今日は、作家向けのお話です。

作者が陥る、「ご都合主義と言われる」と「ハッピーエンドにできない」のジレンマと、その解決方法についてお話ししてみましょう。

 

漫画「くまみこ」が面白かった

面白かった漫画があったので、ご紹介。

漫画「くまみこ」(第3話までの試し読みはこちら

 

内容はというと、主人公である巫女の少女「まち」は、恋人役であるヒグマの「ナツ」と、幼い頃から一緒に育ってきました。

そして二人は心から打ち解け合っている状態です。

ですが、主人公は絶対に田舎でしか生きられないような性格なのに、「都会の高校に行きたい」という「叶うべきではない夢」を持ちます。

恋人役は主人公を心から愛しているので、本当は主人公と一緒にいたいんですよ。

でも恋人役は、主人公を愛しているがゆえに、主人公の手助けをして、都会へと送り出す手伝いをしてしまう……という流れになります。

 

王道プロットで言うと、典型的な「三角関係を持つ(願いが叶う)」(「ストーリー作家のネタ帳」第3巻収録)になります。

主人公である巫女の少女と、恋人役のクマと、「都会の生活」という三角関係ですね。

コメディ漫画でも、ちゃんとした王道プロットが適用されている、いい例かと思います。

 

作者が陥る「ご都合主義と言われる」と「ハッピーエンドにできない」のジレンマ

この「くまみこ」のいいところは、第2話でちゃんと「クマと人間が結ばれる」と、特殊な設定の解決策を明示していることですね。

だから、「これはちゃんとハッピーエンドにできるな」と、安心して物語を見ることができます。

 

プロットを作り込まない作家さんがよく陥る問題として、「ご都合主義だと言われる」と「ハッピーエンドにできない」というジレンマがあります。

作家が少し特殊なキャラ設定をしたり、特殊な世界観を用いる場合、その解決策がうまく作れなってしまうわけですね。

 

よくある例が、主人公が人間で、恋人役が幽霊、みたいな設定です。

そんな二人が恋愛をしていくんですが、恋人役が幽霊なので、ラストでは完全にハッピーエンドにできないんですよ。

もし無理矢理生き返らせて結びつけようものなら、「解決方法がご都合主義」と言われることになります。

成仏して終われば「後味が悪い」になってしまい、そして幽霊のままで終わらせると「結ばれずに終わる」になって、どんな解決策にしろうまくまとめられないと。

 

他にも、例えば主人公が「異世界に飛ばされてしまった」とか、「異世界で恋人役と出会う」という場合でも、この問題は発生します。

この場合、異世界の問題を解決すると、主人公は元の世界に戻らないといけなくなります。

異世界に居続けると、ただの現実逃避物語になってしまいますからね。

 

すると、異世界の住人である恋人役とも別れなければならなくなって、ハッピーエンドにできなくなるわけです。

無理矢理恋人役を主人公の世界に連れてきても、「異世界のキャラが主人公の世界に来た」という別の物語が始まってしまい、すっきり完結できないと。

こうして、「この解決策だと、ご都合主義だと言われる。でもそうしないと、うまくハッピーエンドにできない」という作家のジレンマが発生します。

 

特殊な設定は、冒頭で解決策を提示しておかなければならない

実は、「特殊な人同士や世界同士が結ばれうる」という解決策の前振りは、冒頭でしか配置できなかったりします

もしくは第一幕のメンターの段階までで、「二人は結ばれる方法がある」と、その解決方法があることを明示しておかなければなりません

 

恋人役が幽霊の場合、「生き返る方法がある」というのを、第一幕のメンターの段階までで説明しておく必要があると。

恋人役がクマとか妖怪の場合、「クマと人間は結ばれうる」、「妖怪と人間は結ばれうる」という特殊な世界観であると、冒頭で説明しておくわけです。

もしくは、ディズニー映画「美女と野獣」のように、「野獣は元々人間だったが、魔法使いによって野獣の姿にされてしまった」という風に、「元々は結ばれうる状態だったけど、違う姿にされてしまった」と冒頭で示すと。

また、異世界に飛ぶのであれば、「異世界と主人公のいる現代世界は、融合しうる」と冒頭で示しておく必要があります。

 

そうしなければ、後々「ご都合主義と言われる」か「ハッピーエンドにできない」、「物語をすっきり終わらせられない」というジレンマで悩むことになります。

 

これは、家を建てることで言う基礎工事と同じです。

少し特殊な設定の建築物を建てる場合、ちゃんとそれに合わせた基礎を作っておかないといけないわけです。

基礎コンクリートの上に、家を建てるんですからね。

家を建てながら、基礎コンクリートの改築ができないのと同じです。

 

それと同じで、特殊な設定なのに解決策を考えずに書き始めるのは、きわめてリスクが高い、ということです。

すなわち、プロットをちゃんと作っていないから、そういうジレンマを抱えるわけですね。

 

まとめ

そういうこともあって、特殊な人や、特殊な世界を結ばせようとする場合、少なくともその解決策はあらかじめ考えておくようにしましょう。

そして、それを冒頭、もしくは第一幕メンターの段階までで説明しておくと。

すると、「ご都合主義と言われる。でもそうしないとハッピーエンドにできない」のジレンマは解決できます。

ただ単純に、設計上の問題でしかない、ということです。

 

これは冒頭で決まってしまうので、連載作品でこの設計ミスを見つけたときなんか、もう「アチャー」って感じになりますから(笑

せっかく希望に輝く連載が始まったのに、冒頭しょっぱなでバッドエンド宣告とか、嫌でしょ(笑

いや、これがまた結構見かけるんですよ。

 

だから、特殊な両者を結ばせようとする場合、解決方法はちゃんと事前に考えておくといいでしょう。

すると、自然と冒頭にそれを配置しておかないといけないことが分かって、ちゃんと構成できるようになります。

 

「くまみこ」は、冒頭でちゃんとそれをしてくれているので、安心して主人公とクマのイチャイチャモフモフを楽しめるわけですね(笑

 

ということで、今日は作者が陥る、「ご都合主義と言われる」と「ハッピーエンドにできない」のジレンマのお話をしてみました。

今日はここまで~。

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