今日は、作家向けのお話です。

うまく解決できない物語の問題を、解決に導く最終手段についての説明です。

 

「ラストをうまく解決できない」というプロット上の問題

キャラ設定や状況を先に物語を作る場合、ラストでうまくまとめられないことがありますよね。

「敵が強すぎて、主人公が逆転できなくなった」とか。

「主人公に勝ち目がなくなってしまい、逆転する方法が思いつかない」とか。

「主人公には解決しきれない、大きな問題が残ってしまう」とか。

「主人公が恋人役と別れる運命にしたけど、再会する方法が思いつかない」とか。

これは特に、駆け引きをよく作り込まずに書き始めたり、ドラマティックにしたがいために難易度を高くしすぎた場合によく起きます。

 

例えば、「恋人役が不治の病にかかってしまった」みたいな設定にすると、別れが回避できなくなって、よりドラマティックな演出ができますよね。

それとか、「恋人役が幽霊」とか、「主人公が妖怪で、恋人役が人間」みたいな設定にすると、「二人は好きなのに結ばれない」みたいな葛藤を描けるものです。

他にも、敵を絶望的に強くすることで、主人公はそんな絶望的な相手と戦わなければならない……となると、絶望感が盛り上がるものです。

でも、それだとどうやって逆転すればいいのか分からなかったり、うまくハッピーエンドにしにくいんですよね。

 

そういう場合でも、うまく解決して、ハッピーエンドにする最終手段があります。

それが、「黒幕を作る」ということですね。

これは「ストーリー作家のネタ帳」シリーズでもおなじみの手法なので、「これは技法として使えるぞ」と気づいた人もいるかもしれません。

 

「黒幕を作る」ことで、難易度の高い問題でも解決できる

複雑な問題であったり、主人公には解決が困難な問題でも、黒幕を作ることで問題を解決できるようになります。

これは、「主人公v.s.敵」という構図を、「敵v.s.黒幕」と「主人公v.s.黒幕」という2つに分けることで、問題をすり替えることになります。

これで、主人公は敵と戦わなくてすんで、黒幕を倒しさえすればいいだけになります。

 

簡単に言うと、「敵には黒幕がいた」みたいにするわけですね。

そして、黒幕は敵に対して有効な対抗策を持っていたり、もしくは敵を操れる力を持っているとします。

そんな黒幕が、敵に対して「お前はもう用済みだ」とか、「お前は俺の気に入らないことをした」みたいなノリで、敵を倒します。

で、主人公がその黒幕を倒すなり、味方にすることで、全てが一件落着になる、という流れですね。

 

例えば、「恋人役が不治の病にかかってしまった」という場合、「黒幕が、点滴や処方薬に細工をすることで、人為的に不治の病を作り出していた」という設定にできるでしょう。

「恋人役が幽霊」という場合、「黒幕が、恋人役を幽霊の状態にしていた」とします。

「主人公が妖怪で、恋人役が人間」という場合、「黒幕が、主人公を過去に妖怪に変身させていた」とします。

敵が強すぎる場合、「黒幕が敵を操っていた」とか、「黒幕が敵の弱みを握って、操っていた」とします。

 

敵をすり替えることで、大きな問題を間接的に解決する

そして、第二幕後半のラストか、第三幕の最初あたりでその黒幕が登場することで、全貌が明かされるわけですね。

で、黒幕が力を発揮することで、それらの問題を解決するか、解決できる方法を提示します。

「恋人役が不治の病にかかってしまった」という場合、黒幕が持つ問題を解決してあげることで、恋人役を救います。

「恋人役が幽霊」もしくは「主人公が妖怪」という場合、黒幕を倒すなり何なりすることで、幽霊や妖怪の状態から人間の状態に戻ります。

敵が強すぎる場合、黒幕が敵を倒して、残った黒幕を主人公が倒す、ということですね。

 

すなわち、「主人公・敵(困難な問題)・黒幕」という三つの勢力があることになります。

で、「主人公は敵(困難な問題)に弱い」、「敵(困難な問題)は黒幕に弱い」、「黒幕は主人公に弱い(主人公は黒幕の弱みを握っている)」という三つどもえの形にするわけです。

こうして敵をすり替えることで、大きな問題を間接的に解決する、ということですね。

 

これは解決に困ったときに、とても使える技です。

特に駆け引きを重視するような物語を作りたい場合、この「黒幕を使う」という手法は、覚えておいて損はないかと思います。

もちろん、これを使うには前振りが必須です。

なので、冒頭もしくは第一幕メンターの段階までに、これを前振りしておきましょう。

 

(ここから蛇足):「新世紀エヴァンゲリオン」のプロットを解決してみる

ここからは蛇足で、実際に黒幕を使うことで、解決が困難になった物語を解決に導いてみましょう

ここでは庵野秀明監督の映像作品、「新世紀エヴァンゲリオン」(テレビ版)を元に説明してみます。

 

物語の内容はというと、近未来の日本を舞台にした、ヒーローものです。

主人公の碇(いかり)シンジは、普通の高校生の青年ですが、幼い頃に母親を失い、その上父親に捨てられています。

で、父親に対して「母さんを殺したのは父親だ」という恨みや、それでも「父親に認められたい」という承認欲求を持っていて、複雑な気持ちを抱えています。

そんな主人公が、ある日父親に呼び出されて、第三新東京市という物語の舞台に立ちます。

 

そこで突然、「使徒」と呼ばれる巨大な化け物が襲ってきます。

主人公は、父親から「化け物と戦うために、我々はエヴァンゲリオン(生物兵器)を開発した。そしてそのパイロットとして、お前(主人公)を呼んだ。このエヴァンゲリオンに乗って、敵と戦え」と言われます。

主人公の父親は、その化け物を退治する特殊機関のボスだったわけですね。

そして主人公は「父親に対する問題を解決したい」と思うがあまりに、覚悟を決めて、エヴァンゲリオンに乗って敵と戦ってゆく……という流れになります。

 

「新世紀エヴァンゲリオン」が抱える問題点

ご存じの方も多いかと思いますが、「新世紀エヴァンゲリオン」(テレビ版)では、ラストがごちゃごちゃになりましたよね。

その後の劇場版でもうまくまとめられずに、数年前に出た新劇場版も、後述するプロット上の大きなミスをしてしまい、まとめられなくなりました。

漫画版はしっかりとしたハッピーエンドで完結したそうですが、私は見てないので、とりあえずテレビ版で説明してみましょう。

 

あの作品は謎が謎を生み出す構造だったんですが、「黒幕」という設定をしっかりと把握できれば、ちゃんと再構成できるようになります。

じゃあ、誰を黒幕にするのか、ということで話が変わります。

ここでは、主人公の父親(碇ゲンドウ)を黒幕にしてみましょう。

というのも、主人公が冒頭で父親に対するコンプレックスを抱えているので、父親を最後の敵(クライマックスで戦う相手)にすると、盛り上がるからですね。

 

で、残りの勢力は、全部黒幕を隠すカモフラージュになります。

エヴァンゲリオンでは、化け物である使徒の他に、第三の組織である影の組織(ゼーレ)が存在します。

それによって、誰がどの組織(主人公の属する機関、使徒、影の組織)を操っているのか、支配関係を分かりにくくしています。

すなわち、それぞれの勢力が互いに敵対することで、誰が黒幕かを分かりにくくしているわけですね。

そしてこの複雑さが、「謎が謎を呼ぶ」という形で、物語に引き込む要因になっているわけです。

(少し余談になりますが、実は王道構成にたった一つ「第三の敵対組織」を加えるだけで、一気に謎のカモフラージュ性と複雑性が深まるんですよ。これも、普通の王道ロボットアニメとは違う、エヴァンゲリオンの一つの特徴点になります)

 

「父親が黒幕」として、物語を再構成する

じゃあここから実際に、父親を黒幕にして、メインプロットを再構成していきましょう。

勢力関係としては、使徒は「表面的な敵」で、影の組織は「父親(黒幕)に操られていた敵」だと設定できます。

影の組織は、部下である主人公の父親を操っていたようでいて、実は主人公の父親によっていいように操られていた……という形にできるわけです。

 

なら、大まかには次のような流れにできると分かります。

  • 第一幕: 主人公が、敵である化け物(使徒)と戦うことを決意する。
  • 第二幕前半: 敵である使徒を撃退してゆく。
  • 第二幕後半: 敵のボスに見せかけた、影の組織(ゼーレ)と戦い勝利する。だが、黒幕が父親であることが判明する。
  • 第三幕: 主人公が父親(主人公が属する組織のトップであり、全ての黒幕)と戦い、父親の野望を打ち砕き、ハッピーエンド。

 

次に、父親の動機を作っておきましょう。

こういう場合って、個人的な欲求(愛と憎しみ)を使うとバランスがよくなります。

すると、父親は「愛する妻(主人公の母親)が、『人類のため』に犠牲になった。妻を生き返らせるために、影の組織を利用して、妻を生き返らせる計画を実現しようとしている」とできます。

そして、「妻を生き返らせるには、人類のほとんどを殺してしまうような、膨大な犠牲が必要になる」とします。

ならば、父親は「それでいい。人類の多くを滅ぼして、妻を取り戻そう」と野望を持ち、それを主人公が阻止する形になります。

 

「新世紀エヴァンゲリオン」のメインプロットを再構成する

なら、メインプロットは次のように構成できると分かります。

 

  • 第一幕:
    • (日常) 欠点を持つ主人公の日常。
      • 舞台は近未来の日本。「セカンドインパクト」と呼ばれる大規模災害が起こり、人類の人口が大きく減少した架空の舞台説明。
      • 主人公の青年は、田舎に住む、ヒーローからはほど遠い弱気な高校生。幼い頃に母親を失い、父親にも捨てられた経緯を説明。「母さんを殺したのは父親で、父親が憎い」、「でも、父親に認められたい」というコンプレックスを持つ姿が描かれる。
    • (冒険への誘い) 主人公が、父親に呼び出される。そして第三新東京市という物語の舞台に立つと、突然街が巨大な化け物に襲われてしまう。
    • 主人公は父親の所属する組織に連れて行かれて、化け物と戦うために開発された生物兵器「エヴァンゲリオン」を見せられる。そして父親から、「お前をこのエヴァンゲリオンのパイロットとして呼んだ。これに乗って、化け物を倒せ」と言われる。
    • (拒絶) 臆病な主人公は、当然拒絶する。「父さんは自分を捨てた」という、父親に対する憎しみも持つため。
    • (メンター) ここで状況が整理されて示される。この街では、「使徒」と呼ばれる化け物が襲ってきていること。そして使徒を倒すために、この街や父親が属する特殊機関があること。また、父親がその特殊機関のボスであること。
    • 主人公は、父親に対して承認欲求と、恨みを持っていることの説明。「母さんを殺したのは父親だ」と思い込んでいることを示す。一方で父親は、「必要になったからお前を呼んだだけだ」と、息子に愛情を示さない。
    • 主人公はそんな父親が許せずに、「僕は操り人形じゃない」と拒絶したままでいる。
    • (第一関門) エヴァンゲリオンに搭乗することを拒絶した主人公の前に、別のパイロットが呼び出される。そのパイロットは主人公と同い年ぐらいの女の子で、重傷を負い、ろくに立ち上がれないほどの状態になる。主人公が乗らなければ、その女の子が乗らなければならない。そして、その女の子が乗れば、確実に死ぬと分かる。
    • 結果として主人公は、「父親のためじゃない、女の子のためだ」と受け入れて、エヴァンゲリオンに乗って敵と戦うことを決意する。
    • 最初は危機的状況に陥るが、主人公が持つ隠された才能が発揮されて、化け物を撃退することに成功する。こうして主人公は、自らの意思で「父親の部下として化け物と戦い、父親との確執を解決する(父親に認められる)」という目的に向かって動いてゆく。
  • 第二幕前半:
    • エヴァンゲリオンのパイロットとして、敵である化け物と戦い、撃退してゆく。主人公は最初こそ臆病な性格だったが、化け物と戦ってゆくことで、少しずつ自信と勇気を得てゆく。同時に、「みんなを守りたい」というヒーロー的な意識を持ち始める。
    • その過程で、仲間たちと出会う。最初は仲間たちとは対立するが、相手の問題を解決することで、味方にしてゆく。
    • また、敵のボス(のように見せかけた)「影の組織」があることを示してゆく。影の組織は、主人公が属する機関の上位機関になる。影の組織が化け物を操っているように見せかけることで、主人公(と読み手)は「影の組織を倒すことが、化け物の襲撃をやめさせる方法だ」と把握してゆく。
  • 第二幕後半:
    • (ターニングポイント) 主人公は父親から、「影の組織を倒す必要がある。それしか化け物の襲撃を止める方法はない」と、計画を知らされる。
    • また、影の組織は、「人類補完計画」と呼ばれる宗教的な儀式を実現しようとしていることが分かってゆく。もしそれが実現してしまえば、人類はほぼ死に絶えてしまうという、恐ろしい計画となる。そして化け物の襲撃も、その計画の一部だと分かる。父親はその計画遂行の任務を得ているが、「その計画実行を表面的には協力しているが、内心では対抗している」と主人公に見せかける。
    • そのため、影の組織からは離反を悟られないように、影の組織が持つ力を奪ってゆく。外部で開発された新型エヴァンゲリオンを破壊したり、影の組織が持つ特殊武器の槍を無効化したりと、影の組織の力を削いでゆく。
    • また、影の組織を倒すため(と見せかけた)力を得てゆく。「アダム」と呼ばれる生物を確保したり、「リリス」と呼ばれる生命体を復活させてゆく。
    • 主人公の属する機関は、自分たちの離反を悟られないように駆け引きをしつつも、自分たちを支配する影の組織と対立を深めてゆく。
    • (最後の晩餐) ついに、父親(主人公の属する機関)と、影の組織との対立が決定的となる。上位機関である影の組織から、父親が罷免されるかどうかの審判が下る日が決まり、その前日を迎える。
    • もし父親が罷免されることになれば、影の組織が行う「人類補完計画」を誰も止められなくなる。そのため、もし父親の罷免が決定すれば、主人公は化け物のボス(と見せかけた)影の組織と戦わなければならない。
    • 主人公は決戦を前にして、平穏でいられる最後の時間を仲間たちと共に過ごしてゆく。命をかけた戦いを前にして、思い残すことを全て済ませておく。
    • そして決戦当日が訪れる。主人公たちは準備をして、影の組織と戦うため体制を整える。
    • (中盤の盛り上がり) 影の組織から、父親を罷免するという決定が下される。それと同時に、主人公の属する機関と、影の組織との大規模な決戦が始まる。影の組織は化け物(使徒)だけではなく、量産型エヴァンゲリオンをも持ち出して、主人公たちに対抗する。
    • いくつかの逆転劇を経て、最後に主人公の属する機関と主人公は、危機的状況を迎える。だが、主人公の仲間や上司、父親は、傷つきつつも最後の切り札である主人公を、命をかけて守り続ける。主人公はそんな彼らの思いに触れて、「みんなのためになりたい」と願うことで、エヴァンゲリオンの真の力を発揮して、逆転勝利を収める。(テレビ版19話「男の戦い」の話に該当)
    • (報酬) 主人公は、父親から「よくやった」と褒められる。そして一瞬の幸福を味わった直後に、黒幕である父親が本性を明かす。そして父親は主人公を逮捕して、エヴァンゲリオンから遠ざける。
    • 父親は「人類補完計画」を止めることなく、むしろそれを発動させる。そしてセカンドインパクトに続く「サードインパクト」を起こすことで、人類を滅ぼそうとしていることが分かる。
    • 主人公と、主人公直属の上司は、ここで父親が企んでいた計画を全て知る(加持君からメッセージを託される部分に該当)。父親は、過去に「人類を救うため」という名目で、愛する妻を被検体にされて失ったこと。自分から妻を奪った「人類」に復讐心を持っていること。そして、妻を復活させるために動いていたことが示される。
    • 父親は影の組織を利用して、その妻を生き返らせる準備を整えていたこと。そのために、「人類補完計画」を利用すること。人類補完計画の最後だけを書き換えることで、「人類の多くを滅ぼす形になるが、妻を生き返らせることができる」という計画にしていることが明かされる。
    • 真実を知った主人公たちは、自分たちが父親によってだまされていたことを知る。だが、修正版人類補完計画が発動してしまい、人類の滅亡が決定づけられて、絶望する。
  • 第三幕:
    • (帰路) 人類補完計画の完了とサードインパクトの発動までには、一刻の猶予があると分かる。逮捕された主人公は上司たちに助けられ、エヴァンゲリオンと共に一時的に避難をすることに成功する。
    • 父親が自分の計画を完遂するには、主人公が乗るエヴァンゲリオン初号機のコアが必要になる。そのため、主人公(というか主人公の乗るエヴァンゲリオン初号機)を奪うために、動いてゆく。
    • ここで主人公たちは、サードインパクトを封じる手段があることを知る。それは、父親の拠点奥深くに入り、生物兵器「アダム」を滅ぼすことになる。もしそれができなければ、人類は滅亡してしまう。
    • それによって、ここから父親を倒すべく動いてゆく。敵は、今まで仲間だった組織になる。彼らは未だに父親の嘘を信じ続けていて、彼らを変えることはできない。
    • 主人公は仲間だった人たちと戦う葛藤を得ながらも、父親からの脅威を排除して、父親の元へと迫ってゆく。
    • (クライマックス) ついに主人公たちは、父親と最後の決戦を迎える。最後の敵は、第一幕で登場した、傷ついた女の子(綾波レイとエヴァンゲリオン零号機)になる。女の子とは、今までずっと一緒に戦ってきた仲間になる。どんなに説得しても、女の子の意思を変えることはできない。敵エヴァンゲリオンを倒すことは、女の子を殺すことになると分かる。
    • いくつかの逆転劇を経て、主人公は危機的状況を迎える。主人公のエヴァンゲリオンはコアを失い、動けなくなる。同時に、コアを奪われることで、サードインパクトの発動が決定的になる。
    • だがそこで、「コアには主人公の母親(父親の妻)の意識が眠っていた」と分かる。そして、父親は妻の意識に触れて、妻から「私はそんなことを願っていない」と言われる。むしろ、「そんな貴方は、大嫌い」だと涙を流して言われてしまう。
    • 父親は、妻が生き返ることを拒絶していると分かり、自分が間違っていたことを知る。そして、「全て滅びればいい」と自暴自棄になる。しかし主人公が父親を守ることで、父親は主人公に妻の面影を見て、救われる。妻の命は、息子である主人公に受け継がれているのだと。
    • 結果として、父親は主人公の未来を守るために、自らの命をなげうち、人類補完計画とサードインパクトを封じる。エヴァンゲリオンは全て破壊され、最後の敵(綾波レイ)も、父親と運命を共にする。(レイは母親のクローンだということで、死んで終わらせるのが適切な流れ)
    • (エンディング) 主人公は、冒頭と同じような生活に戻る。だが、一つだけ変わったことがある。それが、父親に対するコンプレックスを解消したということ。
    • 世界を救った主人公は、上司や仲間たちと共に新たな世界を生き始める部分で、ハッピーエンド。

 

庵野監督が作りたかった流れ

どうでしょう、ちゃんとまともな流れになっていますよね。

黒幕を適切に設定することで、「新世紀エヴァンゲリオン」のようにこんがらがった物語でも、こういうしっかりとした流れに再構成することができます。

庵野監督は、こういう流れを作りたかったんじゃないかな、と思います。

 

こういうメインプロットを再構成できると、本編のどこに問題があったのかが分かります。

テレビ版で言うと、第二幕のターニングポイントをしっかりと作れなかったことが一番の原因になります。

第14話あたりの「ゼーレ、魂の座」において、あの前後ぐらいで「ゼーレ(影の組織)が本当の敵である」と、ターニングポイントとなる新たな目標を明示しておく必要がありました。

それができなかったから、後の展開が停滞してしまい、方向転換ができなくなったわけですね。

 

また、新劇場版では、黒幕であるはずの父親が、第二幕前半から敵として登場・演出してしまったため、それが失敗の原因になりました。

実はこの物語では、黒幕を設定するならば、父親以外にはありえません。

影の組織は最初から敵として演出されているので、影の組織を黒幕にはできないからですね。

渚カオルあたりを黒幕にすると、冒頭での前振りができていないので、「ご都合主義」になってしまいます。

黒幕の前振りは、冒頭でしないといけないわけですから。

だから、新劇場版のストーリーが破綻して、進まなくなってしまったわけですね。

 

新劇場版の第3話(新劇場版:Q)で庵野監督がやりたかったのは、上記メインプロットの第3幕になると分かります。

で、「主人公(+ミサトさん)対父親」という構図を作るには、ゼーレと使徒は滅ぼしておく必要があります。

なのに、新劇場版第3話ではゼーレは滅ぼしても、使徒を残してしまっているというミスをしました。

すると、主人公が父親との問題を解決したとしても、使徒の問題を解決できなくなるわけですね。

その辺の全体を構成できずに第3話を作ったので、お約束のように「ご都合主義とハッピーエンドにできないジレンマ」に陥ってしまい、破綻してしまったことになります。

 

新劇場版はここからの解決は難しいので、このまま続編は発表されることなくフェードアウトになるかと思います。

逆に、上記のようなメインプロットを再構成できれば、新しいシリーズで納得できる展開を作れるんじゃないかな、と思います。

 

まとめ

そんな感じで、「黒幕を作る」という技法を用いることで、主人公が難易度の高い問題に面した解きでも、問題を解決できるようになります。

ただし、黒幕を設定する場合、ちゃんと前振りは必要です。

そこに注意をしさえすれば、これは強力な技法になるかと思います。

 

ということで、今日は「うまく解決できない物語の問題を、解決に導く最終手段」ということでお話ししてみました。

今日はここまで~。

この記事をシェア:
Share