今日は、ビジネス的なお話です。

「貴方の能力を必要とする人は、どこから来るか分からない」、というお話です。

 

「自分の作品がお金になっているイメージがわかない」、という問題

先日の記事で、「妄想して楽しんでいること」に注目すると、自分の強みが分かる、というお話をしましたよね。

そこで、こういう質問をいただいたのでご紹介。

この記事の中の「サイバーパンク絵」を描くアーティストを見て衝撃を受けております。

私もずっと日常の風景をいろいろいじって独自の世界観に加工した絵を描き、独立成功したいと思っておりました。

このアーティストはホームページに作品をアップしているだけのようですが、ファンの人が直接買いたい場合、具体的にどのように手に入れ、どうやっていくらお金を払っているのか?・・・が解りません。

絵画、等の作品がお金になる、というところのイメージがなかなか出来ず、独立に向けて参考にしたく、たいへん恐縮ですがよろしくお願い致します。

 

確かに、「自分の大好きなことを売って、お金にしたい」という方の場合、こういう思いを持つ人が多いんじゃないかと思います。

絵が大好きな場合、絵を描いてお金を得たい、小説が好きな場合、小説でお金を得たい。

でも、自分の「大好きなことをしてできたもの」が、どうすればお金になるのかイメージできないわけです。

世の中には、自分よりも上手な絵描きや作家は多くいて、わざわざ自分の絵を必要としてくれる状況、お金を払ってくれる状況が分からない、みたいな。

だから、ターゲット顧客を絞り込めないし、何を売りにすればいいのかも分からない……と感じるものです。

 

「お客が何を求めているのか」は分からなくていい

じゃあ、そこでどうすればいいのか。

この結論から言うと、「それは分からないでいい」です(笑

むしろ最初は顧客層を固定せずに、「どこの誰が自分のスキルを必要とするか分からないので、誰が来てもいいようにしておこう」と柔軟に考えておく方がいいでしょう。

 

実は、「ターゲット顧客を適切に設定して、そこに狙いを定める」というのは、大量生産大量消費時代でのみ通用する考え方です。

現代のように価値観が細分化されていて、しかもニッチな領域を目指したり、自分軸で大好きなことを商品やサービスとして提供する場合、これは当てはまらなくなります。

 

というのも、自分が好きで作り出したものを周囲に分かち合う場合、周囲はそれを何に利用するのか、いろんな状況があるんですよ。

例えば絵を提供している場合、その絵をリビングに飾るのか、トイレに飾るのか、ホームページで使うのか、ゲームで使うのか、額を手頃な台として使うのか、果ては額を誰かを殴るための武器に使うのか、用途は分からないわけです(笑

私の場合、ストーリープロットの作り方を提供していますが、そのプロットをゲームで使うのか、小説で使うのか、舞台や映像で使うのか、幼稚園の先生が絵本やお遊戯会で使うのか、母親が赤ん坊への語り聞かせで使うのか、どこかの作家教師が教材として使うのか、分からないと。

そしてその使い道を決めるのは、お客側です。

 

どこから「欲しい!」と声がかかるのか、分からない

すなわち、価値観が細分化されている時代では、どこから「欲しい!」と来るのか分からない、ということです。

だから、自分の大好きなことを周囲に提供する場合、顧客のイメージは分からなくて大丈夫です。

というか、ほぼ間違いなく、意外なところから「欲しい!」という声が上がります

 

例えば、株式会社樹研工業という会社があります。

ここは樹脂加工をする典型的な中小企業だったんですが、「100万分の1グラムの歯車」という、当時ではとんでもない小さくて精密な歯車を実現しました。

でも、それは確たる用途を考えたものではなくて、ただ単純に「うちはこういうものを作れますよ!」と、自分が持つ強みを発信しただけです。

するとそれが話題になって、NASAとか時計メーカー、自動車メーカー、精密機器会社などから、「こういうものは作れませんか?」と依頼されるようになりました。

その会社からすると、いろんな「予想もしない、意外なところ」から受注が来たわけです。

そんな流れです。

 

上記のサイバーパンクアーティストの人は、彼のfacebookページを見たところ、現在はどこかのゲーム会社と契約を結んでいるようです。

ゲーム業界や映像業界では、特に大手になるほど、企画段階で「コンセプトアート」というものを必要とします。

これは、どんな世界観にするのかを前もって視覚化しておいて、それを元に「この世界観がいいな」と検討したり、3Dなどで実際にマップやステージ開発をする時の資料にしたりするものですね。

最初から3Dで膨大な作業を作る前に、イラスト(コンセプトアート)でイメージを固めて、開発陣に発注すると。

で、彼は既にどこかの会社と契約をして、そのコンセプトアートを作っているので、現在はどこからも受注はしていない、みたいな状態でしょう。

 

でも、そんな「コンセプトアート」という業種なんて、普通の絵描きさんは知らないですよね。

全くの「業界の外」にあるものなんですから。

これはゲーム業界だけでなく、そのイラストはいろんな業界で求められる可能性があります。

ひょっとするとプラモデル業界から求められるかもしれませんし、ロボット設計業界とか、産業機器業界、観光業界とかから求められるかもしれません。

すると、ターゲット顧客を最初から固定してしまうのは、むしろチャンスを逃してしまうことだと分かります

 

圧倒的なクオリティを実現すると、道が開ける

顧客層や商品形態を明快にしようとするよりも、むしろ強みを生かして、自分なりの世界観で、圧倒的なクオリティを実現する方が重要です。

すると道が開けてきて、顧客層や商品形態が見えてくる、という流れです。

 

これはある意味、「道は、ファンから教えてもらえる」、と言えるかもしれません。

圧倒的な世界観やクオリティを実現していると、周囲は「なんか分からないけれども、すごい」と話題にします。

だったら、相手の方から反響があります。

「こういうものは作れませんか?」、「こういうのがよかったです!」、「こういうのを楽しみにしています!」、「もっと貴方の作品を味わえる、こういう媒体での発表はないのでしょうか?」

そういうフィードバックが得られます。

すると、次第に「そうか、人はこういう部分を気に入っているのか」、「こういう使い方や楽しみ方があるのか」と分かってきます。

それは「大好きなことをしてできたもの」なので、ファンからのフィードバックを得ても、自分軸が崩れることはありません。

 

また、類似作品とか、類似アーティスト、業界の存在を知ることができます。

「自分はあの人と同じスタイル」というのも、お客やファンが教えてくれたりするんですよ。

すると、商品形態とか売り方は、分かってきます。

 

まとめ

だから、ターゲットや用途が分からない場合、それは分からなくて大丈夫です。

とにかく、まずは自分の妄想しているポイントを、自分なりの手段で、世界観を確立して実現することです。

自分の得意とする土俵で戦えば、すぐにでも圧倒的なクオリティを実現できます。

 

すると、周囲は「なんかすごい」と話題にします。

で、それをどう利用できるのかは、周囲が勝手に決めてくれます。

その「使い方」や「楽しみ方」は、周囲のクリエイティビティーに任せてしまえばいい、ということですね。

 

もちろん、ターゲットや用途が想像できるのなら、ある程度は想定するといいでしょう。

でもターゲットが分からなくても大丈夫ですよ、ということです。

むしろ、意外なチャンス、意外な抜け道があると思って、いろんな可能性を想定しておく方が、うまくいくかと思います。

 

ということで、今日は「貴方の能力を必要とする人は、どこから来るか分からない」、というお話をしてみました。

今日はここまで~。

この記事をシェア:
Share