今日は少し、作家向けでクリエイティブなお話です。

「世界観や設定作りが好き」を、うまくストーリーに組み込んだ例を紹介してみましょう。

 

漫画「映像研には手を出すな!」が興味深かった

興味深い作品があったので、ご紹介。

大童澄瞳「映像研には手を出すな!」(ビッグコミックBROS)

3話までを試し読みできます。

 

この作品、タイトルだけは知っていたんですが、「よくある部活系の日常漫画かな」と思って敬遠していたんですよ。

でも、ふと見てみると、これが特徴的で面白くて

 

何が面白いのかというと、「世界観や設定作りが好き」という作者の個性を、うまく物語に組み込んでいるんですよね。

そしてこれは、「世界観や設定作りが好き」という人向けの、一つの物語の作り方になるように思います。

 

「物語を作るのが好き」な人の3タイプ

「物語が好き」という人には、より細かく区分けすると、次のような3タイプの人がいるように思います。

  • ストーリータイプ:ストーリー展開や、キャラの変化や成長を作るのが好き
  • 詩人タイプ:1つの場面やシーンを描くのが好き
  • 設定タイプ:キャラ設定を作るのが好き

 

ストーリータイプの特徴

まずは、「ストーリー展開や、キャラの変化や成長を作るのが好き」というタイプがいます。

これを、「ストーリータイプ」と名付けることにしましょう。

こういうタイプは、頭の中で、最初に「キャラや場が、こういう悩みや苦しみを抱えた。それをなんとかして解決させてあげたい」とイメージしているように思います。

最初に「苦しみや傷、矛盾やすれ違い」みたいな問題が頭にあって、それをなんとかして解決させたい、という「癒やし指向、解決指向」とも言えるでしょう。

 

だから、こういうタイプは、ストーリー展開や変化を作るのが得意なので、最初から小説とかシナリオを書くタイプです

というのも、書きたいのはキャラや場の「救済」とか「解決」ですからね。

 

ただし、「論理的にうまくつながらない」とか、「場面がつながらない」、「変化するきっかけとなる、いい出来事が思い浮かばない」という問題を抱えやすいものです。

これも、「こういう問題を抱えているけど、こう変化させたい」と、場面を先に思いつくので、つなげるのに難儀してしまうと。

 

詩人タイプの特徴

一方で、「1つの場面やシーンを描くのが好き」というタイプもいます。

これを、「詩人タイプ」と呼ぶことにしましょう。

これは、詩人や歌詞がまさにそうですね。

例えば新海誠氏のように、1つの「失恋した状況」を描かせれば、延々とその情景や心情を語り続けられると。

 

こういうタイプは、最初に「1つの情景」があって、その情景にどっぷりつかっていたい、という人です。

先のストーリータイプが「登場人物たちを救いたい」という動機で動いているとすると、この詩人タイプは「登場人物たちに共感したい」という動機になるでしょう。

ストーリーの作者は、ストーリータイプの場合は「神の目線」で「出来事を配置し、物語を作る」感覚ですが、詩人タイプは「寄り添う仲間」として「場面に寄り添う」感覚です。

 

なので、こういうタイプは「ストーリーにできない」、「展開しにくい」、「長く描けない。短編やショートショートしか描けない」といった問題を抱えやすいでしょう。

これも、1つの場面しか思い描けないので、解決や他の場面には興味がないからですね。

 

設定タイプの特徴

で、最後が「キャラ設定を作るのが好き」という設定タイプです。

これは、文字通りキャラや世界観の設定作りが好きな人です。

キャラだと、「このキャラは、こういう性格。こういうアイテムを持っている。こういうのが口癖」とか。

世界観だと、「こういう世界。こういう建物があって、人々はここでこうする」みたいに、つい作り込んでしまいます。

 

こういうタイプは、「状況に応じた、合理性を作りたい」という欲求が強いように思います。

例えば「砂漠にいる」という状況を思い浮かべた場合、「昼間は暑いけど、夜は冷える」とか、「水が少ない」とかいう性質があるでしょう。

他の例だと、「近未来のガジェットがたくさんある、廃墟の都市」という状況の場合、「科学ガジェットや廃棄品はたくさんある」とか、「廃墟なので、人が少ない」とかいう性質があるかもしれません。

 

なら、装備はどういう形が合理的か、何のスキルが必要か、持ち物は何を選ぶか、食べ物はどう得るか、どう生きるか、いろいろ調整する必要があります。

その「合理的な生き延び方」を考えるのが好き、というイメージです。

ある意味、「新境地に出た時に、どう合理的に解決するのか、考えるのが好き」というタイプでしょう。

 

こういう設定タイプの人は、「ストーリーにしにくいし、そもそもストーリーを作れない」という問題を抱えやすいでしょう。

 

「様々な設定を見せること」を、一つの物語にする

で、そういう「設定を作るのが好き」という設定タイプの場合に、上記の「映像研には手を出すな!」の作品は、作り方として大きな参考になるかと思います。

というのも、「様々な設定や想像を読み手に見せること」を、うまく一つの物語にしているからですね。

 

普通なら、「いろんな設定を作るのが好き」という場合、「それだけ物語を作らなきゃいけない」でしょ。

ただ問題なのは、設定好きの人には、それだけ物語を作れる能力はないわけです(笑

そんなとき、こういう「1つの物語の中で、別々の設定を紹介してゆけばいい」というパターンを使えば、1つの物語で多彩な設定を紹介できます

 

実際に上記作品では、「こういう状況なら、こういう設定がいい」という設定を、各話で1つずつ示してゆきます。

その場合、大枠として「映像研究部」という、「いい映像を作ろうよ。そのために設定を作ろう」という状況を設定します。

そのために、各話で「何か短編映像を作るために、成果を出さなきゃ」と追い詰められて、何か特殊な世界観のヒントを得ます。

そこから、「こういう世界観なら、こういう設定がいいよね」とイメージを示して解決、というテンプレ(物語の展開パターン)にしていると。

 

まとめ

なので、設定作りが好きな人は、そういう発想もいいかと思います。

すると、「思いついた設定の数ほど、物語を作らなきゃ」とする必要はなくなります。

1つの物語、1つのテンプレを用いて、山ほど設定を紹介できると。

 

こういう「余計なことを省いて、1つの枠組みで好きなことを詰め込む」というのは、大きな工夫だなと思ったりもします。

こういう発想ができると、「これが好きだけど、こういう余分なことをしなきゃいけない」という苦しみから解放されて、好きな部分に集中しやすくなるかと思います。

 

ということで今日は、「世界観や設定作りが好き」を、うまくストーリーに組み込んだ例を紹介してみました。

今日はここまで~。

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