるわけです。

京都の高級料亭によくある「一見さんお断り」システムも、高級サロンなどの会員制システムも、これを未然に防ぐシステムです。

だから、高い満足度を長く続けられるんだと。

まぁ私なんかが「一見さんお断り」とか聞くと、行くわけでもないのに拒絶された気がして、「頼まれても入らんわ!」とか言いたくなったりもするんですが(笑

 

まあそれはさておき、おそらく、「ど根性ガエル」の娘さんの方も、まだこれには気づいていないように思えます。

「連載終了後、父はスランプに陥る」とか書いてますからね。

それはスランプではなくて、「同調型人間に売っていた」というだけなんですよ。

そして、同調型人間が話題にしなくなった、ただそれだけです。

 

だから、この娘さんの方も、今後どーんと売れると、父親と同じような間違いを犯してしまうかもしれません。

ただ、「今は同調型人間が買ってくれていてヒットしているだけだ。ファンではなくて、今後も継続的に買ってくれるわけではない」と思うと、事前にこれは予防できます

すると、「買ってもらわなきゃ」と迎合することもなく、「売れなきゃダメだ」と苦しむこともなく、地道にファンを作り、ファンを裏切ることもなく、思う存分、自分の好きなことを追いかけてゆけるんじゃないかと思います。

 

ということで、今日は「デビュー作で大ヒットすると、後が苦しい」というお話をしてみました。

今日はここまで~。

この記事をシェア:
Share