今日は、作家向けというか、文章テクニックのお話です。
「つらつら書いて、結論を先に言う」だけでも、ロジックの楽しさを作れる、というお話です。
ちなみにこれは、「シンプルなミステリーの作り方」としても応用できるかと思います。
私が使っている説明技術で、簡単に使えるもの
とあるところで、YouTubeで「歌ってみた」をやってる人が自分のコツを公開しているのを見たんですよ。
で、「私も何か出してみるかな」ということで、私が普段使っている説明技術で、簡単に使えそうなものを出してみようかと思います。
そしてそのひとつのコツが、「つらつら書いて、結論を先に言う」ということです。
このコツを使うと、ミステリー的な楽しさをより楽に作れるかと思います。
「ロジックを楽しむ」という楽しみ方
このブログを好きで読んでいる方からすると、このブログではきっと、何か「読んでいて面白い部分」があると思うんですよ。
で、その「面白い部分」のひとつに、「ロジックが面白いから」みたいなことがあるんじゃないかと思います。
このブログでは、「こういう原理で動いているんですよ」と、よく説明していますよね。
そういう原理を知ると、「そっか、こういうメカニズムで動いていたんだ」とか分かって、目からウロコで面白いんじゃないかなと。
私自身、そういう原理に気づいたときに得られる「目からウロコ体験」が好きですからね。
文章には、そういう「ロジックを楽しむ」という楽しみ方もあるかと思います。
普通の場合だと、例えば物語みたいに「次々と展開してゆくのが面白い」とか、「情景を楽しむのが面白い」みたいな楽しみ方があるでしょう。
でも、そういう「ロジックを楽しむ」というアプローチもある、ということです。
言うなればこれは、ミステリーの謎解き部分を楽しむのと同じです。
ミステリーの謎解き部分では、「犯人は○○さん、あなただ!」と探偵が言って、今まで経験した謎のトリックを説明していきますよね。
そういう「今まで気づいていなかった別々のものが、一本の糸でつながっていく」みたいな楽しみがあると。
「ロジックを楽しむ」場合、結論を先に言う方がいい
この「ロジックを楽しんでもらう」という場合、結論を先に言う方がいいんですよ。
というのも、「犯人は○○さん、あなただ!」と結論を先に言うことで、読む側は「どうやって今までの情報から、そこに結びついていくんだろう?」と、ロジックを楽しむ姿勢にできます。
そして、「これこれこういう原理だから」とか、「これが起きて、次にこれが起きたから、こうなった」とか、原理や時系列の出来事を示します。
すると、読み手は原理や出来事の順番を知ることで、「そういうメカニズムだったのか」と理解します。
で、結論にたどり着くと「おお、見事にたどり着いた」と安心して、知的な好奇心を満たせるわけです。
普通は、物語でもミステリーでも「結論や犯人を先に言うと、つまらなくなる」って感じるでしょ。
でも実のところ、その辺は関係ないんですよ。
より正確に言うと、その「結論を先に言うと、つまらなくなる」というのは、ミステリー(謎の解明部分)ではなく、サスペンス(先の展開が読めなくて、はらはらする部分)の領域です。
結論から言っていい
すなわち、「ネタバレしちゃダメ」というのは、「ロジックを楽しむ面白さ」ではなくて、「展開を楽しむ面白さ」だと分かります。
ロジックを楽しむ場合、むしろ「ネタバレしなきゃダメ」になるわけですね。
でないと、「結論に収束していく楽しみ」を味わえなくなるんですから。
だから、結論から言っていいわけです。
実際に、探偵は「犯人は○○さん、あなただ!」と結論を先に言って、読み手はそこからわくわくするんですから。
それまでの内容は、いわば「ヒントの提供」でしかありません。
実際に構成を見てみよう
例えばこのブログでも、いくつかの部分に分かれていると分かります。
- 「私はこういう経験をしたんですよ。こういうことって、ありますよね」という導入部分:ヒントの提供
- 「こういう場合、こうするといいですよ」という、結論の提案:結論の提示
- その理由と原理はこうです:原理の説明
- 「だから結論は、こういう場合、こうするといいですよ」というまとめ:結論の再提示
これが、まさに「犯人は○○さん、あなただ!」という、謎の解明部分と同じ流れです。
一般的なミステリー作品では、この導入部分(ヒントの提供部分)をサスペンス風に長く説明して、そして最後に謎解きをしているだけです。
なので、ミステリー作品でも、導入である「ヒントの提供部分」を短くまとめると、このブログみたいな説明になるでしょう。
「つらつら書いて、結論を先に言う」でいい
じゃあ、どうすればこういう「1つの結論に収束していく面白さ」を作れるのか。
その簡単なコツが、「つらつら書いて、結論を先に言う」です。
とりあえず、最近自分の身の回りで起きたことから、つらつらと思うことを書いてみるといいでしょう。
その場合、ある程度「自分で反対意見を出しつつ、考えを進めていく」ということをします。
すると、演繹的な(えんえきてき:勝手に展開してゆく形の)お話になります。
「こういうことがあった」、「私はこう考えた」、「でもこういう反対事例もあるよね」、「ならこうとも考えられる」みたいに、自分が悩む過程そのものを作れます。
で、反対事例を出し切ったら、今までの内容をざっと振り返って、強引にでも教訓的な結論を出します。
もし反対事例の漏れがあることを恐れた場合、「こういう場合は、こういう結論がよさそう」という限定をかけるといいでしょう。
結論を冒頭に!
そして、最後にその結論を冒頭に持ってきます。
すると、それだけでロジックを楽しむ面白さになります。
というのも、最初に結論があることで、「なぜそういう結論になるんだろう?」と、読み手は疑問に思って、原理に興味を持ちます。
すると、その後の演繹的な(つらつらと書いた部分)が、「そういう風に考えが発展するんだ」と新鮮に感じるわけですね。
だから、最後に「以上より、こういう結論です」とまとめると、「おお、本当に、ちゃんとあの結論にたどり着いた!」と読み手は安心して満足すると。
ミステリーでも同じ要領で作れる
なので、ある意味、ミステリーも同じ要領で作れます。
まずは、つらつらと適当な話を展開して作ります。
その場合、場所や状況、事情などをクロスオーバー(重ね合わせ)をさせて、こんがらがるように見せるといいでしょう。
「Aさんは、パン屋に行ったけど、ピザだけが売り切れで腹を立てて帰った」
「Bさんは、パン屋で携帯電話を鳴らして、つい大声で通話してしまった」
「Aさんは、今度はピザ専門店に行ってピザを食べるが、『やっぱりあっちの店の方がいいな』と不満を漏らす」
「Aさんは、ピザ専門店の包装紙を、ゴミ箱に捨てた」
すると、結論は「Aさんは、ピザの売り切れで腹を立てた。Bさんを嫌ったわけではない」と言えます。
なら、最初の導入で、情報(ヒント)を提供します。
「Bさんが探偵に、『Aさんに嫌われた』と相談した」、「そのパン屋では、ピザだけが売り切れだった」、「Bさんは不平をもらしていた」、「ゴミ箱に、包装紙があった」みたいに。
で、探偵は結論として「AさんはBさんを嫌ったわけではない!」と、「犯人は○○さん、あなただ!」的に言います。
そして、原理や時系列を説明します。
最後に、「Aさんは、ピザの売り切れで腹を立てた。Bさんを嫌ったわけではない」と言って、実際に確認して無事ハッピーエンド、という流れです。
まとめ
なので、「つらつら書いて、結論を先に言う」だけでも、だいぶロジック的な面白さを作れるかなと思います。
結論を先に書くことでも、面白くできる、ということです。
少し難しく言うと、「演繹(えんえき)的に発展させたものは、結論を最初に持ってくると、その演繹的な展開そのものが面白さになる」ということです。
なので、何かを説明したい人ほど、こういう「結論を先に言う」方が、面白さを作れるかと思います。
もちろん、サスペンスのような「展開を楽しむ」場合は、この技術は使えませんけどね。
でも、説明が好きな人の場合、こういう「結論を先に示して、収束していく面白さ」を使えると、可能性が広がるかと思います。
ということで今日は、「つらつら書いて、結論を先に言う」だけでも、ロジックの楽しさを作れる、というお話でした。
今日はここまで~。