今日はお休み的に、作家向けの短いお話を。
「転生ものは、語彙力がなくても書けるのでいいですよね」というお話です。
なぜ転生させているのか
もうだいぶ前から、若者向けのジャンルでは「異世界への転生もの」がありますよね。
「現代に生きる主人公が、死ぬなり転送されるなりで、ある日突然異世界で生きることになる」みたいな。
これは、投稿小説みたいに、小説を書き始める人が好むジャンルかなとも思ったりするんですが。
で、中には転生する意味がないようなストーリーもあるわけです。
「それ、その世界で元々生まれてきた設定でもええんちゃう?」みたいな物語も、結構あって。
言うなれば、無理にそうする必要がないのに、わざわざそういう転生の設定を作っているわけです。
それで、「なぜわざわざそんな設定を加えたんだろう?」と考えると、ひとつ思いつくのがあるんですよ。
それが、「転生ものは、語彙力がなくても書ける」ということですね。
転生させれば、現代用語を使える
「主人公は、最初は現代に生きている」という設定を加えると、私たちの日常の語彙で物事を説明できます。
例えば地の文でも、現代人の感覚なら「エスカレーターのようなもの」、「スマートフォンのようなデバイス」とか言っても通じますよね。
でも、例えば完全なファンタジー作品とか歴史的な作品だと、そういう「現代用語」が使えなくなってしまいます。
実際に、ファンタジー作品内で現代用語とか、現代にしかないものを使うと、「その世界観にはそんなものないよ」と言われてしまうわけです。
間違いをあげつらう人たち対策にもなる
ほら、実際に「その時代には、そんなものは存在しないよ」みたいに、間違いを指摘してあげつらう人たちがいますよね。
「江戸時代には、ちゃぶ台は存在しない」とか。
「12世紀のヨーロッパでは、まだそのような服装はしない」とか。
「○○世紀のその場所では、まだその植物や野菜は広がっていない」とか。
もうね、そういうのを聞くだけで、うんざりでしょ(笑
それをうまく教えてくれればいいんですが、それだけで作品を全否定されるわけです。
でも、「主人公が現代から転生した」という設定にすると、その辺の問題をすべて回避できるんですよね。
だから、書き手は「今の語彙力」で書けるし、より気楽に書けるようになると。
「書き手を楽にするための設定」もある
普通、キャラ設定とか世界観設定って言うと、「読み手がより楽しめるため」という発想で作るじゃないですか。
でも、そういう読み手のための設定ではなくて、「書き手を楽にして、書きやすくするための設定」もある、ということです。
もちろん、読み手にとっては多少は無駄な設定にはなるんですが、それでも小さな犠牲で全体のクオリティが大きく上がるなら、それはそれで「使える」と分かります。
ちなみに、「ゲームの世界観に転生する」というのも同じ理由のように思います。
ゲームなら、世界観も自由ですからね。
中世ファンタジーでスマホを使おうが、ガスコンロを使おうが、奇抜な服装をしようが、長旅なのに小さなバッグ1つで歩こうが、何でもOKです。
そういう工夫だ、ということですね。
目的をどこに置くか
私はこういう工夫は、大いにアリだと思うタイプです。
これは、目的をどこに置くかで変わるように思います。
「正確に書くこと」を目的とするか、「伝えたいことを伝えること」を目的とするか、ですね。
私自身は、小説に限らず、音楽でも物語でも、「伝えたいことを表現をすること」が一番の目的だと思うんですよ。
「こういうのが好き!」とか、「こういう気持ちを伝えたい」、「こういうシチュエーション、最高だよね」みたいなものを描くのがメインかなと。
そのために、必要であれば、その目的を実現するのに十分な時代考証を入れればいいと。
一方で、「正確に書くこと」を目的とすると、あまり面白く書けないし、意味のないものを書きやすくなるように感じます。
そもそも正確さを第一にするなら、物語にする必要はありません。
もし正確さを表現したいなら、しっかりと数値と科学的な用語を使って、学術論文や歴史書でも書いていればいいんですから(笑
まとめ
そういう風に、「書き手が書きやすくするための設定や工夫」というのも、大いにアリのように思います。
私の中では、伝えたいことを伝えられれば、それでオールOKかなと。
語彙力とか表現力、言葉や物事の正確性なんて、それは「伝えたいことを伝える手段」でしかないと。
「目的が何か」が分かれば、手段なんて自由に使いやすいものを使えばいいかなと思います。
すると、いろんなスタイルを受け入れられて、自分なりに作れそうにも思います。
ということで今日は、「転生ものは、語彙力がなくても書けるのでいいですよね」というお話でした。
今日はここまで~。